No.434732

超次元ゲイムネプテューヌ Original Generation Re:master 第24話

ME-GAさん

24話です。Vってゲイムキャラとか出てくるんですかね

2012-06-09 16:37:12 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1408   閲覧ユーザー数:1317

ロクなストーリーが浮かばず、英雄の武具編は割愛とさせていただきます。

気が向いたときに番外としてその一部を公開することになるかもしれません。

申し訳ゴザイマセンでした……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「なんやかんやで全部集まったわね、英雄の武器」

アイエフはルウィーで手に入れた『ハイブリッジの達人の連槍』を担ぎながらそう声を上げる。

「全くだな……、途中でだいぶいたい出費もあったが……」

テラはラステイションで手に入れた『マウスロープの双式巨銃』を抱えてしぼんでしまった財布を見て肩を落とす。

「ていうか、重いですぅ……」

コンパは「んしょっ」と言ってリーンボックスで手に入れた『ツイーゲの大賢弓』を再び抱える。

どれもこれも、並大抵の人間が扱うような大きさではなく、それはテラの身長でさえも超してしまうような大きさのため、コンパやアイエフにこれは酷であろう。

しかしながら、この中で一番重いのは銃であり、仕方なくテラはそれを担いでいるわけである。

「ま、とにかくいーすんの言うとおりの目的は達成できたわけだし、早く戻ろう!」

ネプテューヌはそんな三人を促して先陣切って走っていくのであった――。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

一行の前には看板が立てられていた。

その内容は――

「この先工事中につき立ち入り禁止……?」

テラは訝しむように看板に記されている内容を読み上げる。

傍らに立っていた作業員らしき男性は、そんなテラの呟きを聞きつけ、

「なんでも、この前に起きた地震で橋が土砂で埋まっちまったってよ。悪いけど、回り道してくれるか?」

と、男性の言葉に仕方なく一行は頷き、その場から迂回した森の中を突き進んでいた。

 

 

 

 

 

そして――

「ハッハッハー! ようやく見つけたぞ、ネプテューヌ!」

「それ前にも聞いたよー」

宿敵の登場というのになんだろうこの緊迫感の欠片もない返答? とテラは疑問を抱かないでもなかったがやはりここは突っ込まない。

「フン、まあいい。今日が貴様らの命日だ。

せいぜい、その死に様をその者共に見せつけてやるといい!!」

女性は、いや、マジェコンヌはそう叫び、右手を大きく振るった。

そしてその瞬間、コンパとアイエフは何かに押さえつけられたようにその身を崩す。

「きゃ……!」

「く……!」

「コンパ、アイエフ!?」

テラはすぐに二人に駆け寄り、何とか起こそうと奮闘するも、力を込めれば込めるほどに押さえつける力は倍増する。

「無駄だ。簡易とはいえ、封印術を施したからな。そう簡単には抜け出せん」

「テメェ……!」

「さあ、大人しく私にトドメを刺されるがいい!!」

マジェコンヌは叫び、両の手のひらから巨大な火球を発生させる。

それに目を見開く一行、そしてコンパとアイエフはもがきながら叫ぶ。

「二人だけでも逃げて欲しいです!」

「こんなところで全滅するわけにはいかない! 英雄の武器を持って逃げて!」

「っ! できるか、そんなこと!」

テラは一喝し、ナイフを構える。

「な、無理よ! 4人で精一杯だったのに、太刀打ちできるはずがない!」

「でも、テメェら置いて逃げられるわけないだろ!」

テラは言うが早いか、ナイフを構えてマジェコンヌに突進、右手からナイフを振り下ろし、そこから手を地に突き、回し蹴りを喰らわせる。

しかし、マジェコンヌはそれをいとも容易く避け、頭上から襲いかかるネプテューヌを雷撃の鞭で掴み、近くの巨木に叩き付ける。

「ぐ……!」

「このっ!」

テラはそこから炎弾を撃ち込むが、マジェコンヌが発生させた氷の壁に阻まれ弾かれる。

テラは岩を蹴って跳び、マジェコンヌの頭上から左手のナイフを投げ、反対側に着地する。

「フン、少しはやるようになったが、まだまだ甘えがあるな。お前も、ネプテューヌもな……!」

「五月蠅い!」

テラは叫び、マジェコンヌとナイフと杖を交える。

鍔迫り合いの後、マジェコンヌの土属性魔法の追撃でテラはその場を離れ、復帰したネプテューヌが太刀を構え、左手に握る銃で牽制しつつ、両脇から彼女を狙う。

「「はぁあああぁっ!!」」

二人が叫び、マジェコンヌを斬り込んだかと思えた瞬間――

 

 

 

地響きが起こり、大地が揺れる。

「なっ……!」

「地震!?」

テラとネプテューヌは思わず大地に手をつく。

そして、目の前からマジェコンヌが消失していることに気付く。

「何処だ!?」

「上だ!!」

マジェコンヌは叫び、そこには右手に大火球を、左手に大雷球を掲げる彼女の姿があった。

「地震に気取られていたようだな! 魔法ならば、地脈を刺激することなど容易いこと!

死ねっ!」

マジェコンヌはそれだけ叫び、大魔球を同時に放つ。

「っ!」

テラは身構える。

しかし、避けようもない。逃げられない。

絶望的状況で、しかしテラは笑う。

その些細な変化を、マジェコンヌは見逃さなかった。

「何だ……!? 何故笑っている!?」

「知らねぇな!」

テラの、しかし彼の声とは思えないような声で叫んだ後、彼はブンと強く右手で宙を払うように振る。

少しの衝撃波が起きた後、魔球は四方に散らばり、やがて消えていく。

そして、マジェコンヌが狼狽えている間に、テラは近くの木を蹴り、彼女の脇腹にナイフを突き立てる。

 

マジェコンヌは浮遊を維持できなかったのか、そのまま地面へ落下し、苦しげに肩で息をしてぜぇぜぇと吐息しながらテラに問い掛けた。

「いつから分かっていた……?」

「何が――」

「……いや、まだ気付いていないのだな。愚かな話だ……」

マジェコンヌは額に汗を浮かべながら、しかしあざ笑うかのようにテラにそう告げる。

「貴様等は神界に行く気だな?」

「そうよ。そして、貴女を倒す」

「面白い話だな……。私はこれで失礼させて貰うとしよう」

マジェコンヌは薄く笑い、やがてその姿は蜃気楼のように消えていく。

 

戦いが終わり、一息ついた後に二人は思い出したようにコンパとアイエフの元へ向かう。

マジェコンヌが術式を解いたのか、二人は身動きが取れるようになっており、少し不機嫌そうにテラとネプテューヌを睨んでいた。

「馬鹿! なんで逃げなかったのよ!」

空気を振動させるようなアイエフの怒号にテラ、ネプテューヌはおろかコンパまでもが目を瞑った。

「……だって、あそこでマジェコンヌを見逃して、あいちゃんやこんぱがいなくなったら私達だけでマジェコンヌを倒せる確率減るし」

「それに、倒すべき目標が目の前にいるのに見逃す方がおかしいだろ。あそこで倒せれば神界に行く必要もなくなるわけだし」

「ぐ……」

もっともらしいことを言われてアイエフは口をつぐんだ。

いよいよ立つ瀬がないか、アイエフはくるりと向きを変えて落とした英雄の武器を拾い、荒々しく森の中を突き進んでいく。

「とっとと行くわよ! いーすんさんもきっと待ってるだろうし!!」

ガルル……と獣のようなうなり声が聞こえそうなほどにアイエフは激昂しているのを見て、三人は肩をすくめた。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「おかえりなさい!」

笑顔でそう応えてくれるイストワールを見て一行は少し可愛いと思った。

そして、それと同時に彼女を抱っこして撫で撫でしてあげたいと思ったが何となくそれは憚られた感じがしたので実行はしなかった。

英雄の武器を全て手に入れた旨を報告、といってもイストワールは流石神様! 的な力でその状況を見ていたらしいので深い説明は要らないのだが何となく説明してしまう辺りが人間の性である。

 

「みなさんにはあいかわらずタイヘンなタビをさせてしまってもうしワケないです……」

イストワールはショボーンと肩をすくめてそう告げる。

沈んでしまった彼女を見て一行はあたふたと取り繕う。

「そ、そんなことないよ!?」

「そうそう! 結構楽しい旅だし!?」

「そうよね、謝られるような筋合いはないわね!」

「そうです! いーすんさんは悪くないです!」

一行の思いが通じたか、イストワールは安堵の息を漏らし、またそれをみて一行も安堵した。

「それで、みなさんにいっておきたいコトがあるんです……」

神妙な面持ちでイストワールは告げる。

その雰囲気より、かなり深刻な話であることは手に取るように分かった。

一行は思わず息を呑む。

そして、イストワールは口を開いた。

「おそらく、いくらネプテューヌさんのチカラをもってしても、マジェコンヌにはかないません」

その言葉に、一行は呆然と時が止まったようになる。

「……ドユコト?」

相当ショックがあったか、言葉もおかしくなっているテラがイストワールに尋ねた。

「マジェコンヌはかりにもメガミさま。たとえこのセカイにおけるハードであってもタチウチできません……」

ポク、ポク、ポク、チーン

とでも効果音が聞こえてきそうな程に一行は阿呆面を並べる。

「じゃ、何? 結局、今の私達じゃ叶わないってコトよね?」

「はい……ザンネンながら」

その言葉に一行はorzな格好で項垂れる。

「何だったですか、私達の今までの苦労……」

「神界に行けてもマジェコンヌに叶わないんじゃ何も解決してないよね……」

早くもネガティブになり始めている一行を見て、イストワールは慌てて声を上げる。

「で、ですが、ホウホウがないワケじゃないんですよ!? ちゃんとサクセンもかんがえてあるんですよ!?」

「作戦?」

いち早く復帰したネプテューヌがそう復唱して首を傾げた。

イストワールはすうと大きく息を吸い、告げた。

「そうです! メにはメを、メガミさまにはメガミさまを、です!」

「……は?」

イストワールの言っていることが理解できないという風にアイエフは声を上げた。

それもそのはずであるが。

「つまり、せんだいのメガミさまであるマジェコンヌとどうとうのチカラをもつメガミさまたちのキョウリョクをあおぎ、マジェコンヌをたおすのです!」

ババーンと黄色のトゲトゲした感じのヤツが背景に浮かびそうな感じにイストワールは高らかに叫んだ。

「女神様に……?」

テラはふるふると拳を振るわせ、そして叫んだ。

「それなら大陸巡ったついでに勧誘してくればよかった話だろ! これじゃあ二度手間だろが!!」

「……おぉ」

「……あー」

今頃気付いたか、ネプテューヌとコンパは納得したように声を上げた。

しかし、そんなテラの声にイストワールは哀しそうに呟く。

「わたしは、まよっていました……」

「迷う?」

アイエフは素っ頓狂な声を上げ、首を傾げる。

そんな彼女の声にイストワールは頷き、小さな声で続ける。

「メガミさまとあえば、きっとかわってしまうから……」

「……ねぷ子が?」

アイエフはそう問い掛けるが、イストワールは応えなかった。

「……でも、きっとまよっていられない。こうしているあいだにも、マジェコンヌのまのてはせまっている」

イストワールの瞳には決意の色が宿っている。

彼女が決めた以上、自分達に横から口を出す資格はないとテラは思う。

しかし、

「ねぷ子は、いいのか?」

「何が?」

「何がて……イストワールの話を聞いてなかったのか?」

ネプテューヌはなんだその話かーとポンと両手を打つ。

まあ、この話の流れ的にその話しか有り得ないのだが、彼女の情報把握能力はその程度なので期待しても仕方がない。

「ま、きっと大丈夫だよ! 私が女神様だって分かったときも何も起こらなかったんだし!」

そんなんでいいのかな、と三人は思った。

「でも、また大陸を渡って女神様に会いに行くです?」

と、コンパの問いにテラとアイエフは確かにそれは面倒くさいなと思った。

「そのてんはモンダイありません! わたしのチカラをつかってメガミさまたちとおはなしできるようにします!」

イストワールは何か呪文のようなものをブツブツと呟き、その身体が光を纏う。

そして、次の瞬間に脳裏に三人の少女の声が響く。

 

 

『何? 何なの、これ?』

力強く、意志を秘めたような少女、ノワール。

『あら……これは……?』

柔らかな物腰で話す少女、ベール。

『……これ、何?』

静かに、そう漏らす少女、ブラン。

 

彼らが大陸で出会った女神達であった。

「おぉ、流石はいーすんだ!」

『その声、ネプテューヌ……?』

ノワールは素っ頓狂な声でそう問い掛ける。

ネプテューヌはそんな問いに元気よく肯定し、ノワールは暫し驚いた風に声を漏らした。

『あの、これはいったい何ですの?』

ベールは戸惑ったように声を上げるが、その問いにはイストワールが答える。

「これはいま、メガミさまたちとこちらのネプテューヌさんたちとイシキをつなげてカイワができるジョウタイになっているのです!」

『……理屈はよく分からないけど、ようは私達は今、大陸を越える電話をしている状態ってコト?』

おおよそおとぎの国のたとえには相応しくないような返答が来たが、あながち間違いでもないのでテラは黙殺した。

 

 

なお、この後にマジェコンヌやモンスターについての説明が行われたのであるが、ここでは事情により割愛とさせていただく。

『ふぅん……、つまりその先代の女神様のマジェコンヌって人が世界を滅ぼすためにモンスターを生み出してるってコト?』

「そうだよー、実はそうだったんだよ! どう? 目から鱗?」

しかし、そんなネプテューヌとは裏腹にノワールは変わらずのテンションで溜息らしき声を漏らした。

『どうも信じられない。……それにネプテューヌの言い分を信じるのも怪しい』

「そんなことはないだろ? 今までのことを鑑みれば充分な可能性はあるだろ?」

『例えそうだったとしても、残念ながら協力は出来ませんわね』

ベールの一言に一行は驚く。

恐らく、一番協力的になってくれるだろうと予想していた彼女からそんな言葉が出たのだから。

『不謹慎かもしれないけれど、私はマジェコンヌさんの気持ちは少し分かります。女神の仕事というのはとてもじゃないけれど,他人が語れるようなものじゃない……』

『そうね……。例え女神だと言っても、記憶のないネプテューヌにそれを語る資格もないわね』

便乗するように、ノワールもそう告げる。

「え! わ、私だって記憶を無くしたくて無くしたワケじゃないし、そう言われても――」

『とにかく、私は貴女達に協力する理由も義理もない。――話がそれだけならもう終わってもいい?』

ブランは面倒くさそうにそう告げ、その後にプツリと連絡は途切れる。

そんな状況を聞いていたノワールも少し申し訳なさそうな声で

『ま、そんな感じね。悪いけど、私も大陸のことで手一杯なの。悪いわね』

そう言って連絡を切る。

『私も、申し訳ないですが、これで失礼させて貰いますわね』

ベールもそう応え、そして連絡を切る。

 

立ちつくしているネプテューヌを、見かねたアイエフは声を掛けようとするが、それはテラによって阻まれる。

「テラ……」

「そっとしておいてやろう」

「でも――」

コンパも心配そうな表情でテラの顔を覗くがしかしテラは力無く首を横に振った。

「記憶が無いとはいえ、自分を否定されたも同然なんだ。ショックは大きいだろうな……」

 

 

 

――かつて、自分を否定された少年は、悲しくそう告げた。

 

 

 

 

 

 

しかし、その後にネプテューヌは意を決したように拳を握り、ぐりんと己の身体をイストワールへ向ける。

「いーすん!」

「は、はい?」

イストワールもいきなり指名されて驚いたか、少し動揺した風に返事をする。

 

 

 

 

 

 

 

「私のキオク――、戻せる?」

ネプテューヌは、決意を秘めた表情で、そう言い放った。

 

 

 

ネプテューヌはコンパ宅のベッドの上で小さな寝息を立てている。

それをテラは少し心配そうな表情でのぞき込む。

 

「イストワール、大丈夫なのか?」

「はい。ネプテューヌさんはおそらく、はるかむかし、じぶんたちがうまれたキオクをみているハズです」

イストワールは用意して貰った緑茶を啜り、そう答えた。

 

 

ネプテューヌは、彼女は今、己の記憶を修復させている。

事の次第は――

 

 

 *

 

 

「いーすん、私のキオク――、戻せる?」

女神達に散々言われた後に、ネプテューヌはイストワールにそう尋ねた。

イストワールは少し面食らったような表情で、彼女に問い返した。

「キオク、ですか?」

「うん。私が女神様だった頃の記憶とか……無理かな?」

ネプテューヌは頼むように両手を顔の前で合わせる。

困った表情で一瞬だけテラを見たイストワールは心配そうな声で答える。

「……ムリではないですが、ネプテューヌさんはいいんですか?」

「構わないよ! だって他の女神様の言うとおりだし!」

 

 

『女神を語る資格はない――』

 

 

『何もわかっていない――』

 

 

その言葉は、思いのほか彼女の心に深く突き刺さったらしい。

「……って、イストワールは人の心とかはどうにもできない、とか言ってなかったか?」

前に何処かで聞いたような疑問にテラは問い掛ける。

「たしかに、わたしはヒトのココロはどうにもできません。しかし、なくしたものをシュウフクするならたやすいことですよ」

その辺りの違いがどうも釈然としなかったが、テラはいかにも納得した風に頷いておいた。

これも立派な彼の処世術である。

「やっぱり私が女神様だった頃のことを思い出さないとみんなも話を聞いてくれそうにないし……」

「だからって、ねぷ子がそんなことする必要は無くない? 他の女神様がいなくたって私達だけでも大丈夫よ?」

と、まあすこぶる自信はなかったわけではあるがその後のネプテューヌの押しに三人はただただ押されまくったわけである。

 

 

 *

 

 

こうした経緯があり、現在、ネプテューヌは己の記憶を映す夢を見ているのだ、とイストワールから告げられた。

テラはそっと、彼女の額に浮かぶ汗を拭った。

「……お前が、変わってしまったら俺は、どうすればいいんだろうな……?」

答えなど返されるはずのない事は分かっていたはずなのに、しかし、彼はそれを口に出さずには居られなかった……。

そんな中でアイエフは携帯を弄りながらふと呟いた。

「ねえ、もし、もしもの話よ? マジェコンヌを倒して……その後、ねぷ子はどうなっちゃうワケ? やっぱり、神界に残っちゃうのかしら?」

アイエフの聞き慣れない不安そうな声に、テラもコンパも寂しげな表情を見せた。

 

神界など、自分らが本来足を踏み入れるべき場所でないことは分かりきっている。

彼女が、神界に残りたいという意志があるのならば、自分達はそれを尊重しなければならないことを。

 

――分かっていたのだ。

だからこそ、なのかもしれない。

「……仕方がないんじゃないのか。コイツがそうしたいって言うのなら」

テラはハァーっと窓ガラスに息を吹きかけてそこに適当な文字を書きこんでいく。

コンパは目を伏せながら、遠慮がちに口を開いた。

「我が儘ですけど、私はやっぱりねぷねぷと一緒にいたいです……」

「……そうもいかないだろ。コイツは女神で、俺達は……ただの、人間なんだから」

今まで感じていなかった隔たりが三人の前に大きく立ち塞がった。

この4人で旅を初めてだいぶ経ったが、その間に様々な事件があったが、それでも今回のことはより一層大きな壁を生み出した。

女神と人間では時を感じる時間も違う。

彼女たちは、これでも、もう何百、何千という時を過ごしてきたのだ。

そして、これからもそうするのだろう……。

そんな思いが、三人の心中を駆けめぐる。

「でも、それでもいいかもな……」

「何がよ……?」

テラは少し自嘲気味た笑みを零す。

「俺達が居なくなったとき、きっとコイツは泣いてくれる。凄く嬉しい話だと思わないか?」

彼女の涙は、とてつもなく嫌悪感を抱いた。

しかし、自分の死を悲しみ、弔ってくれるであろう彼女の存在はテラにとって、救世主とも呼べるべくモノだったのかもしれない。

「……そうね。それもいいかもね」

「……そうです。ねぷねぷはきっと泣いてくれるですね」

二人も、テラと同じように薄く笑う。

 

 

 

 

 

きっと大丈夫。

そう、彼らは信じていたから。

だからこそ――

 

 

 

 

 

 

 

『テラ』は傷ついた。

 

 

 

 

 

 

神界。

片方の女性は酷く肩を落とし、憂を秘めた表情で目の前の少女と何やら話し込んでいた。

片方の少女は、それを心配そうな表情でじっと、ただ彼女の話に耳を傾けていた。

遥か数万年前――。

「もう疲れた……。私は、これ以上下界の民の苦しみまで背負う自信はない……」

女性はいつになく弱気な物腰で肩を落とした。

それからさらに数千年も前から彼女は人々の信仰だけでない、絶望も恨みも、全てを抱えてきた。

いくら女神と言っても、彼女にも限界があった。

そんな彼女を見かねた少女は遠慮がちに声を掛けた。

「神を創りましょう。新たな神、不浄を全て受け入れる邪神を……」

「しかし……そいつに全てを被せるのは……」

「仕方がないことです。そうしなければ、貴女が壊れてしまう」

人々の理不尽を一手に引き受け、世界の均衡を保つもう一つの神を、彼女たちは創った……。

「これも、運命とやらが定めたシナリオなのかもしれんな……」

「はい……。きっとその神には辛い思いをさせてしまうでしょう。でも……私達で何とかしてあげなければなりません」

「そうだな……。私の我が儘の所為で生まれる存在なのだ。尻ぬぐいも、私の仕事か……」

 

 

 *

 

 

少年は、ただ地べたに腰を下ろし、虚空を睨み続けていた。

何をするでもない。

何を感じるでもない。

ただ、無の中で彼はジッと一点だけを見つめていた。

「……アイツは何をしているんだ」

「何もしてないですよ。訓練が終わればいつもアソコでボーッとしています」

女性と少女は顔を見合わせて心配そうな表色を表した。

 

「あの子にも、友と呼べるべき者が必要かもしれませんね……」

いつの間にか、傍らに立った女性が静かにそう告げる。

修道女のような姿をした女性はそう言いながら目を伏せた。

「そうだな、そろそろ潮時か……。新たな女神を創ろう……。私などよりもっと優れた女神を……」

女性は悲しそうにそう告げる。

少女もゆっくりと頷きながら口を開いた。

「そうですね……。次の神様には必要なことかもしれないですね。責任を背負い合えるような、大切な人達が……」

修道女もそれに同意するように。

「……今の神界はあまりに静か過ぎます……」

「史書の力で下界の記述を変えれば何の問題もあるまい。新たな神達が『完全に』覚醒する頃には下界で何千何万と時が流れる後だろう。私が統治していた頃とは影も形も残らぬはずだ」

女性は静かに目を閉じる。

「ですが、大変ですよ? 神の全員が目覚め、そしてかつて女神が持ち得た知識、経験、全てを貴女が受け継がせなければならないんですよ?」

少女は分かっているのですか? と付け加えて女性に問う。

「責任も共にな……。そのために彼女が居るのだろう? それに、いつかはそんな忌むべき風習も途絶えるかもしれん」

「はい……」

修道女は恭しく一礼する。

「……ふふっ。そうですね、今度の神様達がそんな連鎖を断ち切り、『新たな世代』を作り上げていってくれるといいですね……」

 

 

少年は糸の切れた人形のように倒れ、そして意識を手放した――。

 

 

 *

 

 

「……ネプテューヌ、ネプテューヌ!!」

女性の甲高い声が響く。

西洋風に立てられた巨大な屋敷。

その一角をヒールの音を響かせて女性は怒号のような声を上げながら少女の姿を探す。

少女、ネプテューヌは、そんな彼女をキョトン、と幼さを残した瞳で見据えている。

「今、神界は不安定な状況にある。競い合い、優位を決めるはずだった女神共が馴れ合い、その意識の所為で下界の民は振り回され、苦しんでいる!」

「……苦しい?」

ネプテューヌはボンヤリとその言葉を復唱する。

 

『聞いたこと、ある……この台詞』

ネプテューヌは意識の奥でそう感じる。

 

「救えるのはお前しか居ないのだ。下界の民を救えるのは……。お前が全ての神を倒し、そして神界を統治するのだ……!」

 

『そうだ……。下界のみんなを助けたくて……。救えるのは私だけだって。

だから、守護女神戦争なんて起こったんだ……。私が、起こしたんだ……』

ネプテューヌは頭を抱えて否定するようにブルブルと頭を振る。

『みんな、騙されてたんだ! コイツに……マジェコンヌに!!』

 

「私……救えるのは、私だけ……」

ネプテューヌは、虚ろな瞳でそう呟く。

 

 

 †

 

 

「ッ!?」

ネプテューヌは勢いよく上体を起こした。

全身がぐっしょりと汗に濡れ、下着が肌に張り付いて気持ちが悪かった。

しかし、それ以上にネプテューヌは妙な嫌悪感、いや違和感か。はたまたはどちらもか。

とにかく、嫌な気色を感じて溜まらなかった。

「おきましたか?」

「……いーすん」

イストワールはニコと微笑み、水の入ったグラスを手渡す。

ありがとう、と小さな声で返すネプテューヌをイストワールは心配そうな表情で覗き込んだ。

「ダイジョウブですか? メガミさまのころのキオクといまのキオクがまざってコンランしているでしょうが……」

「うん、大丈夫。お陰でいろいろと分かったよ。マジェコンヌのこともいーすんのことも女神様のことも」

ぐびぐびとグラスの水を飲み干し、傍らに置いたところでネプテューヌははたと気付く。

「みんなは?」

「あいちゃんとこんぱさんはかいものにいきましたよ。けっこうジカンもたちましたし、おなかがすいてるだろうって」

「そっかぁ」

ネプテューヌは安心したように息を漏らす。

「そしてテラさんは……」

イストワールは再び微笑を浮かべてネプテューヌが眠っているベッドに顔を置き、安らかに寝息を立てる少年の姿を確認した。

「あれからカタトキもはなれなかったんですよ。ずっとネプテューヌさんのことをみていました」

「……」

ネプテューヌは少し嬉しそうにテラの頭を撫でた。

「むぐ……」

気の抜けた声で顔を埋めるテラを見てネプテューヌは言いしれぬ安堵感と、懐かしさを心中に映していた。

「んん……。ネプ――」

テラは寝言でそんなことを抜かす。

ネプテューヌとイストワールは顔を見合わせてクスリと笑う。

ネプテューヌは静かに立ち上がり、そして――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前まで、行ってしまうのかよ……?」

テラは、涙を零し、譫言のようにそう呟いた。

 

 

 

 

ネプテューヌはいつもの服装に着替え、そして一枚のメモ用紙とボールペンを抜き取り、強かな字体でこう、記した。

 

 

 

 

『――いままで、ありがとう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コレをテラが発見したのは、それから数時間の後であった――。

 

 

 

「んだよ……これ……!」

テラは絶望的な心地で呟いた。

目覚めたテラはいつの間にか自分の目の前からいなくなったネプテューヌの姿を探そうと周りを見渡したことでこのメモを発見したのだった。

 

『――いままで、ありがとう』

 

「クソ!」

テラは掛けられていたジャケットを引っ掴み、コンパの家を飛び出した。

テラはポケットから携帯を取りだし、番号登録されているコンパの携帯へとコールした。

『もしもしぃ?』

相変わらずのマイペースな声が電話越しにかかる。

しかし、そんなことはテラは気にしてなどいられなかった。

「おい! ねぷ子、見たか!?」

『へ?』

「お前らは外出の途中でねぷ子を見たかって聞いてんだ!」

テラの剣幕に電話越しでも彼女が怖じ気ついたのがありありとできた。

そんな声を聞きつけたのか、アイエフが電話を替わりテラに呆れたような声で返す。

『ちょっと……。いくら急いでるからってコンパを怒鳴ることないじゃない? ほら泣き出した……』

アイエフはそう声を上げる。

しかし、テラはそんな彼女たちを叱咤する。

「バカ野郎! 最悪ねぷ子がいなくなるんだぞ! もっと真剣に考えろ!」

『……どういうこと?』

流石に茶化す雰囲気ではないと分かったか、アイエフは真剣な声で返す。

「ねぷ子が妙な置き手紙残していなくなったんだよ! アイツ、一人で何処かに消える気だ!」

そんな中で、携帯越しにイストワールの声が掛かる。

『みなさん、ネプテューヌさんはおそらくプラネテューヌにあるシンカイへのミチをつかってマジェコンヌをたおしにいくつもりです!』

『どうしてですか?』

『そこでネプテューヌさんのはどうをとらえました。メガミであるネプテューヌさんならそこをつかってシンカイにいけるから……! とめてください! いまのネプテューヌさんではマジェコンヌにかないません!』

「当然!」

テラはそう叫ぶ。

『とにかくその場所の座標を教えて! 私達で止めに行くから!』

そして、イストワールから座標の位置を受け、三人は急いでその場所へ向かう――。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「ねぷ子―っ!!」

「ねぷねぷっ!」

古い遺跡のような場所で、静かに寂しそうに奥へと向かうネプテューヌの後ろ姿を確認した。

アイエフもコンパも大声を張り上げて彼女を呼ぶ。

一瞬、戸惑ったようにネプテューヌは表情を強張らせるがすぐに決意を秘めた表情で叫ぶ。

「来ないで! 私、全部分かったよ! マジェコンヌがしてきたことも、私が騙されてたことも!」

彼女に追いついた一行が肩で大きく息をしながら、ネプテューヌに言葉を放つ。

「だからってあんた一人でどうにか出来るような問題じゃないでしょ!?」

アイエフはもの凄い剣幕で叫ぶ。

「水くさいです! マジェコンヌさんを倒したいのはねぷねぷだけじゃないですよ!」

コンパは、涙声になりながらそう呼びかける。

 

「そんなんじゃないの……。あの人の力が中にあるっていうのが、なんか嫌で……」

ネプテューヌは胸に手を当てて、苦痛の表情を見せる。

 

「だからって一人で挑むこともないでしょ!? 刺し違える気……?」

アイエフはいよいよ泣きそうな表情で告げる。

「違う! 終わらせるの! 何もかも全部!」

「駄目です! 私達はパーティなんですから、最後まで一緒です!」

コンパの言葉に、ネプテューヌは少し顔を赤らめながら、苦し紛れに反論する。

「みんなを巻き込みたくないの! 私から始まった問題なんだもん……。私がケリをつけに行く!」

「そう。でも、だからってこっちも引き下がれないの! 何としてでも止めてみせる!」

三人が武器を構え、いよいよ対峙しようかと言うときに――

 

 

しかし、テラだけは違った。

一歩、また一歩と静かにネプテューヌとの距離を詰める。

そして

 

 

――パンッ!

 

 

乾いた音を立てて、ネプテューヌの頬をテラが叩いた。

勢いのままにネプテューヌは地面に倒れ込み、そしてテラを見据えた。

しかし、彼はさしてそんなことは気にした風もなくネプテューヌの服の襟を荒々しく掴んだ。

「フザケたこと抜かすな!!」

震える声で、そう声を発する。

「俺はお前の記憶は分からねえ! だからどうこう言えることでもねえ! だけどな、自分一人で背負い込むことはねえだろ! パーティってそんなものだろ!? 『仲間』ってそんなものだろ!?」

テラは一息吸って再び早口で語り出す。彼女の心に届くように。

「今まで散々迷惑かけてきた癖に、こんなときだけ遠慮か!? 意味分かんねぇ! 話せよ! 話してみろ! テメエがいったい何をしたのか! 話はそこからだ、ボケ!!」

肩で大きく息をする彼を、三人は呆然と見つめていた。

しかし、そんなことは気にせず、彼はぎゅぅとネプテューヌを抱きしめた。

「バカヤロ……! 一人で無理すんなよな……」

つぅ、と頬に流れる涙が、ネプテューヌに当たる。

それを感じ、ネプテューヌもつられて涙を流した。

力無く笑い、ネプテューヌは告げた。

「テラさんが、言えた話じゃないよね……」

「うるせー……」

テラはごしごしと乱暴に目元を拭いながらそう答えた。

そして、ネプテューヌの抱く力をより一層強めた。

「テラさん、痛いよ……」

「当たり前だろ……!」

テラは、また涙を流した。

そんな彼を見つめながら、コンパもアイエフもゆっくりと近づき、腰を下ろして彼女を小突いた。

「お仕置き、だからな……!」

そう言って、4人は暫し、涙を流した――――。

 

☆ ☆ ☆

 

「私……我が儘だったよね」

ネプテューヌはまだ少し流れる涙を拭い、力無く笑う。

「いつもいつも正義気取ってたけど、これじゃあ正義の味方失格だよね。マジェコンヌのことも怒れないや……」

そんな発言をするネプテューヌの頭をテラが軽く叩いた。

「バーカ。正義の味方だって最初っから良いヤツだったわけじゃねーよ。たくさん間違い侵してやっと真っ直ぐになれるんだ。お前も一緒だよ」

「そうよ。……で、何か変わったこととかあった?」

アイエフの問い掛けに、ネプテューヌはう~ん、と首を捻る。

「よく分かんないけど、昔のこと思い出したよ。いっぱいあったね。この旅が始まってから」

ネプテューヌは立ち上がる。

「少しだけど、女神様の気持ちも分かった気がする。こんな大変なこと、何も知らない人にどうこう言われたくないよね……」

「でも、今は分かったんだろう?」

テラは優しく問い掛け、それにネプテューヌはこくんと頷く。

「うん! 今ならもっと女神様達と仲良くできる気がするよ!」

「なら、もう一度交渉してみるです!」

コンパの一言に、ネプテューヌは大きく頷く。

「だね! ワンモアチャンス! いーすん? もう一回女神様達と通信できるー?」

そんなネプテューヌの軽快な声に、イストワールも嬉しそうに応える。

『はい! ジュンビはバッチリできてますよ?』

そんな答えにネプテューヌは「ぃやったー!」とか声を上げてズンズンとダンジョンを抜けようと歩いていく。

テラはそんな彼女に右手を差し出す。

「もう何処かに勝手に行ったりするなよ? パーティを抜けたりなんかしたら許さない、お前が言ったことだからな?」

そんなテラの言葉にネプテューヌは恥ずかしそうに彼の手を取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『モウ、離サナイ――』

 

 

 

――ゾクリ

 

ネプテューヌに悪寒が走り、テラの手を離す。

しかし、そんな彼女を見てポカンと呆ける彼を何度も何度も見直す。

「……っ」

「ん? どうした?」

見慣れたいつもの顔。

気のせいだったかとネプテューヌは少し疑問に思いながらも再び彼の手を取った。

「な、何でもない……アハハ」

そう言って笑うネプテューヌを見てテラは微笑を浮かべる。

 

 

 

 

 

 

「約束だからね!」

少女は他4人の少年、少女達の手を取り、己の手の上に重ねる。

「私達は今日から家族! みんな一緒だよ!」

屈託なく笑う彼女に、黒髪の少女は呆れたように声を上げる。

「一緒って……人間の家族でさえも一緒にいることは難しいのに私達みたいなのがずっと一緒なワケないじゃない」

そう言ってパシッと手を引っ込める。

しかし、彼女はそれを許さない。引っ込めた少女の手を無理矢理に引っ張り再び重ねる。

「ふふっ。一緒、とてもいい響きね」

「……一緒。悪くないかも」

「だな。家族、みんなこれからもずっと一緒だ」

黒髪の少女は恥ずかしそうに顔を伏せながらぼそっと呟いた。

「……一緒、ね」

 

 

 

 

『ネプテューヌ』は満足したように頷く。

 

 

 

 

 

 

「ずっと、ずーっと一緒だよ!!」

 

 

 

 †

 

 

 

ネプテューヌはドギマギとぎこちない話し方で女神達と話をつけている。

「えと、つまり何て言うのかなー……。記憶が戻ったって言うか……ね?」

なんともアバウトな説明であったが、やはり女神同士なにか雰囲気とかが違うのが通じたか今までとは態度も違った。

 

 

『へえ……。要は貴女がマジェコンヌに騙されて守護女神戦争を引き起こしたわけ?』

ノワールは見解を述べる。

「流石! ブラックハートは物分かりがよくて助かるね!」

『貴女……やっぱり舐めてる?』

通信越しでもその向こうでは拳を握っているような様が見て取れてテラは少し焦ったが笑えてくるような気もした。

『フン……。どうだか知らねえが、私はあんたらと行動するなんてまっぴら』

ブランはいつもよりも不機嫌そうな声で告げた。

ていうか完全に自分の本性を露わにしている。

『私も、いくらねぷねぷが記憶を取り戻したからと言っても協力する気にはなりませんわ。今はモンスターも増えてきて、自分の大陸のことで手がいっぱいなのですわ』

ベールはそう言い放つ。

しかし、ここまで来て引き下がれるか、とネプテューヌは食いつく。

「そう言わないでー! なんならお手伝いするから! グリーンハートが納得するまでモンスター退治もするから!」

『なんかもう駄々っ子みたいよ、ネプテューヌ……?』

ノワールはもう何もかも諦めたような声で返す。

埒があかない、とアイエフは溜息を吐きながらテラの背を押す。

「仕方ないわね……。できればこんな手を使いたくなかったんだけど……」

「? 何だ」

「こんぱ」

「はいですぅ。テラさん、えっとですね……ごにょごにょ」

コンパはテラに何事か耳打ちする。

次第にテラの表情が曇り、嫌な顔をする。

「……マジで?」

「マジで」

アイエフの言葉でテラはマジか……という感じに肩を落とし、イストワールに声を掛ける。

「スマン……。悪いけど俺の映像を飛ばすようにしてくれるか?」

「どうしてですか?」

確かにいきなりそんなことを言われたら疑問にもなるだろうと思うが、イストワールは承諾し、テラの映像をそれぞれの女神へ向けた。

『テラ?』

『あら、テラじゃない?』

『……テラ、何してるの?』

なにげに顔見知りのテラにネプテューヌ、コンパ、アイエフは疑問を抱きつつもその経緯を黙って見る。

 

 

 

「あの……手伝って貰えるか……?」

 

 

恐らく背景にキラキラとした装飾が浮かびそうなほどに、テラの潤んだ瞳+上目遣いは強力だった。

元々女顔っぽいのでこういうことについては何の違和感もなくこなせるのであったが。

 

とりあえず間違いなく、他女神どころかパーティのココロもがっちり掴んだところでテラはこくんと首を傾げながらもう一度尋ねる。

「あの……駄目か?」

『『『喜んで!』』』

イストワールは呆れかえりながらも何とか目標は達成できたと少し安堵の息を漏らした。

 

 

 

 

「恥ずかしかった……」

orzのポーズで項垂れるテラを横目にネプテューヌはずばずばと話を進める。

「とりあえずプラネテューヌに集合してから各大陸を回ってモンスター退治でおk?」

『『『おk』』』

全員が期待に胸を膨らましたような声で告げるのに対し、テラもアイエフもイストワールと同じくして呆れるような声で呟いた。

「「煩悩まみれの女神様だなー……」」

果たしてテラはどうして女神一行がこれだけで乗ったのか理解は出来ていないと思うのだがともかくとしてめでたく女神達をパーティに引きずり込むことに成功したわけである。

 

 

 

 

 

 

どうでもいいが、引きずり込むって嫌な言い方だな。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
3
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択