「ハァ、ハァ・・・」
少女は後ろを見た。
少女の視界の端に、黒いスーツを着た集団が少女を追う。
「まだ・・・追って来てるっ!」
再び、少女は足を速めた
**********
「んあ~、今日も小萌センセイの愛の説教で遅くなりよったわ~」
エセ関西弁を使いながら空に向かってノビをする青髪ピアス。
学園都市の空は、オレンジ色に染まっている。もうそろそろで、日没しそうだ。
「はぁ~・・・カミやんには謎の銀髪イソーローシスターさんがいるし、土御門にゃ妹系メイドがおるし・・・『オンナノコ』に恵まれないのはこれでボクだけやな~」
そんな未来も希望もないような言葉をブツブツと呟きながら、青髪は適当に空を眺める
そして、もう一度、深くため息をついたとき、
青髪ピアスの脇腹に、何者かが激突した
「うおおおっ!?」
180cmオーバーの体が、不意の攻撃で横に倒れる。
「な、なんや!?」
青髪ピアスは自分の状況を確認するため、前を見た。
するとそこには、紺色の髪が背中のあたりまで伸びている小柄なおっとり顔の少女が同じく尻餅をついていた
(うおっ、お、オンナノコや!?)
青髪は呼吸が止まりそうになる。
だが、驚くのはそれまでだった。いつものように、『オンナノコ』を見る目ではない・・・・
明らかに、様子がおかしいのだ。
傷だらけの顔、はだけた衣服。本人も息をきらし、その場で下の方を向きながらこちらの方を向く余裕すら無さそうだ。
「だ、大丈夫かいな!?」
青髪ピアスは慌てて少女の方へ駆け寄った。
少女も声を掛けられ、ゆっくりと顔を青髪の方へ向ける。
衣服はまだしも、このぐらいの傷なら病院に連れていけばなんとかなる。
「直ぐそこに病院があるんや、一緒に行こうや」
そう言って青髪は近くに建っている病院を指さした。そして、立ち上がり、少女に手を差し伸べて立ち上がるよう示唆するが、
「た、助けて・・・・ください」
「へ?」
青髪ピアスは目が点になる。
「お願い・・・・・助けて・・・・」
直後、人気の無い路地に、黒いスーツを着た集団が角から現れた。その中の一人が青髪の横にいる少女を指さして何かを叫ぶと、一斉に黒いスーツの集団はこちらへ向かってくる。
訳が分からなかった。
でも、青髪ピアスのやる事は一つしかなさそうだ・・・
「こ、こっちや!!」
理由を聞く前に、地面に座り込んでいる少女の手を強引に引っ張り、裏路地へと逃げていく。
行き先もなく、ただ適当に道を進む。
そして、辺りの隠れるに最適な車を見つけ、車の陰に隠れ、青髪ピアスは少女の口を手で塞いだ。
少女はゆっくりと青髪の顔を見る。
横顔だけだが、もうあのぶつかった時の、あの頼りなさそうな顔はどこにも無かった。
だが、直後、
少女と青髪ピアスの隠れている車に謎の攻撃が突き刺さり、爆発はしないまま粉々になって辺に吹き飛ばされた
「くっ!!」
「さぁ、見つけましたよ。アリスお嬢さん」
「へ?お嬢さん・・・・?」
青髪ピアスは、敵の声にもかかわらず、少女の顔をのぞき込む。
少女は申し訳なさそうに下を向いたまま黙っている。
やがて黒スーツを着た一人の男が、
「そうだ。そこにいる少女こそが、我々『黒い太陽』という組織のボス、アリスお嬢さん。」
普通の人間なら、組織に戻るよう少女を説得させるが、青髪ピアスの行動は違った。
「じゃあ、そこのお嬢さんが仮にもお前らのボスだったとしても、なんでこんな扱いをしやがる」
いつの間にか、青髪ピアスから大阪弁が無くなっていた。
「我々は裏切りは許さないんでね、例えボスだろうとそれ相応の処置は取る」
そう言って、戦闘の男は懐の中を漁り始めた。
そして、拳銃を取り出し、アリスと呼ばれる少女へ向けた。
「!!」
「『死という処置でな』」
次の瞬間、轟音が炸裂した。
まるで威嚇射撃のように、その銃弾は少女の横の壁に突き刺さる。
少女は、足がすくんで完璧に動けない
「これが、最後だ。アリスお嬢さん、我々の所に戻って殺されるか、ここで殺されるか」
そのとき、青髪ピアスが再び少女と逃げようとしたが、立ち上がる前に青髪ピアスの背中を蹴り付ける
「が、がああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
激痛が全身を駆け巡った
「青髪さん!!」
少女は青髪の元へ駆け寄ろうとしたが、青髪ピアスは手を前に出し、少女を止める
「行け・・・俺に・・・構わず、行け!」
「で、でも!」
「そうはさせない。アリスお嬢さん、逃げる前に仕留めるぞ!」
次の瞬間、一人の男がアリスと呼ばれる少女に銃口を向けた。まさに、絶体絶命とはこの事である。
青髪ピアスには、この少女を助ける義務なんてない。しかも、今日いきなり会ったばかりで彼女の事は何一つ知らない。
だが、
(あーもう、くそくそくそくそ!!なんでいつもこうなっちまうんだオレの人生!?)
頭をガシガシと掻く青髪ピアス。けど、その行動は『覚悟』の現れだったのだ。
直後、容赦なく拳銃は爆音と同時に火を吹いた。
一直線に少女へ向かう銃弾。けど、その銃弾が少女に当たる事は一生無いだろう・・・
「て、テメェは、青髪!?」
「戦闘はつくづく勉強させられる。例えば、こういうのが『堪忍袋の尾がキレた』っていう風になぁ」
青髪の言葉に、拳銃を一人一つづつ持つ集団が引けを取る。
青髪ピアスは銃弾を片手で握っていた。彼の手から、煙が噴出している。
(こ、コイツ、銃弾を片手で取りやがった!?いや、それ以上に、コイツは俺の足元にいて、俺が銃弾を発砲した時もコイツはまだ足元にいたハズ・・・・ってことは・・・)
男も思わず声に出してしまった。
「こ、コイツ、『銃弾より速い速度で移動した』ってのかよ!?」
男の言葉に、今は目の前で立ちふさがっている青髪ピアスをのぞき込むアリス。
「だから『堪忍がキレた』っつってんだろ。」
そう言って、青髪は片手の中にある銃弾を思い出し、
「あぁ、そうそう。昔、お袋に『その人の物はその人に返せ』って誰でも教わるような事習わなかったか?」
青髪ピアスは盛大にニヤケと笑みを含み、
「ホラ、これ。お前らの物だから返してやるよ」
そう言って、手にある銃弾を集団に向かって下から軽く投げた。
普通なら放物線を描いて落下するのだが、青髪の投げた銃弾は違った。投げた瞬間、銃弾は爆発的な爆音と破壊力を生み出し、後ろに尾を引きながらレーザー光線のように集団を中心から爆発させたのだ。
「ぐ、ああああああああああああああああああああ!!な、なんだ、その力はァァァ!?」
「ハァ・・・今更だが、もう一度『この力』を使う日が来るとはなぁ・・・」
そう言って、青髪は倒れている男を見据えた。
次の瞬間、男の腹部を、一瞬で目の前に移動した青髪ピアスが足を振り下ろす。
それだけじゃない。爆発的な威力を増した足が、男の脇腹に激突し、そこの地面がクモの巣のように割れる。
「が、ハッ」
男の口から、血が漏れ出した。
「何とでも言ってくれていいぜ。俺は『こんな力』を持っている以上自分のことは悪魔だと思っているし、最低の人間だとも思ってる。でもなぁ、そんなクズの俺でも気に食わねぇ事が一つある」
直後、青髪ピアスは声を発した。
それは誰の声よりも重い言葉だった。
「少し裏切られたぐらいで集団で一斉に拳銃を突き付ける程、
おめぇらは俺以上のクズだったってのかよ」
それだけ言っておきながら、青髪ピアスは男を踏むのを止め、集団に背を向けて歩いていった。
せっかく女の子と巡り合えたのに、そんなチャンスを自らフイにしてしまった。
そんな青髪ピアスに、アリスは安心しきった顔で話しかけてきてくれた
「良かった。本当に良かった・・・」
「怖くねーのかよ?」
「ううん。自分を助けてくれた命の恩人にそんな態度を取ったら失礼だもん」
「そうか・・・・それなら良かった」
そう言って、青髪ピアスは女の子に背を向けて歩きだしてしまった。
「ま、待って!」
青髪ピアスの肩がビクリと震える。
振り返った時には、アリスが困っている顔をしていた。大体、予想はついた青髪ピアスは、フッと含み笑いを見せ、
「俺の家に来るか?」
「えっ!?」
「どうせ、戻ったところで帰る家がねぇんだろう?なら、俺の下宿先に来ていいぞ」
「え、あ・・・あ、ありがとう」
精一杯に格好付けた青髪ピアスがすっかり忘れていたばっかりに「あ」と間抜けな声を出してしまう
「俺の宿に来るんだったら、自己紹介がまだだったな。俺は青髪ピアス。学園都市のごく一般な学校に所属する、
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とある様に存在する空白の第6位に、ある一つの説、『青髪ピアス』説をメインにした物を作りました。
前はにじファン様に投稿していたのですが、閉鎖に至って、こちらに移動してきました!
名前は考えても思い浮かばなかったので、青髪ピアスのままです。感想や評価どんどんお待ちしてます!