No.435947

眠れる森 エターナル 天界編 2話後編

2話の後編です。
初見の方はプロローグからお願いします。

3話うpしました。
http://www.tinami.com/view/440001

2012-06-11 22:21:32 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:516   閲覧ユーザー数:516

部屋を出るとクリスとタケトがいた。

「待ってたよミライ。」

どうやら俺が出てくるのを待っていてくれたらしい。

どうせ待ってくれるならこの部屋まで送り届けてほしかったのだが…。

「今度こそ案内してやるぞ。感謝しな。」

タケトがぶっきらぼうそうに言う。ホントにつかみどころのない性格だ。

「まずは、教員室の場所だね。教員室はこの階の東側の奥にあるよ。」

そういって左側を指さす。学長室から出て左側が東なので必然的に右が西。後ろが南。前が北になる。

「ちなみにここは本館の2階だ。本館は4階建てで3階と4階には研修室、研究室が設けられ2階には事務室、教員室などの学校の中枢の部屋ばかりだ。1階には動力室、清掃準備室、などまぁ、必要な物をおいたりする物置が主。」

簡単な説明は今、受けているがこの二人……。

「なんで、言葉だけっ!?せめて、その場所までの道筋とか教えてくれよっ!?」

そう叫ぶと二人は互いを見合わせ不思議そうに言う。

「めんどっちいからだね。」

「面倒だからだ。」

二人して同じことを言う。まさか、さっき打ち合わせしていたのではないか。

「それに用事があれば僕らが教えるし。僕らは君の先輩にあたるわけだし。その時はきちんと教えるよ。」

できれば今教えて欲しかったのだが二人は教える気がさらさらないらしい。

俺たち一行は2階から1階へ移動し外へ出た。その時、通り道で簡単な説明をしてくれた。

それは天使についてだ。

「天使はね。普通の人にはなれないって。なにか素養がないとダメとか。」

「その点について俺も意見がある。素養と言っても全体的に見るわけじゃない。一部でも天使の素養があれば候補にあがり最終的に神様が独断と偏見を持って決める。」

「あと、信心深い人はなりにくいって。そういう人は僕たちみたいな天使を認めないのが多いからほとんど、なれない。」

それだけの内容だった俺がその素養があって神様に選ばれてなれたというのはよくわかった。

外には青い空のようなものが広がっていた。

今まで、対して気にしなかったが天界の空は真っ青だ。雲もなければ太陽もない。

ただ、明るい青が天界を照らすだけ。

しかし、時間とかはあるのだろうかここに。

歩きながらためしに聞いてみたところクリスはこう答えた。

「時間はあるよ。天使にも休む時間がいるからね。今は夜じゃないけどあと、1時間後くらいに夜になる。夜になると綺麗だよ。いろいろと。」

「そういえば、俺はどれくらい気を失ってたんだ。」

それは単純な疑問。エリーゼ……だったかな。彼女に殴られて俺は気を失った。いったいどれくらいなのだろう。

「ん。1時間も寝てなかったよ。」

「1時間っ!?なら、クリスは1時間もせずに元通り?」

「うん、僕はラインの接続が得意だからね。回復力には自信があるよ。」

「ライン?」

「うん、ライン。エンジェルラインっていう目に見えない糸みたいなのが僕らとつながっていてそれから僕らは力を供給させてもらえるんだ。天界ではこのラインの接続が誰でも楽にできて大量にエネルギーをもらえるから事実上不死身になれる。地上とか魔界とかだったら通常のエンジェルラインが届かなくて特殊なラインが必要になるんだ。その特殊なラインってのも普通の天使には作れないの。地上に行くには自分でそのラインを作らないといけないから絶対、すごい人じゃないと行けないんだよ。他に知りたいことは?」

長々と解説ありがとうございますクリス様。

話を半分しか理解できなかったが要するに特殊なラインが作れなければ地上にはいけない。

俺にはそれだけでも十分な情報だ。しかし、まだまだ知りたいことはたくさんある。

どこへ向かって歩いているのかわからないが俺は質問してみる。

「なら、あの……紙切れとかノートとかについて教えて。」

「術符とか術書だね。詳しくは明日からの授業でやると思うけど軽く教えてあげる。えと、まずは術符と術書の違いだね。一言で言えば、発現方法の違い。」

クリスは喋りながらホルスターから紙切れを一枚取り出す。正式名称は術符だそうでそこには真ん中に大きく”炎”と書かれ横の方に小さな文字のようなものが書かれていた。

「術符は書かれている内容を言葉を鍵(キー)として発動させる。術書は書に書かれている(定義されている)言葉を言うことによって発現する。術符の方は何度か使うと崩れてしまうけど術書は何度使っても崩れることはないんだ。」」

マシンガンのように矢次に話されたためかやっぱりあんまり理解できなかった。

「明日からの授業でやるからわかるようになると思う。」

とタケトが横から声をかける。ってゆうか居たのか全然しゃべらないからわからなかった。

そうこうしているうちに目的地らしい場所に着いた。

そこは本館とは別の建物。今日(?)に行った寮とか言う場所とは本館を挟んで反対側にあるこの建物。この建物は寮とあまり変わらない素材そして、構造を持っていた。

見た目もほぼ同じ。木造の3階建て。

「ねぇ、ここはなんの建物なの?」

「ここは寮だ。」

タケトが答える。しかし、寮というのは俺の間違いがなければ逆側に位置するはず…!?

そこで俺は気づいた。寮?寮なら二つあってもおかしくない。そして、あの時の出来事も矛盾なく説明できる。そう、ここは男子寮。で、反対側にあるのが女子寮。

そうだそのはずだ。それが正解であることを示唆するように玄関には男子寮と書かれていた。たぶん、あっちの寮にも同じものがあるはずだがあの時の俺は気づかなかった。

「卒業するまでここに寝泊まりするんだよ。ミライの部屋はもうあるから案内するね。」

クリスたちと一緒に寮に入る。内装は木造の外見と相まって非常に良い味を生み出していた。古き良き時代の雰囲気が染み出るような玄関には日本式なのか靴箱が置いてあり靴では中に入ってはいけないようだ。

寮というより壮という感じである。

玄関すぐそばにある階段を上り2階の廊下の突き当り。そこが俺の部屋であった。

「僕の部屋は2部屋隣。タケトの部屋は僕の隣だよ。」

クリスに促されるまま部屋へと入る。

部屋は3畳半ほどの和室だった。キッチンはなく押入れと机そして、布団があった。

窓はあまり大きくないが太陽の光を得るにはじゅうぶんだ。

「ミライ、部屋も見たことだし。ちょっと外にでようよ。」

「あれ?まだ、案内するところがあるの?」

あれを案内といえるのか?と思うが一応、案内ということにしよう。

「いや、これからミライに良いものをみせるよ。」

「…良いもの?」

前のこともあって俺は訝しの瞳で見る。

「いや、いや。そんな変なところじゃないよ。今度はきちんとしたこと。」

「健全健全。」

タケトがそう頷く。しかし、タケトはあまりしゃべらないから影が薄いな。

「じゃ、行こう。」

クリスに引かれて部屋を出る。

「時間がないよ。早く行こう。」

時間がないと言う。そして、どこへ行くのだろう。

言われるままに走り言われるままに向かうと場所が判明した。

本館である。クリスとタケトは本館へ飛び込むと階段を上る。ドタドタと鈍い音が広がり俺たちは一番上まで駆け上がる。一番上は扉になっていてこれ以上先に進むことを拒んでいた。しかし、クリスとタケトは目を合わせると扉を開いた。

開くとそこは屋上だった。真っ青な空が広がりそのほかにはないもない。

屋上は無骨なコンクリートのみでフェンスもない。おそらく、落ちても生き返るからだろう。

「間に合ったよ~。」

クリスが笑顔で言った。そして、空を指さす。

タケトも無言で空を見上げろと促す。

俺は空を見上げた。そこには何もない青しかない。何もない青はただ儚い。

「あれ?」

俺は思わず声に出してしまった。変化があったのだ。

青。真っ青だった空にぽつんと綺麗で小さい灯りが出たのだ。

目を凝らしてみると青い空に小さな光が増えていく。疎らに。少しずつ増えていく。

そして、大きな光が現れた。それが月であると分かった時には一面に光がともっていた。

疎らだった光が大賑わい。やがて、急激に青が色を失う。

真っ青とは対照的な漆黒。漆黒が空を一気に覆った。あの光だけが星のように残り空は夜空へと変化した。

「うわぁ。」

思わず、感嘆の声を上げる俺。それほどまでに美しい光景で見とれていた。

「すごいでしょ。これが天界の夜。時間はきっちり午後7時から午前6時まで。」

見知らぬ、星座が空を駆け大きな月がわずかな灯りをばらまいていた。

天界の地上は仄暗い。人工的な灯りはなくすべてが月明かりに照らされていた。

「なぁ、ミライ。」

空を見上げているとタケトが声をかけてきた。

「お前はここに来て良かったと思ってるか?」

真意はわからないが真っ直ぐなタケトの言葉。その言葉は口数少ないタケトの思いが詰まっている。

「正直言ってわからない…。ここに来て本当に良いなんて。俺にはまだわからない。でも、ただ一つ言えることはここでクリスとタケトと出会って良かったって思う日がいつか必ず来るということ。ここで何がどうなるかわからないけど二人との出会いは俺にとって良いものになるって信じてる。」

本当に信じてる。誰かとの出会いが無意味だったら俺は今まで生きてきた人生が否定されてしまう。今まで出会った人。俺はその人たちに支えられて今の俺がいる。

だから、俺は出会いを大切にする。いつかその出会いが壊れた俺を支えて新しい俺になる。

いつかそうなるって俺は信じている。

その言葉が全部、通じたかわからない、けど俺の心さえそう思っていたなら誰かの解釈なんて関係ないのかもしれない。

ようは相手がどう思うかではない。自分が相手をどう思うかなのだ。

タケトは俺の言葉に満足したのか右手を差し出してきた。

「俺はタケト。お前と同じ天使の候補生だ。これからよろしく。」

初めて会った時のように握手を交わす俺たち。タケトにとって握手は大事なのだろう。

がっしり掴んだ手から力を感じる。これが俺とタケトが友達になった瞬間なのだろう。

「あ、ずるい。僕とも握手しよ。これから友達だよっ!」

クリスとも握手をした。タケトと同じようにがっしり掴み。友情をはぐくむ。

はたから見れば恥かしい絵かもしれないが。

俺にとっては新しい俺への必要な大切な瞬間だ。

こうして俺らは本当の友達となった。


 
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