「しっかし、フェンリー。お前さんギンガと何があったんだ?そんなに懐かれちまって」
夕食後、フェンリーの隣でニコニコ笑うギンガを見て、思わずゲンヤが言う。
「さあな、気づいたらこうなってた」
「そうか…」
フェンリーは立ち上がり
「さて、俺はもう寝させてもらうぜ」
「ああ、お休み」
「お休みなさい、ルナ兄さん」
「おう…えっと、お休みなさい?これでいいのか?」
「ああ、それでいい」
ゲンヤは笑みを浮かべながら言う。フェンリーはその笑みの理由がわからないまま、自分に用意された部屋に向かった。
「……」
部屋に入ると、フェンリーは考え事をしていた。今自分は人間の姿をしているから、別に怖がられたりはしない。だが、もし元の姿になったら、クイントやギンガ達はどう思うのか?昔、彼はその姿を見られるだけで、人間は恐怖していた。彼女達も同じ反応をするのだろうか?
フェンリーは今この場所がとても気に入っている。戦い以外に初めて楽しい事を見つけた。初めて自分の居場所が出来た。できる事なら、この居場所を壊したくない。
「チッ…何考えてんだ…俺は」
フェンリーはそのままベットにダイブした。
「あぐ」
「あ?」
何やら声がした。フェンリーは気のせいだと思ったが
「潰れます。お願いですから退いて下さい」
「ッ!?」
フェンリーは慌ててベットから離れる。ベットの上に居たのは、とても小さな体に特徴的な犬耳?がついている妖精のようなもの。
「サイバーエルフ!?」
この場所に居る筈もない、サイバーエルフがフェンリーのベットの上に居た。
「なんだってこれがこんな所に!?」
「何を言っているのですか?私は貴方とずっと共にいましたよ?」
「あ?それはどういう……あーそういうことか」
フェンリーは理解した。そう、このサイバーエルフは彼が作られた時融合し、その生涯を共にした改造エルフであった。
「お気づきになられましたか?」
「おう…生まれたときからずっと融合してたから、お前の存在に気づかなかったぜ……で?お前がそこに居るっていうことは、融合は解けてるんだな」
「はい…あなたがレプリロイドゼロに破壊され、この世界に来た時から融合は解けていました」
「なら今まで姿を出さなかったのは何でなんだ?つーかどこに居た?」
「ポケットの中です」
「は?」
「ポケットの中です」
「いや、二度も言わなくてもいい、何でポケットの中に?」
「居心地が良かったからです」
「お前絶対変だぞ?」
フェンリーは軽くため息を吐き
「お前の名前は?」
「え?」
「お前の名前はって聞いてんだよ。一応今まで一緒に生きてきた相棒だ。今更だが、名前知っとかないとダメだろ?」
「……私はアクセラレーションエルフ。『セルシウス』です」
「セルシウスね……たいそうな名前だな。さて、俺は寝るからそこを「フェンリー」なんだよ…?」
「あなたに一つ、言わなければならない事があります……それは……」
「……!?」
翌朝
「お、フェンリー。朝から早いな」
居間に来たゲンヤは、ソファーに座っているフェンリーを見て言う。
「まあな……」
「?どうしたフェンリー、やけに元気がないな」
「朝だからじゃね?」
「なるほど、お前さんは朝が弱いのか。なるほど、なるほど」
カッカッカと笑うゲンヤを尻目に、昨夜セルシウスに言われた事を思い出す。
「フェンリー。あなたは私と融合すれば、元の姿……レプリロイドの姿に戻れることが出来ます」
「なっ!?それは本当か!!」
セルシウスは頷く。
「ただし、融合するには条件があります」
「条件?」
「はい、あなたが『真に戦いを望む時』あなたと私は融合することが出来ます」
「真に…戦いを望む時……つまり、俺の意思次第ってことか」
「そうなりますね。では、私は眠ります。なるべく起こさぬよう、お願いします」
そう言い、セルシウスは眠りにつこうとするが
「おい」
「何ですか?たった今なるべく起こさぬようと言ったはずです」
「そこ俺の寝床だ。退け」
「……枕の横で寝ても良いですか?」
「枕の横でも良いから、寝床の中心から早く退け。俺が寝れねーだろ」
「流石はフェンリー、話がわかります。それでは私は枕の横へ……」
「早く移動しろぉぉ!!」
「……」
後半寝床の話しかしていないきがするのは、気のせいだと信じたいフェンリーであった。
『あなたが『真に戦いを望む時』あなたと私は融合することが出来ます』
「(真に望む時…か。そんな時が来るのかねぇ?この世界で……)」
そう感じたフェンリー。
だが、その時は遠くない将来。やってくるのだ……
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ギンガに懐かれたフェンリー。彼はナカジマ家から、慕われる掛け替えのない存在になっていく。