山田先生と織斑先生、二人の教員に連れられ、これから約2年半の学園生活となる最初の教室へと向かう。
廊下にはまだ数人の生徒が各々の話題でコソコソ話をしていたりしていた。
「何をしている!SHR(ショートホームルーム)はとっくに始まっている筈だ!さっさと教室に戻れ!」
「は~い」
織斑先生の一喝でそそくさと教室に退散していく生徒達。
「まったく、この類のやつらは何時まで経っても消えないな」
「ま、まぁ、そうですね・・・あ、つきました。じゃあちょっと待ってて下さいね」
そのまま山田先生は教室に入っていった。
残された僕と織斑先生。
「・・・・・雪原(すすぎはら)」
「はい・・・」
「覚悟は出来ているんだろうな?」
「はい。この学園の門を通ってから、もう後には戻らないと決めました」
「・・・ならいい」
扉一つ先では・・・
「は~い、では今からSHR(ショートホームルーム)を始めます。今日は何と転入性を紹介します」
一瞬にして教室が騒がしくなる。
「転入生って誰?」
「もしかしてまた専用機持ち?」
「あぁ、ますます織斑君に近付き難くなっちゃうかも」
などなど。その中には、
「まさか、まだいるのか。まったく、どうして一夏を盗ろうとする奴らがこんなにも・・・」
「一体誰なんですの?こんな時期に転入生だなんて」
「どうしよう・・・もし一夏がその子を気に入っちゃったりしたら・・・」
「私の嫁を盗ろうとする奴がまた増えるのか。しかし一体何奴だ」
そこへ、
「喧しいぞ、バカどもが!転入生ごときで一々騒ぐな!」
一瞬にして静まる教室。
「お、織斑先生。流石にそれは無理があるのでは・・・」
「フン・・・入って来い」
生徒の関心は当然ドア越しに入ってくる人物にある。どんな人物なのか、容姿体系、その他諸々。
だが入ってきた人物は彼等の先入観の一つを見事に裏切った。そこから教壇のところまで進んできたのは女子ではなく男子、しかも一夏に勝るとも劣らないイケメンだった。
「今日から皆さんと一緒に勉強します、雪原龍君です。じゃあ自己紹介をお願いします」
「あぁ・・・え~っと、雪原龍です。ん~・・・暫くは皆さまに迷惑もかけるかもしれませんが、宜しくお願いします」
頬を人差し指で2、3回掻きながら簡単に自己紹介をした。
再びざわめきが。
「嘘、もしかして二人目の男子?」
「一夏君だけじゃなかったの?」
等々。
「静かにしろ!皆の疑問は尤もだ。だが、事前に調査は済ませてある。雪原は本物の男子だ」
それを聞いた瞬間、最前列の真ん中、つまり教壇の目の前にいる生徒が立ちあがった。見た目ですぐ分かった。織斑一夏その人だった。
「こちらこそ宜しく」
そういうと手を出してきた。僕も手を出してお互い握手した。
その光景が女子にどう映ったのか、再びキャ~キャ~と黄色い声。
「カッコいい!」
「ねぇ写メ撮ろうよ」
静かにして等というのは行っても無駄だという事が経験で分かっているのだがもう少し静かになってくれないものだろうか。
「好い加減にしろ!まったく何時の間に転入生1人でここまで収拾がつき難くなったのだこのクラスは」
「ま、まぁまぁ。織斑先生」
「山田先生も山田先生だ。少しは生徒の躾を徹底してもらいたい!」
「はい~・・・以後気をつけます・・・」
急に小さくなってしまった山田副担任。ちょっと気の毒。
「まぁいい。その気持ちも全く分からんでもない。雪原、お前の席は中央列の最後尾だ」
「はい」
「では早速だが1時間目のISの実践演習を行う。各自準備をしてアリーナに集合だ。織斑、雪原を更衣室まで案内するように」
「分かったよ千冬姉・・・織斑先生」
出席簿が織斑君の頭すれすれの所まで来ていた。ギリギリセーフの様らしい。
「・・・次はないぞ」
「・・・はい」
「では各自準備に移れ。遅刻者はグラウンド100周だ」
「ひゃ、100周って・・・」
「以上!」
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