第19話 VSハードブレイカー
ネプテューヌside
私達が会場に着くと皆が地面に座ってサンジュの演説らしきものを聞いていた。
変身の解けた状態で不思議に思いしばらくの間話しを聞いていると
「いいか!人間に機械ほどの精密さがあるのか。いいや、断じて人間に機械ほどの精密さは無い!」
「はぁー....また同じこと言ってるわね。あそこまでやられるとさすがに引くわ」
あいちゃんが呆れながらそんなことをつぶやく。
そこで、私達の目はサンジュの隣に立つそれに釘付けになった。
「ろ、ロボットさんです~!」
そう。そこには天使のようなスラスターに両腕が剣でできた、いかにも強そうなロボットがいた。
「あれはどう見ても戦うしか能がなさそうね」
「かっこ―――っは!いいわけないです!お兄様と比べれば全然です!!」
え?それって一応あのロボットがかっこいいってことだよね?
ら、ライカちゃん目をキラキラさせてるよ。情が移る前に撃破に限るね!
「おう、お前ら」
「シアン!」
目の前にはいつの間にやら赤毛のショートヘアーの女の子がいた。
こう見えて、ものづくりが凄く上手な男気勝る子なのである。
「さっきからずっとあれなんだ。聞いてるこっちが呆れてちゃな」
シアンがお手上げといった感じでサンジュのほうを見る。
言われてみればさっきから同じことを延々と語っているような気がする。
「おい!そこ!!ちゃんと私の話しを聞かんか!!」
「誰が、そんなアホな演説聞くか!」
「ア、アホだと!?」
「....ネプテューヌ。お前の力を持って思い知らせてやれ!機械の作ったものより人の作った方が凄いってことを!!」
シアンが懐に隠し持っていた総合博覧会の為に改良に改良を重ねた努力の結晶が私の手に握られた。
「うん!任せてよ!!いくよ、皆!!」
一同がこくっとうなずくのを確認して私達は会場の上に上がる。
上ってみると意外にも会場は広く、子供十人位が十分に走れるスペースだ。
ロボットはこちらに気付くとぎぎっと錆びれた鉄同士がこすり合わせた時にだす音のようなものを響かせこちらに対峙する。
「ふん!小娘ごときが!蹴散らしてしまえ、ハードブレイカー!!」
「遅すぎます!炎の鞭<フレイム・タン>!」
ロボットが動くよりも速くライカちゃんの炎で出来た鞭が対象の体に絡みついた。
私は自分のありったけの力を剣に注ぎ込んでゆく。
あいちゃんはライカちゃんの攻撃が相手の動きを止めたと同時に駆け出していた。
「この程度じゃ、まだまだよ!!」
怒涛の剣銃撃による攻撃とスピードで圧倒していくあいちゃん。
接近戦の中で器用に銃撃を織り交ぜて攻撃するのはカタールだからこそ出来る業だ。
それを難なくこなしているあいちゃんは、もはや神業を使っているといっても過言じゃない。
「っく!」
ロボットが何とか炎の鞭から解けた右手だけをあいちゃんに向かって振るう。
だが、それはあいちゃんの体に届く前に強烈な銃撃によってはじかれた。
「あ、あいちゃん!大丈夫ですか~!!」
「はあ、はあ、サンキュ!助かったわコンパ!」
あいちゃんは一旦私達の元まで戻り呼吸を整えながらロボットを見る。
「ネプ子!次で決めるわよ!!」
「うん!!」
紫の光を激しく放つ光りの剣を片手で持ち敵に向かって駆けていった!
鞭が完全に解けたロボットはスラスターを全開にしその大きさには似合わないものすごいスピードで迫ってきた。
「ネプテューヌ!私の力をあなたに託します!!」
ライカちゃんが叫ぶと私の剣から紫光の周りに炎が渦巻いていく。
そして、ロボットが眼前に迫ったときに少しだけ体をずらしすれ違いざまに右腕を斬りつけた。
すぐに方向転換し動きが止まったロボットの左腕を後ろからすれ違いざまに斬り落とす。
またも方向転換し両手に持ち替える。
「これで―――止めだよ!!」
眼前に迫った敵に今出来る最高速度で剣を横に一閃――――
「なっ!!」
私は驚愕の表情を浮かべた。
剣を振る速度よりもロボットの脇腹から出てきた機械の触手の方が動きが早かったである。
いつの間にやら出てきた触手に私の腕はがっちりと止められていた。
両手を掴まれた私は空に持ち上げられる。
ロボットの口部分が瞬時に開口し、そこには――――巨大な銃口があった。
「いやだよ。こんなの」
恐怖に目を瞑り私が完全に諦め掛けていた時に雷撃の音がした。
それと同時に体が触手から解放された私は誰かに抱きとめられていた。
「もう、大丈夫だ」
「た、タイチ?」
「大丈夫そうだな」
私はタイチにお姫様抱っこをされていた。
それも、顔の距離が近いため私はタイチをしっかりと見ることが出来なかった。
べ、別に嫌いとかそんなんじゃないよ!た、ただ、はずかしいから!!
「俺が絶対に守り抜いてやるよ」
タイチはそう微笑みながら言うと私を皆の所に連れて―――
「ここで待ってろ」
―――そう言いタイチは私をおろしゆっくりとロボットに向かって歩いていった。
タイチside
対峙するのは無数の触手を切断部分から吐き出している気持ち悪いロボット。
(これを作ったのは相当な趣味の野郎だな)
内心でそのクソ野郎の顔を思い出し、余計に苛立ちを感じていた。
「ちょっとイライラしてるんで、一瞬で終わらせてやるよ!!」
構えを取り右の拳を後ろに下げ、次の瞬間後ろに構えていた拳を神速で突き出した。
刹那、鼓膜が破れんばかりの爆発音が前方から発せられ―――
「こんなもんか」
―――ロボットが粉々に大破していた。もはや原型などほとんど無い。
拳にはいつもの闇の炎ではなく闇色の雷がほんの少しだけ発せられていた。
俺の力、ナイトメアの力は闇なら自分の好き勝手に形質を変化することが出来る。
闇の炎はただ単に闇を顕現してるだけなためそこまでの威力は無い。
「どうってことないな」
「....おおおおおおおおお!!!」
「な、なんだ!?」
観客席(?)から割れんばかりの声が飛んできた。
「ははは....」
乾いた笑顔で手を振り、ネプテューヌ達の元に歩いていく。
「途中サインください」とか「握手してください」とかそんなことを言われたので断る理由もないので軽くそんなやり取りをした。
「はぁー....何でここまで来るのに10分もかかるったんだろうな?」
「あ、あんたって.....ホント相変わらずむちゃくちゃね」
なんかさらりとひどいことを言われた気がするが、アイエフの顔が少し笑みを浮かべているのを見たら気にするも何も―――一瞬でどうでもよくなった。
「た、タイチさんは戦うたびに強くなってる気がするです~!」
「そんなことはないよ。俺は誰かを失って―――違うな。今は......サンジュ!!」
俺は力なく膝をつくサンジュに向かって叫んだ。
よほどショックだったのだろうかこちらに反応さえもしない。
皆でサンジュの元に行くと俺は早速とばかりにサンジュの胸ぐらを掴み俺の背と同じ高さぐらいまで持ち上げる。
「答えろ!これがお前の望んだものか!!」
「こ、こんな、何故だ、何故私のが!」
「.....あなたの兵器はただ冷たかった。けど、シアンの武器は違う!」
ネプテューヌがシアンの隣で武器をサンジュに見せた。
「シアンの武器は温かいんだ。まるで、誰かが守ってくれる。大切につくったものだからこそ、一生懸命がんばったって気持ちが凄く伝わってくるの」
「!?.....あ、私には自信がなかったのだ。自分で作るものでひとを傷つけてしまうのではないかと。自分で作るのが......怖かったんだ」
「....そうだ。まあ、俺でよければこの旅が終わったらいつでもあんたの作ったヤツの相手になってやるよ―――」
「.......。ありがとう、少年」
俺は胸ぐらを離し、サンジュを地面に下ろす。
ネプテューヌの言葉で気付かなかったら殴ってでも目覚めさせてやろうと思ったがそこまで重症はではなかったらしい。
「それでいいんだよ。失敗を恐れずそれを乗り越えれば言いだけの話だ。そんなに簡単に出来るようなものでもないけどな」
「私は目が覚めた気分だ。もう一度信じてみるよ」
顔を上げ立ち上がり、俺の前には確かな自身を持った男がそこにはいた。
「しかし、あれは.....お前が作ったのか?」
「い、いいや、あれは家の会社員が機械を使って作ってものだ。だいぶ前からずいぶん熱心に作っていた」
「ガナッシュだな。.....「あれ?お、お兄ちゃん!?」なっ!の、ノワール!?」
どこからともなく現れたのか、目の前には既に変身済みのノワールがいた。
「どうして、ここにいるんだ?」
「そ、それはこっちの台詞よ!こいつは私が倒す予定だったのに」
「まあ、俺は少し手を加えただけで、俺が倒したとはいえないかな」
「タイチが違うって言うなら、私達から見たら、ネプ子が倒したも同然かもしれないわね」
「ふ~ん。ネプテューヌが倒したのね。あ、ありがとう。あれは私が倒すはずだったけど、変わりに倒してくれて」
「うん!困ったときに助け合うのはお互い様だよ!!」
「そこまで言われると、少しばかりその性格がうらやましいわね。けど、次に会うときは敵同士なんだからね!」
そう言い残すとノワールは飛び去って行った。
サンジュは自分が邪魔者と思ったのかその場からいなくなっていた。
これからのラステイションは、かなり期待できそうだな。
「あ!?そういえば、あのクエストの有効期限今日までだったわ!!」
アイエフが急に思い出したのかのように走り去って行く。
「?.....クエスト?」
「み、皆急ぐよ!」
ネプテューヌもライカとコンパを連れて走り去って行った。
「ちょ.......行っちまったな」
そこで、隣にいたシアンが俺の肩をポンポンと叩いてきた。
「お前も大変だな。.....まあ、これからお互いがんばろうな!!」
「だな。サンジュは任せたぜ、シアン!!」
「了解した!ネプテューヌ達を頼むぞ!!」
「もちろんだ!俺が絶対に守り抜いてやる!!」
そんな大事な約束をした俺達は最後にハイタッチをし、観客の歓喜の声を背に浴びて俺はネプテューヌ達を追いかけた。
(ホントに休みがないよな。まあ、あいつらと一緒なら楽しいからいいか)
俺は笑みを浮かべ、走っていくのだった。
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タイチよりも一足速く総合博覧会に到着したネプテューヌ達。彼女達の前に立ちはだかるのはラステイションの技術力の結晶を形で表したものだった。ハードブレイカーとの直接対決対!ネプテューヌ達は勝つことが出来るのか!