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あの日あの場所で戦った。そのために支払った犠牲はとてつもなく多くて、俺にかかる思いも増えて……。
けれど、過去は消えた。
全てを戻すということは、積み上げてきたすべてを零にするということだ。サクラとともに誰もが願いし平和をつかみ取るためにしてきたこと。紗雪や龍一と共闘もして、告白してきた紅葉とは何度も殺し合った。それは互いにもつ正義のすれ違い。ただ1人だけの「思い」しか認めないゲームに囚われた俺たちはオーディンのてのひらで踊らされ、決断を幾度と無くするしかなかった。
だけど俺はそんなのは認めない。
一人一人の正義が正しくて、そこに間違いなんてない。だから、その思いは俺の心の中にある。喩えそれが消えた過去となっても。サクラ、龍一、鈴白、紗雪、紅葉、綾音、剣悟、梶浦、有塚、陽菜子ちゃん、真田のおじさん、轟木、苺さんそれに父さんと母さん。みんながみんな、叶えたい願いが有りそれは全て大切な思いなのは変わらなくて、でも俺はそれを全て摘み取って手に入れた権利。
究極魔法。
それは奇跡を起こす力。みんなの思いの結晶。だからそれはみんなのために使いたくて、またみんなと会いたくて。でも対価無しには叶うわけも無く…………。
心の天秤は思いの強い方へ針が向く。
こうしてサクラというパートナーの犠牲で平和な世界を取り戻した。
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戦いの闇から抜け日常の光を浴びるととてもまぶしく感じる。かつて俺の手で殺めた奴も笑顔で俺を待っている。その事実が辛くもあるが、「いる」ことの方が嬉しい。だから、
「いってきます」
苺さんに笑顔で言って玄関の扉を開ける。
紅葉の頃の紅葉のように真っ赤で綺麗な長い髪。紗雪に比べて小さい体躯は可愛らしい。その彼女は小悪魔っぽいけど、俺には天使になる。
「れーじ、遅いよ! 女の子が待ってるんだから早く来なきゃダメなんだぞっ」
「兄さん、そんな奴のいうこと聞かなくてもいいよ。早く行きましょう」
俺の後から出てきた紗雪が紅葉のことを睨みながら提案してくる。
昔のような掛け合いが懐かしくて頬が緩む。そんな俺を見て2人も微笑む。喩え仲が悪くても、お前達の思いは変わらないんだな。
サクラがいない。
けれど今の日常はサクラの「決断」があって取り戻すことができたもの。だから、それをサクラとみんなで過ごす日常のために蔑ろにはできない。これから先、この日常を守りながら俺は探す。
それが決して叶わぬ夢であったとしても。
それは俺が戦いの後にした最初で最後の決断であった––––。
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これが俺を「ロキ」にした。
7つ存在する平行世界の過去に跳び、俺と成り代わる。
究極魔法の副産物を俺は予想もしておらず、それが有ると知った時はたいそう驚いたが、俺の心の決断を実行するに足りる物ではあった。あの闘争に本物のロキとして加わり、もう一度究極魔法を使う。
そうすればやっと…………。
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こうしてfortissimoを巡る戦いは新たな幕を開ける。
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『fortissimo EXS//Akkord:nächsten Phase』の発売を前に想像したロキの姿です。こんな「思い」のロキがでてきたら面白いのになと思い書いた作品です。つたない文章かもしれませんが読んで頂けると嬉しいです。