No.449333

真恋姫†夢想 弓史に一生 第一章 第十一話 天の御使いの役割

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

前回の十話では、この小説では四人目に当たるオリキャラの登場ですね。

今までに出てこない性格なので、書くのが大変だったのですが、皆さんいかがでしょうかね・・・?

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2012-07-08 20:39:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3842   閲覧ユーザー数:3413

~聖side~

 

 

この地で県令を務めて早半年がたった頃。村の中で一つの事件が起こった。

 

というのも、昨年は凶作により、村に食料の備蓄が少なかった。その為、後一月程で収穫になろうかというところで窮を要してしまい、一日一食という生活を過ごさなければ、農民の皆は生きていけなかった。

 

この事態に不満を持ったある一部の人達が、この村の豪族の家を襲った。

 

この騒動は、新撰組がすぐに出動し、大きな被害を生むことは無かったが、民たちの中には、そういう不満を持つ者がいることが浮き彫りになって、正直悲しかった。

 

 

ここにいる人達の中には、俺のことを…天の御使いのことを信じて、故郷を捨ててきてくれた人達がいる。俺は、その人達の為にも救ってやらなければならない…。でも、俺が何とかしてくれるという甘い考えに、これ以上彼らを浸からせておくのは危険だと思う。

 

 

俺はあくまで一般人だ。

 

俺一人が存在すれば、この世は平和になるなんてことがあるはずはない。

 

あくまで今は、神輿のような天の御使いという名を背負っているだけなのだ。

 

この世で皆が手に手を取って笑って暮らせる。そんな世界にするためには彼らの、民たちの力が必要なのである。そして、民たちが進むべき道を示してやる。それが上に立つもの…王の使命なのではないだろうか…。

 

 

事件から数日後。

 

俺は芽衣と奏を連れて、村の広場に来ていた。

 

そこには、既に村中の人達が集まっていて、楽しそうに談笑している人、露店を出している人、何かあったのかと不安になっている人など様々だ。

 

「聖様。今日は、どういった御用で、このように皆さんを集めたのですか~??」

 

「そうだよ、お頭…。あたいたちにも詳しいことは話さず、ただ、『皆を広場に集めてくれ。この村の人全員だ。』って言われたところで、意味がわかんないぜ…。」

 

「芽衣、奏。実は、二人にもしっかりと聞いて欲しかったんだ。 その為に皆を集めた。 …さて、そろそろ頃合かな…じゃあ行ってくるよ!!」

 

そう言って、俺は広場にある少し高くなったところに行った。

 

皆の視線が俺に集まる。

 

なんだか、さらし者にされたみたいで恥ずかしくなったが、気持ちを切り替えて皆に向き直った。

 

「皆、今日は集まってもらって悪いね…。 村長さんも、多忙な中すいませんでした…。」

 

「大丈夫ですじゃ…。で、今回集まったのは何でですかな?」

 

「今から説明します。お集まりの皆さん!! この前の事件は知っていますよね?」

 

広場に居た人たちの顔に、緊張が走る。

 

一人の男が、皆を代表して答えた。

 

「あぁ、知っているぜ。でも、だからどうした!? 未然に防ぐために俺たちを討伐にでも来たのか!?」

 

その問いの答えに、皆が固唾を呑んで見守る。

 

「いやっ、今回はそんなことを言いにきたわけじゃないんだ。」

 

その言葉を聞き、民たちの中に安堵の気色が窺える。

 

「今回の事件は上に立つものの責任。皆のことを考え、もっと対処する方法があっただろうに対処し切れなかった俺の見通しの甘さが生み出したものだ…。 皆本当にすまなかった。」

 

頭を下げ、皆に謝る。その姿に、民の間から動揺がおこる。

 

「今回ここに来たのは、皆に良く知っていてもらいたいことがあるからだ。まず、一つ言う。今皆に話しかけている徳種聖という男は、世間では天の御使いと言われ、皆を守ってくれると思われているが…それは嘘だ!! 徳種聖という男は、皆と同じ一人の人間でしかありはしない!!」

 

広場にいた皆から、大きなどよめきが聞こえる。中には、自身の将来を案じ、泣き出すものもいた。

 

「そう、俺は一人の人間でしかないのだ!! しかし、皆勘違いしないで欲しい。 今までの歴史を振り返って、王として君臨してきた人物は果たしてなんだったのか。 そう!!紛れも無い人間ではないか!! では、その人達は何が違ったのか!! それは、大きな志を持っていた!! そしてそれを皆に説き、皆の力を集めて平和な世としていた!!  …今の世はどうだ!? この世を治めている漢王朝は、すでに宦官どもによって食い荒らされ、朝廷はボロボロ、現皇帝の劉宏様だって床に臥していると聞く!! …どうだろう、皆。朝廷のこんな姿を聞けば、自分の身がいかに危険であるか分かるだろう。そして同時に、恐れるだろう。先の未来を思って不安だろう…。 そして、不安に押しつぶされそうだから、天の御使いという名にすがり、救済を求めたのだろう。」

 

そこにいた皆は、自分たちの状況を理解し、そして更に続く言葉を待った。

 

「甘ったれんな!!!」

 

「!!!」

 

「願いってのは神や仏が叶えてくれるもんじゃない!! 自分の力で手に入れるもんだ!! でも、皆はその方法を知らない…。手に入れるだけの力があるのに…だ。 では、何故か…。 それは、皆には覚悟が足りないのだ。  そこでだ、皆聞いて欲しい。 俺は平和な世を目指したい。俺の理想は皆が手に手を取って平和で安全に暮らせる国にすることだ。 そうすれば、皆の願いを叶えることができる!! 勿論、皆が飢餓に苦しむことは無い。 皆が住むところに苦労することも無い!! 皆が争うことも無い!! どうだ!?皆!! そんな国を作りたくはないか!?」

 

「「「「作りたい!!!」」」」

 

「そうか、皆の気持ちは良く分かった。だが、先ほども言ったとおり、俺は一人間であり、全てを一人で行えるほど万能で優秀な人間ではない。…どうだろう、皆…俺に手を貸してはくれないだろうか!? 確かに俺は、天の御使いではないが、天の国と言われるところの知識だけは持ち合わせている。故に、皆を導くことは出来る。 皆に力の使い方を教えることが出来る!! その手でその足で、一歩ずつ進み、掴み取ろうじゃないか!! さぁ諸君らに問う!! 俺と一緒に、新しい世を見ないか!! 平和で笑って暮らせる世にしないか!!」

 

「「「「応っ!!!」」」」

 

「では諸君、覚悟を決めよ!! 己が手を見つめ、何ができるか考えよ!! 俺は、皆には大きな力があると分かっている!! その力の使い方、俺の下に聞きに来い!! そして、自分たちの足で立て!! 誰かにおんぶに抱っこなんて甘えるな!! 自分の足で、一歩ずつ着実に進め!! 平和な世を手に入れるための道を!! 俺はその担い手になってやる!! 天の知識を使い、皆をその先に導いてやる!! …さぁ立つんだ諸君!! 俺と一緒に天下太平を目指そうじゃないか!!」

 

「「「「「「うぉぉぉおおおおおお!!!!!!!」」」」」」

 

 

地鳴りのような大歓声が沸く。

 

皆の顔には希望に満ちた、決意ある顔が窺える。

 

この演説は、意味があったと俺は心の中で思った。

 

しかし…なんでこんなに演説が上手くなったんだろう…。確か、人前に出るのも嫌なほどの上がり症だった筈なんだが…。

 

そう思いながらも、鳴り止まない歓声を、ただただ聞き続けることが嬉しくて仕方ない俺だった…。

 

 

~芽衣&奏side~

 

 

「何を仰っているんですか…聖様…。」

 

「そんな事言ったら皆に動揺が…ってもう遅いか…。」

 

 

しょうがなく、暴徒と化しそうな人達を、抑えに行こうとするが、演説は続いていた。

 

 

「「…。」」

 

「「???」」

 

「「!!!」」

 

「…あれは…聖様…なの?」

 

「すっ…凄い…。武人のあたいが…怖れを…抱くとは…。」

 

「えっ!? まだ続くの!? しかも…重圧が…さらに大きく…。」

 

「更に…増しただと…これ以上は…もう…耐えられない!!」

 

「更に…もう一段階…増して…。」

 

「はぁ~…なんだか…ふわふわしてきた…。」

 

「「なんか…気持ち…良く…。」」

 

「「女の…部分を…刺激されて…。」」

 

「「もう…駄目…。っぁ~~~~~~~~!!!」」

 

「「はぁ…はぁ…はぁ…。」」

 

お互いにお互いを見やると、なんとも恍惚とした表情をしている…。

 

「芽衣よ…。あたいは、これほどまで凄い演説を聞いたことがないのだがねぇ…。」

 

「私もです~…。はぁ~~~…。 まさか、こんな特技をお持ちだなんて…。」

 

「あたいは、心底凄い人に仕えたもんだと思うよ…。」

 

「私も同感です…。聖様はああ言ってましたが、本当に、天の御使いさん何じゃないでしょうかね~…。」

 

「それなら納得できそうだな…。」

 

 

こんな会話をしている二人の下に、渦中の男はやってきた。

 

「ちょ!! 二人ともどうした?? なにがあったんだ??」

 

「な~に…芽衣と二人でお頭の演説のことを話していただけだよ…。そうだよな?芽衣。」

 

「はい~…。聖様の演説は素晴らしかったです~!!」

 

「ただ、どうも素晴らしすぎて、私たちの腰を砕いちまってね…。」

 

「…立つに立てない状態なわけです~…。」

 

「そりゃまた大変な…。疲れちゃったのかな?? しょうがない…。どうやら責任は俺にあるみたいだしな…。二人とも運んでいくってことで言いか??」

 

「「そうしてくれると助かるよ(助かります~)…。 ただ…。」」

 

「ただ??」

 

「先に…厠に行きたいんだが…。」

 

「あっ!! 奏…私も…。」

 

二人は、覚束ない足取りで厠へと向かっていった。

 

聖は、「俺何かしたかな…。」と洩らしていたと言う。

 

こうして、今日一日は幕を閉じた。

 

その日から、村の皆の目の輝きが変わり、何事にも積極的に行動するようになった。

 

少々危ない気もするが、上がしっかりと手綱を握っていれば問題はないだろう。

 

それに、この人達が、我等が主を裏切るわけがない…。そういう安心感を感じさせる表情だった。

 

世間では、この村の治安の良さに、「指導者が良いと国は育つという。この国もいずれそうなるのかな」と言ってるものが居たとか…。まぁ、指導者が素晴らしいのは当たり前ですね。

 

 

この話を我等が主にしたところ、

「ついにジオン帝国の時代か!? じゃあ準備しとかなきゃ…。『ジークジオン!!!』」

 

と、意味の分からない発言をしていたが、またいつものお(巫山戯|ふざけ)と解釈し、気にしないようにした。

 

ともあれ、庶民と県令という差を埋めるような、そんな効果のあったこの演説は、後世にも語り継がれたとか…。

 

 

「それにしても…ねぇ、芽衣。」

 

「ポー…。( ///)」

 

「お~い!! め~い~…。駄目だ反応がない…。」

 

「ただの屍じゃないですよ!!」

 

「…何の話だい…??」

 

「聖様~…へへへっ…。」

 

「あぁあぁ、だらしない顔しちゃって…でも、芽衣の気持ちも分かるけどねぇ。 あの時のお頭は…格好良過ぎだよ…。卑怯だよな~。」

 

「ですよねぇ~…。」

 

「そういえば、芽衣聞いたかい??」

 

「何をですか~??」

 

「最近、お頭が村の通りを歩いてると、あちらこちらから黄色い声が聞こえたり、侍女たちも、お世話の順番を争ってるとか…。」

 

「やっと、聖様の魅力が分かったきたんですかね~…。 まぁ、その点は嬉しいですけど、聖様の周りに女が増えるのを良しとは出来ませんね~…。」

 

「今以上の警戒が必要かね~…。」

 

「そうですね~…。」

 

 

次の日から、聖が女の子と関わってる場面に遭遇した二人は、殺気をあてることで女の子を追い払ったとか…。

 

それを、聖に思いっきり説教されたとか…。説教されている二人が、少し嬉しそうだったとか…。

 

そんな平和な日々が続いていた。

 

そう…聖が決断を下すその日までは…。

 


 
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