No.448100

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 29

soranoさん

第29話

2012-07-07 15:28:04 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1116   閲覧ユーザー数:1044

~ヴェルデ橋・東ボース街道方面~

 

「ん、到着。」

ロレントとボースの街道をつなぐヴェルデ橋の関所から少し離れた所にギルドから転移してきたエヴリーヌとアネラスが降り立った。

「う~ん……エヴリーヌちゃんの手を握っていたらいきなり今のよくわからない感覚が来たんだけどなんだったんだろう……あれ?あれはヴェルデ橋……ってことは、ここって東ボース街道!?さっきまでギルドにいたのになんで!?」

アネラスは一瞬でギルドから東ボース街道に移動したことに気付き驚いた。

「じゃあ、紙に書いてあったのを探してさっさと終わらせちゃおう。」

「え……ちょっと待って、エヴリーヌちゃん!一体どうなっているの!?」

早速手配魔獣を探し始めるために歩き出したエヴリーヌにアネラスは急いで追いつきなぜ、ギルドからいきなり東ボース街道に移動したかを聞いた。

転移魔術のことを聞かれたエヴリーヌはめんどくさそうな表情をしながらも簡単な説明をし、アネラスを納得させた。ちなみにアネラスは「エヴリーヌちゃんが可愛いからできたんだ!

やっぱり可愛いから凄いんだね!」という訳のわからない納得の仕方でエヴリーヌを困惑させた。そして2人がしばらく歩いていると手配魔獣と周囲にも複数の魔獣の姿を確認した。

 

「お、早速発見だね!じゃあ、エヴリーヌちゃん。今からあなたの力を見せて貰うね!とりあえず最初は一人で戦ってみて!危なくなったら私が助太刀してあげるからがんばって!」

「はーい。でも、すぐ終わらせるから助けなんて必要ないよ。」

エヴリーヌはまるで遠足に出かけるような物言いで返事をして虚空から弓を出し、片手に魔力で形成した矢を弓につがえた。

 

「うーで、あーし、むーねにあったま……全部潰す!」

ビュンッ――!!

「グオッ!?グオオオオオオオオオオオッ!?」

初撃の矢が弓を離れたと思った矢先、そこには新たな矢がつがえられていた。放たれた矢は分散し手配魔獣の四肢に刺さり、4か所からの痛みに耐えられず

四肢を潰された手配魔獣は叫び声を上げ横たわった。

「え!?」

アネラスはエヴリーヌが放った矢が魔獣に命中した後すでに次の矢が弓につがえられているのを見て驚愕し、その光景が信じられず思わず自分の目を疑った。

「あーあ、つまんなーい。つまんないから全部消えていいよ!」

 

凶悪な顔でエヴリーヌは人間であるアネラスには決して見えない神速の動作で次々と矢をつがえては放って行く。放たれた矢を受けた魔獣は四肢をつぶされるもの、一本の矢が空中で複数の矢に分かれ雨のように降り全身矢だらけになるもの、

一か所に3本の矢で集中攻撃されるもの、攻撃の動作をする寸前に攻撃されたもの、矢を受けたどの魔獣も矢が貫通した。その威力は足や腕を簡単に破壊し、エヴリーヌの一方的で残酷な攻撃はあっという間に手配魔獣を含め周囲は死屍累々になった。

「もう、おしまい?じゃあ、最後にとっておきのプレゼントを上げるから消えちゃって!」

エヴリーヌはつまんない表情で横たわっている魔獣を見た後、とどめに大技を出すために眼に魔力を、矢には闘気を宿らせ放った。

「キャハッ♪エヴリーヌの敵はみんな消えちゃえ!ゼロ・アンフィニ!!」

魔力と闘気の力を纏った一本の矢は巨大な衝撃波となり、地を走り死屍累々となった魔獣達を吹き飛ばし消滅させた。

「はい、おしまーい。」

 

戦闘が終了し弓を虚空に閉まったエヴリーヌは呆然としているアネラスに気付いた。

「…………何固まっているの?終わったよ?」

「ハッ!?エヴリーヌちゃん!今の技ってどうやったの!?それに、弓矢の動作が速すぎて見えなかったんだけど、どうやったらあんなことできるの!?」

エヴリーヌに話かけられ我に帰ったアネラスはエヴリーヌに詰め寄って聞いた。

「ここで説明するのめんどうだから、帰りながら話してあげるからさっきの街に歩いて帰るよ?思ったより早く終わっちゃったからリフィアにハンデをあげるために歩いて帰りたいし。ハンデをもらったってわかった時のリフィアの顔が今から楽しみ……キャハッ♪」

そう言うとエヴリーヌはボースへ続く道にさっさと歩き始めた。

「あ、待って!エヴリーヌちゃん!」

歩き始めたエヴリーヌに追いつくためアネラスは慌ててエヴリーヌを追った。そして帰り道で出会った雑魚魔獣もエヴリーヌは魔術で一瞬で終わらせアネラスをさらに驚かせた。

 

 

~アンセル新道~

 

「ぜえ……ぜえ……やっと、追いついたぜ……」

自分を待っていたリフィアに追いついたグラッツはギルドからずっと全速力で走っていたので息を激しく切らせていた。

「なんだ、これぐらいでバテるとはまだまだだな。余の走りに付いて来れないとは鍛え方が足りないぞ?」

グラッツを待っていたリフィアはグラッツの様子を見て呆れた。

「ぜえ……ぜえ……そういうお前はこれだけの距離を走ってるのになんで、息切れしてないんだよ……(おいおい、ヴァレリア湖と琥珀の塔の分かれ道があるってことはかなりの距離を走っているぞ……この嬢ちゃん、この小さな身体のどこにこんな凄い体力が秘められているんだよ……)」

グラッツは自分と違い自分より速く走ったにも関わらず息切れをしていないリフィアを見て驚いた。

 

「余は幼少の頃よりメンフィルのあらゆる領内を見て回ったからな。そのおかげで自然と体力はついたぞ?」

「……とても貴族の娘がやることとは思えねえな……よくそんな危険なことを親が許したな?」

リフィアの今までの行動を聞きグラッツは疑問を持った。

「母は笑って許してくれるが父を含めたほかの者達は心配して余が家を出たと分かるとすぐに追手を差し向けるのじゃ。母以外は皆心配性でな。……嬉しくもあり、悲しくもありだが。」

グラッツの疑問にリフィアは答え、毎回追ってくるリウイ達のことを思い出し溜息をついた。

「はあ………要するにお前が規格外なだけか……まあいい、それより手配魔獣を探すぞ。」

リフィアの答えを聞いたグラッツは溜息をついた後、気を取り直しリフィアと周囲を歩いて手配魔獣を探した。そしてある程度探すと手配魔獣の姿を確認した。

 

「お……いたか。じゃあ、試験開始だ。まず最初は一人で戦ってみな。」

「フフフ……グラッツよ、余の力を知って腰を抜かすでないぞ?」

「ハハ……強気だな。まあ一応期待しておこうか。」

リフィアの言葉にグラッツは苦笑した。その様子を見たリフィアは少しだけ不機嫌な表情をした。

「なんだ?その顔は。さては余の言葉を信じていないな?まあいい、その眼でしかと見るがよい!」

そしてリフィアは杖を構え魔術の詠唱をして、放った。

「………罪人を処断せし聖なる光よ!我が仇名す者に裁きの鉄槌を!贖罪の光霞!!」

「「「「―――――――――ッ!!!???」」」」

リフィアが魔術は放つとは手配魔獣と周囲にいた魔獣に薄透明な壁が多い、強い光と爆音がその中で走った。光を受けた魔獣達は叫び声すらも光と爆音に掻き消され完全に消滅した。

「んな!?」

遊撃士も手こずると言われる手配魔獣が一瞬で片がついたのを見て、グラッツは驚愕した。さらにリフィアは範囲外で集団になっている魔獣を見つけ新たな魔術を放った。

「闇の彼方に沈め!……ティルワンの闇界!!」

リフィアが放った暗黒魔術は先ほどの光の魔術とは逆に魔獣達のいる範囲が暗闇につつみこまれると魔獣達が叫びを上げた。

「「「「「ガァァァァァッ!!??」」」」」

(な!今度も一撃かよ!?カルナに見せて貰った最高の威力を持つアーツとは格が違いすぎる……これが”魔術”か……)

暗闇がはれると事切れて死屍累々と横たわっている魔獣達がいた。一瞬で複数の魔獣達がやられていく様を見てグラッツは驚きすぎて、しばらくその場を動けなかった。

「余がいれば負けはない!……さて、いつまでも突っ立てないでギルドに戻るぞ?」

リフィアは固まっているグラッツに声をかけた後、ボースに戻る道を歩き始めた。

「お、おう……」

リフィアに促されグラッツは今起こったことがいまだに半分信じられない気分でギルドへ帰って行った。

 

 

~ボース西街道~

 

「いましたね。あの魔獣でいいんですよね、アガットさん?」

「……ああ。」

2組より遅れて出発したアガットとプリネは街道をしばらく歩いていると手配魔獣の姿を見つけた。

「さて、どうしましょう?ルグランさんは私一人で戦うなりアガットさんと協力して戦うかで試験をするとのことでしたが、私はどうすればいいでしょう?」

「………どちらも必要ない。」

「……それはどういう意味ですか?」

アガットの言葉にプリネはわからず聞き返した。

「すぐにわからせてやる。………オラァ!」

背中に背負っている重剣を抜いたアガットは重剣を持った状態でジャンプして手配魔獣に攻撃を叩きつけた。

「グエエエエッ!!!!???」

重剣を叩きつけられた手配魔獣はあまりの痛さに叫び声を上げた。叫び声をあげ隙を見せた手配魔獣にアガットはすかさず、Sクラフトを放った。

「一気に行くぜ!うおぉぉぉぉ!ダイナスト!ゲイル!!」

普通の人間が持つのは難しいと言われる重剣をアガットは軽々と振り回し連続で攻撃した。そしてその攻撃によって手配魔獣は完全に沈んだ。

 

「見事です。けど、私の試験はどうなるんでしょうか?何故、こんなことを?」

試験対象である魔獣を勝手にアガットが倒したのでプリネはアガットに理由を聞いた。理由を聞かれたアガットはプリネを睨み口を開いた。

「そんなのは当然テメエらみたいな素人どもが手配魔獣と戦わせないために決まってんだろが。怪我でもされたらこっちが迷惑なだけだ。それで試験方法だが、こういう事だ!」

プリネを睨んでいたアガットは手に持った重剣でプリネに襲いかかった。

「!!」

襲いかかられたプリネは後ろに飛んで、アガットの攻撃を回避した。

「これはどういうことですか?」

 

回避されても攻撃の態勢を解かないアガットを見て、プリネは素早く鞘からレイピアを抜きアガットに向けて構え聞いた。

「今から俺とサシで戦え。それが試験内容だ。テメエらみたいな温室育ちで世間知らずの小娘共が俺達の仕事を手伝えるなんて二度と思えないよう、この”重剣”で教えてやる。」

「……なるほど、そういうことですか。出会った時から感じていましたがアガットさんは私達にあまりいい印象を持っていませんね?」

「ハッ!前々からテメエらメンフィルの奴らは気にいらなかったんだよ!”百日戦役”で襲撃されたロレントを救ったぐらいででかい態度をとりやがってよ!」

プリネの言葉にアガットは鼻で笑った後、今まで隠してきた自分の本音を叫んだ。アガットの本音を聞いたプリネはムッとした顔になり言い返した。

 

「……大きな態度とは心外ですね。私達、メンフィルはリベールを盟友と認め平等な取引をしています。あの時のロレントはどれだけ悲惨だったか知らないのですか?それに我々の登場はほかの国々に対しても医療関係等生活に対して発達したはずです。特にイーリュンの信者の登場は今まで助けられなかった民の命を救って来たのを知らないのですか?」

「ごちゃごちゃうるせえ!オラァ!」

「!!」

プリネの説明を聞く気がなかったアガットは再びプリネに攻撃をしかけたが横に飛んで回避された。

 

「………どうしても”力”を示す必要があるみたいですね……仕方ありません。お相手致します……!」

「ハッ!その言葉を吐いた事を後悔させてやる………!」

こうしてアガットとプリネが戦いを始めた……!

 


 
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