授業が終わって昼休み。私はアリサちゃんとすずかちゃんの二人と一緒に昼食を食べるために屋上に居ます。
ただ……
「なのはあ~ん」
……この状況に少し慣れてしまっている私にもどうかしていると思いますけど、アリサちゃんは毎回恥ずかしくないのですか?
私も最初は止めて欲しいとしていませんでしたけど、今ではいつもの事なので諦めてアリサちゃんが箸で掴んでいる食べ物を仕方なく食べます。
その光景にすずかちゃんは朝と同様に苦笑いをしている状態です。毎日の光景なので私自身余り気にしていないのですが、慣れというものは本当に怖いものですね。
「そ、そういえばなのはちゃんは将来どうするの?」
私がアリサちゃんが箸で掴んだウィンナーを口の中に入れて飲み込むと、すずかちゃんがそんな事を言ってきました。多分この空気を換えるための話題でしょう。すずかちゃんはいつもこうやって空気を換えてくれるので結構助かっています。
どうして将来の事を突然話題に出したのかは、今日の授業で将来の事についての授業だったからだと思います。私の将来は決まっている様なものなのですけど、さすがにアリサちゃんとすずかちゃんに魔法の事を教えるのは出来ません。っていうか言ってしまったらアリサちゃんの対応で大変な事になりそうなので、言わない方が得策かと。
「う~ん……やっぱり翠屋を継ぐ事になるのかな? あまり将来の事は考えてないから」
とりあえず翠屋を継ぐかもしれないという事にしておきました。そう言っておいた方が一番良さそうだと思いましたので。
しかしまぁ、今私が気にしているのはそっちよりも……
「じゃあ、私もなのはの翠屋で一緒に働こうかな~」
……やはり予想してた通りアリサちゃんがそう言ってきました。自分の将来を私のために人生を無駄にしないでほしいです。闇の書事件で二人は魔法に関わるとは思いますけど、せめて拠点とかで貸してくれたりするくらいで関わって欲しいのです。それ以上の事は私も求めていませんので。
だからアリサちゃんの私の為に将来を変えるのは正直止めて欲しいのです。自分の人生があるのですから、そうやって私に付いて来るのは本当に止めて欲しいのです。このままでは本当にアリサちゃんも私に付いて来る可能性が高い。そうなればかなり大変であり、支障が起こるかもしれない。
「私と一緒に働くのは嬉しいですけど、アリサちゃんにはアリサちゃんの人生があるのですから……」
「わたしもなのはちゃんと同じ事だと思うよ」
私がアリサちゃんに自分の人生を生きて欲しいと言うと、すずかちゃんも私に同意してくれました。さすがにすずかちゃんもなのはちゃんにずっと付いて行くのは私にも迷惑だと思って言ってくれたのだろう。
しかし、これくらいでアリサちゃんが引き下がるわけがないという事は、この二年間を見て分かっている。この後返ってくる言葉はなんとなく察していた。
「あたしなのはと共に人生を過ごしたいの!! それ以外の人生は必要ない!!」
……まぁ、予想してた感じの答えが本当に返ってくるのでした。そこまで言われると恥ずかしいものですが、もう何度も同じ事を聞いているのでさすがに慣れました。
「ま、まぁ、何年か経てば変わるかもしれないから」
「そうですね。今はそうしておきましょうか」
さすがにアリサちゃんの言った言葉に私とすずかちゃんは苦笑いをする。苦笑いどころですまないような気がするけど、少しずつ私から離れてくれればいいと思っていた。少しずつと言っても、私にとっては魔法の事がバレてしまう12月のクリスマスイブの時までには、タイムリープする前のようなアリサちゃんに戻って欲しいのですが。
「……別に、何年経とうが私の意見は変えないもん」
ありゃ、いじけてしまいました。そりゃ私とすずかちゃんにそんな事を言われたらいじけてしまいますか。
「と、とりあえず弁当食べちゃおうか」
「そうですね。少し経てば元通りに戻りそうですし」
私とすずかちゃんはそれから自分の弁当を食べ始めることにした。
案の定、予想通りアリサちゃんが元通りに戻り、箸で食べ物を掴んで私の口の前に運び始めました。まぁ、すぐに機嫌を良くなるのは分かっていたのですが、やはりまた続けるのですね…… はぁ~
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その日の夕方。私はいつも通りアリサちゃんとすずかちゃんと一緒に下校中です。相変わらずアリサちゃんは登校した時と同じように私の右腕に抱き着いたままですが……
他愛無い会話を三人でしていると、とうとう私がユーノ君を拾う公園までやってきました。
そろそろ念話が聞こえてくるとは思うのですけど、なかなか聞こえてきませんね。
……とりあえず今の状態ではアリサちゃんが離れないので、もしユーノ君の念話が聞こえて走ろうとしたらアリサちゃんすぐに離してくれないだろう。だから今のうちにやっておきますか。
「アリサちゃん、一度離れてくれる?」
「え、どうして?」
「ちょっと忘れ物したかもしれないから確認がしたから」
「……分かった。それだったら一度離れるね」
そういう理由を付けて、アリサちゃんは渋々だけど腕を離してくれた。こういう事は私の邪魔になると思って離してくれるのだ。まぁ、忘れ物をしたというのは嘘なのだけど。
私は近くのベンチで背負っていた鞄を置き、確認するかのように二人に見せた。
「やっぱりない!! なんか入れた記憶が無いと思ってから確認して正解だった!!」
「何か忘れ物しちゃったの?」
すずかちゃんの言葉に私は頷いた。
「そうみたい。まぁ、今から学校に戻るわけにもいかないから明日で良いのだけどさ。念のためもう一回探してみる」
とりあえず時間を少しでも伸ばすために、もう一度探しているふりをした。しかしこれでもたった数分しか時間が稼げないのは分かっていた。
けど、そろそろユーノ君の念話が聞こえてくるはずなんだけど……
《――助けて》
「っ!?」
聞こえてきた。ユーノ君の念話が聞こえてくると、私は探しているふりをしていた手を止める。
突然手が止まった事に少し気になったのか、アリサちゃんとすずかちゃんはこちらを見てきた。
そんな二人を気にせずに私はすぐに鞄を閉じて、念話が聞こえてきた方向へ走り出した。
「なのは!? いきなりどうしたの!?」
「なのはちゃん!? 突然走り出してどうしたの!?」
私が突然走り出したことに驚いて、私の後を追ってきていた。
私が少し走っていると、道の上に首に丸い紅玉を付けているフェレットが倒れているのを見つけるのだった。
すぐに私はそのフェレット、ユーノ君を拾い、それからすぐにアリサちゃんとすずかちゃんが後ろから追いついた。
「いきなり走り出してどうし……どうしたのそれ!?」
「動物?怪我をしているみたい」
アリサちゃんとすずかちゃんは私が持っているフェレットを見て驚いている感じだった。
「と、とりあえず動物病院へ行こう」
「でも動物病院って近くにあったかしら?」
「大丈夫、近くに知っている場所があるから」
私は二人にそう言って、動物病院へと向かうのだった――
……考えてみたら、別にユーノ君の念話が聞こえてこなくてもユーノ君が倒れていた場所に向かえばよかったのでは?
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新暦85年、高町なのははある任務の途中で死亡する。
任務は全て嘘であり、全てはなのはを殺害するための一部の管理局員による計画だった。
なのははその計画通りに殺されるが、その任務に向かう途中に偶然何故か落ちていた拾ったジュエルシードによって、なのははタイムリープをするのだった!!
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