No.440320

IS~音撃の織斑 十五の巻:海、到来

i-pod男さん

姉に捨てられ、魔化魍と戦う猛士の鬼、石動鬼に拾われた織斑一夏。鬼としての修行を積み、彼は何を見る? ISと響鬼のクロスです

2012-06-22 07:34:38 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7224   閲覧ユーザー数:6847

Side 三人称

 

「海!見えたあ!」

 

バスの中で誰かが叫び、全員は窓の外に目を移した。快晴の空と青緑色の海。何とも美しい景観だった。

 

 

「いい眺めですね、兄様。」

 

「ああ。そうだな。(海も魔化魍がいるからあまり安心は出来ない。音角だけでも持っておくか・・・・)」

 

一夏は外を眺めていたが、以前表情は変わらず、厳しいままだ。そう、水中に生息する魔化魍はいるのだ。それに夏が近付いている為、鍛錬にはいつも以上に力を入れなければならない。夏とは鬼達に取っては最も厳しい季節なのだ。

 

「どうかしましたか?」

 

「ん?いや、何でも無い。気にするな。」

 

ラウラは隣に座って心配そうに一夏の表情を伺っていた。一夏としては妹兼小動物の様なので、以外に可愛がっていた。寝ている時も頭を撫でたりするとくすぐったそうに丸まったりするので楽しんでいた。他の女子達はそれを羨ましそうに見ていたが。荷物をバスから運び出して部屋がどこか探したが、部屋割りに彼の名前は無かった。

 

「まさか教員室なのか・・・?ラウラ、お前の相部屋の奴らは誰だ?」

 

「はい、一組の布仏と四組の更識ですが・・・・」

 

「悪いがしばらくそっちの部屋の厄介になるぞ。」

 

一夏は荷物を持って行き、それを入り口に置いた。問題があってはまずいので先にラウラが入り、一夏がそれに続いた。

 

「あー、いっちーだ〜。ヤッホー。」

 

「よう、布仏。」

 

「なんで、ここに・・・・?」

 

「ちょっとな、教員室で泊まるの嫌なんだよ。」

 

一夏の目は教員室の張り紙が張ってある扉を鬼の形相で睨み付けた。

 

「兄様、何故そこまで教官を毛嫌いするのですか?」

 

「話すからとりあえずは座ってくれ。立ったままじゃ落ち着いて話も出来ない。」

 

そして一夏は再び全てを語った。捨てられた事、石動鬼に拾われた事、IS学園で再開し、更には師匠に和解を迫られた事。

 

「俺は絶対ゴメンだ。あんな奴と和解なんかしたくない。」

 

「そこらへんはどこかかんちゃんと似てる〜。」

 

「本音。」

 

「でもでも〜、いっち〜がデータをくれたお陰でかんちゃんの専用機が完成したんだよ〜?それに事情も話してくれたからこれ位しないとフェアじゃないよ〜?嫌ならかんちゃんが自分で話せば良いし〜。」

 

実際その通りである。難航している所で彼女の専用機開発が遅れた責任は自分にもある、そう言って一夏は白式のデータをそっくりそのまま全て渡したのだ。

 

「分かった。でも・・・・誰にも言わないで・・・・」

 

「言うつもりは無い。」

 

そして簪も自分の姉であり、更識家当主でもある楯無が既にロシアの国家代表であり、専用機も全てゼロから自分で組み上げ、文武両道の学園最強の生徒会長である事を明かした。そして自分はその妹としか見られていない、と言うコンプレックスも。

 

「そこら辺は俺と似てるな。俺も元『姉』が世界最強だからって勝手に期待されて勝手に見放された。誰一人俺を俺として見てくれなかった。だから俺は織斑の姓を捨てた。」

 

「そう、なんだ・・・・」

 

「まあ、何はともあれ、お前の専用機は完成したんだし、もし良ければ俺が生徒会長と話をつけて来ても良い。だからあまり気に病むな。お前はどう足掻いてもお前にしかなれない。だからお前の流儀で、お前なりのやり方でそいつを超えろ。頼れるメイドもいるんだし、俺も勿論相談に乗る。な?」

 

そう言って一夏はポンと簪の頭に手を置いて軽く撫でた。それを見たラウラが少し不機嫌そうにしていたが、自分も撫でられて直ぐに機嫌を直した。

 

「さてと、俺は気分転換の為に泳いで来る。行くぞ。」

 

一夏は穿いていたズボンの下に水着を既に着ており、その中に音角をしまっているのだ。サングラスをかけて羽織っていた薄いシャツのボタン三つを開くと、悠々と外に出て行った。だが、その時一夏はある事に気付く事が出来なかった。簪の顔がほんのりと赤くなっていた事に。浜辺に出ると、やはり女子の注目を浴びた。まあ、女子率九十九パーセントの所なのだから仕方無いが。

 

「一夏、その傷は・・・・?」

 

はだけたシャツから右肩から左脇腹にかけて出来た大きな傷がチラリと見えた。

 

(ヨロイツチグモと武者童子、鎧姫を相手にしたからか・・・・あの時は響鬼さんのアームドセイバーで助かったけど・・・・)

 

「気にするな。師匠と暮らしていた頃、この程度の傷なんていつも作ってた。」

 

「いっちかーーー!!」

 

突然後ろから飛び付かれたのを反射的に背負い投げで水の中に一本背負いで投げ飛ばした。

 

「いきなり何するのよ、バカ!」

 

鳳鈴音が自ら飛び出して来て噛み付いて来る。

 

「馬鹿はお前だし、それは俺の台詞だ。いきなり人に飛び付く無作法な奴がいるか。」

 

浜辺から歩いて行って腰辺りまで海水に浸かり、掌で水を力一杯押し出した。それなりに大きな水の奔流が鈴音に襲いかかって更に後ろに押し返す。そしてそこでラウラがいつの間にかいない事に気付いた。

 

「に、兄様・・・・・」

 

「ん?うおお・・・・」

 

突如後ろにタオルで体をぐるぐる巻きにしたミイラが洗われ、その横にシャルロットがツーピースのオレンジ色の水着を来ていた。やはりISの機体も同色であるからか、イメージカラーである事が伺えて良く似合っている。

 

「シャルロット、お前の隣にいるそれはもしかしなくてもラウラなのか?ツインテールにしているのが些か謎だが。」

 

「ほら、ちゃんと一夏に見せないと勿体ないよ?折角買ったのに。」

 

「いや、その・・・・わ、私にも心の準備と言う物が・・・・」

 

(全くコイツは・・・・)

 

一夏はバスタオルの一部を掴んで引っ張ると、ラウラはぐるぐると回りながらタオルを引き剥がされ、ランジェリーに見えなくもない黒い水着が露わになった。肌が白い為、コントラストでそれが更に引き立っている。それに加え、丁度あの白いペンダントが日光を受けて煌めくので、より一層綺麗に見える。

 

「ほー、中々似合うな。可愛いぞ、ラウラ。それもちゃんと付けてくれてるみたいだし。」

 

ラウラは顔を真っ赤にしていたが、誇らし気ににんまりと微笑んでいた。

 

「さてと、俺は泳ぎに行く。素潜りで。」

 

「兄様は、どれ位息が保つのですか?」

 

「大体五分前後だな。俺の師匠なら十分は保つそうだが、俺はそこまで肺が発達していない。」

 

「十分って・・・・一夏の師匠ってなに、魚の生まれ変わり?」

 

「いや、あの人は鬼だよ、色んな意味で。」

 

意味深な事を言うと、水の中に姿を消した。水の中でもしっかり見えているので、そのまま泳ぎ続ける。しばらくして頭を海面から出すと、かなり遠くまで来てしまった。浜辺ではビーチパラソルの下でポツンと誰かがいるのが見える。

 

「あれは・・・・簪か。」

 

一夏は浜辺に向かって泳いで行く。

 

Side out

 

 

Side 一夏

 

浜辺に出ると、直ぐに簪に声をかけた。ロイヤルブルーのワンピースタイプの水着を着ている。髪の色と似ているから似合うな。

 

「よう。お前は泳がねーのか?」

 

「暑いの、苦手・・・・・(一夏って体凄い・・・・・)」

 

「そうらしいな、顔が真っ赤だぞ?」

 

日射病にでもなったか?まあ、兎に角・・・・ん?キハダガニが砂の中から鋏で俺を小突いて来た。やっぱり何かがいるのか・・・・?そう思った矢先、水の中から何かが飛び出して来た。デカイ・・・・・それもバケガニやオオナマズ以上だ。これはまさか・・・・ナナシか?!

 

「簪、離れてろ。ここは危険だ。」

 

「え、でも・・・」

 

「良いから行け。さっきの水飛沫は鯨でもない限りあり得ない。そして鯨ならもっと沖の方で出る筈だ。行け。」

 

どうにか簪を説得して、向こうへ行った所で俺は音角を鳴らし、額にかざした。緑色の炎と赤いスパークを振り払った。すると、砂浜の端にある崖の方から拍子木を打ち鳴らす様な音が聞こえた。

 

「よ、一夏!久し振りだな。」

 

この声は・・・・!

 

「弾!」

 

「一夏さん!私もいますよ!」

 

「蘭も!気をつけろ、ナナシが出た。」

 

「ナナシ?!聞いてねーぞ!」

 

「お兄、ぼやく暇があるならさっさと倒す!」

 

蘭が弾を崖から蹴り落としたが、空中で一回転して砂の上に着地した。そして左手首の鬼弦を爪弾き、額にかざす。紫電があいつの前に落ちて爆発し、その中からダンキさんの色違いみたいな姿に変わった。赤紫の腕とバツ字型の隈取りに一本の大きな角。

 

「お前もようやく鬼になったか。」

 

「まあ、正式にはまだだけどな。」

 

「お前はどれを使うんだ?音撃は。」

 

「ダンキさんは太鼓がメインだからな、太鼓使うぜ。弦もトドロキさんから手解きされたし。」

 

「俺の貸してやるよ、ほら。」

 

俺は音撃弦『雪月刃』と音撃震『羅雪』を渡して自分は音撃管『断空』を構えた。

 

「行くぞ。蘭、お前はそこからサポート頼む。」

 

「はい!」

 

俺はアサギワシを巨大化させて弾もそれに飛び乗った。飛び回りながらも鬼石を集中した一カ所に撃ち込み、音撃鳴『木枯』を先端に取り付けた。

 

「音撃射、轟風一乱(ごうふういちらん)!」

 

指を動かして音を変え、徐々に吹き鳴らす音が強くなった。感じる・・・・清めの音が震えるのが感じる。ナナシが暴れて苦しんでいる。とりあえずエグイ事に目玉と羽が爆発した。

 

「うわー・・・・お前酷いな。ゲームでも結構そう言う事するし。」

 

「ぐだぐだ言ってる暇があったらさっさと攻撃しろ。巨大化させるのは長時間で着ないんだよ。」

 

催促すると弾はアサギワシから飛び降りて、音撃弦をナナシの背中に突き刺した。

 

「音撃斬、雪崩嵐!」

 

アイツ俺の技使いやがって・・・・・まあ、良いけどさ。俺達は続けて音撃を流し込み続け、蘭は自分が立っている所から陰陽冠で炎の鳥を幾つも飛ばして動きを止めた。そして遂にナナシが爆散した。

 

「うおおおおおお?!」

 

だが、その所為で弾は水の中に落ちてしまい、アサギワシはそいつを海の中から掴み取って崖に戻って行った。

 

「ワザワザ済まなかったな。二人共まだ修行の途中だってのに。」

 

「いえいえ、一夏さんの為でしたら、どこへでも!」

 

「そうか。俺はそろそろ戻る。ありがとうな。弾、お前変身出来たのは良いが、解除するの顔だけにしておけよ?後、夏が近いから気を付けろ。使うのは太鼓だけだ。」

 

それだけ言うと、俺は直ぐに立ち去った。俺だけ余りにも長い間いなかったら色々と怪しまれる。特に簪にはあんな事言っちまったからな。それに魔化魍の存在がもしあいつらに知られたら俺も動き難い。

 

Side out

 

 

 

Side 三人称

 

まだ時間が余っていたので一夏は直ぐにタオルを引っ掴んで部屋に戻って・・・・シャワーを浴びてタオルだけを体に巻いた簪とばったりはち合わせた。直ぐに部屋を出て扉を閉める。

 

「わ、悪い・・・・!(くそ・・・・今のは事故だ・・・事故なんだ!!)」

 

「も、もう良いよ?」

 

簪が部屋着姿で扉を開けた。一夏はとりあえず着替えて頭を地面に打ち付ける位の勢いで頭を下げた。

 

「本当に済まない。」

 

「だ、大丈夫・・・・一夏が荷物そこに置いたままだって事忘れてたし・・・・(み、見られた・・・・タオル巻いてたとは言え・・・・見られた・・・)」

 

「すまん・・・・さてと、専用パーツのテストもしなきゃならないな。行こう。」

 

二人は再び浜辺に集合している生徒達の所に戻った。

 

「遅いぞ、何をやっていた?」

 

「すいません・・・」

 

「まあいい。専用パーツのテスト使用を行う。全員気を抜くな。」

 

指示が出ようとした矢先・・・・

 

「ちーーーーーーちゃーーーーーん!!!」

 

どこからか声がして、千冬に向かってフリルの付いた服を着た紫色の髪の毛をしてメカニカルなうさ耳カチューシャを付けた女性が飛びかかって来た。それを千冬はワンモーションで顔面を的確に掴む。

 

「何をしに来た。束。」

 

「相変わらず容赦ないアイアンクローだね!箒ちゃんも久し振り!さてと、堅苦しいのは抜きにして、箒ちゃん!空をご覧あれ!」

 

菱形の巨大なコンテナが空から降り立ち、そこから一機の真っ赤なISが現れた。

 

「これぞ私お手製の現行ISを全てに於いて凌ぐ最強のIS赤椿!!パーソナライズとか面倒い物は全部終わってるから。」

 

「身内だからって貰えるの?ずるくない?」

 

「おやおや、これだから頭の悪い人は嫌いなんだよね。有史以来何時人間が平等だった事があると言うのかね?」

 

この一言で不平を漏らす全員が封殺された。

 

「いっくんも久し振りだねー。ちょっと見たいから白式出してねー。」

 

一夏はしばらく黙っていたが直ぐに白式を展開し、束はそれにコードを差し込んで空中投影されたディスプレイに目を走らせて行った。

 

「ふむふむ、不思議なフラグメントマップをしているね。男の子だからかな?ん?何で武装が変な事になってるの?」

 

「白式は俺が頼んでパーツとコアだけ送って来る様に頼んで、友人にも協力してもらって俺が組み上げた。武器も当然雪平だけじゃないぞ。ただ、一つだけ問題がある。零落白夜を使う時の燃費の悪さを改善出来ないか?」

 

「ん〜、ちょっと待ってねー・・・・・・はい、出来た。これで少しはマシになった筈だよー、エネルギーの減少を四割に抑えたから。」

 

「感謝する。」

 

「織斑先生!これを!」

 

息せき切って走って来た真耶がブック型端末を見せると、千冬の表情が険しくなった。

 

「テストは中止だ。専用機持ちは私と来い。一般生徒は自室にて待機だ。」

 

それだけ言うと、千冬は花月荘まで戻って行き、一夏、簪、シャルロット、箒、ラウラ、鈴音、そしてセシリアが小走りで千冬の後を追って着いた先は他の教師達が忙しなく動いている作戦室だった。

 

「ハワイ沖でアメリカとイスラエルが共同開発している軍用IS、銀の福音、通称シルバリオ・ゴスペルが暴走して現在も超音速で移動していると言う情報が入った。委員会が我々にこれを止めろとの命令が来た。」

 

「目標ISの詳細スペックを要求しますわ。良く知りもしない機体を相手取るのは危険です。」

 

「良いだろう、だがこれは両国の極秘事項だ。もし漏らせば罰則もあり得るし、最低二年間の監視を付けられる。」

 

データを見てシャルロットは顔をしかめた。

 

「シルバーベル・・・・これが厄介だね。僕のガーデンカーテンじゃ防ぎ切れないし、こんな物で弾幕を張られたら避け切れないよ。」

 

「格闘スペックも未知数だしな。侮れん。偵察はやはり行えないのですか?」

 

ラウラが手を挙げてそう聞く。

 

「無理だ。出来ても精々一回が限度だろう。有力な戦法は、一撃必殺の威力を持つ攻撃で福音を撃破する事だ。」

 

「つまり俺を向かわせるのか。良いぜ。やってやるよ。ただし、一つだけ問題がある。俺の攻撃はシールドエネルギーを消費するから、移動用にもう一人必要だ。高速で移動出来る奴が、な。俺の考えでは、セシリアか簪が適任かと思う。どちらも機動力はある。」

 

「ちょっと待ちなさいよ!私も中国からオートクチュールが来てるからそれでスピードを上げられるわ!」

 

「インストールは終わってないだろう?テストが中止になったんだし。」

 

「う・・・・」

 

反論する鈴音を論破して黙らせた。残念ながら間違ってはいない。

 

「確かに私は本国から高機動パッケージのストライクガンナーを送られてきましたが、まだインストールが終了しておりませんので・・・・・」

 

「じゃあ、決まりだな、簪。」

 

「待った待った!ちょっと待って!」

 

天井裏から束が現れて、ディスプレイを見せる。

 

「断然赤椿を使わなきゃ!これは初の第四世代型ISなのだー!展開装甲を使うから、即時万能対応(マルチロール・アクトレス)を可能としているから、高機動戦闘も可能としているのだ!」

 

「確かにそうだが、俺は反対だ。専用機を貰ったばかりの奴をいきなり実戦投入するのは賢いとは言えないな。経験も知識も浅く、専用機が貰えると聞いた時のお前の反応・・・・明らかにお前は新たな力を手にした事に有頂天になっている。だがその驕りがいずれ重大なミスを招くぞ。良く知りもしない物を一朝一夕に使いこなす事は不可能だ。簪は日本の代表候補生であり、高機動戦闘訓練もお前よりは経験は上だ。」

 

「貴様・・・・!」

 

「俺は何か間違っているか?それとも図星か?」

 

熱り立つ箒を冷たい目で見つめ返し、落ち着き払った声で反対する。

 

「織斑先生、そうは思いませんか?そもそも何故学園の生徒にこの件が回って来たのですか?軍用ISが相手じゃ勝機が皆無なのは一目瞭然です。何故国家代表ないし我々よりもっと実力が上の者が派遣されないのですか?」

 

「それは私にも分からん。だが、指令が来てしまった以上無視する事は出来ない。そしてお前の言葉は尤もだが、篠ノ之にも同行してもらう。」

 

千冬は平静をどうにか保ちながら一夏の言葉に返事を返す。一夏はそれを聞いて思わず舌打ちをした。とうとう我慢の限界が来たのか、箒は一夏を殴ろうと手を上げたが、すぐに一夏にその手を掴まれて急所を責められ、大人しくなる。

 

「良いか、これはお前の為を思って言っているんだ。お前は今まで自分の命を賭けた事があるとは思えない。今回はそう言う時だ。命を賭けた事も無い様な奴にこの作戦をおじゃんにされたら皆に迷惑がかかると言っているんだ。別にお前が嫌いだからそう言っている訳じゃない。あくまで専用機持ちの経験と知識の差だ。まあ、俺に最終的な作戦の決定権も指揮権も無いが・・・・・・俺はもういつでも行けるぞ。」

 

「わたしも、です・・・・」

 

「では、十分後に更識、五十嵐、篠ノ之の三人は超高感度ハイパーセンサーをインストールする為に浜に集合、残りの専用機持ちはここで待機だ。」

 

一夏はラウラ、簪と共に部屋に戻った。

 

「兄様・・・・」

 

ラウラは心配そうに一夏を見つめる。

 

「そんな顔するな。形はどうあれ、俺は戻って来る。これ、その間預かっててくれ。戦闘中に失くしたくない。」

 

一夏はペンダントを外し、ラウラの首にかけてやる。すると、ラウラは一夏の腹辺りに顔を埋めて抱付いて来た。一夏もそれに応えて頭を撫でてやる。

 

「さてと、俺は先に浜に行く。簪、遅れるなよ?」

 

一夏は内心不機嫌その物だった。足音荒く千冬の元に行き、二人だけで話が死体と言って廊下に連れ出した。

 

「何故篠ノ之を同行させる事を許可した?友人のよしみ、だからか?お前も内心思っているんじゃないか?俺が正しいって事。ま、俺が撃墜されても、俺を恨むなよ。なんせ相手は軍事開発されたISだからな。性能なんて比べるまでも無く向こうが高い。」

 

そう言い捨てて浜辺に向かう。

 

side out

 

 

 

Side 一夏

 

全く・・・・どう言う神経をしているんだ。この非常時に専用機を貰って間も無い様な奴に実戦に赴かせるなんて・・・・・!馬鹿の極みだ!

 

「くそ・・・・」

 

俺は砂浜で精神統一をする為に目を閉じて浅い呼吸に変えた。全ての感情を消し、何も考えるな・・・・・・何も・・・・・浅い呼吸を徐々に深い深呼吸を変えて行き、目を開いた。繋いだコードで超高感度ハイパーセンサーのインストールが終わり、俺は最終点検をする為に白式を展開した。PIC、OS、MS、コアバイパス、ブースター、オールグリーン。後は武装だな。閃爪刃、問題無し。祟羅神、慟哭、是空、六道、問題無し。二、三分程して篠ノ之と簪も到着してISを機動、展開した。簪の専用機、打鉄二式は造設ブースターが増えているのが見えた。

 

「簪、頼むぞ。」

 

「うん。」

 

横では篠ノ之が俺を睨み付けているが。さて、行くか


 
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