プロローグ4~解放~
駆け足で外に出て、太陽の光と心地よい風を肌に感じる。色々なことが起こりすぎて、なんだか外の空気が凄くおいしく感じた。それは二人も同じようで、二人とも笑顔だ。しかし、突然日が遮られて忌々しい咆哮が響き渡った。
「っ!待て!」
レイロフの言葉と共に俺達は近くの岩陰に隠れる。真上をドラゴンが飛んでいき、凄いスピードでスカイリムの彼方に消え去った。いなくなったということは、ヘルゲンはもう壊滅したということだろう。
「またか。今回は永遠に帰ってこないみたいだな」
「もう帰ってこなくていいわよ……またあんなドラゴンが出てくるなんて、考えたくもないわ」
岩陰から出て、愚痴りながらも一息つく。これでやっと一応は無事に脱出出来た。ここがどこなのかさっぱりわからんが、先に進むしかない。
「他に誰か生きて出られたのか、知ることは出来ないな。しかし、ここにもすぐに帝国軍がうようよしだすだろう。ここからは退散した方がいい」
「あぁ。だが、ここがどこなのかさっぱりわからないぞ?行くあてはあるのか?」
「それは心配ない。ここはリバーウッドの近くなんだ。姉妹のジャルデュルが、そこで工場をやっている。この道の先だ。彼女が助けてくれる。そのクマは十分土産替わりになるだろう」
宿泊代金となったクマを担ぎ直し、先に進んでいく。周りは緑豊かで、動物の姿もちらほら見えた。道なりに進んでいると、レイロフが改まった様子で声をかけてきた。
「なぁ、ヴィンセント。ウィンドヘルムへ行って、スカイリムを開放する戦いに参加しないか?今日のここで帝国軍の真の姿を見ただろう?ドラゴンの出現が何を意味するのか知る者がいるとすれば、それはウルフリックだ。それにお前の事も知っているから、待遇もいいだろう。どうだ?」
「……そのスカイリムを開放するってのは、タロス崇拝の事と白金協定を結んだ首長達からってことか?」
「あぁ。俺達ノルドにとってのタロスがどれほど重要かは十分わかっているだろう?その崇拝を禁止するなんて言語道断だ。サルモールに対してあの腰抜けの帝国の対応を見たか?腑抜けにもほどがある。それに、今の帝国はスカイリムにとっての害悪以外の何物でもない。権力のみで偉そうにしている馬鹿しかいない。お前が殺した女隊長や彼女を襲った拷問官共がいい例じゃないか」
確かに、ここ数日間で帝国に対して不信感しか湧かなくなっている俺だが、タロス云々に関して言えば話は別だ。前にもあったように白金協定は仕方がなかったことだと思っている。あれを受諾しなければ帝国領土内は火の海になっていただろう。首長達もどうすることも出来なかったと数々の書物で確認している。それだけの力がサルモールにはあったのだ。帝国がもしちゃんと一枚岩だったら、話は変わっていたのかもしれないけれど。
そのことをレイロフに伝える。タロスの崇拝を否定するわけではないが、俺にとってそれは戦う理由にならないということを。だが、帝国にやり返すのには友人として手を貸すことも。彼は黙ってそれに頷き、小さく息を吐いた。
「……わかった。元々無理強いをするつもりはなかったんだ。お前はどこかに縛られるより自由に動いていたほうが良い方に行くような気もするしな。まぁ、気が変わったら言ってくれ。全力で手を貸そう」
「あぁ、その時は頼む」
それから道なりに進んでいく。開けた場所に出たときに見えた大きな遺跡についてレイロフが昔話をしたり、出てきた狼を蹴り飛ばしたりして進んでいく。中々良い景色だったが、途中山賊が2人出てきたので背負っていたクマを振り回してぶっ殺した俺は悪くない。空気をぶち壊したあいつらが悪いんだ。だから俺をそんな目で見るな。
「いや、だって……なぁ?」
「クマ『で』人を殺す事が出来る人なんてあなたくらいよ」
二人が苛める……。
あれから少し進むとすぐにリバーウッドに到着した。川沿いに面した村だ。しかし大きな門があることからそこそこの防衛設備も整っているようにも思える。入ってすぐに鍛冶場を見つけたし、露天もあった。少し大きな、のどかな村だ。レイロフが言うには川沿いにある木の加工場が妹さんの仕事場らしい。俺達はドラゴン云々言っているおばさんの言葉を耳にしつつ、そちらに向かった。
「ジャルデュル!」
「兄さん!あぁ、マーラの慈愛のおかげね。会えてよかった。でもあなたはここにいて大丈夫なの?ウルフリックが捕まったと聞いたのに」
妹さんのいる工場に向かうとすぐに見つかった。妹さんのジャルデュルは仕事を即行で切り上げ、レイロフに近づいた。余程心配だったのだろう。矢継ぎ早に質問を浴びせていくのでレイロフは苦笑いしながら両手を前に出した。
「ジャルデュル、ジャルデュル。俺は無事だ。少なくとも今はな。ようやくね」
「怪我してるの!?何があったの?それとこの人たちは?同じストームクローク……には見えないけど」
司祭、俺、クマと見て言葉を詰まらせるジャルデュル。まぁ、そうだよな。
「まだ仲間ではないが、親友だ。事実、命の恩人だよ。どこか話せる場所はないか?帝国がヘルゲンの件に気づく前に……」
「ヘルゲンで何があったの?……そうね。ついてきて。ホッド!すぐに来て!手伝ってほしいの!」
レイロフの真剣な目を見て悟ったのだろう。彼女は加工場にいるノルドに声を張り上げた。
「何かな?スヴェンがまた仕事中、酔っ払っていたか?」
「ホッド、いいからこっちに来て」
「レイロフ!ここで何をしているんだ!……あぁ、そっちにすぐ行くから!」
作業服を着たノルド、ホッドはレイロフを見て驚きはしたが、そのままいても仕方がないとでも思ったのか、ジャルデュルが怖い顔をしていたからか、駆け足で移動を始めた。そしてその間に加工場の奥にある切り株の近くまで移動する。村の離れのようだ。そこへ犬を連れた少年がとてもうれしそうな顔をしながら駆け寄ってきた。
「レイロフおじさん!おじさんの斧を見せてくれない?今まで何人の帝国軍を殺したの?本当にウルフリック・ストームクロークを知ってるの?」
「黙ってフロドナ。遊んでる暇はないの。南の道を見張りに行って。もし帝国兵が来たら知らせなさい」
「え~、ママ。僕もレイロフおじさんと話がしたいよ!それにクマを背負ってるカッコいい鎧の兄ちゃんのことも聞きたいし」
ジャルデュルが少しいらいらするようにフロドナを叱る。それに不満ありありな返しをしたフロドナだったが、レイロフが微笑みながら近づいたため黙った。それにしてもこの鎧をカッコいいと言ってくれるか。なかなかいいセンスをしている。
「感心だな。もう一人前の男じゃないか。この戦いにお前が参加する日も、そう遠くないようだ」
「そうだよ!心配しないでレイロフおじさん。あんな兵士達、近づかせないよ!」
駆け出して行った少年を見て、なんというか、うまい具合に扱ったなと思う。司祭も苦笑いしているし、レイロフも笑っている。ジャルデュルは母親としてうまく向こうに行かせられたのに喜ぶべきか、子供の単純さに悲しむべきかと微妙な顔をしていたが。
そうこうしている間にホッドが来て、この空気に首を傾げていたが話を切り出した。
「さて、レイロフ。そっちの状況はどうなんだ?二人ともとても元気そうだが」
「はぁ、最後に寝た日を思い出せない……どこから話そうか」
レイロフはかいつまんで、今までの事を二人に話始めた。
「まぁ、要はドラゴンがヘルゲンを襲って破壊した。それで俺達はレイロフと一緒に逃げてきたんだ」
「ヘルゲンにドラゴンが!?ありえないわ!でも、それなら前に見たものの説明がつく。南から谷を飛んで行った。幻を見たんだと思っていたわ」
頭を抱えているジャルデュルとホッド。本当なら信じがたいことだが実際に起きたことだ。しかも彼女自身見ていることから信憑性は言葉だけより増すだろう。ちなみにクマを置いて兜を取って話をしている。礼儀だからな。
「ドラゴンはこっちの方角に進んだ。あなたも見たはずだ」
「えぇ、見たわよ。それでも、ありえないわ。ドラゴンなんて存在しない。古い物語の存在よ……でも、なぜかわからないけどあなたを信じるわ。今しがたドラゴンを見たって顔してるもの。状況はますます悪くなるわね。まず戦争、そしてドラゴン達……この世界はどうなるのかしら。ドラゴンが野放しなら、首長に知らせなくては。リバーウッドは手も足も出ないわ。ホワイトランのバルグルーフ首長に、出来る限りの戦力を送るよう伝えなきゃならないの。引き受けてくれたら、恩に着るわ」
確かにここの戦力と言えない戦力では壊滅するのは目に見えている。それにドラゴンは一匹とも限らないし、あれほどの強さのものが来なかったとしても、まずいことには変わりない。ホワイトランはスカイリムの中心地で大きな要塞だから、ここに送る分の戦力はあるだろう。第一バルグルーフ首長は自分の領内を見捨てるほど心無い領主ではないとも聞いているしな。
「ホワイトランへはどうやって行けば?」
「丘を渡って北に向かって。滝を過ぎると、丘の上にホワイトランが見えるわ。そこから門番にこのことを伝えれば入れてくれるはずだから、雲地区にあるドラゴンズリーチへ行って。中に首長がいるわ」
「わかった。なら準備を整え次第向かうとしよう。レイロフ!彼女とこのクマで何か美味い物でも食べろ。俺はホワイトランに向かう」
兜を着け直し、早い方がいいだろうと早速行こうとする。司祭の宿泊費用はクマ一匹あれば何とかなるだろうし、飯も付くだろう。するとレイロフとジャルデュルが慌てて俺を止めてきた。
「ま、待って。今は疲れているでしょう?話を聞く限りじゃ聞いてる方も疲れてくるくらいいろんなことがあったんですもの……少しの間は休みなさいよ」
「そうだぞ、ヴィンセント。お前ドラゴンの炎を止めたりしてたんだからしっかり休め。そのくらいしても罰は当たらんさ。それに飛び去ったドラゴンがわざわざまた戻ってくるとは思えん。少しくらいは猶予があるはずだ」
「ヴィンセント、あなたがいくら規格外だからって山一つ越えるようになるんだから休むべき時はしっかり休まないと……」
「あー、その、なんだ。みんなが言うように一日二日はしっかり休養をいれるべきだ。ベッドが足りないから宿屋に行ってもらうことになるだろうが、話は付けておく。クマ一匹あれば3人分くらい何とかなる」
「……」
何故かみんなに止められました。というか、レイロフがドラゴン云々言ったせいで余計にひどくなった。全然大丈夫だしマジカも回復しているんだが……まぁ、お言葉に甘えて今日は休むとするか。
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帝国タムリエルは窮地に立たされていた。Skyrimの王は殺害され、王位継承のために同盟が形成されていった。内紛が起こる中、長い歳月閉ざされていたElder Scrolls(エルダー・スクロールズ)へ通じる道がタムリエルへと開かれ、太古の邪悪な生物たちが蘇った。Skyrimの未来は、唯一ドラゴンに立ち向かうことのできる救世主“ドラゴンボーン”が現れるという予言を待ち望みながら、生死の淵を彷徨うしかなかった……。―――――――べゼスダゲームの傑作・スカイリム二次創作です。なるべく原作のセリフや言動を崩さないようにやっていきますが、どうしてもほころびが出ます。ご容赦ください。ある程度の原作崩壊(キャラ生存・死亡、主人公設定など)はありますので、それがお嫌いな方はご注意ください。主人公最強・ご都合主義・ややエロ(?)などを含みます。主人公は原作未プレイです。にじふぁんから移動してきました。