No.446463

遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-第二章・十話

月千一夜さん

こんにちわ
十話、公開です

今回は、最後にちょとしたお話があります

2012-07-05 16:00:49 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:9031   閲覧ユーザー数:7181

それは、“雷”であり

それは、“闇”である

 

男は、そう考えていた

男は、そう理解していた

 

その雷は、全てを焼きつくし

その闇は、全てを呑み込むのだと

 

そう教えられたからだ

 

故に

故に、男は嗤うのだ

 

嗤いながら、その力を行使するのだ

 

その、呪われた力を

その、恐ろしき力を

 

その、愉快な愉快な願いをかなえる為に

 

男は、嗤うのだ

 

 

 

 

「さてさて・・・それでは、始めるとしましょうか」

 

 

 

 

 

その、恐ろしき兵の名は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真・魏伝-≫

第二章 第十話【雷電兵】

 

 

 

 

ーーー†ーーー

 

「ぎゃぁぁあああっ!!!??」

 

 

響き渡る悲鳴

それと同時に、“バヂンッ”と、おぞましい音が響いていった

その音の正体は、“雷”

不気味な目をした兵士たちが身に纏う、“黒き雷”によるものだ

 

 

「な、なんだコイツらっ!!?」

 

 

襲いくる謎の軍勢に、剣を振るう蜀の兵たち

その剣が、“彼ら”に届いた瞬間

“彼ら”は、ニヤリと笑みを浮かべ・・・その剣の主に、覆い被さるのだ

 

そして・・・

 

 

 

「ぐ、ぐぎゃぁぁぁああっ!!?」

 

 

 

“放電”

 

その威力は、周りにいる者すら巻き込むほどに強力なものであった

その輝きは、周りにいる者に多大な恐怖を植え付けるには十分すぎるものであった

 

やがて、恐怖は“伝染”する

 

 

 

「ひ、ひぃ・・・!」

 

「に、逃げるんだっ!!」

 

 

 

叫び、逃げ惑う兵士達

そんな中、男は“嗤いながら”呟いた

 

 

「さてはて、いかがですかな?

これぞ私の率いる新たな兵・・・“雷電兵”と申します」

 

 

“雷電兵”

 

その名の通り、その身に雷を宿し、放電する

恐ろしい兵士

その名を聞いた瞬間に、皆は息を呑んでいた

 

 

「そんな、馬鹿な・・・」

 

「これは・・・いったい」

 

 

“有り得ない”

普通では絶対に、有り得ない光景

しかし、その有り得ないはずの光景がいま・・・目の前で起きているのだ

紛れもなく、これは“現実”なのだ

 

故に・・・

 

 

 

 

 

「やれやれ・・・これはまた、とんでもない者が出てきたな」

 

「そうじゃのう」

 

「うぅ、なんじゃか恐いのじゃ」

 

「雷でビリビリって、私も嫌ですよ~」

 

「いや、ていうか下手したら死ぬで・・・マジで」

 

 

 

 

“彼女達”は、それを“受け入れた”

受け入れて、“戦う”ことを選んだのだ

 

 

 

「おやおや、流石は“経験者”の方々ですな

私の率いる雷電兵を見ても、あまり驚いた様子がないですなぁ」

 

 

そんな彼女達の姿に、雷銅は僅かに驚きの表情を浮かべ言った

それに、七乃は苦笑を返す

 

 

「いえ、充分驚いてますよ~?

けどまぁ、“それだけ”ですねぇ」

 

「うむ

残念じゃが、儂らは急いでおるのでな

あまり、立ち止まっているわけにはいかんのじゃ」

 

 

祭の言葉

夕は、“そうだな”と笑った

 

 

「こっちは、家族が待っているかもしれないんだ

悪いが、お前に構っている時間はないんだ」

 

「そうじゃな、その通りじゃ

一刀が、待っておるのじゃ」

 

 

美羽がそう言うと、夕と祭と七乃は笑いながら頷いて見せた

そんな彼女達を見つめ、雷銅は嗤うのを止めた

 

 

「これはこれは・・・もしや、私はあまり歓迎をされていませんのかな?」

 

「言わないでも、わかるだろ?」

 

 

“なるほどなるほど”と、雷銅

 

瞬間・・・

 

 

 

 

「これはこれは・・・少々、舐められてしまったようですなっ!!」

 

 

 

 

彼の体から、黒く禍々しい“雷”が放出された

その“威力”は、他の雷電兵の“比”ではない

 

 

「さぁさぁ、この状態の私を前にしても・・・同じ言葉が、ほざけますかな?」

 

「これは・・・っ」

 

 

“バヂン”と、弾ける雷

それらが、凄まじい速度で夕たちに襲い掛かる

彼女達は、それを間一髪回避するのだった

 

 

「なんと・・・すこぶる、面妖な技じゃっ!」

 

 

祭の言葉

雷銅は、満足そうに嗤う

 

 

「これぞ、これぞ、これぞこの私の力です

地獄より蘇り、手にした力ですっ!!」

 

「くっ!」

 

 

降り注ぐ“雷”を、彼女達は何とか回避していく

しかし、雷は止まらない

止まることを知らない

“このままではマズイ”と、七乃はもう何度目かもわからない雷を躱し思う

 

 

「雷銅っ!!」

 

「っ!?」

 

 

そんな中、響いた叫び

同時に、雷銅をめがけ幾本もの矢が飛来していく

が、雷銅はそれを躱し、ニヤリと笑みを浮かべていた

その視線の先には、紫苑と桔梗の二人が立っていた

 

 

「ほっほう・・・これはこれはお二方

まさか、またこの私を殺すおつもりですかな?」

 

 

“しかししかし”と、雷銅

彼は“バチバチ”と体に凄まじい量の雷を身に纏い、2人を指さして笑った

 

 

「今の私を殺すことは、貴女方では不可能ですな」

 

「そのようなこと・・・」

 

「やってみないとわからないわよ?」

 

 

そう言って、武器を構える2人

しかし、この光景を前にし、七乃は表情を歪める

“駄目だ”と

彼女の直感が、そう告げていたのだ

 

 

「夕さん・・・他の蜀の将兵の援護をお願いできますか?」

 

「うむ?

なんだ、いきなり?」

 

 

戸惑う夕

しかし、そんな夕の言葉に答えることなく、七乃は美羽と王異

そして祭へと視線を移した

 

 

「王異さんと美羽様も、夕さんを手伝ってあげてくれませんか?

祭さんは、申し訳ありませんが黄忠さんと厳顔さんのことをお願いします

私は、劉備さんを説得してみます」

 

「七乃・・・?」

 

 

美羽の言葉

七乃は相変わらず、表情を歪ませたまま

 

 

「私の考えが、甘かったみたいです・・・」

 

 

その口元から、静かに言葉を発するのだった

 

 

 

 

 

「力を合わせ、急いでここから離脱します

今のままでは、私たちは絶対に勝てません」

 

 

 

 

 

ーーー†ーーー

 

「そ、そんな・・・」

 

 

劉備は、小さく声を漏らしていた

自身の目の前

広がった信じられない光景に

唯々、恐怖を抱きながら

 

 

「こんなのって・・・」

 

 

“ないよ”と、彼女は泣いた

目の前で散っていく、幾つもの“命”

彼女は何も出来ないまま、其の場に立ち尽くしていた

 

 

 

「劉備さんっ!」

 

「っ!」

 

 

そんな彼女に、かけられる声

慌てて振り向いた先

其処には、その身に僅かに返り血を浴びた七乃が立っていた

 

 

「良かった、無事だったんですね」

 

 

そう言って、安心したように歩み寄る七乃

それに対し、劉備は・・・桃香は、その瞳を揺らした

 

 

「“良かった”?」

 

 

呟き、七乃を睨む桃香

彼女はそれから、泣きながら大きな声をあげた

 

 

「なにが、良かったのさ!?

こんなことになって、沢山の人が死んでるんだよっ!!?

全然、良くないよっ!!!!」

 

「っ!」

 

 

“ガシッ”と、七乃の肩を掴み叫ぶ桃香

その瞳に浮かぶのは、“憎悪”

彼女はそのまま、七乃のことを睨み叫び続ける

 

 

 

 

 

 

「全部・・・全部、貴女達のせいだっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

刹那

 

桃香が叫ぶのと、恐らくは同時に

“パンッ”と、乾いた音が響いた

その音の正体に、桃香が気づいたのは

自身の頬に、鋭い“痛み”を感じた時だった

 

 

「目を覚ましなさい・・・劉玄徳っ!!!!」

 

 

それから、すぐのこと

七乃は、桃香を睨み、叫んだのだ

 

 

「貴女が、大切にしているものは、信じるべきものはっ!!!!

そんな、下らない予言なんかじゃないはずですっ!!!!」

 

 

叫び、七乃は指を差す

その先には、必死に桃香を守って戦う兵の姿があった

彼らは、ボロボロになりながら

しかしそれでも、この先には行かせまいと、戦っているのだ

その姿を見つめたまま、七乃は桃香に向い再び叫ぶのだった

 

 

 

 

「貴女が守るべきものは、貴女の目の前にあるでしょうっ!!!??」

 

「っ・・・!!」

 

 

 

 

大きく、目を見開く桃香をよそに

七乃は、剣を構える

そして桃香を一瞬だけ見つめ、笑うのだった

 

 

「まぁ、私の言葉なんて信じられないかもしれませんけど

だけど今だけは、信じてくれませんか?

私たちも一緒に、貴女の大切なモノを守る為に戦うということを・・・」

 

「ぁ・・・」

 

 

呟き、駆け出していく七乃

その背を見つめたまま、桃香は立ち尽くしていた

喧騒の中、何一つ

言葉も出ないままに

 

しかし、やがて・・・

 

 

 

「私は・・・」

 

 

 

彼女は、口を開いた

その瞳は、相変わらず頼りなく揺れている

だが、しかし

 

 

 

「私は、いったい・・・」

 

 

 

“どうすれば”と

そう言った、彼女の瞳には

 

先ほどの、黒い感情はなく

唯々、弱い、たった一人の少女のまま

 

儚げな想いが、揺れているのだった・・・

 

 

 

 

 

 

ーーー†ーーー

 

「ぐぅっ・・・!」

 

 

声を上げ、その場に膝をつくのは桔梗である

彼女の衣服は所々が焦げており、その体にも多くの傷がついていた

その隣

彼女の仲間でもある紫苑もまた、同じように傷ついたまま

それでも尚、弓を構えているのだった

 

そんな二人を見つめる雷銅の瞳は、何処までも冷たく、不気味なものであった

 

 

「おやおやおやおや、先ほどまでの勢いは何処へやら

もう、もうお終いですかな?」

 

「くそ・・・」

 

 

雷銅の言葉

二人は返すことが出来ず、悔しそうに表情を歪めるだけだ

それを見て、また雷銅は愉快そうに笑うのだった

 

 

「いやはや、生き返ってみるものですなぁ

まさかまさか、このような愉快な思いが出来ようとは思いませんからな」

 

 

言って、雷銅は手を叩きながら大声で嗤った

桔梗と紫苑を、冷めた目で見下しながら

 

 

 

「随分と、愉快そうじゃのう」

 

「っ・・・」

 

 

そんな時

雷銅の頬を、一本の矢が掠めた

それと同時に、雷銅が振り返った先

 

其処には、祭が弓を構え、不敵に笑い立っていた

 

 

 

「儂も、混ぜてくれんかのう?」

 

「これはこれは・・・急なお誘いですな」

 

 

言って、雷銅は自身の手に雷を集める

そして、祭を睨み付けた

 

 

「いいでしょう・・・まとめて、消して差し上げましょう」

 

「ふっ・・・やれるものならば、やってみるがよい」

 

 

構え、対峙する2人

空気が、震えていた

 

そんな、鋭い視線が交錯する中・・・

 

 

 

 

 

 

「お楽しみのところ悪いが・・・残念ながら、時間切れだ“雷”」

 

 

 

 

 

 

 

“彼”は、現れた

真紅の髪を靡かせる、その男は不気味な笑みを浮かべながら

 

其処に、立っていたのだ

 

 

 

「これはこれは、“蘭”ではないですか

時間切れとは、いったいどういうことですかな?」

 

「そのままの意味だ、雷

我々のことを、王がお呼びなのだ」

 

 

“集合だよ”と、蘭と呼ばれた男は苦笑する

それを聞いて、雷銅は身に纏っていた雷を消し去った

 

 

「それはそれは、とても残念です

此処からが、面白いところだったのですが」

 

 

言って、雷銅が見つめるのは紫苑と桔梗の二人だ

彼は二人を見つめると、深々と頭を下げる

 

 

「名残惜しいですが、本日はこれにて」

 

 

“また、お会いしましょう”と

そう言って、彼はその場から“消えた”

残ったのは、祭と桔梗と紫苑の三人

 

そして・・・真紅の男

 

やがて、男は頭をポリポリと掻き

若干“照れくさそうに”、口を開いた

 

 

「まぁ、あれだ・・・会ってすぐにさよならってのも、俺的には嫌なんだけどさ

王の命令には、逆らえねぇからよ」

 

 

“じゃあな”

そう言って、その男もまた融けるよう消えていった

それと、同時に

紫苑が、表情を歪め言葉を漏らすのだった

 

 

「そんな・・・呉蘭・・・蘭まで・・・」

 

 

その様子を、桔梗は心配そうな眼差しで見つめている

と、その二人を見つめ溜め息を吐き出すのは祭だ

 

 

「まぁ、ひとまず・・・何とか、なったのかのう」

 

 

彼女はひとまず弓を下ろすと、2人を見つめたまま呟くのだった

 

 

 

 

 

 

 

ーーー†ーーー

 

「お~~~ほっほっほ」

 

 

ある、深い山の中

響いたのは、甲高い笑い声

其の声の主である金髪の女性・・・袁紹こと麗羽は、上機嫌そうに笑いながら歩いていた

その後ろからは、五人の女性がついて歩いている

 

 

「姫、ご機嫌だね」

 

「そりゃ、散々我儘言って、結局その我儘押し通しちゃうんだもん

自分の思うとおりになったら、そりゃご機嫌にもなるっしょ」

 

 

おかっぱ頭が特徴の、顔良こと斗詩

背中に巨大な剣を背負った少女、文醜こと猪々子

 

 

「はぁ・・・疲れるなぁ、もう」

 

 

普通な少女、公孫讃こと白蓮

 

 

「うぅ~・・・どうして音々達が、こんな奴の付き添いなぞしなければならんのです」

 

「音々・・・怒ってる?」

 

 

小さな少女、陳宮こと音々

真紅の髪の少女、呂布こと恋の五人である

その五人の先頭を歩く麗羽は、ご機嫌そうに歩いていく

 

さて、この六人

何故このような場所にいるのかというと、全ては麗羽の我儘から始まったのである

 

 

『温泉に行きましょう』

 

 

これである

彼女は、唐突に、突然に、そう言ったのだ

その温泉とは、成都から僅かに距離のある山の中にある所謂“秘湯”である

当初は危険だと、反対する周りだったのだが

しかしあまりの麗羽のしつこさに、皆の心が折れたのだ

それはもう、バッキバキにだ

 

 

『もう、いかせてやりましょう・・・』

 

 

そう言って、心底疲れたように溜め息を吐き出した愛紗の姿を

皆は未だに、覚えているだろう

 

それからの行動は早かった

いつものように、斗詩と猪々子を引き連れ

いつものように、白蓮を巻き込み

念の為と、恋と音々を護衛に加え

六人は、秘湯に向かったのだった

 

今は、その帰りである

 

 

 

「お~~~~ほっほっほっほ♪」

 

 

 

だから、だろうか

彼女のその甲高い笑い声が、いつもよりもさらに高く聴こえるのは

 

 

「・・・?」

 

 

そんな折

ふと、恋が足を止めた

 

 

「恋殿?」

 

 

そのことに気付き、音々も足を止めた

その視線の先

恋は目を細めると、小さく呟く

 

 

「誰か・・・“来る”」

 

 

その言葉に、皆の間に緊張感が走った

 

 

「お~~~~~ほっほっほっほ!!」

 

 

・・・唯一人を除いて、だが

 

さておき

恋の視線の先

確かに、“ガサリ”と、草を掻き分けるような音が聴こえていた

皆も、その先をジッと見つめている

 

それから、数秒後のこと

彼女達の視線の先・・・

 

 

 

「ぐっ・・・」

 

 

一人の青年が、姿を現したのだ

白き衣服を身に纏う、一人の青年だ

彼女達は、その青年の登場に驚き、さらに驚くことになる

 

 

「星、雛里・・・?」

 

 

目の前の青年

彼は、二人の少女を背負っていたのだ

その見覚えのある少女に、思わず恋はその二人の名を呟いていた

 

 

「ぅ・・・」

 

 

と、そんな中

膝をつく青年

彼は乱れた息もそのままに、恋を見つめたまま呟く

 

 

 

 

 

「二人を・・・助けて、あげて」

 

 

 

 

 

“お願い”と

そう言って、倒れてしまう青年

 

その瞬間

柔らかな風が、彼女達の頬を掠め

 

吹き抜けていったのだった・・・

 

 

★あとがき★

 

どうも、こんにちわ

珍しく、昔くらいのペースでの投稿ですww

 

今日は、まぁそれなりに重要なお知らせを

知っている方もいるかもしれませぬが

にじふぁんが、閉鎖するみたいです

 

それに伴い、作品を非難させるべくHPを作ってみましたww

興味のある方は、探してみてください

 

にじふぁんのほうは、引っ越しが済み次第、作品を削除していきます

 

 

では、またお会いする日まで


 
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