No.450426

IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~

ドラーグさん

夜空の下 鈴と瑛斗

2012-07-10 16:08:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1390   閲覧ユーザー数:1340

前回までのあらすじ、追悼式典から帰ってきた俺は、ロウディからスカイダイビングで学園に戻る。そこで出くわしたのは、一夏との一件で機嫌が悪いはずの鈴だった。by俺の心の声。

 

「・・・・・」

 

鈴は心なしか重たい足取りで歩いてきている。このままでは気付かれる。今のあいつは面倒だからな。ばれないようにしよう。

 

「・・・Gメモリー、セレクトモード・・・」

 

ぼそっと呟きメモリーを起動させる。

 

「・・・セレクト、シェラード・・・」

 

そしてぼそっと呟きG-soulの姿を変化させる。シェラードはステルスフィルムという特殊な素材を使った装甲が特徴で、これを起動している間はどんなセンサーにも反応せず、肉眼でとらえることもできない偵察用装備だ。ホントはこんな使い方じゃないけど、仕方ない。

 

「・・・・・はぁ」

 

トボトボと歩く鈴。その真後ろには俺がいるが、全く気付いていない。

 

「・・・・・はぁ」

 

しかし、こんな時間に一体何をしに来たんだ?時間は八時半過ぎだし、少し気になるな。俺は尾行なんて趣味じゃないが、鈴の後をつけることにした。手に持っている制服が入った鞄はなぜかステルスフィルム同様透明になっていた。スゲーなエレクリット。

 

 

スーッと少し離れてホバー移動で鈴の後をつけ、林を抜けると広いところに出た。鈴はそこに座り込むとポツリとつぶやいた。

 

「また、言えなかった・・・・・」

 

言えなかった?一体何のことだろうか?もう少し近づいてみよう。そう思い、前に進んだ瞬間、急に目の前を何かが通り過ぎた。

 

「おわっ」

 

「!!」

 

バッとこちらを鈴が振り返った。あっちからは見えてないけど、今、俺と鈴は目が合っている。くそ、ステルスフィルムめ、声も消せるようにしとけってんだ。

 

「・・・・・(ジー)」

 

「・・・・・」

 

やべ、メッチャ見てる。メッチャこっち見てる!仕方ないここは最後の手段だ!俺は右腕を動かして、シェラードの武装である、攻盾システム〈サクルース〉で近くの茂みをガサガサと動かし、言った。

 

「にゃ、にゃー・・・」

 

どうだ!秘技、猫のふり!声が消えないという欠点を逆手にとった見事な作戦!これで誤魔化せるだろう。

 

「なんだ、猫か」

 

ふぅ、危なかっ――――

 

「ってなるわけないでしょ!」

 

「ぐはぁっ!?」

 

見事俺のボディに鈴の右ハイキックがヒットした。ステルスフィルムのもう一つの欠点、『見えないんだから、攻撃なんて受けないじゃん?』っていう理屈で、絶対防御シールドが出ないこと。それの効果をもろに受けて俺は地面に倒れ伏した。その衝撃でステルスフィルムも解除される。

 

「! 瑛斗?」

 

「よ、よう・・・」

 

驚いている鈴にプルプルと震える手を挙げる。

 

「何?アンタ、ストーカーの気でもあるわけ?」

 

軽蔑のまなざしでこちらを見てくる鈴。これは一刻も早く誤解を解かなければ!

 

「違う違う。お前が元気なさそーにこんな夜中にほっつき歩いてるのを見かけたから気になってついてきただけだ」

 

「ふーん?どうでもいいけど、なんでアンタIS装備してるの?」

 

「その点については触れないでくれ」

 

ステルス機能着けて後つけてましたなんて言ったら、確実に殺される。

 

「そ、そんなことよりまた言えなかったって、なんのことだ?」

 

「うぐっ!?な、なんのことかしら?」

 

こいつ、しらばっくれてるな?やれやれ。俺はG-soulの展開を解除し、待機状態に戻す。

 

「とぼけても無駄だぞ?それに・・・」

 

俺は辺りを見渡し鈴に向き直った。

 

「誰もいない」

 

「・・・・・はぁ。分かったわ。話してあげる」

 

鈴が座ったので、俺もその隣に座る。そして鈴は話し始めた。

 

「えっとね、アタシが一夏に会ったのが小学五年生の時だった。アイツ、千冬さんが家にあんまり帰ってこないからいつもアタシのお父さんとお母さんがやってる中華料理屋でご飯食べてたの」

 

「ふぅん」

 

「初めのころはそんなに気にしてなかったんだけど、回数を重ねてく内に喋るようになってさ、なんかもう、家族と変わんないじゃないかなって思えるくらいだった。だからそういうのが中学の二年まで続いてたわ」

 

「うん」

 

「ある日突然国に帰ることになってさ、一夏ともお別れしなくちゃいけなくなったの。それで、アタシが日本を発つ前に一夏と約束したの。それが―――」

 

「毎日酢豚を―――――」

 

「いっ、言わないで!は、恥ずかしいから・・・」

 

顔を赤らめて、下を向いた鈴。なんか、いつもとイメージが違うな。

 

「それで、その約束を一夏が忘れてるのを知って、怒りのあまり殴った」

 

「・・・うん」

 

「じゃ、その『また言えなかった』ってのは謝りたかったけど言えなかった、ってことか?」

 

「・・・・・うん」

 

お、予想が当たった。

 

「昨日も、一昨日も、そのまた昨日も、謝ろうと思ったんだけど、上手く言えなくて、それになんて切り出したらいいか・・・・・」

 

「まさか、昨日も、一昨日も、そのまた昨日も、ここに来てたのか?」

 

「・・・・・・・・うん」

 

赤くなっていた顔をさらに赤くして鈴は答えた。不器用な奴だなオイ。

 

「・・・女の子はそんな簡単じゃないのよ」

 

何も言ってないのに考えてることを読まれた。スゲー洞察力。

 

「まあいいや。そんで、お前はどうしたいんだ?ご両親のやってる店で今度はお前が一夏に飯作ってやるのか?」

 

何気なく聞いたつもりだったが、まずかったらしい。鈴の顔に陰りが差した。

 

「もう、お店はやらないんだ・・・・・」

 

「ん?どういうことだ?」

 

「お父さんとお母さん、離婚、したの・・・・・」

 

「・・・っ!す、すまん」

 

大分触れてはいけないことに触れてしまった。俺は慌てて謝る。

 

「いいのいいの。気にしてないから。アタシ、お母さんについていったけど、お父さんは多分・・・、元気、だと思う・・・・・」

 

鈴は膝を抱いて小さくなった。目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

 

「大人ってさ、難しいよね・・・・・」

 

「・・・・・」

 

鈴の言葉には悲しみが滲み出ていた。どうしたらいいものか・・・。お、良いこと考えた。

 

「こんな昔話がある。むかーしむかし、あるところに一人の小さな男の子がいました」

 

「いきなりなんなのよ?」

 

「まあ聞けって。男の子にはお父さんとお母さんがいません。男の子はいつも一人ぼっちでした。そんなある日、男の子の前に一人の女の人が現れました。『一緒に来ない?』そう言われた男の子は、この人なら僕のお母さんになってくれるかもしれないと思い、女の人と一緒に地球を離れました」

 

「また大きく進出したわね」

 

「男の子は、新しいお家となる場所で、そこにいた沢山の人からISの事を教わりました」

 

「急に現代みが出てきたわ」

 

「数年経ち、男の子は立派に成長し、周りの人たちからも必要とされるような存在になりました。そんなある日、男の子が暮らしていたおうちは何者かに壊されてしまいました。崩壊するおうちから、自分を地球から連れ出してくれた女の人に逃がしてもらった男の子はまた地球に戻ってきました。また、男の子の居場所と、家族は無くなりました」

 

「・・・・・・」

 

「でも男の子は挫けません。男の子の新しい居場所はその地球にこそあったのです。男の子は今はそこで新しい友達と楽しく暮らしています。おしまい」

 

「うん、それ、アンタよね?」

 

おや?バレてたか。

 

「いつごろから気づいてた?」

 

「男の子が地球に戻ってくるところぐらいかしら?まあ、随所にツッコミどころがあったけど」

 

「ふーん、ま、何にせよ」

 

俺は寝転んで空を仰ぎ見た。

 

「俺には親はいない。親代わりだった人もいなくなっちまった。でもだから言える。家族っていうのは気持ちの持ち方だと思う。例え離婚したって、お前がお前のお父さんのことを『お父さん』と思ってるならその人はお父さんなんじゃないか?」

 

「気持ちの持ち方・・・・・」

 

「ああ。って、何俺は的外れなこと言ってんだ?!一夏にどう謝るかって話だったろ!」

 

急に言ってて恥ずかしくなってきた。ヤバいこれ俺顔赤くなってない?

 

「あ、ええ、と、だな。これはアレだ。その・・・・・」

 

「ぷっ、あはははははは!何しどろもどろしてるのよ!」

 

急に鈴が笑い出した。なんだよ、泣いたり笑ったり忙しい奴だな。

 

「そうね。気持ちね。ありがと、アンタに話したの正解だったみたい」

 

そう言って鈴は立ち上がった。

 

「おい、どこ行くんだよ?」

 

「決まってんじゃない。明日に備えてもう部屋に戻って寝るのよ」

 

ん?あ、そう言えば明日か。クラス対抗戦。第一回戦の第一試合は確か・・・・・。

 

「一夏とお前か!?」

 

俺がそう言うと鈴は二ッと笑った。

 

「絶対勝って、謝ってやるんだから!」


 
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