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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第十話 激突!!オリ主VS自称オリ主

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2012-07-05 06:37:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:117815   閲覧ユーザー数:106790

 ……ついに来てしまった。喫茶『翠屋』に。

 今までは原作に関わりたくないから来るのを避けていたのだがシュテル達の存在がバレてしまい、事情を説明せざるを得なくなってしまった。店の入り口には『本日、臨時休業』の張り紙がある。

 

 「ただいま~」

 

 なのはちゃんが店の中に入り、俺達もそれに続いて中に入って行く。

 

 「おかえりなさいなのは。皆もいらっしゃい」

 

 なのはちゃんと同じ栗色の髪した一人の女性が出迎えてくれる。

 高町桃子さんだな。

 若いな~。なのはちゃんを産んで10年以上経っているとは思えないよホント。

 

 「それでそちらの子達がさっきなのはの言っていた子達ね。私は高町桃子。なのはの母親です」

 

 こちらを向き挨拶してくれる桃子さん。

 

 「長谷川勇紀と言います。今日はお店が休みなのにわざわざすみません」

 

 頭を下げて挨拶する。

 

 「あらあら、礼儀正しい子ね。気にしなくてもいいわよ。それでそちらの子達が…」

 

 「俺の家族です」

 

 そういってシュテル達に挨拶するようにと視線で伝えるとこちらの意図を理解したシュテル達が

 

 「シュテル・長谷川です」

 

 「僕はレヴィ・長谷川だよ」

 

 「ディ…ディアーチェ・長谷川…です」

 

 「ユーリ・長谷川と申します」

 

 それぞれに挨拶をする。シュテルを見て少し固まっていた桃子さんだが、すぐに意識を取り戻し

 

 「皆礼儀正しくていい子達ね。それじゃあ何か作るから少し待っててね」

 

 そう言って店の奥に消えていく桃子さん。

 

 「じゃあ、私達も席に着きましょうか」

 

 そういって奥のテーブルに案内してくれるなのはちゃんの後に着いていき、俺達も席に着いた。

 

 俺の横一列に右から俺、シュテル、ユーリ、レヴィ、ディアーチェと長谷川家の面々が座り、対面の席に原作キャラ一同で俺の前から横一列にはやてちゃん、なのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん、アリサちゃん、すずか…………それと銀髪君。

 着いて来てたのか。隣のすずかはすごく嫌そうな表情してるな。

 まずは皆、自己紹介をして(銀髪君は沈黙中)

 

 「それじゃあ、早速だけど何から話せばいいのかな?」

 

 目の前にいる彼女達に質問する俺。最初に聞いてきたのはアリシアちゃんだった。

 

 「そうね。貴方は魔導師って事かどうかを確認したいんだけど?」

 

 「ああ、俺は確かに魔導師だね。魔法使えるし」

 

 正直に答える。

 

 「その割には魔力をほとんど感じないんだけど?」

 

 アリシアちゃんの隣に座っていたフェイトちゃんも聞いてくる。

 

 「普段はリミッターで魔力を抑えてるからな。基本使うのなんて念話ぐらいだから」

 

 そう答えると成る程といった感じで頷く魔導師組。

 

 「じゃあ、次に聞きたいんは王様達がここにおる理由やな」

 

 はやてちゃんが今日の本題について聞いてくる。

 

 「これに関してはちょっと君らの予想以上の答えになると思うけどそれでいいか?」

 

 一応聞いておく俺。原作組は『何だろう?』といった表情で首を傾げているがとりあえず頷いてくれた。

 

 「じゃあ話すな」

 

 そういって俺は話す。このシュテル達が平行世界から来た四人で今はもうマテリアルでも砕け得ぬ闇でもなく普通の人間だという事、今は俺と同じ学校に通っている事、そして俺の家で家族として一緒に過ごしているという事など…。

 

 初めは驚いていた原作組だったが俺達五人がこの世界の『砕け得ぬ闇事件』をサーチャーで見ていた様子を録画していた映像を見せると納得してくれた。

 

 「へ、平行世界…ね。相変わらず何でも有りなのね魔法って」

 

 「魔法は関係無いと思うんだが…こんな所かな?」

 

 「そうやな。王様達がここにおる理由も分かった事やし」

 

 はやてちゃんがそう言い、他の皆もこれ以上聞きたい事は特に無い様だ。

 

 「あ、あのね!」

 

 そう思っていたらなのはちゃんが突然声を上げた。

 

 「もし良かったら長谷川君もシュテル達も、その…私達とお友達になってくれないかな?」

 

 「「「「「友達?」」」」」

 

 俺達は思わず聞き返していた。

 

 「うん。折角出会えたんだし、できればもっとお話して仲良くなりたいなって……駄目、かな?」

 

 断りたい。ここで友達なんかになったら原作介入率が大幅にアップしてしまう。だから断りたいのだが…

 

 「俺は構わない。シュテル達は?違う学校の友達がいるってのも悪くないと思うけど」

 

 「私も構いません。高町なのはと敵対したりする理由なんてもうありませんし」

 

 「僕もOKだよ」

 

 「ま、まあ貴様等がどうしてもというのなら我も友達になってやっても構わぬぞ//」

 

 「こちらこそよろしくお願いします」

 

 そういって返事する俺達五人。

 無理!!この流れでは断れねー。だから状況に屈するしかなかった。これで確実に介入率が上がったな。

 …まあいいさ。まだ完全に介入したと決まった訳ではない。今後の展開に注意さえすれば原作介入せず平和に暮らせる筈だ。……それにしてもディアーチェはツンデレですねホント。

 

 「あらあら。すっかり仲良しさんね」

 

 そういって桃子さんが料理を運んできてくれた。美味しそうだ。

 

 しかし昼ご飯を食べようとした矢先に今まで黙っていた銀髪君が会話に割り込んできた。

 

 「やあ、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ。メシ食う前に少し話さないか?もちろんなのは達も」

 

 そういって笑顔を作り話しかける銀髪君。

 

 「「「「「……………………」」」」」

 

 突然黙るシュテル達。原作組も

 

 「「「「「「……………………」」」」」」

 

 あからさまに嫌そうな顔になっている。それに気付いていない銀髪君は

 

 「あの時は戦うしかなかったけど今はもうその必要も無いんだろ?」

 

 自分のペースで喋る。

 

 「あの時?貴方とは初対面の筈ですが?」

 

 「ずいぶん馴れ馴れしい奴だね。僕はお前と話す事なんてないよ」

 

 「ユウキの話を聞いてなかったのか?我等はこの世界の我等と違うというのに」

 

 「それに自分の自己紹介も出来ないのですか?」

 

 不機嫌そうに答える長谷川家の面々。

 

 「そういえばそうだったな。俺は西条貴志って言うんだ。よろしくな」

 

 何故か一瞬驚いた様な表情になったが、またも笑顔を作って喋る銀髪君。

 

 「よろしくしなくていいです」

 

 「てゆうかどっかいってくれない?」

 

 「その前に口を開くな下郎」

 

 「こっち見ないで下さい」

 

 そして銀髪君…西条君に対し冷たい態度で返す四人。特にディアーチェが『下郎』なんて言うのは久しぶりだ。余程彼が嫌いなんだな。

 

 「そんな事言わなくてもいいぜ。お前等の気持ちは分かってるから」

 

 「「「「はあ?」」」」

 

 意味不明な事を言い出す西条君。

 なんか自分勝手な解釈をしたのだろう。

 

 「やっぱりこの世界のシュテル達とは違うんだな。まさか全員がツンデレなんて思いもしなかったよ。おかげで少しビックリした」

 

 さっき表情が一瞬変わったのはそう解釈したからかよ!?

 彼が言うにはシュテル達が一目惚れして恥ずかしさを隠すためにそっけない態度をとっているとかなんとか。

 

 「頭の中は大丈夫ですか?」

 

 「絶対僕よりアホだよコイツ」

 

 「気持ち悪い事言うな下郎!」

 

 「ちゃんと日本語理解出来てますか?」

 

 そんなシュテル達は勝手な解釈をされた事に腹を立て怒っているが彼には全く伝わっていない。

 ……何ていうかこっちに飛び火してきそうなので俺は昼ご飯を持ってそっと席を立ちカウンター席に移動し、昼ご飯の残りを食べ始めた。

 

 

 

 それからもシュテル達や原作組、西条君の会話(というか口論)は続いている。

 俺は丁度昼ご飯を食べ終え、そろそろアイツ等を止めようかなあと思っていたら

 

 「なあ」

 

 隣から声を掛けられた。

 声の主は八神はやてちゃんだった。自分の分の昼ご飯も持ってきている。いつの間にこっちに来たんだか…。

 

 「八神…だったよな?どうした?」

 

 「ちょい長谷川君に聞きたいんやけどな」

 

 「何だ?」

 

 「いくらアイツが初対面から馴れ馴れしい奴でも王様はともかくシュテルやユーリはあんなにきつい態度取るとは思えんのやけど、あの子ら何かあったん?」

 

 「ああ…その事な」

 

 俺はその理由について答える。

 

 「実は闇の欠片事件の際に高町とこの世界のシュテルとの戦いをサーチャーで見ていたんだがアイツ、いきなり乱入しただろ?しかも背後からの攻撃。それを見たシュテル達が『こんな卑怯な戦い方するなんてこっちの世界のシュテルが可哀相』って言ってな。それから砕け得ぬ闇事件の時もお前等が必死にこっちのユーリと戦ってるのに最後にフラッと出てきてやっぱり背後から攻撃…。そんな戦い方しかしない奴に好感持てると思うか?」

 

 そう、基本背後から突然奇襲する様な戦いしかしていない奴なのだ。

 ただ、西条君…というか呼び捨てでいいか。西条の攻撃方法…

 無数の剣を投影し、投擲していたのだがあれはどう見ても

 

 「(『無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)』だよなあ)」

 

 そんな事を考える。

 

 『無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)

 

 原作の『Fate/stay night』にてアーチャーの切り札。固有結界内において魔力が続く限り剣を精製し自在に操る能力だったな。しかしアイツは固有結界を張らずとも剣を投影していた。しかも投影した剣が触れたりした瞬間爆発をおこしていたので『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』も使えるとみて間違い無いな。

 

 「そういえばアイツそんな事しよったね」

 

 その時の事を思い出したのかはやてちゃんは頷いて納得した。

 

 「流石に仲間を助けるにしても背後からいきなり襲うなんて見ていてあまりいい気しないし」

 

 「やなあ。シグナム達も『騎士はおろか男の風上にもおけん奴』って言うとったし」

 

 シグナム達って言えば守護騎士達の事か。出来ればあまり会いたく無いなあ。

 

 「なあ八神。アイツ正面からまともに戦った事ってあるのか?」

 

 「え?……う~ん、どうやろう?わたしが見た事あるんは防衛プログラムと戦った時以外やと今長谷川君が言うたユーリとの戦いぐらいちゃうかな?シュテルとの戦いの事はなのはちゃんから聞いたから知っとったけど」

 

 防衛プログラム戦だってユーノ、アルフ、ザフィーラがプログラムの攻撃を封じてたんじゃなかったっけ?そう考えるとやっぱまともに戦って無いよなあ。

 

 「そっか。…あっ!そういえば闇の書事件の前にもこの街で大きな魔力反応あったっけな」

 

 ジュエルシード事件の事なんだが。

 

 「それに関してはなのはちゃんとフェイトちゃん、アリシアちゃんが関わっとったから」

 

 「なら後で三人の誰かに聞いてみようかな?」

 

 「そうしてみたらええと思うよ?」

 

 アイツが原作介入してたなら多分なのはちゃんの方に接触してるだろうし。

 

 「じゃあ、さっそ「おい、テメェ!!!」く…?」

 

 いきなり声を荒げたかと思うと西条が俺を睨んでいた。

 

 「何はやてと話してんだよ!?はやて困ってんじゃねえか!!」

 

 はやての方を向くと『そんな事無いで』と首を左右に振り、西条の言葉を否定している。

 

 「八神は違うって言ってるんだが?」

 

 「はやては大人しくて優しい子だから言えないだけなんだよ!勘違いしてんじゃねえぞモブ野郎が!!」

 

 凄い主人公気取りだな。モブ野郎って…。まあ原作には関わりたくないから別にどう呼ばれても俺はいいんだけどさ。

 

 「それにすずかにも話しかけてやがったよな!」

 

 試合が終わった時の事言ってんのか?

 

 「最初に話し掛けてきたのはすずかの方だし、すずかは知り合いなんだ。別に話すぐらいおかしくないだろ」

 

 「ざけた事言ってんじゃねえ!!すずかも大人しい子なんだ!!『嫌だ』って言えないって事が分からねえのか!?」

 

 すずかの方を向くがすずかも首を左右に振る。

 

 「…何つーか、お前等も苦労してんだな」

 

 「分かってくれるんか?」

 

 「ああ…アイツに付き纏われてるお前等が簡単に想像出来る」

 

 はやてにそう言い、原作組に同情する俺。

 

 「だからはやて嫌がってんじゃねえか!!ふざけた事ばっかしてんじゃねえよ!!モブの分際で!!!」

 

 ……はあ~。こっちの話を聞かず自己解釈で場を進めるもう一人の転生者。ホントもうどうすりゃいいのさ?

 

 「はやてとすずかを困らせたんだ!テメェ、覚悟は出来てんだろうな!!」

 

 そう言い怒りを露わにしている西条。だが

 

 「「「「いい加減にしなさい!!!(しなよ!!!)(しろ!!!)(して下さい!!!)」」」」

 

 遂に俺の家族達がキレました。

 

 「さっきから聞いていれば勝手な事ばかり!!」

 

 「ユウの事悪く言いやがって!お前にユウの何が分かるのさ!?」

 

 「下郎!貴様、我の家族を馬鹿にしてただで済むと思うな!!」

 

 「ここまでユウキの事言われて流石に我慢の限界です!!」

 

 四人共自分の悪口を言われたかの様に怒っている。あのユーリですらここまで伝わるくらいの怒気を放っているんだ。相当お冠だなこりゃ。

 それにデバイスまで取り出して…………って!?

 

 「「「「「ちょ、ちょっと待ったーーーー!!!」」」」」

 

 俺となのはちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃん、アリシアちゃんの声が重なる。

 

 ここでそれはマズイだろ!?店が壊れちまう!!ユーリに関してはデバイスを持っていないから非殺傷なんて出来ない筈!!

 

 「落ち着けお前等!!とりあえずデバイスしまえって!!」

 

 「そうなの!気持ちは分かるけど落ち着いてほしいの!」

 

 必死に落ち着く様、俺と魔導師組が怒り心頭の四人を説得する。

 

 「ですがユウキ!あの男は貴方にあれだけ酷い事を言ってるんですよ!」

 

 「そうだよ!」

 

 「アイツだけは絶対に許せんのだ!!」

 

 「だから止めないで下さい!!」

 

 「それはそうだが、俺は気にしてないし言いたい奴には言わせとけばいい《相手にするだけ時間の無駄だって!》」

 

 どうせこっちが何を言おうと自分で勝手に解釈して喋る奴なんだ。こっちの常識なんて通用しねえ。

 

 そう言って何とか四人を落ち着かせたのだが

 

 「テメェ!!何俺のシュテル達に気安く話しかけてんだ!!誰に許可もらったつもりだ!!」

 

 もうシュテル達も自分に惚れてると認識してる西条。

 

 「(むっ!)コイツらは俺の家族だ。家族と喋るのにお前の許可なんか必要無い」

 

 流石に今の発言にはイラッときた。『許可』だと?

 

 「ああ!?モブ風情が調子に乗ってんじゃねえぞ!!シュテル達を無理矢理テメェの家族ごっこなんかに付き合わせやがって」

 

 ごっこ?『家族ごっこ』だと?

 

 「……今何て言った?」

 

 「あ?」

 

 「今何て言ったのか聞いてんだ。もう一度言ってみろ」

 

 怒気を含んだ低い声で西条に聞く。

 気付けばシュテル達を止めている立場の俺が西条に対してキレていた。この世界に転生してからここまで本気にキレたのは初めてだ。原作組はともかく家族であるシュテル達も俺の様子を見て驚いた表情で見ていた。

 

 そして怒りと同時に発している俺の怒気と剣幕に押され、飲まれていた西条だが

 

 「何勝手にキレてやがるモブ野郎!」

 

 初めより勢いは無いが言い返してきた。

 

 「お前こそ自分勝手な事ばっかり言いやがって何様のつもりだ!?シュテル達の様子や言葉を聞いてお前の事本気で嫌がってる事すら分からないのか!?これだから勘違い馬鹿は嫌なんだ!」

 

 「テメェ!モブのくせにオリ主である俺に向かって!!もう許さねえ!!外に出ろ!!格の違いってのを教えてやる!!」

 

 「いいだろう。相手になってやるさ。お前を完膚無きまでに叩き潰す!!」

 

 そういって一足先に店を出る西条。俺も後に続こうとするが

 

 「ユ、ユウキ…」

 

 ユーリが声を掛けてくる。呼ばれたので振り返ると

 

 「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

 皆が不安そうな目で俺を見ていた。

 

 「あんな事言ってたけど大丈夫?アイツ、魔力は私達とは桁違いに高いわよ?」

 

 アリシアちゃんが奴の魔力の高さについて教えてくれる。

 

 「別に魔力が高いからって絶対に勝てる訳じゃない。アイツにその事を教えてやるさ」

 

 だから心配するなと言い俺も店の外に出た。

 

 

 

 店の外に出た俺達は先程サッカーの試合をした河原のグラウンドに再びやってきて結界を張った。これで誰かに見られる事も無い。シュテル達や原作組もすぐ側から俺達の様子を見ている。念のためシュテル達や魔導師組にも頼んで結界を張ってもらった。俺はセットアップして構える。

 

 「モブのくせに格好つけやがって。瞬殺してやるぜ。ギル、セットアップだ」

 

 西条がバリアジャケットを身に纏う。奴のセットアップした姿はFateの英雄王と同じ黄金の鎧だった。能力がアーチャーでジャケットが英雄王って。

 

 「アイツ、自分のデバイスに『ギル』って言ったよな?」

 

 「言ったね」

 

 「つまり名前の元はギルガメッシュなのか?」

 

 「多分そうだと思うよ」

 

 ダイダロスと会話する俺。デバイスに英雄王の名前付けるならもう『無限の剣製(アンリミッテド・ブレイドワークス)』じゃなくて『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』でもいいだろうに。

 だが奴はセットアップしただけでただ立っているだけだ。武器は出さないのか?

 

 そんな疑問を抱きながらも俺達は互いに睨み合う。

 

 「二人共、準備は良い?」

 

 アリシアちゃんが俺と西条に尋ねてくる。どうやら魔導師組は見物がてら審判をやってくれるみたいだ。俺達は睨み合ったまま互いに頷く。

 

 「じゃあ、始めるよ。…………始めっ!!!」

 

 アリシアちゃんが宣言すると同時に俺は西条に向かって距離を詰める。だが奴は

 

 「テメェの攻撃なんざ効かねえって事を教えてやる。『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』!」

 

 奴の前に七つの花びらの形をした障壁が展開される。でも『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』って投擲に対して効力を発揮するんじゃなかったか?

 

 俺はFateの原作知識を思い出しながらも素手で殴りかかる。

 

 ドガッ!

 

 しかし俺の一撃は障壁に阻まれ西条に届かない。

 

 「ハハハハ!テメェみてえなモブの攻撃なんざ届かねえよ」

 

 余裕の表情で笑う西条。一旦攻撃を止め、俺は後ろに下がる。

 

 「ユウくん。あの障壁の解析をしてみたけど原作の『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』と違って接近戦に対してもそれなりの防御力があるみたいだよ」

 

 「分かった。しかし頼んでもいないのに解析してくれてたのか?しかも奴が障壁を展開してからそんなに時間経ってないのに」

 

 「ユウくんをサポートするのが私の役目だからね」

 

 「ありがとうダイダロス。助かるよ」

 

 ダイダロスにお礼を言う。そして奴に対する攻め方を『高速思考(ハイパーハイスピード)』を使って考え始める。

 

 『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)

 

 ギリシャ神話のトロイア戦争の際にアイアスが使用した盾の名前で投擲攻撃に対しては無敵とまで言われる程の防御力を誇る。この世界では中・遠距離攻撃に対しその防御性能が発揮され、近距離攻撃にもそれなりの防御力があるという事らしい。

 

 ふむ…。

 

 「今の俺だと素手で破るのは無理…か」

 

 「じゃあ、『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』を使うのは?『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』っていっても魔力で展開してるから、『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』なら難なく突破できるよ?」

 

 「それは俺も考えた。だが、宝具を使えば奴に俺が転生者だと気付かれるかもしれない。ていうか気付くだろうな確実に。そうなると余計に絡んできて絶対に今後が面倒臭くなる。だから宝具は最後の最後までは使わない」

 

 「そっか。じゃあどうするの?」

 

 「別に『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』じゃなくても方法なんてあるさ。ダイダロス。アイツの『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』の接近戦に対する強度は俺のイージスより上か?」

 

 「接近戦に対する強度?…ううん。中・遠距離攻撃ならイージスとほぼ同等だけど、近距離攻撃だと強度は落ちるから少なくともイージスよりは下だよ」

 

 「イージスより下か…。ならコイツを使ってみようかな」

 

 そういって腰に装備している刀身の無い剣の柄を手に取り魔力を送る。すると俺の魔力が伝わった剣の柄から刀身が魔力で形成・具現化される。

 

 「成る程。それなら確かにイージスより強度が下の『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』なんて簡単に突破出来るね」

 

 「そういう事」

 

 「でもソレ使うと転生者ってバレるんじゃ?」

 

 「どうだろうな?今こうやって具現化しててもアイツ何も言ってこないだろ?ひょっとしたら『そらのおとしもの』に関する原作知識を持って無いかもしれない」

 

そして俺は剣を中段に構える。

 

 「けっ!素手で無理なら武器でってか?そんな事で俺の『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』を突破出来るとでも思ってんのか?」

 

 「今、試してやるさ!!」

 

 再び西条に向かい、剣を大きく振りかぶる。そして一気に振り下ろす俺の剣と西条の『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』がぶつかる…………が、

 

 パリパリ…パリィーン……

 

 一振りで『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』の障壁7枚全てを簡単に砕く。

 

 「なっ!!?」

 

 驚愕の表情を浮かべる西条。

 俺は振り下ろした剣を今度は薙ぎ払う様、水平に振る。無防備な態勢でいた西条の横腹に

 

 バキイッ!

 

 「があっ!!」

 

 防御すらする間もなく直撃した。そのまま吹き飛ぶ西条。絶対に『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』が突破出来ないと思っていたのだろう。

 

 「がっ…ごほっごほっ……」

 

 四つん這いで激しく咳き込む西条に

 

 「あの程度の障壁、俺のクリュサオルの前では無意味だ」

 

 そう告げる。

 

 『クリュサオル|(chrysaor)』

 

 原作『そらのおとしもの』でアストレアが装備している武器。超振動光子剣とも言われイカロスの『イージス』ですら簡単に切り裂けるとの事。しかし原作ではイカロス=メランの強大な出力で展開された『イージス』を破れなかったので、この世界においては俺が使う『イージス』より強度が低ければたとえ障壁が何重に展開されようとも一撃で破れるが、俺の『イージス』以上の防御力を持つ障壁は簡単に突破出来ない。

 

 俺は空に飛び上がり、上から奴の様子を見る。

 フラつきながらゆっくりと立ち上がる西条。ダメージはかなり大きい様だな。

 

 「ざ…けんな……ざけんなよ!モブの分際で!!」

 

 俺を睨み、声を出す。

 

 「テメェなんかがオリ主の俺に勝てる訳がねえんだ!!」

 

 そういって自分の周囲に魔力を開放する。

 放出された奴の魔力によって剣が一本、また一本と次々に複製されていく。その数は合計で50。

 

 「(来るか!)」

 

 「ユウくん、彼の『無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)』だけどユウくんのクリュサオルとは比べ物にならないくらいの威力があると思うよ」

 

 「だろうな。周囲に放った魔力量から考えて俺の『イージス』でもアレ全てを防ぎきるのは無理だ」

 

 ついでに『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』も使うだろうし。

 

 アルテミスで撃墜しようにも俺が展開できる魔力球の数は最大で22個。数が足りない。

 

 「(ならば全て躱すか耐えきるか…どちらかに集中しないと…)」

 

 「ユウくん!」

 

 ダイダロスが声を発すると同時に奴の展開していた剣が一斉に襲い掛かってくる。

 

 「くたばれモブ野郎!!!」

 

 ゴウッ!と唸りを鳴らしながら迫りくる50本の剣。そして俺が回避の姿勢をとろうとした瞬間……

 

 「ヒャハハ!逃がすかよ!!」

 

 剣が速度を増し、一気に俺との距離を詰める!

 

 「ついでにこいつを喰らいな!!」

 

 そしておれの付近まで近付いた50本の剣は一斉に爆発し、俺は避ける事が出来ずそのまま爆発に飲み込まれた………。

 

 

 

 ~~レヴィ視点~~

 

 僕は初めて見た。ユウが本気で怒っている姿を。普段は優しく、怒る時もあそこまで怒りはしない。

 それだけアイツの言ってた事に腹を立てたんだ。

 

 アイツはお店に来てからずっと僕達の方を見ていた。ユウの話なんか全く聞いていない。

 しかも自分勝手な事を言っただけじゃなくユウの悪口まで言ったんだ。僕だけじゃなく、シュテるんやディアーチェ、ユーリも怒っていた。

 僕達がアイツの事を好きだって?冗談じゃない!!どうして僕達があんな奴を好きにならなくちゃいけないんだ。むしろ嫌いだあんな奴。好きになんかなれる筈もない。

 そんな僕達を必死にオリジナル達と一緒に止めてくるユウ。とりあえずは我慢したけどその直後だった。アイツの言った言葉にユウが反応し、怒ったんだ。

 ユウは僕達の事を血の繋がった家族以上に家族として接してくれ、僕が我が儘を言った時も何だかんだ言って聞いてくれる。シュテるんやディアーチェ、ユーリなんかはユウに僕の事を甘やかし過ぎなんて言ってる。……僕もユウに甘えてるなあって自覚は有るんだけどね。

 でもユウの傍にいると心地良くて胸の中が温かくなるんだよね。だからついつい甘えちゃうんだけど。

 そんな僕達の事を大切にしてくれるユウだからこそアイツが言った『家族ごっこ』って言葉に腹を立てたんだ。

 それで怒ったユウとアイツが戦う事になったんだけど

 

 「なあ王様。長谷川君ってどんくらい強いんや?」

 

 ディアーチェのオリジナルであるハヤテがディアーチェに聞いていた。

 

 「知らん」

 

 短くそう答えるディアーチェ。オリジナル達は皆『えっ?』って顔してる。

 

 「いや、知らんって…」

 

 「我等はユウキと一緒に暮らす様になってからは一度も魔法など使わなかったし、模擬戦なんかもしておらん。ユウキがレアスキルを使う時はあっても戦うためには使っておらんかったからな。だからユウキの戦う姿を見るのは今日が初めてだ」

 

 ディアーチェの言う通りだ。僕達はユウが戦ってるのを今まで見た事が無い。魔力はユウ自身が言うにはAAAはあるって事だったけど魔力リミッターを普段からかけていたので正確には分からなかった。でも今ユウがバリアジャケットを纏い、リミッターを外した魔力を感じると確かにそれぐらいはありそうだ。

 

 「でもアイツの魔力はSSはあるって前にクロノが言ってた。単純な魔力の値だとこの差は結構厳しいけど?それにアンタ達が彼の戦う所を見た事が無いっていうなら彼にとってこれが初めての戦闘って事でしょ?」

 

 僕のオリジナルであるフェイトのお姉さん、アリシアがそう答える。

 

 「ですがユウキが言ってた様に魔力が高いだけで絶対に勝てるという訳ではありません。それに何の勝算も無くユウキが戦うとも思えませんし、私はユウキが負けるとは思いません」

 

 シュテるんの言う通りだ。ユウが負けるなんて絶対に思えない。あんな奴なんか簡単にブッ飛ばす筈なんだ。

 そんな事を思ってるとユウがアイツの障壁を破って攻撃を決めたとこだった。素手では破れなかった障壁を魔力で具現化した剣で簡単に突破した。

 …………何かカッコイイなあの剣。僕も欲しい。

 

 「凄い…。何重にも張られている障壁を一振りで」

 

 シュテるんのオリジナルのナノハがそう声を漏らす。

 

 「バルディッシュ。魔力で具現化している彼の剣に何か特別な力とかあるのかな?」

 

 「おそらくは剣に障壁貫通もしくは障壁破壊の効果があるのでは?」

 

 僕のオリジナルのフェイトが自分のデバイスと会話してる。

 

 「派手に吹き飛んだけどあれって大丈夫なのかな?」

 

 「非殺傷設定やから肉体そのものにダメージは無いですずかちゃん」

 

 「いい気味ね。何か見ててスカッとしたわ」

 

 スズカの疑問にハヤテが答え、アリサが何か満足そうな表情をしている。

 

 それから少ししてアイツが立ち上がる。何かオリ主とか訳の分からない事を言った後に、魔力を自分の周囲に放った。すると魔力で構成された剣が現れ、全ての剣先がユウの方に向いている。

 

 「あれは…」

 

 シュテるんが静かに呟く。以前ユウのサーチャーから見た映像で知っている。こっちの世界のシュテるんやユーリに使った魔法だ。しかも剣を遠隔操作で爆発させれるんだっけ。ユウはどうするんだろう?避けるのかな?それとも障壁を張って耐えるのかな?そんな事を考えてる間に剣の群れがユウに向かっていく。ユウの態勢を見る限り回避に徹するみたいだけど…

 

 「ヒャハハ!逃がすかよ!!」

 

 アイツが口を開くと同時に剣の速度が上がった。あれだと回避には間に合わない!

 

 「ついでにこいつを喰らいな!!」

 

 そして一斉に爆発する無数の剣。ユウは避ける事が出来ず、直撃を受けた。

 相当な破壊力だ。ユウは大丈夫なのかな?

 

 僕はただ煙で見えない視界の先にいるユウを心配するのだった…………。

 

 

 

 ~~レヴィ視点終了~~

 

 「ヒャハハハ!!モブ野郎め。これで格の違いが分かったか?」

 

 どうやら俺が避けられずに直撃した様子を見て勝ったと確信している様子の西条。段々と煙が晴れ、姿が見えてきた。だが…

 

 「これで終わりか?」

 

 俺は………………無傷だった。

 

 「なっ!?」

 

 またも驚いている西条。まあ実際にあれだけの魔力の爆発に巻き込まれ無傷なんだ。驚くのも無理は無い。

 

 「ど、どういうこった!?何で無傷なんだよ!!?」

 

 動揺する西条。

 

 「答える理由は無いな。それより自分の心配をしたらどうだ?あれだけの魔力を使って攻撃したんだ。そろそろ魔力が尽きてくるんじゃないのか?」

 

 俺はそう言ってクリュサオルを構える。

 

 「魔力が尽きる?はっ!俺様のレアスキルの事を知らないからそんな事言えんだ」

 

 俺の言葉を聞いた西条は鼻で笑い表情が再び余裕のものになっていく。レアスキルだと?

 

 「ユウくん!彼の魔力が全快とまではいかないけど一気に回復したよ!」

 

 アイツの魔力を感知したダイダロスが教えてくれる。一気に回復?魔力回復の異常な早さが奴のレアスキルの正体なのか?

 

 「分かったかモブ?これがオリ主である俺とテメェの決定的な差だ。俺に魔力切れなんてまず有り得ねえからな」

 

 そう言い、再び剣を作り出す西条。今度の数はおよそ80本。

 

 「どうするのユウくん?」

 

 ダイダロスが聞いてくる。

 

 「そうだな、これ以上アイツに付き合うと本当に時間の無駄だしもう終わらせる。ダイダロス。アフロディーテとアポロンを使う」

 

 「???アポロンはともかく、アフロディーテは生物相手には効かないよ?」

 

 「ああ、効かないな。生物には…」

 

 そして俺の考えたプランをダイダロスに説明する。

 

 「それなら確かに……分かった。ユウくんの作戦で行こう」

 

 作戦は決まった。構えを解きクリュサオルを一旦腰に戻す。

 

 「今度こそくたばれモブ野郎!!!」

 

 またも剣を飛ばし、俺の手前で爆発させる西条。そして直撃を受けるがやはり無傷な俺。

 西条がまた『無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)』を展開する前に俺はアフロディーテを放つ。

 

 「ふん。この程度の衝撃で俺様が倒れると思っているのか?」

 

 当然ながら生物には効かないので奴にダメージは無い。

 

 「そうか分かったぞ。テメェ、当たった様に見せかけてギリギリのタイミングで避けてやがるな?ならば納得いくぜ。モブのくせに俺の『無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)』を防げる訳がねえ!!」

 

 そして勝手に自己解釈する西条。避けてはいないのだが防いでる方法を奴に教える理由は無いのでそのまま無視し、俺は弓型の武器を取り出す。そして矢の形状をし、圧縮させた魔力を弓で引き始め上空から狙いを定める。狙うはただ一点!!

 

 「遠距離攻撃が俺に通じると思ってんのか!?さっきの近距離攻撃と違い、『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』は本来の防御力を発揮するんだぜ!!」

 

 そう言って『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』を展開させようとするが

 

 「っっ!!ど、どうなってる!?『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』が出せねえ!!?」

 

 明らかに戸惑っている西条。

 

 「ギル!!早く『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』を発動させろ!!」

 

 「……………………」

 

 自分のデバイスに指示を出すが奴のデバイスは沈黙している。

 

 「無駄だ。さっきのアフロディーテでデバイスを強制的に停止させたからな」

 

 俺が答える。

 そう…奴は魔力の制御が自分だけでロクに出来なさそうだったのでアフロディーテを使ってデバイスそのものを無力化してやった。案の定、今西条は『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』を展開できずにいる。

 

 「バカな!?んな事が出来るだと!?」

 

 「実際に出来ているからな。もうお前を守る手段は無くなった。これで終わりにする」

 

 俺が言葉を発すると同時に西条をバインドで拘束する。もはや避ける事も逃げる事も出来ない。

 

 「クソッタレがあっ!!」

 

 「行け!!アポロン!!!」

 

 俺が魔力の矢から手を離す。放たれた矢は一直線に西条に向かって飛んでいく。

 

 『アポロン(APOLLON)』

 

 原作『そらのおとしもの』のイカロスが持つ弓型の武装にして最終兵器。原作では国一つを丸々吹き飛ばす破壊力があるらしい。この世界で今の俺が使うアポロンはそこまでの威力は無いがそれでも全力で放てば街一つは消し飛ばせるだろう。分類としては収束魔法になるだろうな。

 

 「うああああああっっっっっっっ!!!!!!!!」

 

 ドゴオオオオオオオオンンンンンンッッッッッッ!!!!!!!

 

 アポロンの直撃を受ける西条。皆に頼んで結界を複数張ってもらって良かった。もし結界を張っていたのが俺だけだったら結界が耐え切れず外にも影響が出ていたかもしれないからな。上空から様子を見る。土煙が少しずつ晴れて行き、アポロンの着弾地点にはバリアジャケットである黄金の鎧がボロボロになり、うつ伏せで倒れ完全に意識を失って気絶している西条の姿があった。勝者の名前を宣言してくれるアリシアちゃん。

 

 こうして転生者同士の戦いは俺の勝ちで幕を閉じた…………。

 

 

 

 「で、アイツどうするんだ?」

 

 戦いが終わり倒れている西条を指差しながら皆に聞く俺。

 

 「その辺に捨てときなさいよ」

 

 「賛成です。あの男を介抱する気なんて全くありませんし」

 

 アリサちゃんの意見に賛成するシュテル。レヴィ、ディアーチェ、ユーリもうんうんと頷いている。

 

 他の皆も特に介抱してあげようという気は無いらしい。どんだけ嫌われてんだよアイツは?

 

 「それにしても凄かったなあ。長谷川君強いんやね」

 

 「それに彼の魔法うけて無傷だったよね?何をしたの?」

 

 「あっ!それ私も気になってたの」

 

 「よかったら教えてよ」

 

 はやてちゃん、フェイトちゃん、なのはちゃん、アリシアちゃんが声を掛けてくれる。魔導師組はさっき俺が無傷だった理由を知りたいようだ。

 

 「じゃあ、店に戻って説明しようか?もうここにいる理由無いし」

 

 俺が聞くと皆『賛成~』と声を揃えて言う。そして結界を解こうとした時、

 

 「あっ!ユウキ、少し待って下さい」

 

 シュテルが呼び止める。

 

 「どうしたシュテル?」

 

 「ええ、やり残した事があるので」

 

 そういって西条の方に向かうシュテル。やっぱりアイツを介抱するのかな?と思って見ていた。他の皆もシュテルの様子を見ている。

 

 ガチャッ

 

 そしてうつ伏せになっている西条の前に立ち、ルシフェリオンを構えるシュテル。

 

 

 

 …え?何でルシフェリオンを構えてんの?

 その疑問に対する答えはすぐに分かる事になった。

 

 「フフフ…この世界の私の無念を晴らします。…疾れ明星!すべてを焼き消す炎と変われ!」

 

 ガスンッガスンッガスンッガスンッガスンッ!

 

 いきなり詠唱しルシフェリオンから薬莢が5つ吐き出される。どうやらカートリッジを5つ消費して魔力を収束してるようだ……って!?

 

 「真!ルシフェリオン!ブレイカーーーーッ!!」

 

 ルシフェリオンの先端から放たれる収束砲撃。

 そんなにこの世界のシュテルが不意打ちでやられた事が許せなかったのか!?意識が無く無防備な相手にカートリッジ5発もロードして撃つとかオーバーキルにも程がある。というか無念なんて言うてるけどこの世界のシュテルは死んでないからね!?

 砲撃に飲み込まれる西条。非殺傷とはいえ大丈夫なのか?……いや、大丈夫だと思いたい。

 

 「お待たせしました。さあ、行きましょう」

 

 こちらを振り向いたシュテルは見惚れるぐらいに最高の笑顔だったのだが俺には恐怖しか感じなかった。

 もしあんな事自分にされたら…

 そう思うとブルブルと震えが止まらない。よく見ると他の皆も震えている。俺と同じ事を考えているのだろう。

 

 「???どうかしましたかユウキ?」

 

 「い、いや!何でも無い。じゃ、じゃあ皆戻ろうか!?」

 

 皆に聞くと凄い勢いで首を縦に振る。

 

 結界を解き、俺達はそのまま翠屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 現場にはボロボロになった西条が一人、取り残されていた……………………。


 
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