No.445439

織斑一夏が鈍感なわけ

魚介証券さん

小説家になろうより転載。
大多数の人に受け入れられづらい内容なので注意してください

2012-07-04 13:23:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:977   閲覧ユーザー数:968

 
 

「はぁ」

 

おれは何度目かわからないため息をつく。目の前にはスヤスヤと俺に膝枕されて幸せそうに寝ている幼なじみ。

こいつの名前は夢野 薫。幼なじみであり、小学生の時からの大親友であり、俺こと、織斑一夏が絶賛片思い中である人物だ。

俺は、薫の首辺りまでしかない短いがサラサラの髪の毛をなでる。ヘニャリと薫が幸せそうに微笑む。

 

「――ッ!」

 

その無防備な笑顔に思わず赤面する。どうしてコイツはただ寝ているだけなのに、俺の心を掴んで離さないのだろうか。

この小動物チックな小柄な体躯も、その小さく、カワイイ唇から放たられる澄んだ小川を想像させる声も、日に当たったことのないような透き通るような白い肌も、どうしようも無いくらい俺を引きつける。

 

「はぁ」

 

俺はもう一度ため息をつくと、コイツと初めて出会った時のことを思い出すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

俺が夢野 薫に出会ったのは小学校3年生のときだった。夏休みを終え、転校という形でコイツは俺と出会ったのだ。

初めて薫を見たときはかなりの衝撃を受けたの覚えている。目があっただけで赤面し、その笑顔をみただけで心臓の鼓動が速くなった。

――それが、所詮一目惚れとよばれるものだったと気づいたのは中学生になってからだった。

 

俺はあまり人見知りせず話しかけることができるし、たまたま席がとなりだったのも幸いして(本当に偶然だったがその時は天にも昇れる位嬉しかったのをおぼえている)、俺はすぐ薫と親友と呼べる関係になることができた。

そして4年生になり、箒がいきなり転校して落ち込んでいた時も薫は俺を一生懸命励ましてくれた(正直言うと励ますときの仕草があまりにも可愛すぎて、何を言われたのか覚えていない)。

 

そして5年生になり、鈴がいじめにあっていることを知った時も薫は俺に協力していじめを無くすように頑張ってくれた。

そして中学生になって俺は、ようやく薫に抱いていた感情が恋だと気づいた。

そう気づくと何か気恥ずかしくなってしまい、今まで一緒の布団で寝たり一緒にお風呂にはいったりしていたにも関わらず、俺は薫に顔すらあわせられなくなってしまった。この頃は俺にとって黒歴史であり、この時薫が感じていた孤独感を考えると罪悪感につぶされそうになる。

薫が不登校になったのはそれからしばらくしてからだった。その時俺はある意味ほっとしていた。もうこんなに苦しまなくていいと。

しかしそんな負の方向にプラス思考だった俺を変えてくれたのは鈴だった。彼女は俺の胸ぐらをつかみ、俺の恋はその程度で終わっていいのかと、所詮その程度の気持ちなのかと、はっきりそう言ったのだった。

俺はそう言われて激しく動揺した。俺の想いは誰にもばれてないと思っていたから。

しかしそれが迷いを捨てる決定打になった。

俺は薫に謝って、自分の想いをうち明けようそう決心した。

そうして謝ったときに見せてくれた薫の笑顔に久しぶりにみてやられてしまったこともあって、結局告白にはいたらなかったが(ちなみに弾と鈴にはヘタレと言われた)、俺と薫の距離がちょっとちぢまったような気がした。

しかしその関係は鈴が転校するまで発展することはなかった(転校する間際に、鈴に何か発展があったらすぐに知らせるように言われた。目が血走っていて正直怖かった)。

そして中学3年生の時事態は急変した。

俺と薫が誘拐されたのだ。どちらを狙ったものなのか、どんな目的があったのかはわからないがこの事件のせいでたった一人の肉親に迷惑をかけ、薫は極度の対人恐怖症になり、俺や弾、千冬姉といった人間以外と関係をもとうとしなくなった。

俺は自分の無力さを嘆いた。どうして薫を守ることができなかったのかと、俺は愛しい人ですら守ることのできない矮小な人間なのかと。

それから俺は貪欲に力を求め始めた。

――ただ守る力が欲しい。これ以上薫が悲しんだり、苦しまないように。

昔やっていた剣道を再開し、夏休みを利用して九州の強豪校へ武者修行にいったりした。

辛かったが薫の笑顔を、見たら辛さなんて吹っ飛んだ。中学を卒業する頃には、それなりに強くなり、大会に出場することは無かったものの、ある程度の相手なら大人にすら楽に勝てるようになった。

そして俺は更なる力を手に入れる為、地元で強豪校と評判の藍越学園を受験することにしたのだった。

俺は大会にでていないため、推薦を受けることはできないため、学力での試験になり、非常に頭の良い薫と二人きりで勉強を教えて貰うというご褒美のような受験勉強をしたあと(ちなみに薫も藍越学園への進学を希望していた)俺は一つヘマを起こす。

――IS学園と藍越学園の入試会場を間違えてしまったのだ。

そして何故か女性しか起動できないはずのISを男性であるのにも関わらず起動させてしまう。そしてあれよあれよという間にIS学園への入学がきまってしまったのだった。

IS学園への入学するのは良い、ISという世界最強の盾が手にはいるのだから。だがただ一つ気がかりがあるとすれば、薫と離れ離れになってしまうことだけだった。

しかし、それからしばらくして俺の耳に、薫もIS学園に入学することになったと言うニュースを聞き、歓喜した。

望みうる限り最高のシュチュエーションである。世界最高峰の防衛機能がある学園で、世界最高峰の兵器の扱い方を学ぶことができるのだ。

 

 

 

そして話は冒頭へと戻る。

 

 

 

「うにゅ?」

 

俺の膝枕で眠っていた薫が目を覚ます。その仕草一つ一つに萌えそうになるのを押さえながら、俺は言葉を紡ぐ。

 

「おはよう薫」

 

「今どのあたり?」

 

目をこすりながら外をみようと一生懸命首を伸ばす薫。もうカワイイなちくしょう!

 

「もうすぐIS学園につくぞ」

 

ここはIS学園へと向かうバスの中。しかしバスの中には俺と薫しか乗っておらず、俺と薫はバスの中で堂々とイチャイチャ(※一夏からみたら)していたのである。

 

「そっかじゃ急いで準備しないと」

 

ワタワタと準備する薫を見て俺は微笑む。

そう彼の名前は夢野 薫。俺の幼なじみであり、大親友であり、二人目の『男性』のISの適合者であり、そして俺が絶賛片思い中の相手である。

 
 

 
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