No.450571

IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~

ドラーグさん

奇襲! 強襲! シンデレラ!

2012-07-10 20:21:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1016   閲覧ユーザー数:983

瑛斗! 四番テーブル! 急いで!」

 

「了解!」

 

「一夏さん! 六番テーブルのお嬢様がお呼びですわ!」

 

「今行く!」

 

俺達が休憩を終えて営業に戻ってから小一時間ほど経った。店ではシャル、ラウラ、セシリア、箒がメイド服を翻しながらせっせと動いている。

 

かく言う俺や一夏も殺到する客の対応にてんてこまいだ。

 

(忙しいな。だが、悪くない!)

 

何かを皆でやるっていうのは楽しいものだ。俺は疲労よりも高揚感を感じていた。

 

「じゃじゃん! 楯無おねーさんの登場です!」

 

「一夏ぁっ! 職場放棄人間が現れたぞ! コマンドはわかってるな!?」

 

「逃げる! 逃げる! 逃げる!」

 

「だが逃げられない!」

 

「だぁっ!?」

 

「進路妨害しないでください!」

 

「まあまあ、そう言わずに。ときに二人とも。君たちの教室手伝ってあげたんだから、生徒会の出し物に協力しなさい」

 

「疑問形じゃないだと!?」

 

「うん。決定だもの」

 

「あの、俺と瑛斗の意志は・・・・・」

 

「勝手に決めてもいいじゃない。生徒会長だもの」

 

「「み〇をっぽく言わないでください!」」

 

ダブルツッコミを決めてから、一夏はため息をつく。

 

「・・・・・で、俺達は何をすれば?」

 

「あら、無抵抗ね」

 

「もう無駄だっていうのはわかってますから」

 

同居までしている一夏だ。楯無さんには敵わないと分かったのだろう。

 

「あら、おねーさんのこと分かったつもり? まだまだダメよ一年生くん?」

 

つんと一夏の鼻先を押さえる楯無さん。

 

「あの、話が進まないんで、早いとこ何やるのか教えてください」

 

俺が続きを促すと楯無さんは扇子を口に近づけた。

 

「うふふ、何だと思う?」

 

「うーん・・・・・」

 

「演劇よ」

 

「答えさせてもらえない!?」

 

話を振っておいてなんていう所業・・・・・。恐るべし。

 

「それはまた予想に反して結構普通ですね」

 

「演劇は演劇でも、観客参加型演劇」

 

「「はい?」」

 

観客参加型・・・・・? どゆこと?

 

「とにかく、おねーさんに着いて来なさい。はい決定」

 

ぴっと扇子を俺達に向け、威風堂々宣言する楯無さん。

 

「あのー、先輩? 今二人を連れて行かれると、困るんですが・・・・・?」

 

おお! シャル! グッドタイミングだ! 

 

「シャルロットちゃん。あなたも来なさい」

 

「ふえっ!?」

 

「おねーさんが綺麗なドレス着せてあげるわよ~?」

 

「ど、ドレス・・・・・」

 

ヤバい! 揺れてる! シャルが女の子の憧れ、ドレスに揺れている! 耐えろ! 耐えてくれ!

 

「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ・・・・・」

 

シャル、陥落。なんてこったい。

 

「ん~。素直で可愛い! じゃあ箒ちゃんとセシリアちゃんとラウラちゃんもゴーね」

 

「「「え!?」」」

 

聞き耳を立てて様子をうかがっていたであろう三人が同時に声をあげる。

 

「三人にもドレス着せてあげるから」

 

「そ、それなら・・・・・」

 

「まあ、付き合っても・・・・・」

 

「ふ、ふん。仕方ないな・・・・・」

 

箒、セシリア、ラウラまでもが陥落。

 

「で、演目は?」

 

「ふふん」

 

ぱっと扇子を開く楯無さん。その扇子には『迫撃』の二文字が。

 

「シンデレラよ」

 

 

 

 

 

「ふたりともー。ちゃんと着たー?」

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

「開けるわよ」

 

「開けてから言わんでください!」

 

「なんだ。ちゃんと着てるじゃない。おねーさんがっかり」

 

「どういう意味ですか・・・・・」

 

第四アリーナの更衣室。普段はISスーツに着替える場所に俺と一夏はいた。客席は満員なのか、ここまで観客の声が聞こえてくる。

 

服装はというと、一夏は王子様。どっからどー見ても王子様。それはいい。それはいいが・・・。

 

「あの、なんで俺はスーツにマント?おまけにシルクハットまで」

 

「え? 怪盗だからだよ」

 

怪盗が登場するシンデレラなど聞いたことがない。

 

「はい、一夏くん。これ王冠」

 

「はあ」

 

「うれしそうじゃないわね。シンデレラ役の方が良かった?」

 

「嫌ですよ!」

 

「うふふ、さて、そろそろ始まるから、一夏くんはこっちに来て。瑛斗くんはそこの階段を上って特設ステージに上がっといて」

 

「あの、俺達台本も脚本も一切見てないんですけど、いいんですか?」

 

「大丈夫大丈夫。基本的にアナウンスするから、台詞はアドリブね」

 

なんとも無茶な。

 

「さあ! 幕開けよ!」

 

ブザーが鳴り響き、照明が落ちた。

 

「むかしむかしあるところにシンデレラという女の子がいました」

 

アナウンスが始まり、俺は特設ステージ、一夏は舞踏会のセットに向かう。

 

(こうなったらやるっきゃないか・・・・・)

 

腹を括ってステージに立つ。まだライトがあがっていないので俺の姿に誰も気づいていない。

 

「否。もはやそれは名前などではない。幾多の舞踏会を抜け、群がる敵兵をなぎ倒し、灰燼を纏うことさえいとわぬ地上最強の戦士たち。彼女らを呼ぶにふさわしい称号。それこそ、それこそ! 灰被り姫(シンデレラ)!」

 

・・・・・・あ?

 

「今宵も血に飢えたシンデレラたちの夜が始まる。王子の冠に隠された軍事機密を狙い、舞踏会という死地に少女たちが舞い踊る!」

 

バン!

 

「もらったぁぁっ!」

 

照明がつくとともに一夏がシンデレラの衣装を着た鈴に襲撃された。鈴は飛び道具を一夏に投げ、一夏はそれを紙一重で躱す。

 

(な、なんだ? え? 何がどうなってるんだ!?)

 

想像以上の急展開に俺のキャパシティは一瞬で振り切れる。

 

パァン!

 

今度は一夏のすぐ横のセットの一部が吹き飛んだ。

 

(ポインターの光? スナイパーライフル? セシリアか!)

 

こんな芸当ができるのはアイツしかいない。楯無さん、一夏を殺す気か?

 

「しかぁし! この舞踏会はある人間の罠だった! 彼はこの混乱に乗じ、シンデレラたちの家に代々受け継がれる伝説の秘宝、『ガラスの靴』のオリジナルを盗むのが目的だったのだ! 本物のガラスの靴を盗んだ真の黒幕! その名は!」

 

バン! ババン!

 

三つのライトが俺に光を当てる。

 

「桐野瑛斗!」

 

「なんで俺だけ本名!?」

 

俺のツッコミは観客の大歓声にかき消された。

 

ギン!!

 

シンデレラの衣装を着た鈴、ラウラ、箒、セシリアがステージの陰に隠れた一夏に代わって俺に殺意のある目を向ける。怖ぁっ!?

 

ガクン!

 

「え?」

 

突然俺の立っているステージからスロープがせり出し、そのスロープが下のステージに着くと、俺の立っている足場が傾き、俺はスロープを滑り落ちることになった。

 

「うわああぁっ!?」

 

めちゃくちゃ広いステージに立ち、周囲を見渡す。鈴、セシリア、ラウラ、箒が俺を狙っている。

 

「よこせえぇぇぇぇっ!」

 

「ぎゃああああっ!?」

 

鈴が中国の手裏剣こと飛刀を俺に向かって投げてきた。このままでは命に関わる。なんとかしなければいかん!

 

「ま、待て! 俺はガラスの靴なんて持ってな―――――」

 

「問答無用!」

 

ザンッ!

 

箒が日本刀を振り下ろした。俺は身を逸らして咄嗟に躱す。前髪にかすって髪の毛がハラリと三本ほど散った。

 

「ちっ!」

 

後ろ飛びで距離を取り、動き回ることでセシリアの狙撃の対象にならないようにする。だがいつまでも保つわけではない。

 

(このままだとジリ貧か・・・・・!)

 

「瑛斗! こっちだ!」

 

「瑛斗、早く来て!」

 

「!」

 

一夏とシャルがセットの隅から俺を呼んだ。俺は急いで二人のもとへ向かう。

 

シャルもほかのシンデレラ同様ドレス姿だが、防弾シールドを持っている。

 

「どういうことなんだこれ!? 楯無さんは俺達を殺す気か!?」

 

「わからないけど、俺も多分そうだと思う!」

 

パァン! パァン!

 

「うわっ!」

 

「危ねっ!」

 

立ち止まったせいでセシリアの狙撃の対象になってしまう。壊されたセットから出ると、武闘派三人衆が各々の得物を構えていた。

 

「僕が食い止めるから、二人は逃げて!」

 

「わ、わかった!」

 

「すまん!」

 

俺と一夏は走り出そうとする。

 

「あ、ちょ、ちょっと待って!」

 

だがシャルに引き留められた。

 

「できれば王冠とガラスの靴を置いて行ってもらいたいな?」

 

「え? 別に良いけど」

 

一夏は王冠に手をかける。すると再びアナウンスが響いた。

 

「王子様にとって国とはすべて。その重要機密が隠された王冠を失うと、自責の念によっと、電流が流れます」

 

「「「え?」」」

 

聞いた時にはもう遅く、一夏は王冠を外してしまっていた。

 

バリバリバリバリ!

 

「ぎゃあああああああっ!?」

 

一夏が痺れまくっている。服がところどころ焼き切れてしまっていて、すこし露出度が高い王子様になった。

 

「ああ! なんということでしょう。王子様の国を思う心はそれほどまでに重いのか。私たちはそれを見守ることしかできません。なんということでしょう」

 

「二回言うな!」

 

一夏は王冠を再度頭にのせてツッコむ。

 

「え、瑛斗は? ガラスの靴は?」

 

「だから、俺は何も持ってないって―――――」

 

「怪盗桐野瑛斗は幻影の呪術師。ガラスの靴のオリジナルはすでに体のどこかに隠してしまっていた。それを奪い返すには、彼の力の根源である、あの衣装を奪わなければならない! つまり! 彼をほぼ裸にしなければならないのだぁっ!」

 

アナウンスがとんでもないことを言っている。え? 何? ほぼ裸?

 

「は、はは、はだ、裸・・・・・!」

 

シャルの顔が真っ赤になる。

 

「瑛斗の身ぐるみを・・・剥ぐ・・・だと・・・・・!?」

 

ラウラまで真っ赤になる始末。

 

「そんなの楽勝よ!」

 

一番に動いたのは鈴だった。俺を押し倒してマウントポジションを取って剥ぎ取りにかかる。

 

「ちょ、お、落ち着けって!」

 

「これも報酬のためなの! 我慢しなさい! いいじゃない! 減るもんじゃなし!」

 

「意味が分からんし、俺の大切な何かが減るんだよぉっ!!」

 

ワーキャーと騒いでいると、突然地響きがした。

 

「さて! ここからはフリーエントリー組の参加です! 皆さん! 王子様の王冠、怪盗のセミヌード目指して頑張ってください!」

 

観客席の方を見ると、どんどんと観客達が立ち上がり、その立ち上がった観客達は皆シンデレラ姿だった。

 

「織斑君! 大人しくしなさい!」

 

「桐野君! 二人で幸せになりましょう!」

 

「せ、セミヌード・・・・・ウケ、ケケケケケケ」

 

「そいつを、よこせえぇぇぇぇっ!」

 

どんどんと増えいくシンデレラ。怖い。ホラー映画の域だ。

 

(もうダメだ! こうなったら・・・・・!)

 

「G-soul!」

 

俺はG-soulを展開。鈴を振り落して浮遊する。

 

「ちょっと瑛斗! アンタそれは―――――」

 

「反則だってか!? バカ言うんじゃねえ! 捕まえたきゃお前も展開すればいいだろ! 俺はセミヌードになる気なんて毛頭ないからなっ!」

 

鈴が悔しそうに睨んでくるのを尻目に俺は第四アリーナの外に直接つながっている入場ゲートへ突き進む。

 

そしてやっとの思いで外に飛び出し、アリーナの上空で止まる。

 

「あ、危なかった~・・・・・!」

 

荒い息を整えながら胸を撫でおろす。

 

「そういえば、あの時どうして鈴のヤツは追ってこなかったんだ?」

 

鈴の甲龍ならば追って来れないはずがない。何故なんだ?

 

ピッ

 

「ん?」

 

G-soulのウインドウに文字が表示された。

 

「IS反応あり?」

 

やはり誰かが追って来たのかと思ったがそうではなかった。

 

「距離・・・・・・八時方向、二千四百メートル?」

 

離れすぎている。明らかに学園の外から飛来してきている。

 

「・・・・・怪しいな」

 

俺はスラスターを噴かし、反応の正体が何なのか確かめに向かった。

 

 

 

 

 

「そろそろランデブーポイントだな・・・・・」

 

計算で出された接触地点に近づき、俺はビームガンを構えた。

 

「一体、何者なんだ?」

 

ギュン!

 

「!?」

 

俺の真横を何か、ISが通り過ぎた。

 

(な・・・・・!?)

 

超高速で移動しているIS。

 

「くっ! 待て!」

 

それにビームガンを向けて威嚇の為に一発撃った。

 

「・・・・・・・・・」

 

操縦者は無言のままISを停止させ、こっちを向いた。バイザーで顔は見えないが、そのISは見たことがある機体だった。

 

「サイレント・ゼフィルス・・・・・!?」

 

セシリアのブルー・ティアーズのデータを引き継ぎ、シールドビットを試験的に装備したBT二号機《サイレント・ゼフィルス》だった。カタログでは見たことがあるが、実物を見るのは初めてだ。

 

だが、どうやら訳ありのようだ。

 

「テストパイロットにしちゃあ、ちょっと常識がないんじゃないか? この先はIS学園だ。無断で横切っていいわけないぜ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「シカトかよ、おい」

 

「・・・・・・・・・」

 

「ちっ、調子狂うな。とにかく! こっから先に行きたいなら学園に連絡―――――」

 

「その必要はない」

 

バシュシュッ!

 

「!?」

 

操縦者はビットを射出し、砲門を俺に向けた。

 

「貴様にはここで退場してもらうぞ」

 

ドドドドッ!

 

ビットからビームが発射される。

 

「食らうかよっ!」

 

俺はBRFシールドを起動させ、ビームを受け止める体勢になる。

 

「・・・・・・・・・」

 

すると、操縦者はニッと笑った。そして信じられないことが起こった。

 

ドォン!

 

「ぐあぁっ!?」

 

ビームが曲がったのだ。BRFの有効圏内を避け、俺の背後にビームが直撃した。

 

(ビットの操縦技術はセシリアがトップのはずだ! それがどうして!?)

 

「ふん、他愛のない」

 

操縦者はライフルを構えた。

 

「どうやら・・・・・意地でも通りたいみたいだな」

 

俺はビームソードを一本左手に持ち、謎の操縦者と対峙した。


 
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