No.434874

《インフィニット・ストラトス》~二人の転生者~

菊一さん

どうも、お久しぶりです。作者の菊一です。
さて、前回の更新から二週間ちょっと経ってますね……亀更新で申し訳ないです><。しかも恐ろしいほど短いです。さらに言えば駄文過ぎてもはや小説と呼べない……それでも読んでくださる方には感謝の気持でいっぱいです。
今回は諸事情によってあとがきなしです。
ではどうぞ~

2012-06-09 22:05:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1267   閲覧ユーザー数:1216

第二十二話 昼食

午前の授業が終わってお昼休み。午後は午前に使用したISの整備の実習をやるそうなのでまた更衣室までダッシュなのだが……まあ毎回のことだからもう慣れたけどね?

「ん~……暇だ」

俺は屋上の一角で仰向けに寝っ転がって春華とシャルルを待っていた。春華はただ今尋常じゃない量のお弁当を取りに行ってて、シャルルは自分の専用機と使用した訓練機の微調整らしい。ISとは使用者のクセなどを覚え、それを補ったりサポートしようとするから訓練機の場合はそれを消さなければならないのだが、俺はそれを午後に教えながらやろうと思っているのだがシャルルはそれを今のうちにやるそうだ。真面目というかなんというか……優等生っぽい性格だ。

「おまたせ、秋」

「持ってきたよ、お兄ちゃん!ういしょっ、と」

そんなことを思いながら寝っ転がってるとやっとかっと二人が屋上にやってきた。

俺が起き上がると同時に風呂敷包みをドサリと置く春華。弁当からそんな重たそうな音はしないのだが春華の場合はするのだ。

「す、すごい量だね?秋がこんなに食べるの?」

「はっはっは……残念ながら俺じゃないんだ」

「私が食べるんだよ~。はい、お兄ちゃんとシャルルお兄ちゃんの」

「お、お兄ちゃん!?」

腰を下ろしながらシャルルは春華の「シャルルお兄ちゃん」に反応したようだ。大体初対面の相手はこういう反応をする。箒は最初年下だと思って凄い可愛がっていたのだが誕生日を知って数日間落ち込んだという不思議な過去を持つ。今は殆どその頃の可愛がりようが復活してるがな……誕生日を忘れてたりとかしないよな?

「シャルル、気にするな。春華は親しい間柄の同年代以上はお兄ちゃん、お姉ちゃんをつけるんだ」

「へ~……うん、僕は可愛いと思うな」

「……ついでに俺と春華の誕生日は四月二日だからな。普通に考えれば俺達が誕生日は一番早いことになる」

「そうなると僕たちは数カ月だけど年下になるのか」

俺達二人はそんな話題で苦笑いしながら話していた。まったく、何処でどう間違えたのか春華のこのお兄ちゃん&お姉ちゃんは直らないのである。社会に出てもそれだと流石にキツイよな?

「春華、弁当くれ」

「ん~、どれも中身同じだから自分でとって」

春華は既に食べ始めて一箱目を空にしている。ついでに弁当箱は重箱である。一人前が四段の重箱一つとは……ボリューム的に既に常軌を逸してる。

「取り敢えず開けてみるか……よっと」

俺は重箱の一つを取り寄せて、シャルルと俺の前に置き、蓋を開ける。中身は肉団子にきんぴらごぼう、青椒肉絲(チンジャオロース)、卵焼き、タコさんウインナー、唐揚げ、ポテトサラダに豚肉のしょうが焼き等々、ありとあらゆる弁当のオカズがギッシリと詰まっていた。しかも一段目と二段目でこれだけだ、残りの二段はどうなっていることやら……と恐る恐る開けてみる。

「……こっちはいなり寿司と太巻きか……」

「こっちは……普通にご飯かな?」

俺の方の段にはいなり寿司と太巻きが半々に入っているのだがシャルルの方は白米が入っていた。しかし俺はそのすぐ下に黒い何かが入っているのに気づき、箸を取る。

「いや、コレは多分……海苔とご飯が交互に入っているんだ」

俺はご飯を少しめくり、海苔を見せてやる。

「へ~……日本のお弁当は変わってるね~」

「ん~、多分こういうところも文化の違いなんだろ?一人で重箱は無理だから半分に分けるか……」

俺は重箱のオカズやご飯が均等になるように入れ替えたりして分けた。

「ほら、春華の料理の腕は結構なもんだから美味いはずだ」

「あ、ありがとう秋。春華ちゃんも」

「えへへ~」

春華は恥ずかしいのか、食べながらくねくねしている。器用なやつだ。

「そういえば秋、秋の作ったISってその二機だけなの?」

「ん?ああ、そうだよ。現在第五世代型の試作機として作っただけだからな。今後も改良や新しく作るかもな。お、卵焼きが今日は少し甘いな。砂糖を多目に入れたのか」

「あ、本当だ。でもこれはコレで美味しいね」

「醤油入れても美味しいけどな」

俺たちはそんな風にご飯や弁当の具材を話しながら弁当を食べていった。ついでにシャルルはどうも卵焼きが気に入ったらしく、春華に今度作り方を教えてくれ、と頼んでいた。しかし男子が料理か……とくにシャルルみたいな中性的な男子が料理……申し訳ないが、洋食ならまだ想像しやすいが和食を作る光景が浮かんでも女子にしか見えない。まあ俺も同じような気がするが。

 

そんなこんなで箸が進み、食べ終わった時にはまだ昼休みは半分以上残っていた。

「ん~……こうやって時間が残ると意外と暇だな」

俺は人工芝の上に寝っ転がり、そう言う。

「そうかな?ゆったり出来て僕は好きだけどな~」

シャルルは隣に腰を下ろして伸びをしていた。ゆったりか、たしかにそれもそうだな。思い返せばこんなにゆったりしてたことってあんまりないな。いつも何かしらしてたからな、たまにはこうやって何かをゆっくり考える時間とかがあってもいいかもな。

しかし俺は暫く(といっても時間に換算して一分もあったかどうか微妙ではあるが)何も考えずにいた。なにか考えようとすると悪い方向へ流されてしまって心が情緒不安定になりそうだったからである。

「ねえ秋、そういえば秋はなんでIS開発に携わったの?」

暫くそうしていると隣りのシャルルが聞いてきた。

「別に大した理由はないよ。ISの開発理由は宇宙での作業などを目的としたパワードスーツみたいなもの。俺は最初、宇宙へ行きたかったんだ……だからIS作りに携わった。恐らく束さんも同じ理由だったと思う。だから俺と春華のISは全身装甲で宇宙でも行動可能な設計にしてある。永久機関だって最初は長時間の宇宙空間での行動を可能にして酸素を生産したり、未知の敵対勢力に出くわした場合の攻撃方法の為に試験的に配備させたものだよ。だからあんな凄いISになってるんだけどな」

俺は「あはは……」と自分で作っておきながら呆れ気味に語って苦笑いする俺。しかしシャルルは興味を持ったらしく、食いついてくる。

「へぇ~、じゃあじゃあ秋のISとかにも他の形態とかあったりするの!?」

「あ、ああ。なんならデータで見てみるか?」

「いいの!?」

「重要な所は別のメモリーに入ってるから、このメモリーだけなら他人が見ても役に立たない情報だよ」

俺はそう言って、内ポケットに閉まってあった小型のPCに情報端末を差し込み、表示させる。

「まずはこのストライクっていうモード。俺がIS展開時に最初になる様に設定してあるモードだ。背面装備型の四つのストライカーパックによって変わる。機動力重視のエール、遠距離支援砲撃型のランチャー、接近対艦用のソード、そしてその四つを併せ持ったようなノワール。最後のやつだけ装備した時VPS装甲の電圧が変わり、装甲が黒くなる。次はヴェルデバスター。これは完全な後方支援機、圧倒的な火力と弾幕で圧倒する戦術が基本だ。次はブルデュエル。これは近接特化型で最初期に発案、製造した機体に追加装備や装甲を装備させただけの機体。そしてネロブリッツ。その名の通り電撃作戦を可能とするために製造されたため他の機体と違う兵装を積み込んである。大雑把に言うとこんな感じ。どうだった?」

「あはは、結構説明早くてあんまり理解できなかったよ」

シャルルは苦笑いするだけだった。くちではこう言っているが俺の説明の速さ、ISの凄さ、恐らくこの両方に圧倒されたのだろう。余り説明が上手い方でもないしな。

「シャルルはどんなISに乗ってるんだ?第三世代の開発に成功したっていう噂は聞かないけど?」

俺は話題を変えてシャルルに聞いた。

「あ、うん。だから僕のISは第二世代。《ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ》っていって主兵装の一部を外して拡張領域を倍にしてあるんだ。そしてそこに二十以上の武器や弾薬を詰め込んであるんだ」

「へ~、そりゃまたすごいな、まるで動く弾薬庫だな。でもシャルルに合わせてそういうカスタムにしてあるのか元々そういうカスタムなのかによって変わってくるけど、どっちなんだ?」

「前者のほうだよ。それに高速切替(ラピッド・スイッチ)に特化するように設定してあるから武器の取り回しは簡単にできるようにしてあるんだ。それでも普通の人にはまだまだ扱いにくいと思うけど」

ふむ、そりゃ確かに専用機だ。しかも高速切替が出来るって言うことは戦い方次第で第三世代にも十分通用するだろう。下手したら春華も倒せるかもな。

「まあ、それでも俺は絶対に倒せないだろう?……」

「あはは、そうだね。VPS装甲と永久機関があったら流石に倒せないかなあ」

そう、実弾などの物理攻撃が効かないゲイル・ウイングには第二世代は絶対に勝てないのだ。何故なら実弾兵器しか積んでないからである。第二世代にも積めるビーム兵器でもあればまた別なのだろうが、第三世代でもビーム兵器は現在作成中なのだ。あるはずがない。

「まあ膨大な金と全世界での最高水準の頭脳で開発されたISだ。これで弱かったら意味がわからない」

俺はサラリと言う。しかし自分で自分を最高水準の頭脳といってしまってる辺り俺はもう終わってるかもしれない、と不覚にも思ってしまった。

「う~ん、一ノ瀬秋葉っていう人物がどんどんわからなくなってくるよ」

「ただの一般人でただの高校生です」

「あはは、もうIS学園に通ってる男子っていうだけで普通の人じゃないよ?」

「それも……そうだな」

ふむ、しかしこうしてみると俺は生まれてから色々な事件や不思議な事柄に巻き込まれたり自分が中心になっていたりするぞ?あれか、有名な転生者特典ってやつか?でも特典にしてはデメリットがでかくないか?まあ幸せに過ごしてるからいいが。

「そういえば秋のISって普通のISにできないこととか出来るの?」

シャルルがとう唐突に聞いてくる。何を聞いてるんだこの貴公子は!!

「……あのなシャルル、いくらなんでも現在のISにできないことが出来るわけがないだろう!?仮に出来るとしてもそんなずば抜けるような行動はできないぞ!?」

「……じゃあ授業の最後のあの模擬戦は何なのさ?」

俺の半分呆れたような言葉に少し拗ねたように聞いてくる。あれ?男子なのに何故か可愛く見えてしまった……やばい、今週の休みは精神科の病院へ行ったほうがいいかもしれない……

「最後のって言うと……夏と戦った、あれか?一撃で決まった?」

「そうそう。どう考えてもわからないんだよね。イキナリ背後に現れてるし、一夏の白式が反応できないって、普通に考えたらあり得ないよ?」

「おいおい、そんな《あり得ない》とかいう言葉は安易に使うものじゃないぞ?あの時の状況を鮮明に思いだせ。そしてどうしたらそれが可能なのか。もう一回細かく、詳しく、鮮明に分析、解析してみようか?」

「わかった……」

シャルルはそう言って目を閉じて考えだした。さて、どんな答えが帰ってくるかな?

 

――十分後――

 

「……う~ん、一応思いついたけど、肝心な部分が抜けちゃってるんだよね」

「まあ、そうだろうな。話してみな」

俺は寝そべって眼を閉じながら聞いてみる。

「えっと、まず攻撃方法は持っていた大検での斬撃。方法は、まず一夏が零落白夜で秋に向かってきて、その攻撃が当たる寸前、まさに紙一重の所で秋は高速移動して恐らく一夏の背後に回りこむ、そして一撃のもとに沈めた……どうかな?」

「じゃあその高速移動と一撃の攻撃力はどう説明する?」

シャルルの仮説の最も大きな穴の部分を聞いてみる。しかしこれは言えるはずがない。ただでさえ砂埃で見えなかったのだ、そこに高速移動……わかっていたらただ単に高速移動とは言わないだろう。

「そこがわからないんだ。あの一撃は永久機関の出力を全部斬撃にまわしたとか?」

「ん~……75点!少し惜しかったな」

俺はゆっくり起き上がり、シャルルの方に向き直る。

「まあわからなくても恥じることはないさ。箒ならまだわかったかもだが、外国人にはまずわからないだろうからな」

「?どういう事?」

「つまり日本人、特に剣術に携わったものにしかわからない、ということだ」

俺はそういうがシャルルは相変わらず?マークを頭の上に浮かべていた。コレは実際に見せたほうが早いな。

俺はそう思い、立ち上がり「見てろ」とだけ言い残し、少し下がる。両足を肩幅ほどに開けて、少し腰を落とし、膝を曲げ、左脚を若干前に出す。

次の瞬間、俺は元いた場所から横にいた場所に()()()()()移動した。

「え!ええっ!?い、今のどうやったの!?」

目の前で俺が行った行動が不思議すぎるのか、立ち上がって詰め寄ってきた。くそっ、中性的な顔立ちのせいで不覚にもドキドキしてしまった!!

「わ、わかった!教えるからそんなに近寄るな!!」

俺はシャルルをなだめて元の場所に座り直す。

「今のは《縮地(しゅくち)》――俺はどっちかって言うと《雲耀(うんよう)》と呼んでいる。で、あの模擬戦の時にISを纏った状態で今の雲耀をして最大出力の斬撃……というわけ。わかった?」

「ん~……要するにその瞬間移動みたいな物をISでやってのけたんだよね?」

「そういうこと。ついでにコレはPICの性能をフルに発揮すれば空中や水中、何処ででも可能となる。まあやる意味あんまりないけどな、実際にPICとか使ってたらあの斬撃の威力は出なかったし。夏だから成功したみたいなもんだ。熟練したIS操縦者ならまず失敗してた。ISのハイパーセンサーなら捕らえきれるんだからな……俺は夏のハイパーセンサーからの反応の遅さ――ハイパーセンサーの死角とでも言おうか、それを利用しただけ」

俺がさらりというとシャルルは「なるほど……」と呟き、またのんびりとした時間を過ごすこととなった。

俺は仰向けに寝っ転がり、少し空を眺めていると不意に頭上から影が掛かった。

「ちょっと……いいか」

俺は体を起こし振り向くと、少し複雑且つ緊張気味な顔の箒が立っていた。まったく、今日は色々と出来事が起きる日だ……原因は全て俺にあるんだけどさ。

俺は立ち上がりながら答える。

「よっと……いいぜ。俺も丁度話さなきゃいけない、と思ってたからな。そうだな……階段の踊場で話そうか?」

「あ、ああ」

「じゃあシャルル、少し待っててくれ」

「あ、うん。わかった」

そうすると俺と箒は中へと続く扉のすぐ入った所にある踊場へと場所を移した。

「「……………」」

無言の時間。箒から話を切り出すと思ったから黙っているのだが……恐らくまだ心の整理が付いていないのだろう。

「……驚いたか?俺がISの開発に協力してたってわかって?」

「……ああ」

何時まで経っても話が始まりそうになかったので俺から話を切り出した。

「で、どうする?俺も束さんと同様に嫌うか?」

「!それは…………」

箒は答えない。俺にはその理由がわかる。

束さんと箒は昔はとても仲の良い姉妹だった。しかしISが開発され白騎士事件が起きた時からその関係は崩壊していった。

箒は束さんが別居してからもちょくちょく束さんのラボ遊びに行っていたのだが、束さんは事件の日から鍵をかけて出てこなくなってきた。箒にもそれは当てはまり、箒がいくら扉をたたき呼びかけても何も反応はなく電話にも出なくなった。そして次第に束さんのラボに行く回数が減っていき、終いには行く行動すら無くなった。

暫くして束さんが失踪。その後、重要人物保護プログラムによって箒は夏と俺と離れ離れになり、箒の両親とすら別れてしまった。そしてその事でISを作った姉の束さんへの怒り、憎しみなどという負の感情が箒の中に芽生え始めた。

その後、箒は幾度と無く引越しを繰り返し、執拗なまでの監視と事情聴取、更には外との連絡手段や情報源までも遮断され、精神面でも肉体面でもボロボロになっていき、箒が傷つけば傷つくほど箒の中の負の感情は勢いを増し、膨らんでいった。

そのことから箒は束さんを嫌っているのだ。そしてその原因はIS。つまりそれの開発を手伝った俺にもその負の感情の矛先が向けられたのだ。

「……別に嫌いたいなら嫌ってもいい。箒と束さんの関係を見てればいつかは自分も、っていう想像は容易に出来た。しかし忘れるなよ、束さんも俺も箒のことを嫌っちゃいないってことを」

「……………」

「……特に束さんはお前のことを溺愛してるからな。白騎士事件のあと、箒をラボへ入れなくなったのはお前をISの事へ巻き込みたくなかったためだ。ただでさえ篠ノ之束という人物の妹という存在だ。一人で、しかも度々自分のラボへ来る少女だ、誰かに誘拐されたらどうしよう……そんな考えから束さんは苦肉の策としてお前を突き放す行動をとったんだ。束さんが失踪したのもその為。しかしそんな束さんにも誤算はあった、それが重要人物保護プログラムだった」

俺は少し息をついてから再び口を開く。

「……俺だって別段お前や夏を騙そうとしていたワケじゃないさ。ただあの時はまだ俺は小学生だったし、万が一バレた場合お前や夏、冬姉に迷惑がかかると思った。それは何としても避けたかった」

「……そうか……じゃあ私は別段秋葉を嫌う理由は無いな。すまない、時間を取らせてしまって」

箒はほっとしたような、微笑んだ顔をした。

「なに、別に構わないさ……それよりもコレ、束さんの連絡先だ。なに、何かあった時ようだ。不要だと思うならそっちで処分してくれ」

俺はそう言うと箒の携帯に束さんの連絡先を送った。ついでに束さんはどこから入手したのか箒の連絡先は持っているらしい。

「すまない……それじゃあまた後で」

「ああ」

箒はそう言うと階段を降りていってしまった。

さて、休み時間は……あと二十分ぐらいか。さて、どうするかな……取り敢えず戻るか。

俺は扉を開けて屋上へ戻った。相変わらずシャルルは笑いながら空をみあげており、春華は満腹になったのか寝ていた。本当に春華は自由気ままなやつだな。

「ただいま」

「あ、お帰り。篠ノ之さんと何話してたの?」

「ん~?まあ他愛無い世間話さ」

俺は座ってサラリとそう言う。

「……そういえば秋はISの訓練とかしてるの?」

「いや、今まではやってなかった……けど、そろそろ俺も訓練に参加しないといけない気がするんだよな~」

事実、夏も実力を入学当初よりかは凄い上げているはずだ。ただあの三人がコーチをしているせいで訓練らしい訓練をしていないのも事実だ。ここは寧ろ俺がコーチしたほうがまだ効率がいいだろう。そう思っていたのだが……

「じゃ、じゃあ僕も訓練に参加していいかな?」

と、シャルルが提案してきた。

俺の予想ではこのシャルルは分析力や理解力がずば抜けてて、性格も人当たりがよく、物事を的確に捉えてそれをちゃんと人に捕らえられるということが今までの会話から俺はわかった。だから正直この提案は嬉しかった。もしコイツに夏のコーチを頼んだら夏の伸びがもっと良くなるはずだ……まああの三人はよく思わないだろうがな……

「……じゃあ夏のコーチをお願いしていいかな?アイツにも一応コーチはいるんだけど全員教えるの下手でさ」

「うん、わかったよ。その代わり秋もちゃんと僕達の相手をしてよ?」

「そ、それは……まあ、気分が向いたらと言うことで……」

正直言うと気が乗らない、というかあまりいい気分はしないのだ。俺のISはどうもまだ制限を付けなければならないっぽいからな…………しまった!!

「忘れてた!!」

「え!?な、なに?どうしたの?」

「冬姉に呼ばれてたんだった!!」

確か俺の春華のISのことで呼ばれてたんだった!!

「俺と春華よっと職員室行ってくるわ!おら、春華!起きろ!」

「ん~……まだ眠いよ~……ふ、ふえ!?」

いつの間にか寝ていた春華を引っ張り職員室へと掛けていく俺。

「あ、秋!僕も行くよ!」

それにシャルルもついてきた。

 

「……秋葉、言いたいことは分かるな……」

「はい、織斑教諭」

現在俺は職員室で神経がヤバイぐらいの冬姉と対面していた。

「……まあいい。で、お前と春華のISについてだが山田先生と話した結果、今日か明日の職員会議で教師全員で決めることにする。で、その為に実物またはデータが欲しいんだが……」

「それって要は攻撃力とかが記載されていればいいんですよね?」

「ああ。なに、心配するな。もし誰かがそのデータを悪用する場合は全力をもって阻止する。まあもっともそれを逃れても秋葉がどうにかするだろう?」

「まあたしかに……」

俺は「くっくっく……」と笑った。しかしそれを息を少し切らして見ていたシャルルに「秋……悪役っぽいよ……」と言われてしまった。う~ん、一理あるがそもそも正義とは人によって観点が違うから悪も然り、だろう?

「まあさすがに実物は渡したら不安要素増えるんで、このデータだけで」

そう言って俺はさっきシャルルに見せたデータを渡した。冬姉はすぐ確認し「これなら大丈夫だ」と言ったので俺たち三人は職員室を後にした。

「ぶ~、私がいなくても良かったじゃん……」

もっと寝てたかったのか春華がぶーたれたが俺は頭を撫でながら言う。

「はははっ、まああのまま寝てたら起こす奴がいないからな、授業に遅れて出席簿アタックは嫌だろう?」

「それはそうだけど~……」

まだ渋る。春華は食うことと寝ること以外考えないのか?……それでも転生前とはかなり変わった。俺はそんな春華の様子に笑い、叫ぶ

「さてと、そろそろ授業だから戻るか!!」

「うん!」

「そうだね!」

春華とシャルルも触発されてか元気よく返してきたので結構テンション高めに午後の授業を受けた。

 

時間は変わり、放課後。

「今日は転校してきたからゆっくり休め」と言ったのだがシャルルは「ううん、一応一夏の訓練に参加してから帰るよ」と遠慮したので俺は早々と一人で帰ることにした。しかし今になって思うともうちょっと食い下がったり待っていたほうが良かっただろうか?あっさりと引き下がったがために冷たい奴とか思われたら嫌なもんだが……まあいい。それに寮の部屋を片付けなきゃならないしな。

「夏と一緒だったからな……そこまで酷いってわけでもないんだが、それでも片付けてあるとはいえないよな……」

俺は自室に戻り部屋を見る。

夏が元々使っていた窓側は至って普通だ。非の打ち所などないだろう。問題は俺のベッドのほうだ。

「取り敢えず散らばったスコアとかTAB譜から片付けるか……」

足の踏み場もない、とまでは行かないが下には趣味でやっている音楽のスコアが散らばっており、更には楽器の弦を張り替えるためのニッパーや切れた弦なども落ちている。うっかり踏んでしまえば大惨事だ。

「え~っと、このスコアはこっちで……このスコアはボツ、と……こんな所か」

そんなこんなで所定の場所にしまい、見苦しくない程度に片付いた所で一息ついてジャージに着替える。

「……しかしなんだ……今日は色々あったな」

俺は着替え終わり、ベッドに倒れ込む。

俺は視線をベッドの上の方にやって、ふと置いてあった写真立てに目線をやった。

「よっと……見れば見るほど似てる……コイツはコイツで元気にやってるのかねえ?」

俺はその写真立てを手に取り、暫く眺めている。

写っているのは四人の男女。右から私服姿で立っている冬姉、車椅子に座って包帯で体の半分ぐらいを覆われている俺、シャルルによく似ている金髪ロングヘアーの美少女、そしてその母親でベッドに腰掛けて笑っている女性。

俺が怪我してフランスの病院にいる時に撮った、ある意味大切な写真だった。

「……一応、調べてみますかね!」

俺はその写真を伏せて、置き直すと勢い良く起き上がり、机においてあったPCの電源を入れて椅子に座る。

暫くして俺はキーボードを叩いて《あること》を調べ始めた。

 


 
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