No.447725

万華鏡と魔法少女、第十五話、管理局と魔法少女

山の血を流し、同じ一族を手に掛けた一人の男 彼は唯一の弟と対峙して命を散らせた。 愛する人も友も家族でさえ手に掛け、たった一人の愛する弟の為に命を賭した そして、死んだ筈だった彼は自分自身が居た世界では無く、 気がつけば違う世界の中に存在していた そんな彼の前に現れた一人の金髪の魔法少女 彼女と出会った彼はどの様な結末を迎えるのだろうか… NARUTO、うちはイタチとリリカルなのはのクロスオーバー作品です未熟者ですが、宜しくお願いしします

2012-07-07 00:38:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5678   閲覧ユーザー数:5341

イタチとアルフがプレシアの元に向かってから数日が経った

 

もう怪我もすべて完治し万全の体制になったフェイト

 

この数日間行動していなかったためか、彼女はジュエルシードを回収する遅れを取り戻すため意気込んでいた

 

…次こそは母に褒められて貰うために…

 

しかし、そんな彼女の意気込みとは他に使い魔である筈のアルフが一向に返ってこない

 

それに…あの日見送った筈の自分の義兄であるうちはイタチも忽然と姿を消してしまった

 

これはあまりに不自然でおかしい

 

自分一人だけを置いて彼女たちは本当に何処へ消えてしまったのだろうか

 

そんな事を部屋でお気に入りの人形を深く抱き締めながら思案するフェイト

 

「ほんと…何処に行ったんだろ…イタチ兄さんとアルフ」

 

こんなに帰ってこないのならば誰だって心配するのは当然、

 

彼女は抱き締めた人形に更に力を強く加えながら、寂し気に一人呟く

 

だが、そんな彼女の元に突然何者かが訪ねてくる

 

ひとりぼっちの部屋に鳴り響くドアのインターホン、フェイトはパタパタとスリッパの音を立てながら玄関へと向かう

 

「…はいはーい、今出ますよー」

 

そう言って扉のロックを外して、ドアノブを回し開けるフェイト

 

次に彼女は扉を開いて現れた人物を見て、思わず眼を見開いた

 

ーーーそこにいたのは…

 

「…………」

 

深刻な表情を浮かべて落ち込んだ顔のクロノの姿だった

 

フェイトはいきなり自分の家に訪ねてきた彼に戸惑いを隠せない

 

大体、この場所は彼等…管理局の人間に知られていないと確信していた

 

それが、この様にいきなり崩されてしまったのだ無理もない

 

フェイトは表情を険しくし、いきなり自分の家に訪ねてきたクロノを警戒する

 

だが、次に彼から発せられた言葉にフェイトのその警戒心は一気に霧散してしまった

 

「…フェイトテスタロッサ、君にとって大事な話がある…とりあえず僕と一緒にきて欲しい…」

 

哀しげな表情を浮かべたまま、重い口調でそう告げるクロノ

 

フェイトは状況が良く分からなかったが、

とりあえず、自分にとって二人が何故帰って来ないのかを知るにはクロノについて行く事が最善と頭の中で深く考えた挙句、結論付けた

 

フェイトはひとまず、クロノのその言葉を了承する返答を出す

 

「…よくわからないけど…説明してくれるなら行く」

 

「勿論だ、では仕度をして来てくれ…僕はここで待ってる…なるべく早めに用意してくれ時間が無い…」

 

 

そう一言だけ残して、部屋と戻ってゆく彼女を急がすように促すクロノ

 

フェイトはとりあえず素早く部屋と戻り身支度を済ませる事にした

 

 

それから、仕度を終えたフェイトを家から連れて、クロノは自分の母親が指揮している艦アースラへと帰艦する

 

彼に連れられて、アースラへと乗り込んだフェイトはまず、その艦の雰囲気に違和感を感じた

 

騒がしくあちらこちらへと艦にいた局員達が走り回っていたのだ…

 

フェイトは思わず、そんなアースラの局員達の様子を見て、一人深く考え込む

 

…まず、管理局から危険視されているジュエルシードを回収していた自分に見向きもしない事

 

ジュエルシードは管理局からロストギアと呼ばれ通常ならばそれを回収していた自分は捕らえられるべき人間だ

 

しかし、そんな自分に対してこの艦にクロノから連れられて入った時からなんの反応も示さず、それぞれの仕事に没頭している

 

フェイトはこの艦内の雰囲気に不気味さを感じせられるしかなかった

 

彼女はとりあえず、艦内を先導して連れてくれるクロノの後から沈黙したままついてゆく

 

道中、クロノに訪ねたい事は山ほどあったが同い年程の彼から発せられた緊迫したそのオーラにフェイトは聞き出せずにいた

 

そうして、フェイトはクロノと共にアースラ艦内の主要の場であるデッキにへとようやく着いた

 

クロノが扉を開くと共に艦内の最高責任者である彼の母親、リンディがすぐさま連れて来られたフェイトの所にへとやってくる

 

「…待ってたわ!ようやく着いたのね」

 

「お待たせしてすいません艦長、ただいまフェイトテスタロッサを連れて帰艦しました」

 

急いだ様子でこちらに駆け寄ってきたリンディにフェイトをちゃんと連れてきた事を報告するクロノ

 

クロノの後からブリッジへと足を踏み入れたフェイトはそんな彼等のやり取りを他所に見覚えのある人物がいる事に驚愕する

 

「あれ? なのは?」

 

「やっぱりフェイトちゃんも呼ばれたんだ」

 

 

フェイトの登場に何か納得した風な口調で話すなのは

フェイトと同じく、彼女もまた状況が見えていないといった感じだ

 

クロノは彼女達が互いに認知した所でリンディとの話を打ち切りフェイトとなのはの方へ身体を向ける

 

どことなく、振り返りこちらにへと視線を移し替えてきた彼のその表情は彼女達には重苦しくそして何故か哀しそうにも見えた

そして彼はフェイト達にゆっくりと今回の収集について語り始めた

 

 

「…今から話す事を落ち着いて聞いて欲しい」

 

 

不穏なクロノの表情に黙ったまま耳を傾けるフェイトとなのは

 

彼女達は互いに大丈夫かどうか顔を見合わせるとそう告げてきたクロノに静かに頷く

 

クロノは彼女達がいまから告げる話について、心構えるのを確認すると共に重い口調で説明を始める

 

 

「…これ以上、長引かせるのは時間の無駄だと思うから、君達に単刀直入に言う…

…うちはイタチが裏切った…」

 

 

その途端…場の空気が静止した

 

唐突に重い口調でそう告げられた言葉にフェイトとなのはにはその意味が理解しきれない…

 

彼女達は呆然とクロノの告げたその言葉に立ち尽くす

 

クロノはそんな彼女達に付け加える様に話を紡ぎ始める

 

「…昨日、プレシアテスタロッサの居場所が判明し、数名の管理局員がそこへ乗り込んだ…だが、乗り込んだ局員が全て返り討ち、数名の重傷者がでた」

 

一体どういう事?、何故、いままで関係なかった筈のイタチさんの名前が出てくるの?

 

そもそも、イタチは自分達の正体に気づいていない筈だったのではないか…、何故、魔法の存在を知らない彼がこんな風に名前が挙がるのか

 

彼女達の頭の中は処理しきれない疑問で完全に埋め尽くされる

 

「…死傷者はいなかったが、送り込んだ彼等の一人からの証言によると…時の庭園の主であるプレシアが…血塗れで壁に磔にされていたらしい…」

 

クロノは真剣な口調で自分が得た情報を彼女達に伝える

 

しかし、そう告げるクロノとは裏腹に未だに彼女達は意味が分からないと言った表情を浮かべていた

 

クロノはそんな彼女達に構わず話を続ける

 

「君の使い魔であるアルフもボロボロの状態で床に倒れていたそうだ…そして、送り込まれた管理局員達を返り討ちにしたのは…」

 

クロノはそこで一旦間を置いて、発っそうとした言葉を止め話を区切る…

 

そうしたのは意味があった

 

それは自分の語る話を聞いて動揺を隠しきれないフェイトとなのはの様子を見てそう判断した

 

彼女達にはにわかに信じ難く、そして、信じたく無い事だとクロノは分かっているからだ

彼女達の眼は動揺で焦点が合わず、クロノが告げた話が耳に入っていない様に見える

 

そんな中、彼女達の動揺した姿を見てフェイトが見知らない顔の少年がクロノと彼女達の間に割って入って来た

 

「…一旦、話はこれで終わりにしようクロノ、この話をいきなりする事は彼女達にはショックが大きすぎる…」

 

「…ユーノ…」

 

そう、彼女達とクロノとの間に割って入った少年、

それはなんとなのはの肩にいつも乗っていた筈のフェレット、ユーノの姿だった

 

いつもなのはの側にいたフェレットだった彼は実は彼女の監視役また管理局の一員だったのだ

 

そして、クロノハラオウンの数少ない友人でもある

 

ユーノから話を制止させられたクロノは納得した様にその案をあっさりと受け入れる

 

何故なら、彼女達の今の精神状態を彼が見てもマトモな状態だとはとても言えるような物ではなかったからだ

 

そんな中、フェイトは静かに何度も何度も同じ言葉を繰り返し呟き始める

 

「…嘘…嘘嘘嘘嘘嘘…ウソ!!そんな事嘘!」

 

偽り、彼女はクロノが語るその話をそう信じて疑わなかった

 

あのイタチが…兄の様に慕っていたイタチが自分の事を見捨てる訳が無い、

どんなに大変な時でも彼は自分に優しくしてくれていた

 

いつも自分に微笑みながらいつも頭を撫でてくる彼の眼は本当に温かった

だがクロノはそんな否定を示す彼女に向かい、バッサリと告げる

 

「…真実とは自分の眼で確かめるものだ、だから僕は君に自分の見て聞いた事を話しただけ、後は君がその眼で真実を確認すればいい話だろ?フェイト」

 

自分の語る話を否定するフェイトに冷たく言い放つクロノ

 

クロノのその冷たい言い草にユーノは彼の肩を思わず掴み制する

 

「…クロノ!それ以上は言わなくていいだろ!」

 

「事実を述べただけだ…何も悪い事じゃない」

 

クロノはユーノから掴まれた肩から手を剥がして静かに眼を瞑りそう告げる

 

確かに真実を語る彼には非はない、しかし…彼の言動は信じていた者から裏切られたと告げられた彼女の事を追い込むような形になるのは少し考えれば分かる事だ

 

クロノがそんな事を考えれない程、浅はかな思考の持ち主とはユーノも思っていなかった為、

彼女にそう告げるクロノにより強い口調で思わず声を荒げてしまった

 

クロノは自分の肩を掴むユーノの手を軽く払いのける

 

そして、思わず冷静さを欠いてクロノに掴み掛かったユーノは申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べた

 

「…すまない、つい熱くなり過ぎた」

 

「…いや、気にするな俺も悪い…」

 

クロノは一言だけ、そう告げるとユーノとなのは達から踵を返して背を向ける

 

その背中はいつも見ているユーノにはとても小さく見えた

 

管理局で働く事を自信を持ち、自分の立場を理解し優秀な状況判断が下せるクロノ

 

それは同期のユーノからして見れば尊敬に値する程のものだ

 

だが、今の彼は何処かマトモな状態だとは言い難い、ユーノは薄っすらと思いもよらなかった事を口走るクロノを見てそう感じた

 

「…僕はこれから仕事が残っているのでこれで失礼する」

 

背を向けたまま一言だけそうなのは達に告げるクロノ

 

そうして、踵を返したクロノは一人、ブリッジの扉を開き沈黙したままその場を後にする

 

暗く、静かな空気だけがクロノの立ち去ったブリッジを包む

そんな中、未だにクロノから告げられた真実が信じられなかったなのはは沈黙が漂う空気の中、

 

改めて、いままで行動を一緒にし信頼を置いているユーノに哀しげな表情を浮かべ俯いたまま抱いていた弱音に誓い疑問を投げかける

 

「…もう、どうにもならないのかな…」

 

「分からない…」

 

「…イタチさんとはもう笑い合え無いのかな…」

 

「…分からない…」

 

弱々しいその問いかけになのはと視線を合わせないまま淡々と答えるユーノ

 

そんな中、クロノから真実を自分の眼で確かめろと告げられたフェイトは一人額を片手で摩りながら肩を震わしていた

 

その震えは怒りなのか恐怖か、それともいままで自分が騙されて来た悔しさなのか…いや恐らく深い悲しみから来たものだろう

すると、彼女は額に手を当てたままポツリ、ポツリと独り言の様に語り始める

「…イタチ兄さんね…私のここをトンってして優しく笑って出て行ったんだ…」

 

淡々とそう語るフェイト、その目頭には薄っすらと涙が浮かんでいる

 

彼がどれだけ自分の心を助けてくれたのだろう…そう考えるだけでフェイトの胸は締め付けられる一方だった

 

そんな彼女の様子にユーノ達は何も答えられない

 

何も無い沈黙だけが只々流れ、時間だけが過ぎてゆく

 

しかし、そんな中、彼等を優しく包む様な慈愛が込もった声がその場にいた彼女達の耳に入ってくる

 

「…それなら、貴方達が彼を救ってあげなくちゃね」

 

「…え?」

 

唐突にそう優しく告げられた声に思わず間の抜けた様な声を溢すなのは

 

その時、彼女達の暗くなった心の中に微かに光が差し込んだ様な気がした

その声の持ち主はアースラ艦を束ねている要でありクロノハラオウンの艦長リンディ

彼女達は優しく告げて来たリンディに視線が釘付けになる

 

「…もし間違った事を彼がしているのなら、貴方達が止めればいい…貴方達がそうしてても何も始まらないわ」

 

リンディは彼女達に喝を入れる様な口調でそう伝えると涙目を浮かべていたフェイトを優しく抱き寄せた

 

そうして、フェイトを抱き寄せた彼女は微笑みながら彼女の頭を何度も何度も柔らかく撫でてやる

「…頑張りましょう、フェイト」

 

フェイトをそうしてイタチに対する一途な彼女の思いを優しく励ますリンディ

 

いままで優しかった彼の姿を知っているフェイトは持ち掛けられたリンディのその提案に迷う事はなかった

 

フェイトは抱き寄せて来たリンディの肩をゆっくりと引き剥がす

 

「…私、自分の眼で確かめる、そして、彼が間違っているなら私が止める」

 

恥ずかしがり屋だったフェイトの明確にはっきりとした決意はその場にいたなのは達の心に深く響いた

 

なのははそんなフェイトに続く様に拳に力を込めて微笑む

 

「…そうだよ!ちゃんと話し合えばイタチさんとだってきっと分かり合える」

 

そう、イタチと過ごしたあの日々は嘘なんかじゃない

 

自分達にいつも優しく遊んでくれたり、話を聞いていた彼の姿を自分達は知っている

 

だからこそ、絶望するにはまだ早い、希望はまだある

 

なのははリンディの言葉、そしてフェイトの決意に促された様に自身の強い意思を彼等に示す

 

「だからフェイトちゃん!一緒にイタチさんとお話しに行こう!」

 

なのはは力強くフェイトの眼の前に手を差し出す、その彼女の瞳にもまた力強い意思が宿っていた

 

フェイトはそんな彼女の差し出してきた手を力強く握り返す

 

「うん!どうなるかは分からないけど諦めたら駄目だよね」

 

こうして、心を一つにしてゆくなのはとフェイト

そんな彼女達の様子を物陰から覗く様に見守る一人の人物

 

一時は彼女達がバラバラになるだろうと感じていた彼は予想を裏切られたのにも関わらず彼女達が力強く立ち直ってゆく姿にその表情はいつしか綻んでいた

 

そうして、物陰に隠れていた彼の身体は歪み始め、中から黒い烏が飛び出てくる

 

天上に向かい羽ばたく黒い翼…

 

そして、その人物が立っていたところには何も形跡が残らない

 

 

魔法少女と管理局…

 

 

彼等に待ち受ける者は一体なんなのか…

 

 

その先、まだ闘う前の彼等には予想もできなかった事態が待ち受けるとは思いもしなかっただろう

 

 

絶望へのカウントダウン、

 

それは確実に闘う意思を示した彼女達に着実にへと忍び寄っているのだった


 
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