◆ 第2話 なまえをつけて ◆
なのは嬢のおひざの上から、おはこんばんちは、どうもぬこです。
本日野良猫から、高町さんちの飼い猫へと昇格したしだいですよっと。
フフフ、これで食、住は保障された! 存分に全力でだらだらできるぜ!
俺は究極のなまけを開発するよ! 憧れの人は太公望、もしくは太上老君です(フジリュー的な意味で)
そんな風に浮かれていた時期が私にもありました。
現在、飼い主たるなのは嬢はお母様に直談判中であります。
何でも、お母様は喫茶店を経営しておられるんだとか。そりゃあ、動物に関しては神経質になりますわな。
ここに来て、野良への逆戻りフラグが乱立し始めた模様。
まさか【元あった所に返してきなさい】などと自分に言われそうになる日が来ようとは……!
がんばるんだ! 小さなご主人(仮)!
くっ、何か援護できればいいのだが……
あいにく自分はこの身ひとつの文無しであるわけで、しかも猫。どうしろってんだよ!
いやまて、猫だからこそできることがあるんじゃないか?
この猫ぼでーを存分に活かしたニコポならぬ見るポ! 俺が見つめた相手は皆惚れてしまうのだ……!
主人公の必須スキルだな!早速やってみる。
ぬこはお母様をじっと見つめた。
きゅんっ
フハハハ、計画通り!
その日、喫茶翠屋の営業が終わって、家に帰ってみると子供たちの話し声が聞こえた。
なにやら、少しもめているようだ。珍しく、恭也と美由紀じゃなくてなのはがその中心にいるみたいね。
ふふ、こんなときこそお母さんの出番よっ!
「どうしたの、なにかあったかしら? ……って、あら?」
そこには、恭也に美由希、なのは、そしてなのはのひざの上に小さなお客さんがいた。
それは、ふわふわとした黒い毛並みの小さな猫だった。
「あらあら、かわいいお客様ね。どうしたの?」
優しく頭をなでてあげてるなのはに習って私もなでてつつ、聞いてみる。
というか、ずいぶん人懐っこい子ね。猫は警戒心が強いって聞くけど……まだ小さいからかしら?
「いや、それが母さん、なのはがこの子を飼いたいということらしい。
一応、翠屋のことがあるからどうしようかって話していたところなんだ」
「私としては飼ってあげてもいいと思うんだけどねー、こんなに可愛いんだし」
そういう問題じゃないだろ、と恭也が言っているけど、確かに美由希が言うように可愛いわねぇ。
それになで心地もいいし、ちょっと癖になりそう。
「そうだよねっ、それにお世話も私が全部やるし、猫さん賢いから迷惑なんてならないもんっ」
「とまぁ、こんな感じなんだ。とりあえず、母さんの意見を聞いてからにしようって事になったんだよ」
ふむふむ、事情は大体分かったわ。確かに飲食店を経営する身としては、そういうことはちょっと考えてしまうわね。
でも、なのはが久しぶりに言ってくれたわがままなのよね。
……なのははいつも大丈夫だってニコニコしてたけど本当は寂しかったに決まってる。
そんな風に無理に気を遣わせてしまった事が、親として本当に情けなかった。
そんな、なのはの寂しさをこの子が和らげてくれるならそれでもいいかな、なんて思いながら小さな黒猫に目を向けると、その子はじっとこちらを見つめていた。
……ちょっと撫ですぎちゃったかしら? と、考えたその時に。
こてん。
首をかしげて、こちらを見つめてきた。
・
・
・
・
きゅんっ
「きゃーかわいい~!! もう許しちゃう! お母さん許しちゃう! 今日からこの子はうちの家族よ!」
「ほんとに!? やったー! お母さんありがとう!」
「ふふ、よかったねー、なのは。ねね、私にも抱かせてよ」
「はは、まぁこうなるとは思っていたさ。よかったな、なのは」
「うんっ」
ふふっ、やっぱり家族はこうでなくちゃね。
みんなが笑い合えるなら、それはきっと間違いなんかじゃないもの。
これから、もっと素敵な毎日になるはずだわ。
でも、そのためにまずはやらなきゃいけない事があるわよね。
「それじゃあ、なのは? あなたにお願いすることがあるわ」
「なぁに? お母さん」
「この子の名前を決めてもらいます!」
「わわ、わたしがやるのっ?!」
はわわ、重大な役目をもらっちゃった。
そういえば、ずっと猫さんって呼んでたから名前の事なんてすっかり忘れちゃってたなぁ。ごめんね、猫さん。
うぅ、でも名前なんて、すぐには思いつかないよぅ。
「そういえば、その子はオスなのか?」
「えっ? えっと~、うん、そうみたい」
「そっか~、男の子かぁ。じゃあ、カッコいい名前をつけてあげなきゃね」
そんなお姉ちゃんに頷きながらみんなで考えてみます。
うぅ~思いつかない~。私が家族になろうっていたのに、なさけないなぁ。
とりあえず、みんなに聞いてよう!
「お母さんたちはなにか思いついた?」
お兄ちゃんの場合
「無難にクロとかでいいんじゃないか?」
お姉ちゃんの場合
「そうだねぇ……あっ、トレインとかどう?」
お母さんの場合
「うーん、ワカモト……いえ、シューゾウっていうのも捨てがたいわね……」
まともなのは、お兄ちゃんぐらいだと思うのは私だけなのかな…
お姉ちゃん、某黒猫からとるのはどうかと思うの。
それに、お母さん……
やっぱり最後の砦は私なの!
ちゃんと素敵なお名前を付けてあげるからね、とそんな気持ちを込めて猫さんを見つめてみると、猫さんもそれに答えるかのように「みぃ」と鳴いてくれた。……あっ、それだ!
「わたし、みぃ君がいいと思う!」
ちょっと、そのままかな? なんて思ったけど、自分のことなんだからちゃんとこの子にも意見を聞かなきゃね。
その後、みんな私が考えた名前がいいと言ってくれて、みぃ君も喜んでるみたいだったから、今日からこの子は高町みぃ君です。
私の最初のお友達で、大切な家族です
後日、お父さんにこの話をしたら、何も聞いてなかったみたいで若干すねちゃってたの。
ごめんね、お父さん。
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空白期 その1
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