No.448103

真恋姫†夢想 弓史に一生 第一章 第六話 理想の果てに

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

前回の内容を纏めると、

賊に強襲をかけた聖と芽衣は、作戦通りに各小隊を殲滅。残りの賊との戦闘に向けて、再び集まるのだった。

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2012-07-07 15:33:04 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4780   閲覧ユーザー数:4229

~聖side~

 

 

集合場所に行くとまだ芽衣はいなく、しょうがないので、男たちを一列に並べて、話を聞く準備をしておく。

 

すると向こうから、血で赤く染まった芽衣が現れた。

 

「芽衣!! 大丈夫か!?」

 

「大丈夫ですよ聖様!! これは返り血です。私自身は無傷ですよ♪」

 

「そうか、そりゃよかった。ご苦労様。」

 

「はいっ、聖様。 …その賊たちは??」

 

「まぁ、ちょっと話を聞こうかなと思ってねぇ。」

 

「成程…そういえば情報をもらわないとしょうがないですもんね…。私全員殺っちゃって…ごめんなさい…。」

 

「良いよ芽衣、俺の方で三人捕らえといたから。 さて、お前ら!! 後、陣屋にどれくらいの人間がいて、そいつらはどんなやつらで、大将はどんなやつだ!?」

 

「……。」

 

「まぁ、答えたくないのなら別に良いけどねぇ…。ただ、お前らはとても大きな罪を犯すことになるがな。」

 

「…どういう意味だ…。」

 

「簡単じゃないか。 お前らの仲間がこれから殺されるわけだけど、俺らだって殺すのは嫌なんだ。だが、お前らは助けれる命を助けず、見殺しにするわけだ。そして、それを見てお前らは何も感じないってわけだよな…?? 何故ならお前らは、それを選んだんだから…。だが、それは大きな罪だ。お前らは人を殺したのと同じだけの罪を負う。生かせる命をわざわざ殺させるんだからな。 …まぁすでに人を殺して回ってるやつに言ってもしょうがないとは思うが…。」

 

「なん…だと??」

 

「言葉の通りじゃねぇか。お前らは散々色んな村で悪事を働いて回ってんだろ??」

 

「俺たちはそんなことはしない。殺すのは悪いやつらだけだ。ただの一般市民にまで手を出すようなことはしない。」

 

「じゃあなんでこの先の村を襲おうとした?」

 

「お前らは官軍じゃ…ないようだな…。じゃあ一体なんなんだ…。」

 

「俺たちはただの旅人さ…。 …俺の質問に答えたくは無いのか?」

 

「それは、俺たちの頭領から話してもらう。縄を解いてくれないか? 俺たちは抵抗もしないし、逃げもしない。お前たちを俺らの頭領のところに連れて行く。」

 

「…お前らを信用しろとでも??」

 

「そうだ。」

 

「…。」

 

 

少し、話を聞くつもりが思いがけないことが聞けた。どうやら、こいつらは噂で聞くような黄巾賊とは違うようだ。

 

確か史実でも、黄巾賊にはいろんな種類がいたって聞いたことがある。こいつらはどうやら、そのタイプらしい。

 

すると、芽衣が隣に来て小声で俺に話しかけてきた。

 

「聖様、こいつらの話を鵜呑みにしてはいけません。こいつらはそう言って、人々を騙してきたのです。」

 

芽衣の言うことももっともだと思う。自分が生き残るためにはありとあらゆる色んな手段を講じて生き抜くものである。

 

でも…俺にはあの賊の目が、嘘を言っているようには見えない。それに、もし和解出来るのであれば、その方が人殺しをしないで済むので俺的には嬉しい。

 

「まぁ、わかった。お前らの頭領と話をさせてくれ。」

 

「聖様!!」

 

「良いんだ、芽衣。」

 

「…俺の言うことを信用するのか…??」

 

「まだ半信半疑だが、どうもお前が嘘を言っているようには見えない。それに、お前らの頭領と話し合いで解決出来るなら、その方が俺も人殺しをしなくて済む…。」

 

「分かった。じゃあ頭領のもとへと案内する。」

 

 

そう言って、賊の男は俺たちを陣地内に連れて行った。

 

もちろん警戒は怠らない。急に襲われてもいいように残心は持ちながら陣地内を移動する。

 

初めは警戒していた黄巾賊のやつらも、俺らを連れている男の一言で遠くで眺めているだけになっている。

 

しばらくして、ある天幕の前で止まる。

 

「この中に俺たちの頭領がいる。入れ。」

 

そう言われて、俺と芽衣は天幕の中に入って行った。

 

天幕の中で座っていたのは…。

 

 

「おうっ!! お前らか、あたいたちの同士を散々痛めつけてくれたやつらは…。」

 

言葉遣いが男っぽい女の人だった…。

 

「…そうだ。なんなら今からでも血祭りにあげようか?」

 

「…やるってのかい??」

 

「そっちがその気なら。」

 

「今の状況でかい?? あんたたちは今、うちらの陣営のど真ん中にいるんだぜ??」

 

「俺たちの実力は大体分かってんだろ??」

 

「…ふっ。まぁ、あんたらと戦ったらウチらが全滅する…か…。目的のため、止めとこうか…。」

 

「賢明な判断かもな…。」

 

静寂が流れる。

 

俺は、この女を試すためにわざと挑発ぶったような態度をとったが、彼女はそれを流した。

 

こいつ、それなり食えないやつだな。

 

 

「悪いんだが、まず一つ質問していいか…。どうしても言っておきたいんだ。」

 

「…まぁ言ってみな。」

 

「じゃあ…頭領って女かよ!!」

 

「……聖様??」

 

「はははっ!! 女で悪いのかい?」

 

「いやっ…。あぁ、今思えば、この世界は女の方が強いんだっけ…。じゃあ問題は無いのか…。」

 

「??」

 

「いやっ、忘れてくれ。」

 

「なら、そうさせてもらうよ。 なかなか面白いやつだね…。 で本題だが、あんたらはあたいに何を聞きたいんだい?」

 

 

何故俺たちが詰問の為に来たのか不審がってるようだ。

 

まぁ、そりゃあ当たり前だろうな…全滅させられるだけの力を持った実力者が、何故話し合いに来たのか…これは聞きたいはずだ。

 

 

「…お前たちは何故この先の村を襲う?? そして、さっき言った目的とは?」

 

「…あたいたちはついこの間まで、近くの村の農民だったんだよ。普通に米作って、商売して、貧乏っちゃあ貧乏だけど、でも楽しかった。 ところが、今年の不作により食べるものがなくなって村の者達全員が路頭に迷う始末…。あたいたちはこんな状況を作り出した漢王朝に、この広陵を取り仕切る刺史に、あたいたちの村を支援しない太守に、目に物を見せてやるって決めたんだ。 そう思って立ち上がり、広陵の城を目指していた。黄巾の布を巻いているのは、黄巾賊の名を聞けばこの政治に不審を抱いている奴が、あたいたちに賛同してくれると思っているからだ。この先の村をあたいたちは襲うつもりは無い。むしろ、同士を招集し一緒に立ち上がってもらうつもりでいた。」

 

「それを俺らに信じろと??」

 

「急には無理だろうが、そうしてもらうしかないね。」

 

「人殺し集団をか?」

 

「…黄色い布は間違いだったのかもねぇ…。あくまであたいたちは、黄色い布を巻いた一農民たち。黄巾賊のやつらみたいに、大賢良師なんてのを崇拝もしてなければ、信仰もしてない。そして、あたいたちは村を出るときに、悪以外には手を出すことを禁ずることを胸に刻んだ。だから、あたいたちは農民や商人を襲ったり、村を焼き払ったりする様なことは一切行っていない。それが、村にとってどんだけの被害に繋がるか分かっているからね。」

 

「…。」

 

「聖様…。」

 

「…芽衣はどう思う?」

 

「…私は、黄巾賊は許せないです。でも、この人たちと同じ私も一農民でした。だから、分かります。この世を正したいと願う気持ち。そして、武力蜂起しなくてはいけなかった気持ちも…。」

 

「そうか…。」

 

俺は居住いを正す。

 

そして、深々と土下座をする。

 

 

「すまなかった。お前らの仲間を討ってしまったこと、俺らの間違いで、お前たちの目的を潰しそうになったこと。ここに精一杯の気持ちを込めて、謝罪する。」

 

突然の俺の土下座に、芽衣も頭領も吃驚していた。

 

「あっ、あんた何してんだい?? 謝ってるってのは分かるが…なんだ…とりあえず顔を上げてくれ。」

 

「聖様、なんか良くわかんないですけど、地べたにひれ伏す聖様が、中小企業で頑張ってる40代のおっさんって気がして不快ですから、顔を上げてください!!」

 

「……芽衣さん?? 意味分かって使ってるんですか??」

 

「いいえ、ただ、なんとなく頭に浮かんだもので…。」

 

…この子は電波か??電波なのか??

 

 

「…アナログからデジタルへの移行はお済ですか…??」

 

「…もう良いから…。」

 

「お~い…。そっちはもう済んだのかい??」

 

「あぁ、大体は…。」

 

「じゃあ話を戻すけど、今のはなんだい?」

 

「俺がいた国での最上級の謝り方、DO☆GE☆ZAだ!!」

 

「なんだか良く分からんな…後、お前のいた国?? お前はこの国の生まれじゃないのか??」

 

「聖様は、天の国より参られた天の御使い様なのです。」

 

「なんだって!! 天の御使い!? あの管輅の占いの!?」

 

「そうです。乱世を沈め、この世を治世に導くものです。」

 

「…成程、どおりで変な服着てるわ、おかしなことも言うわ、常人離れした弓の腕も持ってるわけだ…。」

 

「別に俺のいた世界じゃ普通なのに…。」

 

「じゃあ聞くが、天の御使いさんよ。あんたが来たってことはこの世は乱世なんだよな!? じゃあ漢王朝は崩落するんだな。」

 

「俺の知ってる限りじゃあそうだ…。」

 

「その後は?」

 

「群雄割拠の時代になる…。」

「じゃあここは?? 広陵も乱世の被害を被るのか??」

 

「…確かではないが多分…。」

 

「…あんたならそれをどうにか出来るのか?」

 

「俺はそれをしようとしている。乱世に一勢力として立ち、この世を平穏で、皆が皆、手を取り合って、支えあって、笑って暮らせるような、そんな世の中を作るために戦う。」

 

「…驚いたね…。まさか、同じ理想でもここまで…ここまであんたとあたいには差があるのかって…。」

 

「差なんて無いよ、それは一つの理想であって、その人固有のものなのだから。」

 

「…ふっ…。一つ頼みがあるんだが聞いてもらっていいかい??」

 

「出来ることなら叶えてやりたいが?」

 

「じゃあ、あたいたちを全員あんたらの下に置いてくれ!!」

 

「「…はっ??」」

 

 

俺と芽衣はわけが分からず、変な声を出した。

 

 

「無理かい??」

 

「いやっ、っていうか…えぇ!! …なんで、俺の下に?」

 

「あたいたちは、このまま城を攻める気でいたが、その力が無いことは既に分かっていた。だから、この一揆にかこつけて、理想ともども死んでやろうと思ってた。でも、死ぬよりも先に理想を叶える手段を見つけたんだ…だったら、その手に乗らないわけが無いだろう??」

 

「…まぁ、同じ理想を掲げるもの同士ってやつか…。」

 

「そういうことになるのかな。」

 

「…俺としては無事に解決できて、それが無血ならより良いんだが…芽衣、それで良いか?」

 

「聖様にお任せします。」

 

「んっ。じゃあ決まりだな。お前らの理想と命、俺が預かった。」

 

「ああっ。よろしく頼むよ。」

 

「じゃあ名を名乗らなきゃいかんね…。俺の名前は姓は徳種、名は聖、字も真名も無いから好きに呼んでくれ。」

 

「私は姓は徐、名は庶、字を元直、真名を芽衣と言います~。」

 

「私は姓は凌、名は統、字を公績、真名を(奏|かなで)と言う、お頭、芽衣、これからよろしく頼む。」

 

「よろしくお願いします、奏」

 

「…その呼び方どうにかならない??」

 

「お前が呼んで良いと言ったんだろ??」

 

「まぁ…そうなんだが…別に良いか。あぁ、こちらこそよろしく、奏。」

 

俺は、奏と握手を交わし、友好の兆しを見せる。

 

「しかし、良かったよ。」

 

「うん?? なにがだい??」

 

「もし、和解できないようなら討つしかなかったからね…。 奏みたいな、綺麗で美人な女の人を討つのって、気のりがしなかったんだよねぇ。」

 

「!!」

 

「…。」

 

そう言うと、奏は俯きモジモジし始め、芽衣の後ろには邪悪な黒い気が…。

 

芽衣さん…それは俗に言う『ス○ンド』ってやつですかい??

 

俺は命の危機を感じ、すぐにその場を去るのだった。

 

 

こうして、俺の下に新たに仲間が加わった。

 

自分の理想を叶えるため、この乱世を平和で安心な世とするため、必要な力を身に付け始めたのだ。

 

この世に蔓延る悪を討つために…。

 

 


 
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