ある日のこと。
「そう言えば、お前、いつもその格好だよな」
「うん?」
智樹がせんべいを食べていたアストレアの格好を見てそう言った。
「だって私、これと制服しか持ってないし……」
「そういや、そうだったな……」
智樹はふとニンフの時のことを思い出した。
ニンフも最初に着た時はいつものエンジェロイド服に学校の制服のみだった。
「そんでもって……」
智樹は次に部屋で寝ころびながら絵描きをしているカオスの方を見る。
カオスに至っては制服など持っておらず、いつも修道服だった。
「何かお前達にも服を買ってやらないといけないかな~」
「それなら俺も付いてってやろうか?」
そこに窓の方には秋山がいた。
秋山もいつも黒い長袖の上着に白シャツに黒い長ズボンスタイルだった。
「付いて行くって、お前女物の服のセンス分かるのか?」
「無理だな」
「じゃあ何のためについて行くんだ?」
「暇だからだ」
「暇で付き合うってのは……」
「金は俺が出しちゃるから…」
「さあ、一緒にいこう」
智樹がアストレアとカオスを連れて、家を出て行こうとする。
「現金な奴め。…ところでイカロスとニンフはいいのか?」
「あの二人はセンスがな……」
「……それもそうか」
そして智樹はアストレア、カオス、秋山と共に服を買いに行くのだった。
そらのおとしもの センスオブセンス
智樹達は服屋の前に立っていた。
「さてと、入るか」
「……しまった!」
智樹は突然大声を出す。
「どうした? 金なら俺が出すと言ったが…」
「イカロスに俺を女に変えてもらうの忘れてた!」
「?」
カオスは何のことかはわかっていないが、アストレアと秋山は分かっている。
智樹は時にイカロスに頼んで量子変換機を使って女の子、トモ子となっている。
ニンフの下着を買った時もとある事情でトモ子になっていた。
「どうしよう、このまま入るなんて俺にはできない…」
「イカロス先輩を呼んだら?」
「いや、いくらなんでもそれは…」
「なんだ、そんなことか」
秋山がため息を吐くかのようにあきれる。
「そんなこととは何だよ! いくらなんでも大事な事だろ?」
「お前ならその気になればそのままいけるだろ」
「いや、このままって恥ずかしい……」
「はいはい」
秋山が智樹の頭に手をかざす。
すると秋山の手からオーラのようなものが流れ、そのオーラが智樹の体を包み込む。
オーラが消えると智樹はトモ子となっていた。
「おお!」
「お兄ちゃんが女の人になった」
「男を女にすることくらい、簡単だ」
「ねえ、それあんた自身にも出来るの?」
「出来るけど、しない」
「どうして? 女の子になるのは楽しいよ~」
トモ子は秋山に女の子の楽しさを教えようとする。
「いやいや、俺はこの今の人生を男として過ごしたい。
俺が女になるのは俺が完全に死んで、生まれ変わってからだ。
俺はそれまでは男として生きる」
秋山は秋山なりの信念があった。
「そんなことより、行くぞ」
そしてようやく4人は服屋に入り、最初に女性下着コーナーに向かった。
「まずは下着ね。アストレア、持ってないわよね?」
「なんでそんなに女言葉になるの?」
「だって今、女の子だもん。きゃる~ん」
トモ子は調子に乗っていた。
「下着は少しくらいなら持ってるわよ」
「あれ? そうだっけ?」
アストレアは制服の下に付けるものとして一応ブラジャーを少しは持っている。
「じゃあカオスのだけど…」
カオスは幼児体型なのでブラジャーの必要はない。
「パンティくらいだな」
「パンティ?」
「男でいうパンツのことだ」
「じゃあカオスに合うのを見ちゃおう~」
トモ子とカオスはパンティを色々見てみることにした。
「ねえ、これは?」
カオスが手に持っているパンティはスケスケであった。
「ぶっ! それはちょっと……それより……」
トモ子は猫のプリントがあるパンツを取る。
「これなんかどう~?」
「うわ~可愛い」
「じゃあ次は……」
そんなこんなでカオスの下着買いは十数分くらいで終わった。
「それじゃあ次は服を見に行くわよ~」
4人は次に服のフロアに向かった。
「さきにあんたの服を見た方がいいんじゃね?」
「俺はその気になれば服装なんて簡単に変えられる」
秋山は黒上着を変えるために上着を横マフラーに変える。
それだけでなく、いつの間にか黒い帽子+バイザーもしていた。
「これでどうだ?」
秋山が偉そうに帽子のつばをあげて、かっこつける。
「どう変わったんだ?」
ただ単に上着を脱いでマフラーと帽子をしているだけなので、着ている服は半袖の白服に黒い長ズボンのまま。
「………」
秋山は次に白シャツから黒シャツに変わる。
「黒くしただけじゃねえか!」
「俺はセンスってのが分からないんだ。
とりあえず二人の服を見に行くぞ」
そして4人は女性服のフロアに入った。
「さてと、それじゃあ早速カオスのやつから見るとするか」
4人は子供服の方に向かった。
「とりあえず、カオスに合いそうな服だけど……」
カオスはアストレアと違い、他の服を着たことがないためにそれ以外の服を着ているイメージがなかなか浮かび上がらない。
「幼稚園服なら思いつくんだけどね~」
「普段着に幼稚園服はないでしょ」
「そうそう。とりあえず真面目に考えないといけないが…」
「あれ、アストレアさんにカオスさんに秋山先生」
そこに日和がやって来た。
「あのお買い物ですか?」
「ああ、この二人の服をな…」
「あれ、その人は?」
日和はトモ子を見てふと疑問に思ったが……。
「きゃっる~ん、トモ子で~す、よろしくね、風音さん」
「あ、こちらこそ」
日和は丁寧に頭を下げて挨拶する。
(ねえ教えなくていいの? トモ子が智樹だって)
(面白いからいいんじゃね? それに時が来たら分かるだろうし、今言うことじゃねえだろ)
(そうなの?)
(面白いから黙っておく、それが今は一番)
こそこそと話すアストレア、カオス、秋山。
「それで~、今カオスの服を見てるんだけど……」
「それだったらこっちの方がいいと思いますよ」
日和が脇にかかっていた服の一着を取る。
それはとても子供らしく、月や星の模様があり、色もピンクにカオスらしい紫色が混じったものであった。
スカートも紫色で少し短いものの簡単には下着が見えないものだった。
「結構いいじゃない?」
「カオス、着てみない?」
「うん♪」
カオスは早速試着室で試着してみる。
「ねえねえ、どう?」
「似合う似合う」
「うんうん」
「ありがとう、日和お姉ちゃん」
「よかったですね」
「それじゃあとりあえず似たような物を探してそれを買うか」
それからひとまず似たような組み合わせを4組くらい見つけ、買うようにおいておいた。
「あとはアストレアだが…」
「何が合う?」
秋山とトモ子は悩む。
「それでしたら……」
日和がまた服を探しに行く。
「また行っちゃった」
「しかしアストレアに合いそうなのが普通に思いつかないが…」
「さっすが風音さ~ん」
少しして日和が服を持ってきた。
その服は黄色シャツに半袖の短い青いジャケットで、下はズボンであった。
「随分変わってるか?」
「アストレアさん、よく転んだりして、その……下着が……」
「ああ、見えないようにするためにか。考えたな」
「それじゃあ~、面白くない~」
トモ子が反対する。
「トモ子さん?」
「だって~、女の子の下着って~、たまに見えるくらいが~、見ごたえあるじゃない?」
「それはお前の理論じゃないのか?」
「違うの~、女の子はそういうものなの~、ね~?」
トモ子が日和に同意を求める。
「それはどうかと……」
さすがの日和も賛同しようにも出来ないようだった。
「通りあえずは着てみないことには判断しずらいから着てみたらどうだ?」
「うん」
アストレアが服を持って試着室に入って試着した。
「む、胸が……」
服のサイズはアストレアの身長には合っていたものの、胸の大きさを考慮していなかったため、きつそうであった。
「あ、ごめんなさい。すぐにそれより少し大きいのを……」
日和が同じがらでもう一回り大きいサイズの服を探しに行く。
「大丈夫? アストレアお姉様」
「ちょっときつい……」
アストレアが試着室に入って服を脱ごうとしたら…。
「きゃっ!」
突然自分の胸が後ろから触られたことに気づく。
試着室のカーテンの外にはトモ子が手を入れており、その手がアストレアの胸を触っていたのだ。
「あ、ああ!」
「女の子同士だから気にしな~い!」
トモ子は調子に乗って触りまくる。
「調子に乗らない!」
試着室の外でトモ子の腕を秋山が掴んでいた。
「いたたたたた」
「あのアストレアさん、新しい服を……!?」
日和が戻って来た時には色々驚きが出てきた。
トモ子が試着室に手を伸ばし、それを阻止するかのようにトモ子の腕を掴んで、力を入れて痛めつけてる秋山、そしてそれをただ黙って見ているカオス。
「…カオスさん、これどういうことなんですか?」
「う~んとね……」
カオスが日和に事情を説明しようとすると…。
「簡単に言えば、こいつがセクハラしてるから俺が阻止してるだけだ」
「セクハラって…桜井君みたいですね」
「まあ似たようなものだからな」
秋山はあくまでトモ子の正体をばらさないようにしている。
それから何とかトモ子の手をアストレアの胸から離し、再びアストレアは試着する。
「どう?」
「思ったより合うじゃないか」
ジャケットごしからでもアストレアの胸の大きさはよく分かるものだが、見た目的にも普通に合っていた。
「やっぱり似合ってますよ」
「けど、ズボンは少し…」
「でしょ、でしょ」
トモ子が同意を求めるように迫る。
「それじゃあスカートだな。いつものような長さでいいか?」
「いいけど」
「探してきますね」
こうして日和のおかげで何とかカオスとアストレアの服も決まった。
「ありがとね、風音さん」
「いえいえ、私も楽しかったですよ」
5人は服屋の外に出てきていた。
「あの~、それでお礼がしたいのですが……」
「いいんですよ、お礼なんて……」
「いやいや、お礼がしたいんですよ……。風音さんの胸を揉ませてもらえれば……」
「へ?」
トモ子が手をわきわきと動かす。
「それくらいにしなさい!」
そこに空を飛んできたニンフのパラダイス=ソングが飛んできた。
「ぎゃっふ~~~~」
トモ子は派手に吹っ飛んで行った。
「あ、トモ子さん」
「大丈夫よ、あいつならあの程度じゃ死なないし…」
ニンフの他にイカロスもやって来ていた。
「ニンフさんにイカロスさん」
「日和さんも来てたんですね」
「もう、二人の服を見に行くのなら私達も誘えばよかったのに…」
「お前達じゃセンスないだろ。っても俺もセンスは持ち合わせてないけどな」
「……ねえところでなんで智樹、トモ子になってたの?
アルファーから量子変換機もらってたの?」
「いや、俺の力で女にしてただけだ」
「あの~、何の話でしょうか?」
日和はイマイチ話が分かっていなかった。
「ああ、気にしないでくれや。あんな風に吹っ飛ぶのもいつも通りだしな。
それより飯にするか」
「はいはーい! 賛成でーす!」
「そんじゃあ食うか。俺のおごりでいいぜ」
そしてトモ子が吹っ飛び、イカロス、ニンフを入れた6人で食事をしに行くことになった。
「ところでデルタ、その服…」
「似合いますよね?」
「まあね、どうせヒヨリに手伝ってもらったんでしょうけど…」
ニンフにはバレバレであった。
「カオスの服もよくあってる」
「ありがとう、イカロスお姉様」
アストレアとカオスも上機嫌である。
終わり
おまけ
作者「久しぶりの投稿だ」
カオス「どうして今なの?」
作者「そらおと関係のネタをまた一つ作ったからだ。
だが理由はもう二つある」
カオス「それはな~に?」
作者「一つは前々から製作してずっと前に発表していた『地球戦士 ハーメラス』がようやく完成した」
カオス「それって今年初めの投稿で出てきたヒーローの名前だよね?」
作者「そうだ。まあコンセプトとしては『侵略! イカ娘』を昭和の特撮ヒーロー風にした感じだ。
ネタ的には『宇宙刑事ギャバン』だな」
カオス「どんな感じになるのかな~」
作者「ちなみにその作品の投稿は7月からの投稿予定だ。ペース配分は決めてないが、7月中に全部投稿する。ただ話数は少ないけどな。本当に毎回考えてる脚本家かはすごいと思ったぜ」
カオス「それがお仕事だもんね」
作者「さてともう一つの理由だが、その仕事が関係している」
カオス「?」
作者「ようやく俺も現実的に働ける時が来たようだ」
カオス「おめでとう~」
作者「とはいってもまだ本決まりとは言い難い。っても来週から働くと思うから、とにかく忙しくなるということだ。毎日ここ巡回してるけど、それが難しくなるな」
カオス「どうして?」
作者「だっていろいろやりたいことがあるんだもん。
そっちを優先する可能性が高いからな。
とまあ『地球戦士 ハーメラス』の方はもしも働いて忙しくなってもその休みとかの合間で投稿するつもりだからご安心を…。
ということで今回はこの辺で……。
それでは!
とうとうこの俺も働く時が来たようだな」
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今回の話は原作であったネタを少し利用したものとなっています。
また作者の分身となるオリジナルキャラ(秋山総司郎)も出てくることをご了承ください。
最後に作者からお知らせがあります。