「大きくなったらどうするの?」
どこにもある公園で一人の少女と一人の少年が遊びながら話していた。
二人は六歳くらいの年齢で小さな頃から家が近所ということでよく二人で遊んでいた。
そんな二人がある時に話した会話である。
「大きくなったら?」
「そう、大きくなったら」
少年は少女にそう言った。
別に他意はなく、ただ純粋に聞いたのだ。少しも間を空けず、少女はすぐに答えた。
「大きくなったら――――のお嫁さんになりたいなの」
「僕のお嫁さんになりたいの?」
「うん」
少女は即座に綺麗な笑顔でそう答えた。
他意も何もなく純粋に少女は答えたのだ。
「分かった。大人になったら結婚しよ」
「うん」
少年は少女の答えに了承し、約束した。
これはある二人の過去の会話。
二人の約束は叶わなかった。
いや、叶う訳がなかった。
なぜなら少年の家族は魔導師だったからだ。
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少年の家族は七年前まで自分達の次元空間航行艦船に住んであらゆる管理世界を行き来し、スクライヤの一族と同じく遺跡発掘をしていた。
だが七年前、つまり二人が生まれる一年前、少年の両親にあたる夫婦はいつも通り遺跡を発掘するために、いつもは他にもたくさん居るのだが、今回は二人だけで次元空間航行艦船で次元空間を移動していた。
しかし、その移動中に異変が起こったのだ。
それは突然の出来事だった。
二人が乗っていた次元空間航行艦船が、その時に運んでいたロストロギアが発動したことによってエンジンを破壊したのだ。
すぐに対応して近くの世界に緊急着陸しようとしたのだ。
――それが第97管理外世界、その世界で言う地球だった。
だが着陸する所がなく、近くにあった海に着陸するしかなかった。
しかも海なら目立つことはなく、騒がれる事はなかったので都合が良かった。
そして海に着陸したのは良かったが、ロストロギアによる破壊が酷く、沈没し始めた。船に積んでいたロストロギアと一緒に。
すぐに非常用で脱出したが、その脱出した直後に次元空間航行艦船は沈没した。
これで完全に帰れなくなった。二人は別の世界に行く魔法は使えなかったので誰かが迎えに来るまで帰れなかった。
そうなるとこの第97管理外世界に住むことになる。
しかしお金はこの世界とは別の通貨なので使えるわけもないので無一文であった。
とりあえず、近くの陸に上がり何か方法が無いかと考えてた。
数時間歩いても結局何も思い付かず、ただ歩き疲れてた。しかも妻は妊婦だった。
流石にこれ以上は歩くのは負担をかけることになる。そういうこともあって少し近くの公園のベンチで休んでいたのだ。
そこで休んで居ると、夫婦らしき人達が歩いて来ていた。
いや、こちらに近づいて来ていた。
座っていた二人は自分達に何か用なのかと思っていた。
だが近づいてきた理由は意外な事だった。
「あの、お腹の子は何ヶ月なんですか?」
そう、近づいてきた二人はお腹の子の事を聞いてきたのだ。
良く見ると近づいてきた女性の方もお腹が膨れており、妊婦だと言う事がすぐに分かった。
同じ妊婦だから近づいてきたのだ。お互いの子供を授かっている身として。
そうと分かると座っていた彼女は微笑み、何ヶ月なのか答えた。
そうやって話が進んで行き、自分達が無一文だと言う事を話した。
もちろん、魔導師や別の世界からやってきた事は隠して事情を話した。っていうか話していた。
それを聞いた二人は二人で話し始めて何かが決まると、
「良かったら私の家に来て暮らしませんか?」
と言ってきたのだ。
さすがに驚いた。身元も知らない自分達を住まわせてくれると言うのは。
どうしてそんな事をしてくれるのかと聞くと、
「さすがにこのまま野宿させるのはどうかと思うし、さらには妊婦でしょ。子どもが可哀想だから」
と返ってきた。
それを聞いて断ろうとしたが、お腹の中の子もあるという事で諦めて居候してもらう事になった。
だがさすがにただ居候しているのはどうかと思って自営業をしていたので手伝ったりしてお金を貰っていた。
こうして年が過ぎて一年後にはお互いに子どもが産まれた。
それが冒頭にでた少女と少年である。
そしてさらに時が経ち、冒頭の少女と少年の話に戻る。
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こんな事があったからこそ、二人の約束は叶う事が無かったのだ。
そう、七年もこの地球に暮らしていたがずっとは居られなかったのだ。
いつかはこの地球から出て行かなければならない。少年の両親はそう思って居たのだ。
だが、その策は無かった。なぜなら少年の両親は事故で死んでいた事になっていたからだ。
だから七年も経ってしまった。誰もここには来る人は居ないのだから。
しかしその一年後、奇跡が起こった。
船と一緒に沈んだロストロギアを回収しようと少年の一族がやってきたのだ。
それを知った少年の両親はやっと帰れるのだと思った。
だが、それは突然の事だったので両親は少年にも自分達が魔導師だとは言っていたが、ずっとこの地球に居ると少年は思っていたのだ。
だからあの約束をしてしまった。しかし、それが叶わないと知った時は泣いていた。
少女と一緒に居られない。それは少女との約束を守れないという事だからだ。
だが少年の母親はこう言った。
「多分、あの子とはまた会うと思うわ。あの子にも魔力が備わっているのが分かっているから」
そう。これは母親の嘘という訳ではなく本当の話だった。
少女には魔力が備わっている事を少年の母親は知っていた。しかも、相当の魔力を持っていると言う事を。
だからまた少年とはまた会うだろうと言ったのだ。
しかし、それでもやらなければならない事があった。
少女とその両親、そして近所の人たちの記憶を消さなければならなかったのだ。
本当なら消さなくても良いかも知れない。けど、そうしなければならなかった。
なぜなら少年の家族は元々この世界の住民ではない。念のために記憶を消した方が良かったのだ。
それを少年の両親は少年に話した。だが少年は何も言わなかった。
記憶を忘れてもまた少女に会えるなら良いと思ったのだ。また会えるかも知れないだけでも嬉しかったからだ。
そして、少年の家族が帰るときがやってきた。
誰も迎えに来る人は居ない。当たり前だった。昨日、少年の家族の記憶を魔法で消したからだ。
なので少女は少年との約束を覚えていない。記憶を忘れてしまったからだ。
そして、だれも迎えに来ないまま少年の家族は第97管理外世界、地球を後にした。
それからちょうど二十年後、少女はあの時とは変わり今では「エースオブエース」と言われる存在になっていた。
しかし二十年前の少年の記憶は覚えていない。少年の事なんて忘れていた。
だが、少女と少年は再会を果たす。
そして二人が再会を果たす時、二人の記憶(メモリー)は動き出し物語始まる。
魔法戦記リリカルなのはmemories 〜幼馴染と聖王の末裔〜。はじまります。
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J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。
その青年はなのはに関わりがある人物だった。
だがなのはにはその記憶が消されていた。
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