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真・恋姫†無双~赤龍伝~第105話「降臨」

さん

司馬懿の行方が分からない連合軍の前に…。
宮中に忍び込んだ明命の安否は?
そして、ついに主人公が……。

未熟なため文章や設定などにおかしな部分が多々あるとは思いますが、長い目で見てくださると助かります。

2012-06-19 05:32:05 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:2898   閲覧ユーザー数:2642

真・恋姫†無双~赤龍伝~第105話「降臨」

 

伝書鳩のうーちゃんにより、明命からの知らせが連合の本部に届いた。

 

 

華琳「宮中に潜り込むのは成功したものの、未だに司馬懿の居場所は分からぬか」

 

雪蓮「明命にも見つけられないなんて、もしかして本当に洛陽にいないのかも……」

 

亞莎「では、司馬懿は一体どこに?」

 

夏候惇「きっと華琳様に恐れをなして逃げたんだ!」

 

藍里「それはないでしょう」

 

夏候惇「何だとぉ? 貴様ぁ、華琳様が司馬懿に劣るとでも言うのかぁ!?」

 

藍里「ひっ!」

 

夏候惇が睨まれ、藍里は小さな悲鳴を上げる。

 

雪蓮「ちょっと、うちの娘を脅さないでくれる」

 

夏候惇「何だ、やる気かぁ!」

 

華琳「止めなさい!」

 

夏候惇「華琳様。ですが、こいつらが…」

 

華琳「春蘭、話が進まないわ。あなたは少し黙っていなさい」

 

夏候惇「うぅ……、はい」

 

華琳の迫力に負け、夏候惇は部屋の隅に移動していった。

 

 

華琳「さあ、藍里。話を続けてちょうだい」

 

藍里「はい。司馬懿の軍勢は我々よりも強大。たとえ洛陽で決戦になったとしても勝算は我々よりもずっと高いはずです」

 

劉備「そうなの、朱里ちゃん?」

 

諸葛亮「はい。残念ですがその通りです。なので、司馬懿さんが何故姿を消しているのかが分かりません」

 

火蓮「ならば、どうやって司馬懿を見つけ出すか」

 

夏候惇「いっそのこと、洛陽に攻め込みましょう!」

 

天幕の隅で黙っていた夏候惇が叫ぶ。

 

藍里「洛陽の民を巻き込む気ですか!」

 

夏候惇「うっ…だ、だが、洛陽に攻め込めば、司馬懿が洛陽にいるかどうかも分かるだろうが!」

 

華琳「春蘭、黙っていなさいと言ったはずよ!」

 

夏候惇「……申し訳ありません」

 

関羽「確かに、その通りかもしれんな」

 

劉備「でも、それじゃあ……洛陽の人たちを……」

 

関羽「桃香様。この際、多少の犠牲は」

 

劉備「ダメだよ。司馬懿さんを倒す為に洛陽の人たちを犠牲には出来ないよ」

 

関羽「しかし、それでは」

 

劉備「愛紗ちゃん。私はみなが安心して、笑って暮らせる世界を作りたいの。その中には洛陽の人たちも含まれているの。だから……」

 

関羽「……わかりました」

 

華琳「劉備、洛陽に攻め込まないのならば、これからどうするのかしら? 仲達を討たなければ、この戦いは終わらないわよ」

 

劉備「それは……一生懸命に司馬懿さんを探すっていうのは?」

 

火蓮「それは今やっているな」

 

劉備「あはは……そうでした」

 

 

雪蓮「こんな時に冥琳が居てくれたら、良い策をぱっぱーと思いついてくれるんだけどなぁ」

 

張飛「朱里だって負けてないのだ! 朱里、いつものように良い策を出すのだ!」

 

諸葛亮「そうですねぇ。…上手くいくか分かりませんが、ちょっと相手を揺さぶってみましょうか」

 

火蓮「おもしろい。どんな風に揺さぶるのだ?」

 

諸葛亮「まずは…」

 

?「その必要はないでしょう」

 

天幕の外から声が聞こえた。

 

一同「!!」

 

関羽「今の声は、まさか!」

 

華琳「仲達!」

 

蓮華「何だと!」

 

亞莎「あ、お待ち下さい!」

 

真っ先に天幕から外に出たのは関羽だった。それに続いて華琳、劉備、蓮華、亞莎が外に出る。

 

 

関羽たちが外に出ると、そこには先程から行方を捜していた人物が立っていた。

 

 

 

―――洛陽・宮中―――

 

乾いた音が響く。

 

放たれた弾丸は標的に命中する。

 

そして、標的からは血が滴り落ちていく。

 

標的である“鴉”から……。

 

鴉「がぁぁあっ。何なんだ? 一体何が起きた!?」

 

撃たれた右上腕部を抑えながら鴉は状況を確認する。

 

 

鴉(何で俺が撃たれているんだ? あの女は無事)

 

自分が狙ったはずの明命は、いまだに立ち上がる事ができずにいる。

 

だが、自分は負傷している。

 

鴉(暴発? いや、俺はまだ爆閃を撃っていなかった…)

 

そう、鴉は爆閃の引き金を引こうとした瞬間に撃たれたのだ。

 

鴉「出て来い! そこに居るんだろ!」

 

頭の中の整理がついた鴉は物陰に向かって叫んだ。

 

いつの間にやら、近くまできていた謎の狙撃主に向かって激昂して叫んだ。

 

鴉「一体、何者だ! そんなトコでこそこそしやがって、姿を見せろ!」

 

鴉は負傷していない左手で爆閃を持ち直し、銃口を明命に向けた。

 

鴉「どうした!? 仲間だから、この娘を助けたんだろ。仲間を見捨てる気か!? 姿を見せな、さもなきゃ今度こそ、この娘を撃ち殺す」

 

激昂していた鴉だったが、少しずつ冷静さを取り戻していく。

 

?「それは困る。彼女は呉の将来を背負ってたつ武将だ。このような場所で死なすわけにはいかん」

 

そう言うと物陰に隠れていた謎の狙撃主は姿を現した。

 

鴉「君は確か…」

 

見覚えのある顔だった。

 

鴉「呉の…美周郎」

 

謎の狙撃主 冥琳が姿を現す。

 

その手には鴉の爆閃と同じ回転式拳銃が握られていた。

 

 

冥琳「ほう。私の事を知っているのか」

 

鴉「まあね。君の顔は中々好みだったから覚えてたよ」

 

冥琳「それは光栄だが、とりあえず周泰から離れてもらおうか」

 

冥琳は拳銃を鴉に向けた。

 

鴉「…何で君が、そんな物を持っている?」

 

動揺を隠しながら、鴉は冥琳の持つ拳銃を見た。

 

冥琳「いつまでも、天の武器が自分たちだけの物とは思わない事だ。そんな事よりも早く離れるんだな。お前より私の方が早く撃つ事が出来る事を忘れるな」

 

鴉「…確かに君が撃つ前に、君を撃つ事は出来なくとも、撃たれる前に、この娘を撃つ事は出来るよ」

 

冥琳「試してみるか?」

 

冥琳は鴉の話に動じた様子も見せずに言う。

 

鴉「………」

 

冥琳「………」

 

沈黙が続く。

 

鴉「…止めた。俺、消えるよ。早く治療したいしね。お~痛~」

 

先に沈黙を破ったのは鴉だった。

 

鴉は明命に向けていた銃をしまうと、冥琳に背中を向けて歩き出した。

 

鴉「じゃあね♪」

 

冥琳「……」

 

あまりにも大胆に隙を見せられた為、冥琳はそのまま鴉を撃つかどうか迷ってしまった。

 

しかし、冥琳が迷っている間に鴉は姿を消していた。

 

 

冥琳「幼平! しっかりしろ、幼平!」

 

明命「ぅぅ……冥琳…さま?」

 

冥琳の呼び声に気を失っていた明命が目を覚ました。

 

明命「ど…どうして、冥琳様がここに…?」

 

力のない声で明命は尋ねる。

 

冥琳「応急処置は済ませたが、あまり喋るな。早く戻って、しっかりと治療しなくてはならん。文台様たちは洛陽の近くまで来ているのだな?」

 

明命「はい。洛陽のすぐそこまで…」

 

冥琳「そうか。後は私に任せて少し休め」

 

明命「…はい。わかりました……」

 

返事をすると明命は、そのまま目を閉じて眠るのだった。

 

 

冥琳「さて、早く幼平を治療せねばな」

 

応急手当は済ませたものの、明命の傷が重傷である事には違いなかった。

 

老人「ならば、付いて来ると良い」

 

冥琳「なにっ!」

 

どうやって仲間と合流するか考えている冥琳に向かって、男とも女とも区別がつかない声が話しかけてきた。

 

冥琳はとっさに声のした方に拳銃を向けた。

 

そこに居たのは、明命が宮中に忍び込む為に使った秘密の抜け道にいた老人だった。

 

老人「慌てるな。敵ではないぞ」

 

冥琳「…何者だ?」

 

老人「単なる世捨て人さ。宮中に居たはずの魔物の気配が消えたから、様子を見に出てきたのだが」

 

冥琳「魔物?」

 

老人「それよりも、付いて来るが良い。洛陽の外に出るための秘密の抜け道まで案内してやろう」

 

冥琳「抜け道だと? そんな噂は聞いた事があったが、どうして私にそれを教える?」

 

老人「なぁに、ただの気まぐれさ。ほれ、早くした方が良いのではないか? 付いて来い」

 

そう言うと老人は歩き出した。冥琳は明命を背負い、老人の後を付いて行く事にした。

 

 

―――連合軍・本陣―――

 

司馬懿「どうも皆さん。おひさしぶりですね。赤壁以来ですか。もっとも、あの時は兀突骨ごしでしたが」

 

劉備「何で司馬懿さんがこんな所に!?」

 

華琳「仲達、よくも抜け抜けと私たちの前に姿を現せたわね」

 

蓮華「だけど、これで捜す手間が省けたわ!」

 

関羽「その通り、今ここでその首を貰い受けるぞ!」

 

 

司馬懿「お待ち下さい。今日は争いに来たのではありません。お別れの挨拶に来たのです」

 

劉備「え?」

 

蓮華「お別れだと? ふざけるな! 貴様から戦いを仕掛けておきながら逃げる気か!」

 

華琳「仲達。まさか、本当に逃げられると思っているんじゃないでしょうね?」

 

亞莎「ここは連合軍の本陣の中心。もう、逃げられません!」

 

司馬懿「だが、私はここまで誰にも気が付かれずにやってきました。ならば、その逆も可能だと思うのですが」

 

華琳「だけど、貴方はもう私たちに見つかった。私たちも貴方を逃がすつもりはないのよ」

 

司馬懿「怖いですね。戦争を仕掛けた事なら謝ります。準備が出来るまでの退屈しのぎがしたかっただけなんですよ」

 

関羽「退屈しのぎだと!?」

 

劉備「そんな! 退屈しのぎの為に、この戦いを引き起こしたんですか? この戦いで一体どれだけの人が犠牲になったと思っているんですか!?」

 

司馬懿「うーーん。少なくとも十万人ぐらい死者は出ているじゃないでしょうか。まあ、私には興味のない事ですが」

 

劉備「……興味がないって」

 

関羽「もう、貴様の戯言には付き合ってられん!」

 

関羽は青龍偃月刀で司馬懿に斬りかかった。

 

 

司馬懿「困りましたね。私には争うつもりなどないのに」

 

関羽の攻撃を避けながら言う。

 

蓮華「関羽、加勢するぞ!」

 

亞莎「蓮華様、お待ち下さい!」

 

蓮華が関羽の加勢にしようとするのを亞莎は止めた。

 

 

蓮華「亞莎、何故止める?」

 

亞莎「待ってください。何だか周りの様子がおかしいんです。いつの間にか火蓮様や雪蓮様の姿が見えません!」

 

蓮華「なっ、そういえば母様! 姉様! 藍里! 穏!」

 

先ほどまで一緒に軍義をしていたはずの火蓮たちの姿がなくなっていた。

 

この場にいるのは蓮華、亞莎、華琳、劉備、関羽。そして、司馬懿の六人だけだった。

 

 

華琳「春蘭! 秋蘭!」

 

劉備「鈴々ちゃん! 朱里ちゃん! みんなーー!!」

 

いくら呼んでも、誰からも返事はない。

 

華琳「これはあなたの仕業なの?」

 

司馬懿「はい。だけど、ご安心下さい。他の皆さんはご無事ですよ。ちょっと結界の外で待って頂いているだけですから」

 

 

その頃、結界の外では、姿を消した蓮華たちを火蓮たちが必死に探していた。

 

火蓮「蓮華ーー!」

 

雪蓮「亞莎ーー! 何処なの返事ぐらいしなさーい!」

 

夏候惇「華琳さまーーー!! 華琳さまーーー!!」

 

鈴々「桃香お姉ちゃーーん! 愛紗ーーー! 何処に行ったのだーー!!」

 

夏候淵「これは一体どういう事だ? 天幕の外に出てみれば、華琳様たちの姿がなくなっているとは」

 

夏候惇・荀彧「華琳さまーー! 華琳さまーー!」

 

諸葛亮「はわわ! 桃香様たちは何処に!」

 

鳳統「あわわ、朱里ちゃん、どうしよう」

 

雪蓮「……結界」

 

諸葛亮「え?」

 

夏候惇「何を言っている! ケツが痒いなら、勝手に掻いていろ!」

 

雪蓮「誰もお尻なんて痒くないわよ! 結界って言ったのよ!」

 

夏候淵「どういう事だ?」

 

雪蓮「以前、玄武っていう司馬懿の手下に襲われた時、誰も入ってこれない場所に閉じ込められた事があったのよ。それを赤斗や玄武は結界って呼んでたわ」

 

諸葛亮「それなら古い書物で読んだ事があります。確か結界を張った術者が術を自ら解くか、術者自体が死なない限り結界は解けないと書いてありました」

 

雪蓮「赤斗もそう言ってたわ。きっと今度も結界に閉じ込められたのよ」

 

夏候惇「じゃあ、どうすれば華琳様をお助けできるのだ!」

 

雪蓮「この前は恋が結界の外から助けてくれたんだけど…」

 

夏候惇「呂布に出来て私に出来ないはずがない!」

 

夏候淵「姉者! 何処に行く気だ!?」

 

夏候惇「決まっている、華琳様のもとだ! 待っててください華琳様! 今すぐお助けいたします!」

 

夏候惇は何処かへと走って行ってしまった。

 

荀彧「バカ」

 

火蓮「…すぐに恋を呼べ」

 

藍里「はい!」

 

 

関羽「皆が無事であるなら、それで良い。お前を倒して、ここから出るまでの事だ」

 

華琳「そうね。その通りだわ。桃香、貴女も戦いなさい。その腰の剣は飾りじゃないのでしょう」

 

劉備「は、はい!」

 

蓮華「亞莎、私たちも行くわよ」

 

亞莎「はい」

 

蓮華たち五人はそれぞれ武器を構えた。

 

司馬懿「おやおや、五対一ですか?」

 

華琳「まさか、卑怯とは言わないでしょうね?」

 

司馬懿「いいえ。だが、先ほどから言っていますが、私は争う気はないのですよ」

 

華琳「何を今更。そんな事を言っても済むはずないでしょう!」

 

司馬懿「仕方がありません。降りかかる火の粉は払わなければいけませんね」

 

関羽「覚悟ーーっ!!」

 

司馬懿「……」

 

関羽が斬りかかると同時に、司馬懿は右腕を前に出す。

 

司馬懿「ふっ」

 

そして、関羽と司馬懿の間に闇が出現した。

 

関羽「こ、これは赤壁の時の!」

 

かつて赤壁の戦いの後、赤斗や関羽たちを飲み込んだ闇が再び関羽たちの前に現れたのだ。

 

司馬懿「再び闇に呑まれるがいい。今度は決して帰って来れないかもな」

 

劉備「愛紗ちゃん!」

 

関羽「来てはなりません」

 

闇に吸い込まれないように抵抗しながら、関羽は近づこうとする劉備を止める。

 

蓮華「くっ…」

 

蓮華や華琳たちも闇に吸い込まれないよう武器を地面に刺して抵抗していた。

 

司馬懿「ほら、さっきまでの威勢はどうしました?」

 

関羽「お…おのれぇ」

 

必死に抵抗する関羽だったが、少しずつだが確実に身体は闇に引き寄せられていく。

 

そして、抵抗虚しく関羽の身体は闇の中へと吸い込まれていった。

 

劉備「愛紗ちゃーーん!!」

 

蓮華「桃香!?」

 

劉備は関羽を追って闇に飛び込もうとする。だが、闇は劉備が飛び込む寸前で消えてしまった。

 

華琳「……関羽」

 

亞莎「そんな…」

 

司馬懿「ふふ、あーはっはははは…。残念でしたね。あーはっはははは…」

 

蓮華「おのれ、もう許さん!」

 

司馬懿「次は孫権殿が相手ですか? 関羽と比べれば実力不足の雑魚ですね」

 

蓮華「雑魚かどうかは、その身で確かめろ!」

 

蓮華は南海覇王を振りかざして司馬懿に斬りかかった。

 

司馬懿「ふっ。…!!」

 

司馬懿が蓮華を自慢の暗器で返り討ちにしようとした時、それは起こった。

 

ドォーーーーーーーーーーーーーーーーン!

 

司馬懿「な、なんだ!」

 

まるで大型トラックが事故を起こしたかのような衝撃が辺り一面に走る。

 

蓮華「きゃああっ!」

 

蓮華たちは余りの衝撃にその場にしゃがみこむ。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォーーーーーー。

 

華琳「今度は何?」

 

衝撃に続いて今度は地響きにも似た音が響き渡る。

 

亞莎「これは、いったい?」

 

そして、関羽を吸い込んだ穴があった中空に亀裂が入った。

 

蓮華「空にひびだと!?」

 

司馬懿「これは…私が閉じた時空の穴が無理矢理こじ開けられようとしているのか!?」

 

?「司馬懿。…やっと見つけたぞ」

 

華琳「この声…」

 

聞こえてきたのは懐かしい声だった。

 

司馬懿「……まさか!」

 

中空に入った亀裂は、どんどんと大きくなっていく。

 

劉備「もしかして…」

 

そして、空は割れた。

 

蓮華「……赤…斗」

 

そこには、江東の虎から授けられたコートを纏った懐かしい姿があった。

 

 

つづく


 
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