…長谷川勇紀です。ここ最近家に帰る度にO☆HA☆NA☆SHIを受け、肉体も精神もかなり疲弊しているので正直学校を休もうかと思ったぐらいです。しかし今日は金曜日、つまり週末です。他の学校では土曜日も午前中だけ授業がある所もありますが海小では土曜は休み、週休二日制です。だからもうひと踏ん張りだと自分に言い聞かせ、学校にやって来ました。そして給食を食べている訳ですが…
「ユウキ、あ~んです//」
「あ、あ~ん//」
パクッ……モグモグ……ゴックン。
やっぱり恥ずかしい。人目があるのに『あ~ん』ってされるのは。
「お、美味しいですか?//」
「…結構いけるね//」
「そ、そうですか//」
こんな感じでさっきからシュテルに食べさせられています。
「次はパンです。さあ、どうぞ//」
「…あのさシュテル」
「何ですか?」
「シュテルも食べなよ。さっきから俺ばっか食べさせてもらってるし」
…そう、俺にばっか食べさせてシュテルの食事が進んでいない。
「ですが…」
「それに早く食べないと昼休みも終わるぞ?」
「…そうですね。続きは夕食まで我慢します」
「…晩メシでもやるんすか?」
「勿論です//」
「そうですか…」
晩メシでも『あ~ん』するのが確定しました。
そしてシュテルは自分の食事を摂り始めた。ちなみに先程までの光景を見ていた長谷川家の三人とクラスメイト達は…
「僕、ユウに『あ~ん』なんてした事無いよ」
「我もだ。迂闊だった」
「私もです」
「シュテルさんに『あ~ん』してもらいやがって!!」
「何故アイツだけ!!」
「やっぱり殺った方がいいな!!」
「俺の
「熱々だね~、長谷川君とシュテルさん」
「羨ましいな~。私も彼氏ほし~」
「私も~」
「……………………」
黒いオーラを纏い会話する三人、殺気を放ちこちらを睨んでいる男子達、同じ言葉を繰り返す
…どうしてシュテルとこんな状態になったのかは回想シーンをご覧下さい。
ついでに謙介と数人の男子達がボロボロになっている理由も説明します。
~~回想シーン~~
朝食後、リビングで朝のニュースを見ていると制服に着替え終わったシュテルがリビングにやってきて俺に話しかけてきた。他の三人はまだ着替え中のようだ。
「ユウキ、私の『お願い』を聞いてもらいたいのですが」
……きたか。さて、シュテルは俺を何処に連れて行くつもりだろうか?
放課後から夕方まで時間は限られている。あまり遠くには行けない事ぐらいシュテルも分かっているだろう。果たして何処に行って何をするんだろうか?
俺はそう考えていたがシュテルの願いは俺の予想通りではなかった。
「今日一日、私のしたい事に付き合って下さい」
「…はい?」
シュテルの言った意味がすぐに理解出来なかった。
「ですから今日一日はずっと私のしたい事に付き合って下さい」
「えっと…何処かに連れて行くとかじゃないのか?」
「はい」
「…まあシュテルがそれでいいなら俺は何も言わないけど…叶えるのが無理っていう様な事は頼んだりしないよな?」
いくら俺でも出来る事に限度はあるし。
「それは大丈夫です」
「そっか。なら俺の方は問題無い」
「本当ですか!?」
「ああ」
「良かったです」
ホッと一息吐くシュテル。その表情は何だか嬉しそうだ。
そんな会話をしていたら着替えを終えた三人がリビングにやってきた。
「お待たせ~」
「準備は出来たぞ」
「もう行きますか?」
時間はいつもより少し早い。今日もレヴィが珍しく早く起きたからだ。
「そうだな。学校行くか」
「はい」
皆が玄関で靴を履き外へ出る。鍵を掛け戸締りをしっかりとしたのを確認して俺達は学校へ向かう。するとシュテルが俺の横に並んだかと思うと突然腕を組んできた。
「「「なっ!?」」」
あまりにも突然の行動に驚くレヴィ、ディアーチェ、ユーリの三人。
「シュテル?」
「…これもしたい事の一つですので//」
こちらを見ず顔を少し俯かせ頬を桜色に染めながら答えるシュテル。
「…そっか。まあ、シュテルのしたい事に付き合うのが願いなんだし俺はただシュテルに付き合うだけだしな」
別に腕を組むぐらいなら俺は問題無い。むしろ今俺にとって厄介な問題は…
「ねえユウ?僕達何がなんだかよく分からないんだけど?」
「何故シュテルと腕を組んだのか教えてもらおうか?」
「『したい事』ってどういう意味なんです?」
すぐ後ろから黒いオーラをぶつけてくるお三方をどうやって静めるかだ。朝から俺が何したよ!?
「シュテルの『願い事』に付き合ってるんだ」
「そうです。今日一日ユウキには私のしたい事に付き合ってほしいとお願いしたんです」
そういうと若干黒いオーラが薄くなった。
「うっ、お願い事なら仕方無いのかな?」
「でも羨ましいですシュテル」
「むう、しかし何処かへデートしに行くとかでなくて良いのか?」
「構いません」
シュテルはそう答え、組んでいる腕の手を繋ぎ始めた。指先を絡めるように繋いでくる。いわゆる恋人繋ぎというやつだ。
「シュテル。腕を組んでるのに更に手を繋ぐ事に何か意味あんの?」
「私がしたい事ですから//」
「ふ~ん。よく分からんがシュテルがしたいならしょうがないか」
意味は分からないがとりあえず納得する俺。その時
ゾクゥッ!
背後から寒気を感じる。ゆっくりと振り返ってみると
「「「……………………」」」
瞳の色が消えている三人が俺達を見ている。
「ユウ…シュテるんに少し近付き過ぎじゃないかな?」
「それにシュテルももう少しユウキから離れたらどうだ?」
「そんなに密着すると歩きにくいと思いますよ?」
怖え、スッゲー怖えよ。さっきよりもオーラが増してね!?
何!?何で朝から黒くなんの!?登校時くらいは普通に登校してくれよ!!
「ユウキ」
シュテルが俺を呼ぶ。
「その…腕を組んで迷惑でしょうか?私のしたい事といってもユウキに迷惑はかけたくありませんので」
不安そうに聞きながら俺を見るシュテル。
「別に迷惑って程じゃないぞ」
俺がそう答えるとシュテルは表情を緩ませた。不安は無くなったらしい。しかし…
「「「……………………」」」
後ろからのプレッシャーが更に跳ね上がる。俺は怖くて学校に着くまでの間、後ろを振り返る事が出来なかった……。
そして学校に到着。俺達を見て相変わらず俺にだけ殺気を飛ばす皆様。でも最近はもうこの殺気にも怯む事が無くなってきた。慣れって怖いね。
上履きに履き替え教室に向かう俺達。そんな時に
「ユウキ。あれはケンスケではないですか?」
「ん?」
視線の先には、よく見知ったクラスメイトが部屋から出てきた所だった。
「何やってんだアイツ?」
「あそこって資料室ですよね?」
ユーリの言う通り扉の上のプレートには『資料室』と書かれている。
「何か資料を探してたのか?」
ディアーチェがそう言うが謙介が出てきた時には何も持っていなかった。目的の資料が無かったのかな?
結局謙介が資料室から出てきた理由はこの時は分からなかった。
教室についた俺達。いつもより早いのでクラスには十人程しかいないが全員の視線が俺達の方に集まる。多分シュテルと腕組んでるからだろうな。理由を知らない奴から見たら気になるわな普通。男子からはやっぱり殺気付きだねうん。謙介は自分の席に着いていた。俺は周囲の視線を無視し自分の席に着く。
「朝から見せつけてくれるね」
「見せつけてるつもりは無い」
そんな会話をしている俺の席の隣ではシュテルがランドセルを机に置き、中から教科書やノートを取り出していた。
「ねえシュテるん。そこ僕の席なんだけど?」
「知ってます」
「じゃあ何でそこにいるの?」
「ユウキの隣で授業を受けたいからです」
当たり前のように答えるシュテル。
「ちょちょ、ちょっと待って!!僕もユウの隣で授業受けたいよ!!」
「無理ですね。レヴィはすぐに寝るでしょう?」
うっ!と返答に詰まるレヴィ。うん、俺もそう思う。
「だ、大丈夫だよ。今日はちゃんと起きて授業受けるし、それに「…レヴィ」ひぃっ!!」
何やら必死に説得しようとしていたレヴィにシュテルが声を掛けた。その瞬間レヴィが小さく悲鳴を上げ顔を真っ青にしながらガクガクと震えている。…いや、よく見るとレヴィだけでなくディアーチェやユーリ、他のクラスメイトまで震えている。何だ?皆どうしたんだ?
「今日一日だけ替わってもらえませんか?」
「で、でも…」
「レ・ヴ・ィ?」
「替わります!今日一日替わります!!」
そういってシュテルの席の方へダッシュで行くレヴィ。俺の方からはシュテルが反対側を向いているので顔を見る事ができない。一体皆は何を見たんだ?
「それでは今日一日よろしくお願いしますねユウキ」(ニコッ)
こちらへ振り向き微笑むシュテル。う~ん、いつも通り…だよな?
ま、いっか。
「おう」
軽く返事をしておく。そうしている内にクラスメイトも徐々に教室にやってきて賑やかになってきた。時間も予鈴の5分前。そういえば…
「謙介」
「何かな?」
「お前、朝から資料室で何してたんだ?」
「……………………」
俺の質問に固まる謙介。
「どうした?」
「……イヤイヤ、ナンデモナイヨ」
きょどってる謙介。…怪しい。
ジィィィィィッ…………
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン…
「よ、予鈴が鳴ったよ勇紀。早く授業の準備しないと」
慌てて前を向き、教科書を取り出す謙介。コイツぜってー何か企んでる。そう思いながら授業が始まるまで俺は謙介の背中をジト目で睨んでいた…。
「では授業を始める」
ジィィィィィッ……
何か隣から視線を感じる。隣を見るとシュテルが俺と教科書を見ていた。
「《シュテルどうした?》」
「《どうやら教科書を忘れてしまって…》」
「《そうなのか?》」
「《はい》」
珍しいな。シュテルが忘れ物するなんて。
「《とりあえず忘れたって事は言った方がいいんじゃないか?》」
「《そうですね》……先生」
「何だい
笑顔で答える
「申し訳ありません。教科書を忘れてしまって」
「そうか…。なら僕の教科書を貸してあげよう」
「結構です」
「だ、だが教科書が無いと勉強出来ないだろう?遠慮はしなくていいんだよ?」
「ユウキに見せてもらうから大丈夫です」
シュテルがそう言って机をこちらに寄せてくる。
「申し訳ありませんユウキ」
「忘れたんだからしょうがないって」
「はい。以後気を付けます」
「ん。…ところでさ」
「はい?」
「そんなに近くに寄る必要あんの?」
そう、シュテルはピッタリと俺にくっついている。
「気にしないで下さい。これも私のしたい事ですので///」
「授業中にくっつくのがしたい事なのか?」
一体何がしたいんだ?
「迷惑ですか?」
不安そうな顔のシュテル。
「別にそんな事は無いぞ」
「そうですか」
笑顔になるシュテル。
ジィィィィィッ……………
俺はシュテルを見つめる。
「?何でしょうか?」
「いや、ずいぶん表情が変わる様になったなと思って」
「そうなのですか?」
「ああ、以前のシュテルからはあまり想像出来なかった」
「…その、似合いませんか?」
「いや、むしろ可愛いと思うぞ。今みたいに不安そうにしてる表情も感情がハッキリ出てる証拠だし。今のシュテルの方が俺は好きだけどな」
ガタッ!!
「か、かかか可愛い!?すすす、好き、ですか!?今の私が!?//////」
突然立ち上がり大声で聞き返してくるシュテル。顔は茹で蛸みたいに真っ赤になっている。
「落ち着けシュテル!今授業中だって!」
「ハッ!!…すすす、すみません///」
慌てて座るシュテル。だが顔は真っ赤になったままで俯いている。
「…で、授業は進めていいのか?」
こっちを見て聞いてくる
「あ、すいません。授業進めて下さい」
とりあえず答えた。男子達はこちらを睨み女子はシュテルを見て「かわいい~」とか「シュテルさん顔真っ赤~」とか小声で言い合っている。そして我が家のお三方…
「シュテるん、ズルい」
「ユウキの奴も純粋に言っただけなのであろうが…」
「『好き』って言ってもらえるなんて」
黒いオーラを纏ってこっちを睨みながら会話している。あれ!?まさかO☆HA☆NA☆SHIフラグ立っちゃった!?何で!?
俺は帰ったらO☆HA☆NA☆SHIされそうな嫌な予感がしていた……。
そして四時間目。授業は体育。男子はマラソンで女子はハンドボールをやっている。男子のほとんどはハンドボールの方を見ながら走っている。
「いっくよ~!」
ブンッ!
レヴィの振りぬいた腕から放たれる剛速球。キーパーは反応出来ずボールがゴールに吸い込まれる。
「ナイスシュートー」
「さっすがレヴィちゃん」
味方チームの女子から賞賛を送られるレヴィ。本人も嬉しそうだ。シュテル、ディアーチェ、ユーリはというと
「ここは通さんぞシュテル!」
「いえ、抜かせていただきます!」
マンツーマンで対峙するシュテルとディアーチェ。二人もレヴィ程ではないが運動神経はいい。というかシュテルが運動神経いいのは意外だった。何せ原作知識で知る限り
「あう…あう…」
あっちへフラフラこっちへフラフラとひたすらにボールを追っている。あまり運動が得意ではないユーリ。…あ、コケた。
「レヴィさんはやっぱ体育の時が一番輝いてるな」
「シュテルさんやディアーチェさんも運動神経いいな。他の女子と動きが違う」
「ハア…ハア…。転んで涙目のユーリさん……萌える」
それぞれが四人を評価している。というか最後の奴、お前は何を評価しているんだ?
そんなこんなで男子の方が先に授業を終えたので残りは自由時間になった。チャイムが鳴るまであと6~7分たらず。女子は今の試合が終了するまでやるらしく男子のほとんどは見学するようだ。俺は先に男子更衣室に戻って着替えようかと思い校舎に戻ろうとしたが
「おい、杉村。例の件はどうなった?」(ヒソヒソ)
「完璧だね。準備は整ってる。後は実行するだけさ」(ヒソヒソ)
「なら早速行こうぜ。この日を俺達は待ちわびていたんだ」(ヒソヒソ)
「よかろう。僕についてきたまえ」(ヒソヒソ)
小声でヒソヒソ話している謙介と数人の男子達がいた。近くにいた俺の耳にも会話の内容が聞こえてきたが
「(例の件?何の事だ?)」
そう考えると何か嫌な予感…というか朝の光景を思い出す。資料室から出てきた謙介。そしてそのことについて聞くと明らかに慌てた様子で質問を切り上げさせた事。
…………ん?待てよ確か…。
俺はある事を思い出す。するとこれから奴と数人の男子達が何をするのか想像がついた。
ハッ!と気付いた時には謙介と男子達の姿が無かった。アイツら……。
俺は急いで奴らが向かったであろう資料室へと行くのであった…。
ーー資料室ーー
そこにはすでに中から人の気配がしていた。数は数人程、間違い無く謙介達だ。俺は扉を少しあけ中を覗く。すると壁の前で何かを見るようにしている謙介達がいた。
「おい、杉村。本当にこの角度で見えるんだな?」
「ああ、バッチリね。苦労したよ。我が校の四天使達がいつもどのあたりで着替えているのか?邪魔な物は無いか?とか調べ尽くすのには」
「そうか。苦労したんだな。しかし悪いな。何も手伝っていない俺達にもこの先の
「気にしないでくれ。僕は君達という同志と今日ここで共にいられるだけで充分さ。そして君達が同志である事を心から誇りに思うよ」
「杉村…お前ってやつは……」
「お前は俺達5年2組の希望だよ」
「俺達こそお前と共にここにいる事を誇りに思う。嬉しくて涙が止まらねえよ」
「泣くのはまだ早いよ。それに涙が邪魔で
「「「おう!!!」」」
…………何かすごい盛り上がってる。『女子更衣室』を覗くだけで。
…そう。中にいる奴らはこれから戻ってくるであろう女子の着替えを覗くつもりの様だ。資料室の隣は女子更衣室である。おそらく今まで謙介が放課後にいなかったのは覗く為の穴を作っていたのだろう。しかも会話の内容から察するにシュテル達をメインに捉えているみたいだし。というか壁に穴開けたらダメだろう。全くあのバカときたら…。
俺は念話でシュテル達を呼び出した。
「《シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ。聞こえるか?》」
「「「「《ユウキですか?(ユウだよね?)(ユウキか?)どうしたのですか?(どうしたの?)(どうしたのだ?)》」」」」
「《一部の馬鹿達が女子更衣室の隣にある資料室から着替えを覗こうとしてんだよ。》」
「……つまりケンスケが朝資料室から出てきたのは…」
「《まあ、ユーリが考えている通りだな。そこで女子達が更衣室に入る前に隣にいる馬鹿共を何とかしてから着替えてくれ。俺は先に教室に戻るから》」
「《すまんなユウキ。教えてくれて》」
「《気にすんなディアーチェ。じゃあな》」
そういって四人との念話を終え、俺も男子更衣室に向かうのだった。
それからチャイムが鳴る直前に数人の男子の断末魔が校内に響き渡ったという…。
着替え終わった女子達も戻ってきて給食を食べる準備が整った。謙介と数人の男子達は散々ボコられた後、首根っこを掴まれ教室に無造作に投げ捨てられた。自業自得だが哀れな…。
さて、給食を食べようか。今日はパンにクリームシチュー、フルーツゼリーに牛乳。うむ、美味そうだ。早速シチューを食べようとすると服の袖を引っ張られた。振り向くとシュテルがこちらを見ている。
「どうしたんだシュテル?」
「その…ですね……//」
俺と給食を交互にチラチラ見て頬を若干染めながらモジモジしている。
「…………っっっ////」
「??用が無いならもういいか?給食を食べたいんだが?」
出来立てのシチューを早く味わいたい俺。すると意を決したシュテルが
「わ、私がユウキに食べさせてあげます////」
そういってシチューをスプーンで掬い俺の口元に持ってきた。
ピシリッ!
教室内の空気が凍りついた音が聞こえた様な気がした。
「シュ、シュテルさん!?」
「あ、あ~んです。ユウキ////」
顔が真っ赤なシュテルさん。え?何?マジでやんの!?
どうしよう!?教室の皆も
「あの、シュテルさん!?まさかこれも!?」
「は…はい。私のしたい事……です////」
そういってスプーンを口元に持ってきたまま止まっているシュテルさん。ど、どうしよう!?
「その…嫌ですか?」
悲しそうな表情になるシュテルさん。上目使いでやや涙目。止めて!その破壊力抜群の攻撃を止めて!!
だ、駄目だ。このままの状態だと給食が食えず昼休みが終わってしまう。かといってシュテルを無視して給食なんて食べれっこない。何より家族であるシュテルを泣かせたくない!
腹をくくった俺はシュテルの持っているスプーンの先を口に加えた。
パクッ…
「「「「「っっっっっ!!!!!!!」」」」」
クラスメイト達が見つめている中、俺は口の中のシチューを味わう。
ゴックン…
シチューを飲み込んだ音が聞こえた瞬間、凍りついて停まっていた教室の時間が動き出す。
シュテルは再びシチューをスプーンで掬い俺に食べさせてくれる…。これを何度か繰り返され冒頭の展開に戻るのであった。
~~回想終了~~
それから放課後、特に寄り道もせずに家に帰ってきた俺達。今日はシュテルが常に傍から離れなかったせいか男子達と
時間は8時過ぎ。そろそろ風呂に入ろうかと着替えを取りに行った俺。リビングに戻ってくつろいでいる四人に声を掛ける。
「四人共、俺先に風呂入るから」
「そうか?分かった。ゆっくり浸かってこい」
「分かりました」
「じゃあユウが出たら次は僕が入るね~」
「では行きましょうかユウキ」
「おう…………って!?」
いつの間にか自分の着替えも持ってついてこようとしているシュテルさん。
「待て待て待て!!まさか一緒に入る気か!?」
「は…はい……。したい事……ですので////」
流石にそれはシャレにならんだろ!?いくら小学生とはいえ!!欲情?んなモンしねえよ!!!俺はあの担任(ロリコン)とは違えよ!!!ただ精神年齢は30歳だし恥ずかしいだけだよ!!!って誰に言い訳してるんだ俺はああああっっっっ!!!!
と、とにかくこれは断固阻止せねば!!
「シュテル。こればかりはマジ勘弁してくれ」
「…ですが」
「今回ばかりはマジ「「「……シュテル(シュテるん)」」」で……って、え?」
突然三人が会話に割り込んできた。瞳から光が消え無表情でシュテルを見つめている。
「いくら何でもやり過ぎじゃないかなあ?」
「ユウキだって無理だといっておるだろう?」
「流石にこれは認める訳にはいきませんね」
そしてゆっくりとシュテルに近付き
「「「少し、O☆HA☆NA☆SHIしよっか?(するか?)(しましょうか?)」」」
シュテルを掴む。こ、これはチャンスだ!!今の内に風呂へ!!!
「さ、三人共!後は任せた!!!」
俺はリビングを飛び出し風呂へ直行した…。
あの後、風呂に入りのんびりと疲れをとってリビングに戻った俺が見たのはうつ伏せになって意識を失っている三人と俺が風呂から上がった事にガッカリとした様子のシュテルだった。
どうやら俺が風呂に入ってる間にシュテルも三人にO☆HA☆NA☆SHIで対抗していたみたいだが…。
え?何なのこれ!?三人のO☆HA☆NA☆SHIよりシュテルのO☆HA☆NA☆SHIの方が上って事なのか!?
「えっと…シュテル?三人は大丈夫なのか?」
「大丈夫です。加減はしてますから」
加減してこの現状!?俺は心の底から恐怖した。『シュテルを本気で怒らせてはいけない』と、今日自分に誓ったのだった。
それから少しして三人共、目を覚ました。流石にやり過ぎたと思ったのかシュテルも反省している。三人は何があったのか覚えていなかったが、シュテルの恐怖はしっかりと心に刻み込まれた様でしばらくはブルブル震えていた……。
で、気付けばもう夜11時前。皆リビングにいるがもう眠そうだったので各自部屋に戻り休む事にした。今日は本当に疲労感が半端無かったので俺もベッドにダイブして布団を被るとすぐに深い眠りについた。
だからこそ気付かなかった。誰かが俺の部屋に入ってきた事に……。
~~シュテル視点~~
あれから私も部屋に戻りました。今日はユウキと色々な事をしました。一緒にお風呂に入れませんでしたがそれはまた別の機会にでもするとしましょう。それよりも最後にやっておかないといけない事があります。私の今日の本命といっても過言ではありません。私はしばらくして部屋を後にしました。
私は今、ユウキの部屋の前にいます。ユウキはまだ起きているのでしょうか?
ゆっくりと扉を開け、部屋の中に入ります。電気は消えており部屋の主であるユウキはベッドの中で眠っていました。私はゆっくりとユウキに近付きベッドに腰を下ろしました。視線の先にはユウキの無防備な寝顔があります。スースーと規則正しい寝息が聞こえしばらく私はユウキの寝顔を堪能します。
いつからでしょうか?ユウキにこの様な想いを抱くようになったのは……。
初めてユウキに出会ったのはもう1年以上も前の事。私達はユウキの家の前で倒れていたらしいです。しかもここが先程まで、その時は『システムU-D』・『砕け得ぬ闇』と呼ばれていた当時のユーリと闘っていた世界とは別の平行世界だと言われた時には信じられませんでした。ディアーチェは『ふざけているのかこの下郎!!』などと魔法を使って攻撃しようとしていましたね。ですが彼の放ったサーチャーから見せてもらった映像から納得は出来ました。私やレヴィ、ディアーチェのオリジナルである彼女達が闇の書の防衛プログラムと闘っていた事、その時に私達が元いた世界にはいなかった者が若干いた事、そしてこの世界の、闇の欠片ではなく本物の自分達がいた事……納得せざるを得ませんでした。ただ、私達が平行世界の存在だと何故すぐに分かったのか聞いてみましたがユウキ曰くでは彼のレアスキルで知ったという事でした。正直それはあまり信用できませんでしたが彼にも何か喋れない理由があるのかと思い追及するのは止めました。次に聞かされたのは私達が人間になってしまったという事です。これには全員が驚きましたが確かに私達がマテリアル、ユーリが砕け得ぬ闇だった時とは違う違和感がありました。これも彼のレアスキルで治療した際に起こった副作用みたいなものらしく謝られた記憶があります。ですが、今私達は人間になれた事にむしろ感謝しています。彼と同じ存在になれ、同じ時間を生きることが出来るのですから。そんな私達でも行く宛が無く元の世界に戻れる方法も無いのでここに住まわせてほしいといった所、ユウキも『宛のない人達は放っておけない』との事で快く了承してくれました。
それから彼に色々な事を教えてもらいました。この世界の常識や家事、勉強の基礎を教えてもらい、生活に必要な物も買ってもらいました。そんな時間を彼と共に過ごす間にいつの間にか彼を意識し始めている自分に気付きました。彼の傍にいるだけで胸が暖かくなり、今日もユウキとしたい事をする度に恥ずかしさと、それを上回る満足感を感じていました。特に授業中に言ってくれた
『いや、むしろ可愛いと思うぞ。今みたいに不安そうにしてる表情も感情がハッキリ出てる証拠だし。今のシュテルの方が俺は好きだけどな』
あの言葉が中々私の頭の中から離れてくれません。///
ですがユウキが他の女の子と話したりして楽しそうにしているのを見ると胸がモヤモヤしたりして、嫌な気持ちになります。それはレヴィ、ディアーチェ、ユーリでも例外なく…。
やはり私は彼の事を……。それにレヴィ、ディアーチェ、ユーリもおそらく…………。
気付けば私は彼の右腕を枕代わりにして彼の布団の中に潜り込んでいました。そして彼の匂いと温もりで満たされる中、私の意識は闇に沈んでいきました……。
~~シュテル視点終了~~
…ん…ん~~…何だろ?……
俺が目を覚ますとすでに外は明るくなり始めていた。壁に掛けられた時計を見ると6時前。いつもよりも更に早く起きてしまった。今日は土曜日、休日だ。二度寝するのも悪くはないが俺は起きる事にした。そして起き上がろうとするが…
「あれ?身体が動かない?それに右腕の感覚が何だか変だな?」
何かが右腕に乗っているせいで痺れてるような感じがする。俺は顔を右腕の方に向けた。
……OK俺。クールになれ。冷静になって現状を分析しろ。まず確認だ。横にいるのは幻でもなんでもない。実物だ。俺がまだ夢を見ている訳でもない。俺は深呼吸する。そしてもう一度確認してこう思う…。
…………何でシュテルがいんの?
いやいやいやいやいや!!どういう事!?ねえどういう事なのこれ!?昨日確かに俺は一人で寝た筈だよ!?寝ぼけてシュテルの部屋にきた!?……いや、それは無い。ちゃんと周りを見て見ると自分の部屋だと確認も出来るし、壁の時計を見た時点でシュテルの部屋じゃないと理解出来る。シュテルの部屋には目覚まし時計しかない筈だからな。じゃあシュテルが寝ぼけて俺の部屋に入った?……これしか考えられないよな。まあ、真偽はとにかく、さっさと自分の部屋に戻ってもらおう。
「シュテル?お~い、シュテルさんや~?」
「~~zzz…~~zzz…」
…………ダメだ。熟睡してて全く起きない。しかも身体が動かないと思ったら抱きつかれてるし。俺は抱き枕じゃないんだが…。
ただ早く自分の部屋に戻ってもらわないと。何かすっごく嫌な予感がする。俺は何とか抱きついてるシュテルを引き離した。
が、嫌な予感は的中した。それは…
「ユウ~!おっはよ~!!朝……だ………よ………」
またも早起きしたレヴィさんに現場を見られてしまった。てか今日に限って何でこんなに早起きなの!?もう少しゆっくり寝てなよ!!
「……ねえ…ユウ………どうしてユウの布団の中にシュテるんがいるの?」
黒いオーラを瞬時に纏い、瞳の色が消えたレヴィさんが俺に聞いてくる。知らない…俺が知りたいよ。
「ユウはそんなにデレデレしたシュテるんが好きなのかなあ~?」
「い、いえ!そのような事は…」
「そうかなあ?ホントは昨日のデレシュテるんが気に入ったから部屋に連れ込んだんじゃないのかなあ?」
「連れ込んでないよ!?」
しかもデレシュテるんって……
「少しO☆HA☆NA☆SHIが聞きたいなあ…」
「O☆HA☆NA☆SHI!?『お話』じゃなくてO☆HA☆NA☆SHIッスか!?」
「そうだよ。O☆HA☆NA☆SHIだよ」
ガクガク震える俺。これはマズい。とにかくシュテルに起きてもらって俺が連れ込んでいないって証明してもらわないと…
「シュテル!!起きてくれシュテル!!!」
今、君が起きてくれないと俺がヤバいんだ!!ガチでヤバいんだよ!!!!
「何だ?どうしたというのだ?」
「レヴィ、何かあったのですか?」
この声はディアーチェにユーリ!?何で君らも今日はこんなに早いの!!?
「ディアーチェ、ユーリ…おはよ~。ユウの部屋を見ればわかるよ」
「ユウキの部屋だと?一体何……が………」
「え……これ………っ…て……」
目撃者が増えた~~!?しかも一瞬で瞳から光が消えた~~~!!!!
「ユウキ…どういう事だ?」
「説明してください」
二人も黒いオーラを解放した。逃げ場が無くなっていく俺。もう絶対絶命だ。
……そんな時にシュテルが目を覚ます。まだ寝ぼけている様だが助かった。俺が連れ込んでいないと証明してもらわねば。
「シュテル!!俺はお前を連れ込んだりしてないよな!?な!?」
必死にシュテルに聞く俺。しかし寝ぼけているシュテルは俺を見て
「えへへ~…ユウキ~……」
普段のシュテルとは思えない程ふにゃっとした顔と甘ったるい声で俺の名を呼びまた俺に抱きついて眠り始めた。こ、これは確かにデレシュテるんというあだ名になるのも頷ける……………………じゃねええええええええっっっっっっっっ!!!!!!!!
火に油を注いでどうするよ!!!!
ブチィッ!!×3
あ、何かキレたような音が聞こえた。俺は恐る恐る三人の方を向くと
「「「フフフ」」」
笑顔だった。もはや恐怖と絶望しか感じさせない絶対的な威圧感のある笑顔だった。
「「「何か言い残す事はある?(あるか?)(ありますか?)」」」
ああ、遺言ですね分かります。じゃあシュテルに
『私、長谷川勇紀は命を終えようとしています。今、家族に、命を狙われていますが誤解だといっても聞き入れてくれないでしょう。ただ一つ判る事は、彼女達の黒化はオヤ〇ロ様の祟りと関係が』ってこれじゃ某同人のノベルにでてくる遺書っぽいじゃねえかああああっっっっっっ!!!!!いや、確かにシュテルの中の人はあの作品のキャラクターの声を担当してたけど!!!!って、何か自分のピンチなのに余裕あるな俺!!!?
そんな事を考え、自分で自分をツッこんでいた俺は三人に連行されていく。え!?まだ何も言い残してないよ!?と抗議してみるが
「「「時間切れだよ(だ)(です)」」」
と無慈悲な宣告をされる。やっぱO☆HA☆NA☆SHIフラグが立ってたんだなあ。そして休日の朝からO☆HA☆NA☆SHIを受けた俺。気が付けばすでに土曜が日曜になろうとしている時間帯だった。
そして余談だがシュテルが目を覚ました時はお昼前だったとか…………。
Tweet |
|
|
26
|
14
|
追加するフォルダを選択
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。