No.449642

楽しく逝こうゼ?

piguzam]さん

第5話~育児放棄?

2012-07-09 01:55:38 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:14335   閲覧ユーザー数:12539

どうも。

3日前に母上様の手でキャベツと同じ運命(ちぎられる的な意味で)を辿りそぉになった、禅でございまぁす!!

…すまない、取り乱したようだ…

…あのアースラでの自己紹介を交わした日から、管理局の方々やなのは達とは会っておりません。

問題のジュエルシードは一応全部封印してあるので後はフェイトが持ち去った分を回収するだけだそうだが…

あの竜巻事件以降、フェイトの足取りは掴めずアースラも探索から次の段階へは進んで無いとクロノから聞いた。

なので、俺はあの日から今日までの間は普通に過ごしている。

一応、フェイトのマンションを訪れてはみたが、相変わらず留守……住所違うとか言うオチじゃなかろうな?…

まぁ、いないものは仕方が無いので今日もマンションから引き上げて、気分を入れ替えようと外から帰ってきてすぐにキッチンに入り、おやつ感覚でフルーツサンドイッチを作りました。

できあがったソレを冷蔵庫にブッコンで、美味しい温度になるまで冷やしておき、優雅なTEA TIMEを過ごそうってわけよ。

サンドイッチを冷やしている間の空いた時間に日課の波紋の練習をして時間を潰しておく。

この前の学校帰りに先日の海であった事件のことを考えて武器を準備していたせいで、最近は久遠を愛でるために神社に行くことも叶わず、精神的な疲れが溜まってるとです。はい。

また急に事件に巻き込まれて食材を使ってしまったら…………生きてる自信がねぇしな……母上様怖い。

と、そんなdarkなfutureにならない様、祈りながら紅茶の準備をしていると……

とおおぉぉぉるるるるるるん

 

リビングの備え付けの電話が鳴り出した。

んぬ?電話か……はてさて、だれかねぇ?

およ?この番号は確か………あっやっぱりクロノだわ……なんかあったのか?

実際、クロノは探索班と書類整理で滅茶苦茶忙しいから電話も1,2回程度しかしてこなかったんだが……

…………とりあえず…………

 

ガチャッ

 

「はぁいは~い!こちらレー○ン大統領の自宅ですがぁ、只今職探しに出かけて留守にしております。戻り次第折り返し電話しますからぁ、ピーっと鳴ったらご用件をどうぞ?」

 

ボケてみたww

 

『そんなこと言う電話センターがあるかぁ!っていうか意味が分からん!』

チッ、バレたか。

さすが『突っ込みのクロノ』(誰も言ってない)なんて二つ名がつく漢だ。

切り返しの速さもハンパじゃねえww

「三割冗談だ。んで?なんぞあったか?」

『冗談が三割しかない!?』

それが、俺クォリティ☆

 

『あぁ、もう!!話が進まないじゃないか!!』

 

「まったくだぜ」

 

やれやれ、俺も暇じゃねえんだけどなぁ。

 

『何で、さも自分も呆れてます。見たいな言い方をしているんだ!?』

 

「まぁ、いいじゃん。んで?用件は?さっさと本題にはいろうや?」

 

ボケの空気を作れるだけ作って思いっきりボケ倒してさっさと切り上げる。

ON/OFFの使い分けは大事だぜ。

 

『……ハァ、もういい。とりあえず用件なんだが、先日の事件で襲撃してきた者が判った。ゼンにもその説明をしたいから時間があればアースラに来て欲しいんだ』

 

クロノは盛大にでっかい溜息を吐いてから疲れた声で用向きを伝えてきた。

お?なんか進展があったかと思えばかなり重大な話しじゃねえか。

……あの雷を撃った奴か……とりあえず、ソイツをブッ飛ばすためにも聞きにいくか。

あのクソッタレた雷のせいでお袋にボウリングのピンの如くブッ飛ばされたんだしな……(完全な八つ当たり)

 

「わぁった。少し時間は掛かるけどそれでもいいか?まだ学校から帰って来たばっかで着替えてぇしよ」

 

それと頑張ってるクロノ達にサンドイッチを差し入れてやりてえし、包んで行きますか。

疲れたときにゃ甘いモンが一番良ーく効くし。

 

『あぁ、それは構わないよ。場所は昨日転送した公園だ…そこに来てくれたら自動でアースラに転送されるから来てくれるだけでいい』

 

自動で転送とか……アースラの技術って凄えな。

 

「あいよ。ちょうどおやつのフルーツサンドイッチを作ったところだったから、持って行くわ。話が終わってから時間がありゃTEA TIMEと洒落込もうぜ?」

 

俺は受話器を肩で挟みながら紅茶の葉を容器に閉まって片付けていく。

紅茶にお湯を入れる前でよかったぜぃ、危うくアッツアツの紅茶を一気飲みせにゃいかんところだ。

 

『それはいいな……だが、僕の舌は厳しいぞ?』

 

さっきのお返しだろうか?挑発的にいってくれんじゃん?

 

「おっけえ、おっけえ……上等だ。テメエの舌、唸らせてやんよ?」

 

さぁて、一応護身用に、武器は持って行きますか。

電話を切って、サンドイッチをバケットに詰めてから部屋に戻る。

コートかけに掛けてあった愛用のジャケットに自前の武器を仕込んで、バケット片手に俺は公園に向かった。

・・・・・・・・

そして到着!!アースラでござぃ!!

とりあえず、クロノ達はミーティングルームにいるそうなので、俺は職員さんに案内してもらって扉を潜った。

 

「ちゃーっす。お邪魔してんぜ?」

 

俺の声にクロノ達は振り返る。

なのはとユーノも先に来てた様で振り向いて手を振ってくれた。

あん?なんか、昨日はいなかった女の人もいるな。

その女の人と一緒にクロノがコッチに歩いてくる。

 

「ゼン、すまないな。わざわざ来てもらって」

 

「いやいや、こっちも暇してたからな。お招きどうも~ってなところだ」

 

ぶっちゃけ、TEA TIMEの後は予定無かったしな。

皆でワイワイしながらTEA TIMEができるならそっちの方が楽しいし。

 

「そうか。あっ後紹介しておくよ。こっちはアースラのオペレーターを担当しているエイミィだ」

 

クロノの言葉に反応して、女の人が俺に笑いかけてくる。

 

「どうも、初めまして~。自己紹介するね。私はエイミィ・リミエッタ。この戦艦、アースラの通信主任兼執務官補佐をしてます。これからよろしく♪」

 

そう言ってエイミィさんは手を差し出してきたので俺も握り返しておく。

随分と気さくな人みてえだな。

明るい感じで親しみやすそうだわ。

 

「あいあい、よろしくっす。俺は橘禅でさぁ……ゼン、と呼んでもらって結構ですんで」

 

「了~解。ゼン君ね?これからよろしく♪」

 

エイミィさんとの自己紹介が終わったので俺は茶を楽しんでたリンディさんに視線を移す。

おっ?今日は緑茶に砂糖をブッ込んでねえみてえだな?よろしい、よろしい。

まぁた、プッツンしちゃうとこだったぜwww

 

「そんで?先日の事件ん時に、あの雷ブッ放った野郎が分かったんですか?」

リンディさんが少しでもマトモな味覚になってくれる事を祈りつつ俺はとりあえず尋ねてみる。

だがその問いに答えたのはリンディさんではなく、クロノだった。

「ああ。エイミィ映像を」

クロノはテーブルに歩み寄って真剣な顔をする。

それにつられてか、なのはとユーノの顔つきも真剣になってた。

俺?俺はいつでもマイペースだぜ?

場の空気に流されねえ男ですからww(人はソレをKYという)

「はいは~い」

エイミィさんの声の後、部屋の明かりが落ち、テーブルの中心に映像が映し出された。

映し出されたのは頬が痩せこけて目の辺りが黒ずんでる、全体的に病的な印象のオバハンだった。

「あら」

「このオバハンがあの雷をブッ放した奴か?」

映像を見て、リンディさんは少し驚き、俺は表情を険しくした。

……映像越しでも判るぐらい目が病んでいやがる。

「あの……この人は?」

俺が聞きたかった事をなのはがクロノに尋ねた。

「僕らと同じミッドチルダ出身の魔導師。プレシア・テスタロッサだ」

映像を見ながらクロノが説明する。

「専門職は次元航行エネルギーの開発。偉大な大魔導師だったが、違法研究と事故によって放逐された人物だ」

「テスタロッサって……」

オバハンのファミリーネームを聞いて、なのはが呟いた。

…おいおい、まさか…

「あのフェイトという少女はおそらく」

「プレシアの娘…ね」

リンディさんがモニターを見ながら険しい表情で呟く。

なのはも、プレシアの映像を再度、見つめる。

「この人が、フェイトちゃんのお母さん…」

 

「FUCKINな冗談だぜ?こんな病的なオバハンがフェイトの母ちゃんかよ?」

 

そこに映された写真には母親の優しさなんぞ微塵も感じない…狂気に塗れた瞳が映っているだけだ。

「プレシア・テスタロッサは、違法な素材を使った実験を行い失敗。中規模次元震を起こした事で中央を追放され、それからしばらくの内に行方不明となる。………だが、この違法実験というのが少々きな臭いんだ。」

「んあ?どういうこった。そりゃ?」

 

俺はクロノに視線を向けてその先を聞き返す。

クロノは言い辛そうな顔をしていたが、覚悟を決めたのか真剣な顔で語り始めた。

「………本局に問い合わせられない今の時点では確証がないが、僕とエイミィで予想を立てたんだ…それでよければ聞いてくれるかい?」

「あぁ、聞いたことも無い組織なんぞより、クロノ個人のほうが全然信頼できるしな。聞かせてくれや」 

 

みんなも俺と同じようで無言で頷く。

 

それを見渡して一息置いてから、クロノが話を始めた。

まず、追放される原因となった大型魔力駆動炉の暴走事故について査察したのは、今の管理局の上層部の人間らしい。

その査察結果で暴走事故は、プレシア・テスタロッサが違法手段・違法エネルギーを用い、安全確認よりもプロジェクト達成を優先させたとものによるものとの報告を上げている。

だがその事件のすぐ後に、当時査察を行った今の上層部の人間が異例の昇進を遂げたらしい。

そして、納期を急がせたのはその管理局員からの命令であったとの報告もある。

……つまり無理なスケジュールを決行させた原因もそこにあるってわけだ。

…さっさと手柄を立てて昇進したいからって無理やりにスケジュールを早めさせ、それで失敗すりゃ口裏あわせて報告する。

「事故の原因はプロジェクトの主任の強行手段によるもの」と報告すりゃ、実際にスケジュールを早めたプロジェクトの主任……プレシア・テスタロッサが罪を被る事になる。

後は何食わぬ顔で功績が認められるのを待つだけで手柄が手にはいるってわけだ。

「てぇことはなんだ?このオバハンは責任を擦り付けられて、踏み台にされたってことかよ?」

 

簡単に言や、低の良いスケープゴートってやつかよ。

 

「恐らく…な」

 

「…それについてはヒデェ話だが、なんでまたジュエルシードを集めてんだ?しかも自分は出張らずフェイトにやらせてよ?」

 

そう、俺にはそこがわからねえ。

大魔導師と呼ばれるぐらいだ……少なくてもかなり強いはず。

なら、なんで自分じゃなくわざわざ娘のフェイトにやらせている?

それに………

 

「なんでこのオバハンはあん時、フェイトを攻撃しやがったんだ?…」

 

海で飛来して来たあの雷は迷うことなくフェイトに叩きつけられた。

普通、娘を攻撃するとか有り得ねえだろ……

 

「…残念だが、なんのためにジュエルシードを集めてるか、そして何故あの時フェイトを攻撃したのか…それはまだわからない…だが、魔力残滓の照会結果は間違いなくプレシア・テスタロッサだった…現時点で事件の犯人として彼女は最有力候補なんだ…」

クロノが説明を終えると部屋の明かりが付く。

とりあえず今ので説明は終わりみてえだな……

「…クロノ、ご苦労様。皆さんもとりあえず一休みしましょ?」

そう言ってリンディさんは表情を和らげて俺達に声をかけてきた。

そんじゃ、いよいよこいつの出番かね。

 

「うっし!!暗い話は終わらせておやつでも食おうや?この人数なら一人に三切れぐらいで分けられるしよォ」

俺は皆にそう言い放ってテーブルの上に置いておいたバケットを開ける。

すると俺を出迎えたのは三角形の形が美しく、パンの間から色とりどりのフルーツが顔を覗かせてるサンドウィッチ達だ。

作ってきたのは、イチゴとキュウイ、マンゴーを生クリームと一緒に挟んだオーソドックスなものばかりだがそのシンプルな色合いが互いを引き立てあいまるでジュエリーケースの中に詰め込まれた宝石のように光り輝いてる。

これぞまさにッ!!食の宝石箱やぁ~~~~~ッ!!

……すまねえ…取り乱したぜぇ…

ま、まぁとにかく仕事なんかで疲れたときは甘いものが一番ってな。

 

「え!?これゼン君がつくったの!?」

 

エイミィさんがサンドウィッチ達を見て驚いた顔をしている。

?なんぞおかしかったか?

 

「うわぁ~!すごいの!!とってもおいしそう!!」

 

なのはは目を輝かせてサンドイッチを見ている。

こらこら、ヨダレ拭かんかい、口の端から垂れてるから。

残り3人のリンディさん、クロノ、ユーノは感心したようにサンドイッチを見ている。

 

「…まさか、ここまでとはな…」

 

「すごいわねぇ…形も崩れてないし…」

 

「なのはの家の人がやっている喫茶店で出しても違和感ないと思うよ…」

 

ユーノや、店に出せるレヴェルって……嬉しいこといってくれるじゃないの?

…まぁ見た目だけ評価されてもなぁ…味が一番だろぉに…

 

「とりあえず、食ったら感想聞かせてくれ。なのはは喫茶店の娘なら評価できんだろ?」

 

俺の言葉に反応したなのはは両腕をむんっ!!って気合を入れる感じに曲げる。

 

「任せて!しっかり評価するの!」

 

うし!てめぇの舌!唸らせてやんよ!!

俺はアースラの職員さんから受け取った紅茶を皆に配る。

全員に行き渡り、そして、運命の時間が来た。

 

「いただきますッ!!……あむ!」

 

そして一口、かぶりつく。

さぁ!!どうだ!?

 

……………………

 

「お、おいしいの!?母さんの作ったケーキと同じくらい!!」

 

うぉっしゃぁぁぁぁぁあ!!!こいつはいいんじゃねぇか!?あの「翠屋」のケーキと同じくらいって評価は!?

俺自身、翠屋には行ったことはないがあそこのシュークリームは絶品だって聞くしな。

さて、評価も聞けて落ち着いたところで俺も食うかね。

そのまま皆も思い思いに感想をいってくれたが、高評価だった。

ちゃんと評価してくれんのはありがてぇぜ…

とりあえずその日は皆で楽しいTEA TIMEを過ごしてお開きになった… 

・・・・・・・・・・・・・

そしてさらに二日後、俺はまたクロノに呼び出された。

理由も言わずに呼び出されて首を傾げていたが、アースラのモニターに映された映像を見て、おれは驚愕した。

モニターには狼形態で体中に怪我をしたアルフが映っていたからだ。

 

「おい!?アルフ!!」

 

アルフの痛々しい姿を見て、俺は身を乗り出してモニターに話しかける。

すると、声が届いたのか、アルフは驚いたように辺りを見回してた。

 

『ッ!?ゼン!?アンタ大丈夫だったかい!?』

 

声は聞こえるがモニターの先に映ってるアルフの口は動いてなかった。

多分、念話ってやつの音声だろう。

 

「俺は大丈夫だ!!お前こそ、その怪我どうしたんだよ!?一体何があったんだ!?」

 

『それは…』

 

…話しづらいことなのか、アルフは言いよどんでしまった。

すると、俺の横にいるクロノもモニターに向かって声を掛ける。

 

『…割り込みをしてすまない。時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。どうも事情が深そうだ。正直に話したら、悪いようにはしない。君のことも、君の主――フェイト・テスタロッサのことも』

クロノがそう言うとアルフは5分程してから、顔を上げた。

 

「…わかった…話すよ。……全部」

 

どうやら訳を話してくれるみてぇだな。

アルフの言葉に俺がほっとしていると、続けてアルフが声を上げる。

「だけど約束して、フェイトを助けるって……あの子は何も悪くないんだよ……」

そうアルフが少し泣きそうな声で話す。

…一体お前とフェイトに何があったんだよ?

『約束する』

クロノがそう言うと、アルフはゆっくりと今回の事件の真相を語り始めた。

……フェイトがジュエルシードを集めてる理由……そのヘヴィな理由を……

『フェイトの母親――プレシア・テスタロッサが全ての始まりなんだ…』

プレシア・テスタロッサが何らかの理由で《ジュエル・シード》を求めていること

フェイトが母親に命令され、その手伝いをしていること

事あるごとに数が少ない、遅れていると鞭でフェイトを『躾』ていると……

それを聞いて俺は心底、ムカッ腹がたった。

実の娘に暴力を振るうクソババアに対しての怒りがふつふつと湧き上がってくる。

だが、俺はなるべく怒りを静めて、冷静にクロノに問いかける。

 

「…どうすんだ?クロノ…」

 

クロノもプレシアのひでえ行いに腹が立ってるのか、モニターを見つめる目は厳しい。

 

「……プレシア・テスタロッサを捕縛する。先日の事件で管理局員を攻撃した点だけでも逮捕の理由にはお釣りがくる……だから僕達は艦長の命があり次第プレシアの逮捕に任務を変更する…君はどうする?高町なのは?」

 

クロノはモニターの向こうにいるなのはにそう言い、答えを待つ。

……なのはは少しだけ黙った後、ゆっくりと話し始めた。

『……私はフェイトちゃんを助けたい!アルフさんの想いと、それから私の意思。フェイトちゃんの悲しい顔は、何だか私も悲しいから。だから、その悲しい思いから救いたい。……それに、友達になりたいって返事もまだ聞いてないし』

『わかった。こちらとしても、君の魔力を使わせてもらえるのはありがたい。……正直な話、僕達だけではフェイト・テスタロッサとプレシア・テスタロッサの相手をするのは厳しいからね。だから、フェイト・テスタロッサについては、なのはに任せるよ。アルフ、それでいいか?』

『ああ。……なのは、だったね。頼めた義理じゃないけど……だけど、お願い。……フェイトを助けて』

『うん。大丈夫、任せて!』

アルフの言葉になのはは元気よく答えていた。

そして、アルフはモニター越しの俺にも声を掛けてくる。

 

『ゼン……あんたにも頼むよ…あの子を……フェイトを助けておくれよ……あの子は今本当に一人ぼっちなんだよ』

………申し訳なさそうに言いやがって……

ダチなんだから遠慮なく頼ってくれりゃいいのによ…全く。

 

「…まかせとけ!!必ず助けてやらぁ!!そんで、また3人で美味い飯食おうや。腕によりをかけるからよ!!」

 

『…ぐすっ……うん……』

 

アルフは涙ぐんだ声で返事をしてくれた。

 

「ゼン、君も手伝ってくれるのか?」

 

クロノは意外そうな声で聞いてくる。

まぁ、普通なら関わろうとはしねえからな。

「あぁ、ダチにあそこまで頼まれたんだ…やるっきゃねえだろ?」

 

「…そうか…わかった…これから暫く、よろしく頼むよ。艦長には僕から伝えておく」

 

「あぁ、任せてくれや………必ず、役に立って魅せるぜ?」

 

クロノは部屋から出て行き、部屋に静けさが戻っていくが……既に俺は2日前に見たババアをどうブン殴るかで頭が一杯になってる。

考えただけでマジにハラワタがグツグツ煮えくり返ってきやがるぜ。

……プレシア・テスタロッサだったか?……俺のダチ泣かせやがって……必ずぼっこぼこにしてやんよ!!

俺は覚悟とヤル事を心に刻み込んで、モニター室から出て行く。

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

次の日の朝、俺となのは、ユーノにアルフは海鳴公園にいた。

なのははここでフェイトとケリをつけるらしい。

なのはがフェイトと一対一でぶつかりたいと言ったので俺は手はださねえつもりだ。

公園から見える空はまだ暗さが残っていて、朝と呼ぶにはまだ早い時間。

周囲は静かだけど、逆に嵐の前の静けさにも感じられる。

こういうのは大体、デカイことが起こる前の予兆だ。

そんな中なのはは目を瞑り、言葉を紡ぐ。

「ここならいいね……出てきてフェイトちゃん」

 周囲に声が響き、風がざわめく。

ユーノやアルフが辺りを見回す中、なのはは静かに待っている。

そして……

なのははふと後ろを振り向いた。

それと同時に、

「サイスフォーム」

何度か聞いた、あのデバイスの声が響く。

聞こえた方に顔を向けると、街灯の上にフェイトが立っていた。

いつものバリアジャケットに、鎌の形のデバイスを手に持って。

そしてなのはから視線を外したフェイトは俺と目が合って驚いている。

 

「ゼン………」

 

「よぉ……安心しな。俺は手をださねぇよ……思いっきり、ぶつかってきな……」

 

「…うん。ありがとう…」

 

フェイトは只なのはを見つめるが、アルフが必死に訴えてくる。

 

「フェイト、もうやめよう。あんな女の言う事もう聞いちゃだめだよ。フェイト、このままじゃ不幸になるばっかりじゃないか。だからフェイト!」

アルフの必死の願いだったけど、だけどフェイトは静かに首を横に振り、

「だけど、それでも私はあの人の娘だから」

 はっきりとした拒絶、否定。

なのはと同じ、誰に言われたでもない、自分で決めた迷う事の無い意思を言う。

これが二人の意思のぶつかり合いなら、俺の出る幕じゃねぇ…当人達が決めることだ。

なのははバリアジャケットを展開し、手にレイジングハートを持つ。

「ただ捨てればいいって訳じゃないよね。逃げればいいって訳じゃもっとない。きっかけはきっとジュエルシード、だから賭けよう。お互いが持ってる全てのジュエルシード」

なのはの言葉にジュエルシードが周囲に浮かび、それに答えるかのようにフェイトの周囲にもそれらが浮かぶ。

「それからだよ。全部それから」

二人は静かに、互いにデバイスを構える。

なのはは両手でレイジングハートを構え、フェイトも下段にバルディッシュを構える。

「私達の全てはまだ始まってもいない。だから本当の自分を始めるために、始めよう。最初で最後の本気の勝負!」

互いの思いをぶつけるための、言葉通りの本気の戦い。

周囲に浮かんだジュエルシードが、二人のデバイスの中に収まる。

それを合図として、二人の最後になると思う戦いが始まった。

公園の上空で、激しくぶつかり合う二人の魔導師。

[Photon Lancer]

フェイトの前に複数の金色の魔力弾が現れる。

[Divine Shooter]

なのはも、負けじと複数の桜色の魔力弾を出す。

「ファイア!!」

「シュート!!」

金色の魔力弾と桜色の魔力弾が、同時に発射される。

なのはは、上下左右に飛んで金色の魔力弾を避け、フェイトは、追跡してくる桜色の魔力弾をシールドで防ぐ。

だが、次のアクションはなのはの方が早かった。

「!」

フェイトが気付いた時には、なのははもう次の攻撃体勢に入っていた。

「シュート!!」

再び桜色の魔力弾を、フェイトに向かって放つ。

[Scythe Form]

バルディッシュを鎌の形に変形させ、自身に迫る桜色の魔力弾を切り裂く。

「(フェイトちゃん…やっぱり強い!)」

振り下ろされるバルディッシュを避けながら、なのはは思う。

「(でも…負けられない!)」

距離を取って、再び桜色の魔力弾を放つ。

「(フェイトちゃんの為にも…私を信じてくれてるアルフさんの想いに応える為にも…)」

揺るがない決意を胸に、なのははレイジングハートを強く握り締めた。

「(絶対に負けない!!)」

・・・・・

「(最初は、ただ魔力が強いだけの素人だったのに…)」

フェイトは自身に迫る桜色の魔力弾を、バルディッシュで切り裂く。

「(…強い!)」

フェイトもバルディッシュを強く握り締める。

「(でも…負けられない!)」

フェイトは空中で静止した。

「(母さんの為にも…絶対に負けられない!!)」

両手でバルディッシュを掴んで、前に構える。

すると、フェイトの足下に巨大な金色の魔法陣が展開された。

「(私がここで負けたら、母さんを助けてあげられなくなる。だから、私は、負けられないんだ!!)」

愛する母親を一途に思い、覚悟を決めたフェイトはバルディッシュに魔力を溜める。

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

上空の戦いを見てるとフェイトの空気が変わったように感じた。

なんつうか、こう…必殺技をだす前兆って感じだ。

「……あん?フェイトは何かデカイのやらかすつもりか?」

ユーノ達と、地上で観戦していた俺は目を細めてフェイトを見詰める。

すると、飛んでいるフェイトの周りに金色の光が帯電していく。

「マ、マズイ!フェイトは本気であの子を…なのはを潰す気だ!」

フェイトが何をするのかわかったのか、俺の横でアルフが焦った声で言う。

確か前に聞いた話じゃ精神リンクとかってので繋がってるんだっけか?

「ほぉ…んじゃ…アレがフェイトの切り札ってぇわけだ…」

焦るアルフの隣で、俺は冷静に言葉を返す。

空中にいるフェイトの周囲に複数の……いや、無数の魔力弾が形成されて佇む。

それを見たなのはがレイジングハートを構えようとした時……

「あっ!!」

なのはの両手両足を、金色の魔法陣が拘束した。

「ライトニングバインド」

フェイトはなのはを見詰めながら小さく呟いた。

……ありゃ確か、拘束魔法とかいうのだっけか?

「なのは!今サポートを!」

それを見たユーノが魔法陣を展開しようとしている。

やれやれ……

「水差すんじゃねぇ、ユーノ」

 

俺がそれを許すとでも?

俺は上空を見たままユーノの目の前に拳を構えた『クレイジーダイヤモンド』を出現させる。

真正面から『クレイジーダイヤモンド』に睨まれたユーノが驚いたせいか、足元に出ていた魔法陣が消えていった。

「ッ!?だけど!あのままじゃなのはが危ない!ゼン!!君は見過ごすのか!?」

「そ…そうだよゼン…フェイトのアレは本当にマズイんだよ!?なんとかして止めなきゃ……」

ユーノは俺に掴みかかりそうな勢いで俺に話しかけてくる。

一方のアルフも戸惑いながらもちゃんとやめさせるように言ってきた。

どっちも二人を心配してるからこそだろうが……アルフもユーノもわかっちゃぁいねぇなぁ…

俺は空中から二人に視線を移して『クレイジーダイヤモンド』と一緒に睨み付ける。

「これは2人の決闘だろぉが…そいつを邪魔する権利はあの二人以外にゃ誰にもねぇ…あいつらは真剣にぶつかり合ってんだからな…それを邪魔するってんなら……俺が相手になんぜ!?」

俺は今までに無く言葉に凄みを加えて二人に語る。

アルフとユーノは何も言い返せず、視線を戻し、黙って二人の様子を見守った。

「(ゼン君…ありがとう)」

三人の様子を見ていたなのはは、心の中でゼンに礼を言った。

「アルカス、クルタス、エイギアス…」

その間にもフェイトは、呪文を唱え続けていた。

「疾風なりし天神よ、今導きの元に撃ちかかれ。バリエル・ザリエル・ブラウゼル」

呪文を唱え終え、目を開く。

「フォトンランサー・ファランクスシフト」

手を空に掲げ、バインドで拘束されてるなのはを睨み、

「打ち砕け!ファイア!!」

手をなのはに向けて振り下ろしたのを合図に、無数の槍のような形の魔力弾がなのはに襲い掛かかっていく。

無数の嵐のような魔力弾はなのはに降り注ぎ、爆発する。

「なのは!」

「フェイト!」

「………」

ユーノとアルフは叫んだが、俺は黙って見つめてる。

やがて嵐のような魔力弾を撃ち終え、辺りに静けさが戻る。

しかしフェイトは残った魔力を集めて、魔力弾を作り、油断無く構えている。

…なのはのいた所には煙が立ち込め、様子がわからない状態だ。

フェイトは魔力弾を片手に、立ち込める煙を見つめている。

………やがて煙が晴れて視界が戻ってきた。

「撃ち終わると、バインドってのも解けちゃうんだね」

煙の中から、服は所々破けちゃいるがほぼ無傷のなのはが姿を現した。

恐らくはシールドを張って、あの魔力弾の雨を防ぎきったのだろう…けど…

「オイオイ…」

 

あの嵐みてえな弾膜を全弾防ぎきったのかよ?

流石の俺も、この時は驚きを隠せず少し顔を引きつらせちまったい。

パネェッス、なのはさん。

噴煙の中から聞こえてきたのは、その目に不屈の心を宿した少女。

なのはの砲撃魔法を辛うじて受けきったフェイトに

お返しと言わんばかりに、バインドで拘束しやがった。

「今度は…こっちの番だよ」

 

そう言って、なのはは上空へと飛翔する。

そして巨大な魔法陣を展開させ、そこに膨大な量の魔力を収束させていく。

周囲から集められた魔力は巨大な光の塊となり、なのははレイジングハートを突き出すように構える。

…え?あれ撃つの?…どう考えてもOVER KILLな代物ですよね?それ?

「受けてみて…ディバインバスターのバリエーション!」

巨大な光の塊の前方にも巨大な魔法陣を展開する。

『Starlight Breaker』

桜色の魔力がなのはの前に集まり、集束され、巨大な桜色の魔力弾が生成された。

……つうか、馬鹿デカすぎねえか?

「これが私の…………全力全壊!」

 

いやいやいやいやッ!!?全力全壊って!?

アンタ、本気でソレを撃つのッ!?

ちょっ!?まっ……

俺の想いは届かず、なのは様は無常にもレイジングハートを振り上げた。

『―――――スタァァァライト・ブレイカァァァァァ!!!!!』

なのはがレイジングハートを振り下ろすと、巨大な桜色の閃光がフェイトに向かって放たれた。

「はぁ!!」

フェイトは、片手に持ってる魔力弾を桜色の閃光目掛けて放つが…フェイトの魔力弾は、桜色の閃光に掻き消される

「!!」

驚いたフェイトだが、すぐにシールドを張って防御をとる……

だが、シールドは桜色の閃光の前に簡単に破れてしまう。

そのままフェイトは、成す術もなく閃光の中に飲み込まれた。

……生きてんのか?あれ?……もしかして、決闘止めた方が良かったかも?……

巨大な砲撃に飲まれていくフェイトを見ながら俺は冷や汗を流す。

「……なんつーバカ魔力!?」

「……あれか、スターライトブレイカーってのは、“星を軽くぶっ壊す”って意味なのか?おい?」

「……否定できないのが怖いね」

俺の呟きにユーノはなのはの放った収束魔法に冷や汗を流しながら、そう呟きかえす。

……そこは否定してほしかったぜぇ…

…あんな『星?粉微塵にしてやんよ(笑)』砲撃なんぞ喰らった日にゃ本気で人生終わっちまうな…

……今度からなるべくなのはを怒らせないよう心に誓った俺だった。

やがて閃光が収まり、二人の姿が見えてきた。

「なのは!」

「フェイト!!」

なのはは、空中で息を切らし、フェイトはバルディッシュを手放して海に落ちていく。

ってヤベェ!?

俺は波紋を練り上げて、持ってきた『トランプ』に波紋を纏わせる。

それを一枚投げ、空中に足場を作って、バルディッシュを掴み、落ちてきたフェイトを受け止めた。

……随分軽いけどちゃんと飯、食って……ませんね。はい。

キャロリーメイトを大量に買い込むフェイトを思い出していると、驚いた顔のフェイトと目が合う。

まぁ、抱えてるから当たり前ですな。

「……?…ッ!?ゼ、ゼン…///」

 

俺に抱えられてることに気づくと、フェイトの頬に朱が差してくる。

 

「ヨォ…こりゃなのはの勝ちだな」

「…そう…だね」

だが、俺が苦笑いで敗北したと言うと、さっきまで赤かったフェイトの表情が暗くなっちまった。

…そんな表情はみたくねえんだがな…

「…なぁ、フェイト」

俺はフェイトに声をかける。

フェイトは、ゆっくりとこっちに顔を向けてくれた…

「お前は最後まで諦めずに戦ったんだ。恥じる事なんざなんにもねぇよ……凄えカッコよかったぜ?」

そう言って俺は笑いかける。

これは諦めずに戦っているフェイトを見て本気で思っていたことだ。

「……ゼン……本当?…」

 

「あぁ、もちよ!!すげえカッコよかった!!」

 

「…ありがとう…ぐすっ…」

俺が思ったことをぶつけると、フェイトの目に涙が浮かんできた。

今の言葉が嬉しかったみてえで、フェイトは泣きながら微笑んでる。

フェイトの目元を指で拭ってやり、俺達は二人で笑いあう。

「あんた…ぐすっ…本当にいい男だねぇ…ゼン…」

何故か俺の隣にいるアルフも泣いているんだが……なんつうか、お前ら涙腺弱すぎじゃね?

「何でアルフまで泣いてんだよ」

『Put out』

そんな光景を見て笑っているとバルディッシュからジュエルシードが出てきた。

俺は一度、アルフにフェイトを渡してなのは達を探す。

これを持てるのは勝者のなのはだけだからだ。

ちょうど、なのはもユーノに肩を借りてコッチに飛んでくる最中だったので俺は二人を待つ。

 

『Put out』

 

そして、傍についた時にレイジングハートも一度ジュエルシードを出す。

九つのジュエルシードが俺達を中心に浮いている。

なのはは一度フェイトに視線を向ける。

フェイトも意図がわかったようでなのはに頷くと、ジュエルシードはレイジングハートに寄っていく。

後はクロノ達にジュエルシードを渡せば、海鳴に危険物は無くなるわけだ…

…これで、やっとこの事件も終わる…となのはとユーノは浮かれた表情を見せていた…

だが俺はいきなり背筋が震え、直感的に空を見上げた。

すると、紫色の雷がフェイトの上空から俺達に向かって放たれてくる!!

皆は張り詰めた気が抜けてるせいか、反応できていない。

「ッ!?くそッ!!『回天波紋疾走(スピニングオーバードライブ)』!!!」

 

俺はギリギリのタイミングで『回天波紋疾走(スピニングオーバードライブ)』を纏わせたトランプ数枚を楯状にして雷を受け流す。

 

バリバリバリィィィィィィッ!!

 

回天波紋疾走(スピニングオーバードライブ)』の円回転にブチ当たった雷は明後日の方向に流れてくれた。

何とか直撃は免れたが他の皆はッ!?

 

「ッ!?」

 

「うわあッ!?」

 

「にゃッ!?な、なにッ!?」

 

「な、なのはッ!?大丈夫ッ!?」

 

「う、うん。大丈夫だけど…ッ!?ジュエルシードがッ!?」

 

皆もなんとか無事だったが……そこにあった九つのジュエルシードは綺麗さっぱりなくなっていた。

 

「フザケテンジャネェぞおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

クソッ!!自分の娘よりクソッタレな宝石を優先しやがって!!!

雲の歪みに向かって、俺は怒りの叫び声を上げたが、俺の叫びは辺りに空しく響くだけだった……

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一方アースラでは、プレシアの居場所を突き止めようと、今の空間跳躍魔法の追跡を行っていた。

そして遂にエイミィがプレシアの座標を割り出し、リンディに報告する。

その報告を受けたリンディは立ち上がり、アースラに号令を発する。

「武装局員、転送ポードから出動!任務は、プレシア・テスタロッサの身柄確保!」

「了解しました!!!」

物語は終焉へ向かう………………


 
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