No.444571

眠れる君にこの花を捧ぐ。

千風サヤさん

せめてものハナムケに。

2012-07-02 07:27:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:397   閲覧ユーザー数:386

 

 

 

――終わった。なにもかも。

 

体は指先や髪の先端から燃えて、灰となる。

 

 

 

 

 

――嗚呼、神様。

 

こんなわたしを、お救いくださいますか――?

 

 

 

【眠れる君にこの花を捧ぐ。】

 

 

 

熱い。アツイ。あつ、い。

 

 

 

体中燃やされて、それでも意識が残っているだなんて。

 

消えてしまいたい。早く消えてしまいたいのに。

 

 

 

痛い。イタイ。

 

 

 

体が、心が、痛い。

 

どうして大切にできないの。

 

 

 

生んでくれた作者(おや)も、やっと出会えた友さえも、みんなみーんな、てのひらからこぼれ落ちていく。

 

大事にしたいのに。大好きだって、思うのに。

 

大切に守りすぎて、誰にも渡したくなくて、この手で壊してしまう。

 

 

 

そしてわたしは、いつも独りなの。

 

 

 

こんなわたしを、誰が愛してくれるというの?

 

……わたしは、愛されたかったの?

 

 

 

自問自答を繰り返して、思いもしなかった感情に行きあたる。

 

自分のことなのに、今まで自分で気がつかなかった。

 

 

 

ダレカ、ワタシヲ アイシテ。

 

 

 

誰が、愛してくれるのだろう。

 

わたしは誰に愛されたかったのだろう。

 

誰の愛を、欲していたのだろう。

 

誰の愛なら手に入れることが出来たのだろう。

 

 

 

わからない。

 

燃え尽きるのを待つばかりで、もうそれは夢のまた夢。

 

生まれ変わりさえも、望めない。

 

 

 

「……さよなら、イヴ」

 

 

 

ただ、イヴと遊んだひと欠片の時間は、わたしのタカラモノだった。

 

大切にしすぎて、奪われてしまったけど。

 

 

 

「アリガト」

 

 

 

いよいよ意識が薄れていく中で、わたしは目を閉じた。

 

もう、開くことはない。

 

 

 

――ダイジョウブ。

 

 

 

「……?」

 

声が聞こえた。

 

頭の中に直接響くような、透き通った声。

 

 

 

――キミニ、ハナヲ ササグ。

 

 

 

もう痛みはなく、大好きなピンク色が、心地よくわたしの意識を包み込んでいった。

 

 

 

 

 

――儚く美しい金色の髪の乙女に、この花を捧ぐ。

 

願わくば、来世(つぎ)は温かな愛に包まれるように――。

 

 

 

 

 

end.


 
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