「はい。どこも異常なし」
いつもの定期検査。いつもの短い診察。
紫穂はそのあまりのそっけなさに検査自体意味があるのかと思い始めていた。
「もう少し真面目に見たら?」
「真面目だぜ。健康健康。驚くほどの健康体です」
「ふざけすぎ」
呆れたように言い放つ。久々に会ったと言うのに他に言うことはないのだろうか。
昔ほど怪我もしなくなり、賢木と会うのはこの定期検査ぐらいだ。成長して大人になりつつある自分を見てなんの感想も抱かないのか。
「真面目にねえ…と言っても他に見るところなんてないしなあ」
「あるわよ。これでも少しは成長してるのよ。色んな人から声掛けられるし…もしかしたらセンセイよりモテてるかもね」
ふふんと、鼻で笑う。言ってることは嘘ではない。確かに最近は身体の成長も著しく、ラブレターも山ほどもらった。告白されたことも数え切れないほどある。もう自分は賢木の知っている小さな子供ではないのだ。
「おーおー経験のない小娘が言う言う」
「な…!み…透視たの!?」
「透視なくてもわかるさ。まだガキくささがぷんぷんしてるぜ。まあ『お付き合い』はしてるだろうが途中で透視えちゃって幻滅ってとこかな?そんなんで挫折してたらこの先楽しめないぜー」
「…!」
図星を突かれ紫穂は絶句した。
確かに賢木の言う通りで透視えてしまうあまりそれ以上の関係に進めないという事が多々あったからだ。
「ああ、あとブラのサイズはもう少し大きめがいいんじゃないか?」
紫穂は賢木の言葉にはっと胸元を隠した。むろん服を着ているので見えるわけもないのだが…。
「せ…センセイの変態!!!!」
椅子に座ったままの賢木を突き飛ばし、逃げるように診察室を後にした。まだ子供扱いされていることを感じ、恥ずかしいやら悔しいやらでどうにかなってしまいそうだった。
「もう…!絶対いい女になって見返してやるんだから!!」
誰に言うでもなくつぶやきその場にへたり込んだ。
「おい、どうした。紫穂がすごい顔で出ていったぞ」
心配した皆本が診察室を覗き込むと椅子ごと転んだと思われる賢木が痛そうに身体を抱えていた。
「お…おい!」
「なんでもねえよ。ったくマセてきたなあ」
「紫穂のことか?何言ったんだよ。まったく」
皆本はその後のフォローが大変なんだよ。とつぶやいた。
「いや、追いつこうとしてる辺りが子供だよな。対等になったら応えてやってもいいけどな」
「何の話だ?」
「さあね。じゃ、お前は機嫌取り頑張れよ」
「…他人事だと思って…」
皆本は深いため息をついて賢木を睨みつけた。
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絶チル 賢木×紫穂小説。
なんとなく中学とか高校辺りの設定。