第十六話 湯豆腐
「うーん。それは困ったわね」
私。フェイト・テスタロッサはこの地球での駐屯基地のマンションの居間でこの基地の責任者。リンディ提督に今日の事を伝えると難しい顔をされた。
まあ、当然の反応でもあると思う。
この地球では魔法文化はほとんど見られない。なのはみたいに強力な魔法の力を持っていたとしても、ジュエルシード事件が無ければその強い力も誰にも気付かれずに埋もれていくだけだったのだから…。
「別にいいじゃないのかい。放っておいても。あたし等は今、闇の書事件に取り組んでいるんだろ。下手にくっついてくるよりはよっぽど安心だと思うけど?」
「アルフ。そういうのじゃないよ。フェイトちゃんはその男の子に怯えられているのが嫌なんじゃないかな」
緋色の子犬モードのアルフが気にするな。という感じで私の話に答えてくれた。
その言葉にエイミィが訂正してくる。
「…うん。私もなのはがしてくれたみたいにあの子と仲良くなりたい」
「…だが、アルフの言うことももっともだと僕も思うぞ。正直な話。この事件が解決するまでは彼にはそのままでいて欲しいのだが…」
「クロノ。確かに私達は闇の書事件を解決したい。だけど、ね。やっぱり仲良くできるのならしたいと思わない?」
闇の書事件。
つい先日も私がなのはが闇の書の騎士に襲われているところを助けに行ったものの、少しばかり遅れたせいでなのはのレイジングハートは半壊。結果としてなのはのリンカーコアを奪われた。あと数日で回復する見込みらしい。
私もこの事件解決には全力で取り組む。
「…むう」
「でも、実際問題。どうするんだい?そいつに『私の事を好きになってください』とでも言うの?」
「あ、アルフ!?」
「あははは、冗談だよ冗談♪」
アルフはケラケラ笑いながら私をからかってくる。
「ふふふ。でもそれもありかも知れないわね♪」
「そうだね♪フェイトちゃん、可愛いのに男の子とのつながりがクロノ君とクロウ君とユーノ君以外にないからちょうどいいかも♪」
「リンディさん!エイミィ!」
「母さんもエイミィもアルフに乗っからないでくれ」
「でも、私とあの人との出会いはそんな感じだったかしらね?仲良くなりたいのならお弁当を持って行くとかじゃないかしら」
アルフと一緒にからかってくるリンディ提督とエイミィ。
からかわれている私を見て止めに入るクロノ。
「そうなんですか?」
「男の胃袋をゲットすれば心もついてくると
「…あ、あはははは」
同僚の部分を強調してエイミィを見てクスリと笑うリンディさんの顔は何となく意地悪な感じがした。
翌日、昨日のように教科書を見せてもらっている私は見せてもらいながらそれとなく目の前の男の子の好きな食べ物を聞いてみた。
「湯豆腐」
お弁当にするには難しすぎるよーっ。
我等が『傷だらけの獅子』はとことんKYだった。
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第十六話 湯豆腐