No.450784

狼男のスカイリム冒険記

神山夏彦さん

帝国タムリエルは窮地に立たされていた。Skyrimの王は殺害され、王位継承のために同盟が形成されていった。内紛が起こる中、長い歳月閉ざされていたElder Scrolls(エルダー・スクロールズ)へ通じる道がタムリエルへと開かれ、太古の邪悪な生物たちが蘇った。Skyrimの未来は、唯一ドラゴンに立ち向かうことのできる救世主“ドラゴンボーン”が現れるという予言を待ち望みながら、生死の淵を彷徨うしかなかった……。―――――――べゼスダゲームの傑作・スカイリム二次創作です。なるべく原作のセリフや言動を崩さないようにやっていきますが、どうしてもほころびが出ます。ご容赦ください。ある程度の原作崩壊(キャラ生存・死亡、主人公設定など)はありますので、それがお嫌いな方はご注意ください。主人公最強・ご都合主義・ややエロ(?)などを含みます。主人公は原作未プレイです。にじふぁんから移動してきました。

2012-07-10 23:51:39 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2969   閲覧ユーザー数:2915

 

プロローグ1~解放~

 

 

ガンッという大きな揺れでまどろみから目覚める。何度か瞬きして周りを見れば、雪の積もった木々と多くの石が見て取れた。手元も見れば相も変わらず手は繋がれたままで、固い木の馬車は俺の体のあちこちを痛くさせている。

 

 

「おい、そこのあんた。やっと目が覚めたか」

 

 

ようやく頭が働くようになったころ、前に座っている金髪の男のノルド人が声をかけてきた。装備を没収されてぼろきれを着せられている俺と違い、どこぞの衛兵のような青い軽装鎧を身に着けている。体はがっしりしており、屈強なノルド人と言えるだろう。

 

 

「国境を越えようとしていたんだろう、違うか?俺達やあそこのコソ泥と同じで、帝国の罠に飛び込んだってわけだ」

 

 

「ストームクロークめ。お前らが来るまでスカイリムは良い土地だった。帝国はいい感じにくつろげる場所だったんだ。連中がお前を探してるんじゃなかったら、とっくにあの馬をかっぱらってハンマーフェルへとおさらばしてたさ」

 

 

金髪の隣に座って話に割り込み、不快感を隠そうともしないで話す馬泥棒。ストームクロークが何なのかは知らないが、俺は完全に巻き込まれただけということになる。金髪の言うとおり俺は単に国境を越えようとしただけだ。正直いきなりすぎて何が何だかわからない状況で、俺自身は一応帝国領の民の一人だし、国家権力に喧嘩を売るつもりもなかったので素直に武装解除して理由を話そうとしたら強制連行された。話す暇も与えられず、その時の装備は取られ、こうして護送されている。今となってはあの時素直に捕まらずに破壊魔法や愛剣でぶっ殺してやればよかったかもしれないと思ったりする。

 

 

「そこのあんた。こんな所に来たのが間違いだったな。帝国が狙っているのはこいつらストームクロークだ」

 

 

「これで固く結ばれた兄弟姉妹だな。なぁ、コソ泥」

 

 

「そこ!黙れ!」

 

 

好き勝手しゃべっていると馬車の御者をしている帝国軍兵士に怒鳴られたが、俺達はどこ吹く風だ。そんなこと知らんとばかりに話し続ける。そこでふと横を見ると、やけに上等な服を着た茶髪のノルドの男がいたのに気づく。口は布でふさがれて、やけに厳重に縛られていた。そいつはこうもきつく縛られているのにも関わらず、目を閉じて静かに座っている。眠っているわけではなく、どこか機を待っているように見えた。

 

 

「こいつはどうかしたのか?」

 

 

「言葉に気をつけろ。お前は上級王ウルフリック・ストームクロークと話をしているのだ」

 

 

「ウルフリック?ウィンドヘルムの首長の?あんたは反乱軍の指導者なのか?だけどあんたが捕まったら……なんてこった、俺達はどこへ連れて行かれるんだ?」

 

 

馬泥棒の言葉に俺は驚いた。首長といえばこのスカイリムにある要塞の政治的最高責任者にあたる人物に与えられる称号だからだ。そして上級王とはそれら首長のさらに上に立つ実質このスカイリムの王になる。この土地に来る前にスカイリムについてある程度の基礎知識は学んできた。書物によるものだから最近の事にはどうしても疎くなるが、それでもこれは驚くべきことだろう。

 

 

しかし話に出てきたことで判断すると、このウルフリック首長はそのストームクロークという反乱軍の指導者らしい。名前にストームクロークとあることから間違いないだろう。どこの国にも帝国への反乱軍というのはあるものだとは分かっていたが、まさかピンポイントでそこに行き当たることになるのは運が悪いとしか言えない。しかし上級王というのは流石に自称のはずだ。聞いていたと話が違うからな。だが、これでは弁明もなにも聞いてはくれないだろう。とくれば、俺は……。

 

 

「どこに行くつもりなのかは知らんが、ソブンガルデが待っているんだ」

 

 

「嫌だ、こんなの嘘だろう!こんなことあるわけない!」

 

 

俺と同じ結論に至ったのだろう馬泥棒が絶望的な顔でわめきたてる。無理もない。馬泥棒とはいえこの程度の盗みなら一定期間の投獄か、釈放金を支払えば良い程度のもののはずだからだ。本来なら死刑なんて受けるはずがない。もっとも、俺なんか何もしていないんだけど。

 

 

「やかましい、わめくな。わめいたところで何も変わらん」

 

 

「ど、どうしてそんなに落ち着いていられるんだ!あんたなんて俺らと違って完全にとばっちりなんだろう!?」

 

 

「それはそうだが……今となってはどうしようと結果は変わらんよ。仮に隙を突いて逃げようとしたとしても、この警備だ。後ろから射かけられて死ぬだけだろう。なら、最後くらい堂々と胸を張って死のうじゃないか」

 

 

「うっ……そうだな。俺自身褒められた人生じゃなかったが、それでも一生懸命生きてきたんだ。笑って死んで、ソブンガルデに逝こう。ありがとよ。あんたのその落ち着いた姿を見ていると、俺もわめき散らすのが馬鹿みたいに思えてきたよ」

 

 

目を見て説得すると、震えた声を出しながらもなんとか納得してくれた。それに満足したので頷き、前を見てみる。前には石の城壁と村が見えてきた。前の兵士が将軍がどうたら言っていたが、どうでもいい。

 

 

「初めてしゃべったな……なぁ、あんた。故郷はどこだ?ノルドは死に際に故郷を想うものだ」

 

 

「生まれはスカイリムのリフテンでシロディールのブルーマ育ち。親の都合で赤子のころにシロディールに行ったから、こっちのことはよく知らないんだ。で、この間親が死んだから生まれ故郷を見てみたいと思ってこっちに来たんだが……」

 

 

「……そうか。だが生まれ故郷で死ねるんだ。一言言っておけば、いくら腐った帝国軍といえどお前の遺体をリフテンの大地に送ることくらいはしてくれるだろうよ。おまえは?」

 

 

「ロリクステッド。故郷は……ロリクステッドなんだ」

 

 

寂しげに、少し苦笑しながら言う馬泥棒。俺もこうやって改めて話していると、今まで過ごしてきた日々と死んだ両親の顔が目に浮かぶ。本当に懐かしい……こういう時は、良い思い出しか頭に過らないんだから不思議だ。

 

 

しかしこうやって話している間にも馬車は進み、とうとう壁の中に入ってしまった。中を進んでいる馬車を何人もの村人が見てくる。小さな子供もいるのが見えた。本当はのどかな場所なんだろうが、これだけ帝国軍人がいるせいでひどく物々しい。そうやって周りを見ていると、金髪が何かを見つけたのか眉をひそめた。

 

 

「見ろよ、軍政府長官のテュリウス将軍だ……それにサルモールも一緒なのか。胸糞悪いエルフ共め。賭けてもいいが、この件だって奴らが関わっているに違いない」

 

 

サルモールとは、エルフの住むアルドメリ自治領(サマーセット島)の代理人のことだ。そのほとんどがハイエルフで構成されている。エルスウェーア、ヴァレンウッドと同盟を結んでおり、カジートやウッドエルフをスパイ・暗殺者として利用している。帝国の王族で竜の血脈を持つ一族であるセプティム家が滅び、帝国が大きく弱体化したのを機に、帝国へ戦争を仕掛ける。戦争は終始サルモールの有利に進み、帝国に自らの要求を呑ませることを条件に和平条約を結ばせた。スカイリムでは、サルモール大使であるエレンウェンを中心に、タロス崇拝禁止の徹底・監視、タロス崇拝者の拉致・拷問などを行っている。これらは地元ノルドの反サルモール、及び反帝国意識を煽る為のプロパガンダであり内戦そのものが帝国の疲弊を目的として仕組まれた外交工作である事を示している。 と、書物で読んだ。

 

 

基本的に人から神になったと言われるタロスの信仰をしている人を連行している姿をよく見かける。基本的にいけすかない連中で、周りを見下しているので大抵嫌われているやつらだ。だが、力の弱っていた帝国はこいつらの要求を呑むしかなかった。そうしなければ帝国領土は完全に焦土と化していただろう。そこがわかっていない人も多いが、俺は仕方がなかったと思っている。だからといってアレにむかつくことには変わりないんだけども。

 

 

「まぁ、気にしていても仕方がないか。さて、ここがヘルゲンだ。昔、ここの女の子に夢中になってねぇ……ヴィロッドはいまだに、ジュニパーベリーを混ぜて、あのハチミツ酒を作っているのだろうか?」

 

 

そのころを思い出しているのだろう、懐かしそうな顔をしているのを見て俺は少し笑った。俺もさっきあんな顔をしていたんだろうか。

 

 

「へっ、幼い頃は帝国軍の防壁や塔がこの上なく頼もしく思えたもんだがな」

 

 

「おっと」

 

 

皮肉気に言う金髪。それが言い終わると同じくらいに馬車が動きを止めた。話をしているうちに到着地点についたようだ。

 

 

「さて、神様の顔を拝みに行くとしますか」

 

 

「ははっ、そうだな」

 

 

「死に際にあんたらと会えたことを誇りに思うよ。今更だけど俺はロキール。そっちは?」

 

 

「俺はリバーウッドのレイロフ。ウルフリック首長はさっき説明したな。それで?あんたは?」

 

 

「俺は「何を無駄話をしている囚人共!さっさと動け!」……ちっ」

 

 

最後の別れを邪魔されて舌打ちをする。それでもなんとか言おうとしたが、兵士に小突かれたり大声で呼ばれたりしたせいで言えなかった。しかたなくそのまま馬車を降り、並んでいく。そしてウルフリック首長、レイロフ、ロキールと名前が呼ばれて処刑台のほうへ進んでいく。すでにあのロキールでさえ顔に怯えはなかった。勇敢なノルドだ。同族として誇りに思う。

 

 

「悪い時に戻ってきたもんだな、同族よ。隊長、こいつはリストにありませんが……」

 

 

「リストはもういいわ。彼を処刑台へ」

 

 

「ご命令通りに、隊長。気の毒に……だがあんたはここで、自分の故郷で死ねるんだ……さぁ、隊長についていくように、囚人」

 

 

気の毒とか言ってるくせにやけに即答するノルド兵士と、問答無用で死ねと言ってくるレッドガードの女隊長。かなりムカついたが、ロキールにああ言ったのに俺が馬鹿をやるわけにもいかない。彼らはあんなにも堂々としていたのだ。俺もそれに倣って堂々と彼女についていく。横にはレイロフとロキールが俺を挟むようにして立っていた。そして前にはウルフリック首長に禿げたおっさん――レイロフに聞けば帝国のテュリウス将軍と答えてくれた――が一方的に話していた。

 

 

「ウルフリック・ストームクローク。ヘルゲンには、お前を英雄と呼ぶ者もいる。だが、声の力で王を殺め、玉座を奪うような者を英雄とは呼べない。お前が戦争を引き起こし、スカイリムを混乱に陥れた。だがここに帝国がお前を倒し、平和を取り戻してやる」

 

 

おっさんの話が終わるのと同じくらいに、どこからともなく何かの遠吠えのような、鳴き声のようなものが聞こえてきた。シロディール各地を旅してきたが、こんなのは聞いたことがない。現に周りの囚人や帝国兵士達も空を見てきょろきょろしている。

 

 

「今のは何だ?」

 

 

「どうってことはない!続けよう」

 

 

「はい!テュリウス将軍!……彼らに最後の儀式を」

 

 

しかし禿げ将軍の一言で女隊長が進行を続ける。処刑台の横には黒い頭巾と斧を持った処刑人と、死を司る神・アーケイの司祭の姿がある。彼女は女隊長の言葉に頷き、両手を広げて天に祈るようにして言葉を紡ぐ。

 

 

「エセリウスに送らるる汝らの魂に、八大神の慈悲あらん事を、汝らはニルンの地の塩なれば、我らの愛する「タロスの愛のために、黙ってさっさと終わらせろ」……っ!お望みのままに!」

 

 

彼女の祈りは途中で割り込んだストームクローク兵士によって遮られた。フードで隠れた顔がここからでも分かるくらいに真っ赤になって怒りに歪んでいるのがわかる。戦争のせいでタロスの崇拝はエルフに禁止されたが、多くのノルドは無視して崇拝しているのはよく聞く話だ。俺は特定の神に祈ることはないから気にしないが、彼はタロスの信仰者だったのだろう。凄く堂々としており、『おいおい、昼になっちまうぜ』などと軽口をたたいている。

 

 

「我が父祖達が微笑みかけてくれているのが見えるぞ、帝国。貴様らに同じ事が言えるか?」

 

 

それが彼の最後の言葉だった。司祭の言葉に割り込んだ後、そのまま処刑台に進んでいった彼は、言い終わると同時に首を落とされた。横から同じストームクローク兵士の罵声が聞こえる。帝国の兵士も裁きだとかどうとか叫んでいる。だが横にいるレイロフは彼の死体をじっと見ていた。

 

 

「恐れを知らず生き、恐れを知らず逝った……あれは俺の友人の一人だよ。共に戦った戦場も数知れない。最後まで、あいつらしいかったよ、まったく」

 

 

寂しげな笑みを浮かべたレイロフに、俺とロキールはただ無言で彼を見るしかなかった。そして少しして彼の遺体が退かされると、女隊長はざっと周りを見て、俺で止まった。

 

 

「次はそのボロを着たノルドだ!」

 

 

思わずため息が出る。まさかの二番手だ。まぁ死ぬ覚悟はいつでも出来ているし、最後の最後で良い友人達も出来た。またあの鳴き声が響き渡って周りがざわめきだしたが、もう俺にはどうでもよかった。

 

 

「ヴィンセント」

 

 

「ん?」

 

 

俺を呼ぶ女隊長を無視して三人に顔だけ向ける。さっきは邪魔されたが、これはしっかりと伝えておきたかった。

 

 

「俺の名前だ。じゃあな、レイロフ、ロキール。そしてウルフリック首長。ソブンガルデで会おう」

 

 

「……あぁ。またな、友よ」

 

 

「ソブンガルデで、ヴィンセント」

 

 

「……」

 

 

処刑台の前に行き、血の付いた断頭台に頭を押し付けられる。最後の最後まで嫌な女だ。犯した後にぶっ殺してやろうか……なんて思ってもこれが最後だ。この世界に生まれて二十年と二か月。良い楽しい人生だった。少しばかり変わった血ではあったけれど、それ以外はただの人と変わりなかったし。

 

 

美味い物を食べて、良い酒を飲んで、良い女を抱いて、良い戦いもして……両親に言われるがまま各地を旅し、本当に楽しかった。出来ればもう少し生きていたかったが、こればっかりは仕方がない。最後は、笑って死んでいこうと決めている。死ぬときは良い記憶しか思い出せないのは不思議だな、なんて思っていると、処刑人が前に立った。もうすぐ死ぬだろう。

 

 

「ははっ、良い人生だった」

 

 

処刑人に……というのは癪なので横にいるアーケイの司祭――近くで見ると案外いい女だった――に向けて、自分の中でとびっきりの笑顔を見せる。驚いているのが見えてなんだか勝った気分になる。

 

 

俺の名前はヴィンセント・ウルフマン。転生者で元日本人、そして誇り高いウェアウルフのノルド人だ。

にじふぁんからの移転作品です。こっちではもう少し早く更新したいな。

 

 

この作品は作者がスカイリムにハマりまくった結果出来た物です。なので作者が好きなキャラとか何で死んだのー!ってのは生きていたり、逆の場合は殺したりします。そんなに多くはしないですけど。

 

あと、なるべくセリフとか説明とかを調べて書いていますが、不備や追記があれば連絡ください。私はオブリビオンの方はクリアしてません。

 

他の作品ほったらかして何やってんだって感じですけど、楽しんでいただけたら幸いです。

 

 
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