No.451824

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ヒーラギさん

9話『学院長』

2012-07-12 22:53:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3214   閲覧ユーザー数:3028

 

「―――それで、オスマン学院長?

一体何の用なんだ?」

 

「まぁ、そこにお掛け下され」

 

 

―――ここは学院本塔最上階、学院長室

 

 

オスマンが口を開き、俺とタバサに来客用の椅子……か?をすすめてくる。

 

今、この学院長室には俺とタバサ、ルイズと才人……最後にコルベール先生。

コルベール先生は教師だから……俺達はきっと決闘の事だろう。

それなら分かるけど……どうして才人とルイズがいるんだろう?

 

「単刀直入に聞こうかの?

お前さんは、何者じゃ?」

 

オスマン学院長は、鋭い瞳で俺を睨みつけてくる。

 

―――正直に話したほうがいいか?

 

そう思い、隣のタバサを見ると小さく頷いた。

 

「……俺がここに来たとき、何て言ったか覚えてるか?」

 

「た、確か……バサリアという東方の一つの都市……そう伺いましたが……」

 

「ごめん、全部嘘なんだ。

東方から来たっていう部分も嘘。」

 

本当は全部嘘だけど……話がややこしくなる。

 

「では、何処から来たのじゃ?」

 

「あー……タバサにも説明してない部分があるんだ。

信じてもらえるか分からない……それでも、いいか?」

 

 

 

この場にいる全員に説明する。

自分の世界、おそらくは才人と同じ世界から来たという事、自分が死んだこと。

全員は黙ってそれを聴いていた

 

才人は、同じ世界から来た、という言葉にびっくりしていた

 

 

 

「―――つまり、お主はその『げーむ』とやらの世界の『あばたー』……?という

もので来たのじゃな?」

 

「あぁ、『アバター』ってのは、自分の分身と考えてもらってかまわない。

と言っても、『アバター』は本来の自分が持ってない力を持ってるんだ」

 

「……その召喚魔法、というのがそうなのかの?」

 

「そうなる」

 

まぁ、容姿以外は全部……本来の俺が持ってない力だけどな。

 

「とにかくじゃ。

異世界から使い魔を召喚したという事になると、後々面倒になる。

この事については学院長である私が預かる。

言わんでも解るじゃろうが、他言は無用じゃぞ」

 

それぞれが、頷いた。

 

「さて……

お主の事は今まで通り、東方の魔法剣士……という事にしておく。

まあ、後は特に変わったことはないの……

強いていうなら、お主の魔法をあまり目立たせないようにしてくれ。

王宮に目を付けられると厄介での……構わんな?」

 

「あ、あぁ……分かった」

 

魔法禁止縛りか!?あー……剣のステータス上げとけばよかったな。

 

「―――でも、非常事態には使うぞ?」

 

主人が死んだりしたらこっちが困る。

 

「……その非常事態が起こらない事を祈りたいの……」

 

オスマン学院長が、小さな声で呟いた。

 

「さて、これで二人の話は終わりじゃ……次はミス・ヴァリエールじゃな」

 

あ、二人にも用があったんだ……あれ?

 

「俺達の事、二人に聞かれちゃったぞ?いいのか?」

 

「ミス・ヴァリエールとその使い魔も、おぬし達と立場が似ておるのじゃよ。

同時に説明したほうがいいと思うての……さて、ルーンを見せてくれるかの?」

 

「あ、はい」

 

才人は、左手のルーンをオスマン学院長に見せる。

オスマン学院長は古びた本を取り出し、コルベール先生と一緒に見比べていた。

 

「ふむ……やはりか……」

 

オスマン学院長が、神妙な顔で呟いた。

 

「あ、あの……?」

 

不安意になったのか、才人が問いかけた。

 

「……剣を握ってくれるかの?」

 

「えっ?け、剣なんて持ってませんよ?」

 

「ほら、才人」

 

「うおっ!?」

 

抜き身の銅の剣を才人に投げつける

 

「あ、危ないだろ!?」

 

「大丈夫大丈夫。切れ味はすごく低いから。

それで、何か変化あるか?」

 

「え、えっと……そうだな……何か、

体が凄く軽くて、扱い方がすごく分かる」

 

「これは……!!」

 

才人がそう言った瞬間、コルベール先生とオスマン学院長の顔が変わった。

 

「これでおしまいじゃ。今日はありがとうの」

 

「は、はぁ……?」

 

才人は銅の剣を俺にかえした。

 

「今日のことは他言無用じゃぞ。」

 

全員が、頷いた。

 

 

 

「―――おい!ヴェル!俺と同じ世界って……!」

 

「落ち着け馬鹿。人に聞かれる」

 

「わ、悪い……それで……」

 

話をする前に、周りに防音の魔法をかける。

 

 

 

晩飯を食べた後の女子寮の廊下……そこで二人の青年が話し合う。

 

 

 

「あぁ、確かにお前と同じ世界から来たぞ」

 

「ど、どうやって来たんだ!?その魔法とかも……」

 

「おいおい、聞いてなかったのか?あっちの世界で死んで、こっちに召喚されてたんだ。

理由は分からない」

 

―――あの神のおかげ……いや、神のせいだが言わないほうがいいだろう。

これこそ異端尋問行きだ。

 

「じゃあ、その魔法とかは……」

 

「『ドラゴティック・オンライン』のアバターだよ。知らないのか?」

 

「いや、知ってるけど……あのゲームは……」

 

「……あぁ、そうだ。あれは……」

 

俺はそう言って少し俯く。

この体で来たのは安心するから、力が強いから……だが、

たまにゲームでの出来事を思い出してしまう。

 

「……んじゃ、俺こっちだから」

 

才人に背を向けて、歩き出す。

 

「あぁ、また明日!」

 

「また明日。」

 

 

俺達は、主人のもとへ歩き出した。


 
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