No.424269

《インフィニット・ストラトス》~二人の転生者~

菊一さん

第二十話です。なんやかんやで二十話……まだメインヒロインパートすら終わってないっていうねw
まあくわしくはあとがきで、ではどうぞ~

2012-05-17 20:48:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1506   閲覧ユーザー数:1417

第二十話 金髪の貴公子、銀髪の冷徹女子

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

「え?そう?ハヅキのってデザインだけって感じしない?」

「そのデザインがいいの!」

「私は機能的に見てミューレイのがいいかなぁ。特にスムーズモデル」

「あー、あれねー。モノはいいけど、高いじゃん」

翌日の月曜日。教室に入った俺たちが聞いたのは女子達のこういう話題だった。なんのことを話しているかって言うとISスーツのことだ。ついでにISスーうというのはISを装着するときに着るスーツのことだ。

「そういえば織斑くんと一ノ瀬くんのISスーツは何処のなの?」

「俺のは特注品でどっかのラボが作ったらしい。もとはイングリッド社のストレートアームモデルって聞いてる」

「俺のも似たようなもんだ」

実際はISスーツも自作した。義手などの都合上そうしないと具合がわるいのだ。普通のISスーツでもいいのだが、ISスーツというものは――

「肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行う。そして、ISスーツは耐久性に優れ、一般的な小口径拳銃程度なら完全に受け止める。まあ衝撃までは消えないけどな。こう言うふうに……」

俺は言うが早いか神様から送られてきたハンドガン――ベレッタM92FSを自分の腕にあて、発砲する。

火薬の炸裂音と硝煙の匂いが漂うのと同時に俺の腕が少し振れるが発射された弾は乾いた金属音を立てて床に落ちる。

「……な?」

「だからといってこんな所で発砲するな馬鹿者」

パァンッ!本日一回目の出席簿アタックが背後から食らった俺である。

「いくら法律上も国際上も《何処の国でもない場所》だとしても常識はわきまえろ。銃の携帯ぐらいは許すが無闇に発砲するものではない」

「はい、最善は尽くします」

少し話はそれたがとにかく俺は義肢をかなり人間に近くなるように作ったのだが結構違う部分もあるので特性のを作らなければならなかった。しかし他人にホイホイ話せるわけもなく、結果的に自作となった。

「わかればいい。さあ、SHRを始める。席に着け」

冬姉のその一言で立っていた女子が席に着く。

「と、その前に、本日から本格的なISの実習を行う、訓練機とはいえ気を引き締めて当たるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のISスーツを着てもらう、忘れた者は学校指定の水着を、それも忘れた者は……まあ下着で構わんだろう」

いや、確実に構うでしょう!?恐らく殆どの生徒が内心ツッコミを入れたはずだ。まったく冬姉は何を言ってるんだ。しかもコレが本気だから更に怖い……多分ないと思うが誰も忘れないでくれよ?俺は実習がある日は必ずと言っていいほど制服の下に着てるから大丈夫だ。

「では山田先生HRを」

「はい。え~、今日は皆さんに転校生を紹介します。しかも二人です!」

「え……」

「「「えええええええぇぇぇぇ!!!」」」

山田教諭の爆弾発言に一気に教室内が騒ぎ出す。どうもこの雰囲気から誰もその存在を知らなかったらしい。噂好きの女子が誰も知らないとは……しかしあれだな。一人は知っていたがまさか二人も来るとは。時期的に考えてドイツか?トライアル段階が終了したとは聞いてないが?

「失礼します」

「……………」

そると教室のドアが空いて、その転校生が入ってきた。それと同時に教室のざわめきも止む。

何故かって?

だってその内の一人が本当に《男子》だったのだから。

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

ふむ、やっぱりこの男子のほうがフランスの代表候補らしい。人懐っこそうな綺麗な顔立ちに濃い金髪。その髪を伸ばして俺と同じように首の後ろのほうで結んでおり、華奢とも取れる細身の体はスマートで、スラっとしている。どうも体つきは俺と似ているらしい。

見る限りでは《貴公子》っぽいな。さて、今のうちに耳を塞いでおこう。

そして代表候補生のシャルルが女子に何か聞かれたのか、少し喋ったすぐ後に黄色い声と衝撃が起こった。声でソニックブームって……ありえないだろ?

山田先生の声で収まったのか、俺もそれに合わせて耳を塞ぐのをやめる。しかしこのシャルル・デュノア、俺の昔の知り合いに似ていた。丁度成長していたらこんな感じなのだろうが……いや、まさか。そもそも性別が違う。しかし見れば見るほど似ている、ほとんど瓜二つじゃないのか?

しかし俺はばれない内に隣のもう一人に目線を写した。

こっちはシャルルと打って変わって冷めた感じをしており、人と距離を置くどころか寧ろ近づけさせない感じだ。銀髪の長髪を腰ぐらいまで伸ばしておりストレート。真っ黒なガチな眼帯。身長は女子の中でも低い部類に入るだろう。ついでにシャルルも男子としては小柄な方だ。

「……………」

腕組んだまま黙ってるって……自己紹介ぐらいしようぜ?それともコイツもセシリアみたいに常識がないのだろうか?しかしどこか俺や春華と似た匂いがする奴だ。

「……挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

冬姉が名前で呼んだ!?しかもコイツ――ラウラが教官って……じゃあやっぱりコイツはドイツの、しかも完璧な軍人だ。だから俺や春華と似た匂いがしたのか。

実は冬姉は昔、ある事件でドイツに貸しを作ってそのため一年ほどドイツ軍の教官をやっていた。おそらくラウラはその時の教え子なのだろう。

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」

「了解しました」

冬姉はめんどくさそうに言い、それにラウラは踵を合わせ、背筋を伸ばし、手を真横にあわせて答える。

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「………………」

教室の中に流れる沈黙。恐らく続く言葉を期待しているのだろうが俺の直観が告げている、「こいつはもうコレ以上喋らない」と。

「あ、あの、以上……ですか?」

「以上だ」

山田教諭が狼狽え半分、涙目半分という何ともすごい表情で聞くがラウラはさらりと返答する。

山田教諭、仮にも一教師、教師が生徒を恐れてどうするんだよ。ラウラもラウラだ。教師を少しは敬え……俺にも言えることかもしれんが。

そんなことを考えながらラウラを見ているとバッチリと眼があってしまった。ふむ、あんまりいい気分がしないが妙な親近感を覚える……軍人だからか?

しかしラウラが思ったことは違うらしく、怒りと嫌悪がこもった眼で見下してくる。

「!貴様が――」

そして俺の方に歩いてきて手を振り上げ――

ヒュン!ガシッ!――ブンッ――ガッシャーーン!!

俺に平手打ちを食らわせようとした、が俺はその手を掴みそのまま立ち上がる。膝を伸ばす力を利用し、同時にラウラの上腕を自分の肘ではさみ、そこを支点に一気に背負投た!

「がはっ!」

床に背中を強かに打ち付けられたラウラは息がうまくできないのと背中から来る強烈な痛みに咳き込むような声を出す。

俺は制服の上着を直しながら言う。

「ドイツの軍隊では初めて会った男性の頬を平手で殴る挨拶でも流行ってるのか?まったく、ドイツ軍の底の浅さが見えるな」

「私は……認めない。貴様が、あの人の弟であるなど……認めるものか!!」

ラウラはヨロヨロと立ち上がると、俺に襲いかかってきた。

コイツもしかして夏と俺を間違えてないか?しかし俺も冬姉の義理とはいえ、弟に当たるからな……何とも言えん。

とにかく俺は襲いかかってきたラウラを屈んで避けると同時に脚を払い、ラウラが倒れてきた横をすり抜ける。その際にこう囁く。

「正当防衛だ……恨むなら自分を恨め……」

そう言ったあと、俺はラウラの首の後ろを手刀でおもいっきり殴る。

「……………」

ラウラはそのままドサリ、とその場に倒れた。俺は顎の下の首筋に指を当て、脈があるか確認する。

「……生きてた、か。さすがだな、ほぼ死ぬ角度と強さで打ったんだがな……しかし、世話の焼ける試験官生まれの少佐殿だ……よっ、と」

俺はラウラの制服の首筋を掴むと同時に、ラウラが座る席であっただろう場所に放り投げた。大きな音がしたが気にしない。

「面倒をかけたな、すまない、一ノ瀬」

「全くです。一年間とはいえ織斑教諭の教え子だったんですから、教育はちゃんとしてください」

俺は静かに席に着く。くそっ、朝から胸糞悪い気分になっちまった。

「返す言葉もない。さて……あー……ゴホンゴホン!ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

さて、急いで移動しなくてわ。女子から変態の烙印は押されたくない。確か第二アリーナが空いてたはずだ、着替え始める前に移動を……

「おい一ノ瀬」

「なんでしょう織斑教諭?」

「デュノアの面倒を見てやってくれ。織斑に任せると色々と面倒事になりそうだからな。それにお前と組ませたほうがなにかと良いだろう。頼んだぞ」

そう言って冬姉は教室を出ていく。しょうが無いな。しかし夏よ、お前は信用されてないらしいぞ?普通はこういうのはクラス代表が任されるものだと思うんだが……

「き、君が一ノ瀬くん?僕は……」

「あ、っと自己紹介は後だ。女子達が着替え始める、早く行かないとヤバイ。夏も行くぞ」

「あ、おう!」

俺の言葉にシャルルは勿論、夏も何も言わずについてくる。さっきの冬姉の言葉に何も感じてないのか?それとも優先順位がちゃんとわかってるのか……恐らく両方だろう。

そう思いながら俺はシャルルの手を引き、夏と一緒に廊下を駆けていく。

「俺たち三人は実習の度に空いてるアリーナの更衣室で着替えるんだ。毎回コレだからな、事前に何処が空いてるか把握して全力疾走だから早めに慣れろよ」

「う、うん」

シャルルの方を見るとどうも落ち着かない様子だった。

「大丈夫か?もしかして、さっきの俺そんなに怖かった?」

「う、ううん。ちょっとビックリしたけど、大丈夫だよ」

俺はにっこり笑うと走りながら言う。

「そうか、普段はそんなに怖くないから。普通に接してくれていいし秋葉か秋で構わない」

「俺も一夏でいいぞ」

「わかった、秋、一夏。じゃあ僕もシャルルでいいよ」

俺たちは階段を下り、一階へ。ポケットから懐中時計を取り出し、時間を見ると授業開始まで五分もなかった。

「夏、前の教室から女子が多数出てくる。スピード上げるぞ、ついてこれるか?」

「ギリギリかな……」

「ついてこれなきゃ特別カリキュラムだ!」

「確かに!」

「え?……きゃあっ!?」

特別カリキュラム――それは遅刻したものに与えられる冬姉の地獄の特訓である。大体はISのシステムを起動しない状態で装着させてグラウンドを《遅れた時間(分)×一周》走らされる。詰まり五分遅れたら、ISという重りを装着してグラウンドを五周である。しかもこのIS、中には歩きにくいものもあり、専用機持ちでも地獄である。俺でも結構疲れる。

何が何でも損なので無駄な労力を使いたくない俺は、走る速度を上げる。女子が出てくる前に校舎の外へ!しかしシャルルって女子みたいな声上げるんだな。声変わりもまだ来てないみたいだし……まあ別に構わんが。

そのまま校舎の外から全力疾走で第二アリーナの更衣室へ駆け込んだ。あ~……つかれた。

「夏、シャルル……生きてるか?」

「僕は特に……」

「俺も大丈夫だ」

一番疲れてるの俺かよ?くそっ、体鈍ったか?鍛錬は最近欠かしてないんだけどな?シャルルを引っ張ってたからか?……意外と軽かったからそんなに疲れないと思ったんだが……持久力の問題か!?

「んなことより早く着替えよう。もう時間ギリギリだ」

「夏、お前が遅いんだよ」

俺は考え事をしながらも一気に服を全部脱ぐ。瞬時にその下に来ていたISスーツ姿になる。

「秋、お前下に着てたのか?」

「まあな、汗の吸収率もいいから下着いらずだ」

「そんなプールの授業じゃあるまいし、水着みたいな感覚で言うなよ。シャルルは普通に着替えてるよな……?」

「な、何かな!?」

シャルルの方に目を向けるとちょうど壁の方に向かってISスーツのジッパーをあげていたところだった。

「シャルルはどうやら着替えるのが早いらしい。さて、俺達は先に行くぞ」

「え!おい!待っててくれよ!」

「転校早々授業に遅刻させる訳にはいかないからな!じゃお先!」

「ごめんね、一夏」

例え他人からどう言われようが構わない……しかし!俺だって冬姉の怒りに触れたくはないんだ!!

 

俺とシャルは第二グラウンドに向けて走っている。

「……そういえばシャルルのそのISスーツって何処の?親父さんの会社の?」

「そうだよ、父さんの会社のISスーツ。ちゃんと元になったのはあるけどほとんどフルオーダー品」

「ふ~ん……最近経営難なんだろ?よくそんな時期にIS学園にやって来れたな。第三世代でも開発成功したのか?」

「ど、どうして経営難って知ってるの!?」

「一応デュノア社の株の大半は俺が持ってますから」

「……そっか、四月ぐらいに株を大量に買ったのは秋だったんだね」

ん?あれ?俺なんかマズイこと言ったかな?シャルルが少し暗くなってしまった。

「……秋はデュノア社のことどれだけ知ってる?」

「ん?ん~、今言った経営難のところだけだな。なんか暗いけど大丈夫か?」

「あ、ううん、ならいいの!ちょっと経営難なのが心配でね……」

「ふ~ん、そっか。でも気にすんなって、シャルルに何かあったら守ってやるからさ」

「うん、ありがとう、秋」

俺達二人は無事第二グラウンドに着いた。しかし授業開始ギリギリだったので最後尾に並ぶことになった。そして夏が到着。

「おつかれ、夏」

「しゅ、秋……覚えてろよ」

俺はそこで黙る。冬姉の授業で私語なんて話すと何があるかわかったもんじゃないからな。

そして事実セシリア、鈴、夏が話してる所に冬姉がやってきて出席簿アタックが炸裂する。自業自得だな。

「くうっ……何かとういとすぐにポンポンと人の頭を……」

「……一夏のせい一夏のせい一夏のせい……」

セシリア、鈴の順番に言うのだが……このセリフを聞いて鈴が病んだ人だと感じた人物は俺だけじゃあ無いはずだ。

「よし、今日は戦闘を実演してもおう。ちょうど活力溢れんばかりの十代女子もいることだしな――凰!オルコット!」

さっきの私語も含めれば適切な人選だな。そもそも冬姉に理屈は通用しない、まあこっちを折るときは理屈を使ってくるんだがな、そして最終手段の物理攻撃。

セシリアがなにか文句を垂れるがそれも冬姉には通じない。

「専用機持ちはすぐに始められるからだ。いいから前に出ろ」

ほらな?それでもぶつぶつ文句を言いながら前に出る二人。

「だからってどうして私が……」

「一夏のせいなのになんでアタシが……」

そんな二人を見て、冬姉が小声で囁く。

「お前らすこしはやる気を出せ――アイツにいいところを見せられるぞ?」

……って、なにいってんだこの人は!!まあ実害が俺にあるわけではないし、それに俺が惚れるどころか感心すらせんぞ。

「やはりここはイギリス代表候補生、わたくしセシリア・オルコットの出番ですわね!」

「まあ、実力の違いを見せるいい機会よね!専用機持ちの!」

しかしそんな俺の心境なぞ露知らず、やる気マックスになった二人である。俺としては飯を奢ってもらえるとかさ、そういう方がはるかに特だと思うが。

「ねえ秋、織斑先生はあの二人になんて言ったの?」

「俺もよく聞き取れなかったんだが?」

シャルルと夏が俺に聞いてくる。お前らが聞こえなかったのが俺ならよく聞こえたとでも思ってるのだろうか?まあ事実聞こえたけれども。しかしそれをマトモに言うわけにもいかず、こう答える。

「さあ?大方スイーツでも奢るとか言ったんじゃねえの?ほら、女子ってお菓子とかスイーツ好きだし?」

「ああ、なるほど!秋て頭いいよな!」

「でも織斑先生みたいな人がそんなこと言うかな?」

シャルル、世の中には知らなくていいことっていうのは結構あるんだ。まあどっちかって言うとこの場合は知って欲しくない、だけどな。

「それで、相手はどちらに?わたくしは鈴さんとの勝負でも構いませんが」

「ふふん。こっちの台詞。返り討ちよ」

「慌てるなバカども。対戦相手は――」

キィィィン……

冬姉が言おうとした瞬間、まるで空気を裂くような音がしたかと思うと。何かがこっちに向かって飛んで――いや、突っ込んでくるのが見えた。

「ああああーっ!ど、どいてください~っ!」

よくみれば緑色の髪をして大き目のメガネをかけたきょにゅ……んんっ!まあ我らが副担任、山田教諭がISを纏った姿でこちらに突っ込んでくるのだ。ってかこの人マジで教師ですか?あんな操作でよくIS学園の教員になれたものだ。

「しょうが無い。IS緊急展開!」

俺はISをストライク、ランチャーパックの状態で一瞬にして展開し、山田教諭に照準を合わせた。

「少し照準をずらせば……いっけぇーーーー!!」

俺は両脇に装備されたインパルス砲二門を発射した。それは山田教諭に直撃せずに、腕一本分ぐらいをかすった程度だった。しかし当たったお陰で速度はだいぶ落ちた、が完全に落ちたわけではなく、そのまま突っ込んでくるのだが――

「……ふんっ!!」

俺はそのままタイミングを合わせて山田教諭の突っ込んできた頭を片手で鷲掴みにすると、そのままスイングして丁度冬姉の隣に落ちるように投げた。見事その地点の少し前の地面に激突、そのまま滑って冬姉の隣で止まった。

「う~……アイタタタ、い、一ノ瀬くん、もうちょっと優しく止めてください!」

「受け止めてラッキースケベなイベントが発動なんかしたら俺の命が危なかったんで」

ぶっちゃけ夏を盾にして逃げようかとも思ったんだが、夏に何かあったら今度は箒に殺される。というわけでとっさに思いついた今の方法を実践したということだ。

ついでにラッキースケベのようなイベントが発動した場合、セシリアのBT兵器と鈴の双天牙月、並びに龍砲の最大威力をお見舞いされていただろう。まあ勿論そんなので墜ちる俺ではないのだがな。

「まあいい。それより山田先生、ISのシールドエネルギーの残量の確認を」

冬姉は今の事態にも動じず、冷静にそういう。

「あ、はい。え~っと……ええっ!の、残りが半分とちょっと!?」

当たり前だ。直撃すれば絶対防御を発動するかどうかぐらいの威力だからな。リミッター解除すれば消し炭だ。

そして山田教諭のその一言が発端となり、一組と二組の女子が騒ぎ出す。

「一撃でシールドエネルギーの半分を!?嘘でしょ!?」

「そういえば確かこの前の事件で一ノ瀬さんが凄い一撃でアリーナのロックされてた扉を吹き飛ばしたとか!」

「ええ!?じゃあもしかして校舎の一部を壊したのってもしかして一ノ瀬くん!?」

「そもそも一ノ瀬くんのISって何処が作ったの!?篠ノ之博士のお手製とか?」

「いやいや、それはないでしょ。篠ノ之博士は現在どの国家も全力で探してる指名手配犯みたいなものなんだもん。そんなはずはないわよ」

まあみんなが驚くのは無理もない。俺のランチャーやその他の武装は永久機関の核エンジンから動力を得ているんだ。シールドエネルギーは無限だし、リミッターを付けた状態でも十分現存するISの武装を遥かに凌駕する。ってか片腕の装甲が吹き飛んでる時点で気がつこうぜ?

「静まれバカども。しかしやはりか……秋葉と春華、お前らのISは強力過ぎる、後で職員室に来い。それから秋葉、山田先生のISがこの状態だ、代わりにお前が二人の相手をしろ」

「お、俺がですか!?」

「そうだ、そもそもお前があんな止め方をしなければ……」

「わかりました……でも二人相手でやるんです、俺が勝ったら500mlの飲み物一本奢って下さいよ?」

「……わかったから早く行け」

「はいはい」

俺は少し浮くと、セシリアと鈴の隣に移動し、降り立った。

「さて……それじゃあやろうか?」

「あの、二対一で……?」

「いや、さすがにそれは……」

「安心しろ、今のお前らじゃあ二人がかりでも俺に勝てないし、ハンデ替わりと言ってはなんだが機体を変更する」

俺はそう言うとストライクとランチャーを粒子化して、真っ黒な機体――ネロブリッツへと機体を変えた。

「ちょっと秋!あんたねぇ……って、え?」

「そんな……ISが変身した!?」

鈴は俺の言葉に怒りそうになったがすぐに冷めて、ISの形状が変化したことに鈴とセシリアは勿論、生徒全員、教師の二人すら驚いていた。

「何も難しいことじゃない。ISの基礎フレームをそのままに外装とシステムをそのまま粒子化させて入れておけばいいんだ。要は武器か外装と武装、システムかっていう違いだけだ」

「馬鹿言うんじゃないわよ!そんなの拡張領域をフルに利用したって無理に決まってるでしょう!!」

「ん~、でも事実ここにあるんだから……いや、もういい。取り敢えず戦いが終わったら説明してやるよ」

「……わかったわよ」

鈴は俺の呆れたような言葉に渋々ながら従った。そして俺は頭の装甲を展開して全身装甲にした。

「話はまとまったな……では、はじめ!」

冬姉の号令と同時に俺たち三人は飛翔する。

「さてと……三十秒だ。三十秒俺はここから動かない、その間お前らは俺に攻撃し放題だ」

「随分舐めてくれるのね……後で吠え面かいても知らないわよ!」

「いいですわ……三十秒で終わらせて差し上げましてよ!!」

俺の言葉に二人がそういった瞬間、鈴は双天牙月を振りかぶって突進してくる、セシリアはビット攻撃をしてきた。それでも俺は宣言通りそこから動かない。しかしセシリアのビットは右腕の盾と一体になっているビームライフルで一気に二機落とし、残り二機はビームを盾で防いだあと、同じように落とした。

「そんな!攻撃はしないんじゃあ!?それにビームを防いだようでしたがシールドエネルギーが全く減らないなんて……」

「いい忘れていたが、動かない、と言っただけでこちらからの攻撃はある。しかし面倒だ、これから残りの時間、攻撃はしない。あとビームをシールドで防いだが何故シールドエネルギーが減らないかというと、シールドエネルギーを纏わせていないから。まあ盾だから当たり前だ。それにこの盾は対ビームコーティングがしてあって実弾や斬撃は勿論ビームを屈折、消滅させられる」

「それじゃあ他の部分なら効くのよね!!」

突っ込んできた鈴が俺に斬撃と衝撃砲の龍砲を食らわせる……がそれでもシールドエネルギーは減らない。

「鈴、いい事を教えてやる。俺のISの装甲はフェイズシフト装甲――PS装甲を発展させたヴァリアブルフェイズシフト装甲――VPS装甲っていうのを使っていてな、装甲自体に電圧をかけて物理的攻撃、実験や実弾の攻撃、ミサイル系やグレネードランチャー系、殴る蹴る、衝撃関連をも打ち消せるんだ。そしてヴァリアブルフェイズシフト装甲は更に攻撃が当たる瞬間にそこの装甲にエネルギー配分を増やすという装甲でな、たとえお前の龍砲の最大出力でもシールドエネルギーは減らねえよ……」

「そんな……それじゃあ……」

「私達には……攻撃手段がない……」

「まあ、簡単に言うとそういうことだ……」

 

おいおいおい!マジかよ!秋のISには何も効かないって!

オープンチャネルの通信で秋達の会話を聞いてた俺達はまた騒ぎ始めた。

「IS全身に物理攻撃が効かないなんて……卑怯すぎるだろ!?」

「落ち着いて、一夏!それでも攻撃すれば電圧を流して無力化するんだし、ビーム攻撃が全く効かないわけじゃない。あの装甲に流す電圧は恐らく膨大なものだよ?恐らく絶え間なく流し続ける連続攻撃を二人がすれば手は……」

「そ、そうだな……ふう、悪いなシャルル」

「その通りだ、デュノアの言った通り物理攻撃が聞かないとしてもその時に必要となる電圧や電流は相当量のはずだ。詰まりはエネルギー切れを起こせば防御手段は疎か攻撃手段をも失うということだ」

千冬姉の言葉に生徒たちも「なんだ……」とか「そうよね……」とか少しづつ落ち着きを取り戻していった、がそこに爆弾的発言が投擲された。

「でも、それは確実に無い……」

意外にも言葉を発したのは春華だった。

その春華にはいつも見せる人懐っこい笑顔ではなく、真剣な眼差しをした表情で上空の戦闘を凝視し続けていた。

「一ノ瀬、今の発言は本当か!?」

「はい。恐らくお兄ちゃんがあるシステムを解除しなければエネルギー切れは起こりません」

「……説明しろ、春華。お前達のISはなんだ!?」

千冬姉が尋常じゃない声で春華に問いただす。恐らくそれほど危険な子をものということなのだろう。そして春華は戦闘から目を離して、千冬姉のその言葉に笑顔で言う。

「それは、お兄ちゃんが戦闘から戻ってきてからのほうがいいと思います」

「……そうだな。しかしコレではもう隠し様がないぞ、少なくとも世界規模の騒ぎになるな」

「そうですね」

一瞬で少し落ち着きを取り戻した千冬姉の言葉に、春華はそう言うとまた上空を眺め始めた。俺たちも見上げる。そろそろ三十秒が過ぎる頃だ。

 

「はあ……はあ……ああ、もう!ビームは防がれるし、残りのBTのミサイルはそのVPS装甲とかいうので防がれますし、全然減りませんわ!」

「ちょっと!愚痴ってる暇があるなら攻撃し続けなさい!あの電圧流す装甲がそんな長時間持つはずないわ!それどころか攻撃を当て続ければいつかはエネルギー切れで勝負は着くはずよ!」

「残念がら、それはないな……」

鈴とセシリアはあれから攻撃を行なっていたが一向に俺のシールドエネルギーを減らせなかった。そして今――

「ちょうど三十秒経った。これから俺は移動、並びに攻撃を行う。そして次にお前達が俺の姿を見るのは戦闘終了の後だ」

「ちょっと、それってどういう……!!」

「秋葉さんが……消えっ!」

俺が発言し終わったあと、俺は姿を消した。光学迷彩という機能はISに付けられるのだが戦闘中につけても戦闘のせいでバレてしまうのだ。しかし俺の光学迷彩は違う。

「《ミラージュコロイドシステム》……可視光線を歪め、レーダーでも探知できないガスを磁力でIS全体に纏う。そうするとスラスターを使わすPICで移動すれば絶対にバレることはない。水の中ではガスが剥がれるということもあるが残念ながらここは空気中だ。これで目標を捕らえられない二人の攻撃は殆ど当たらないということになったな。さて、それじゃあそろそろ行くぞ?」

その瞬間、俺は鈴の背中を背後からビームライフルで撃つ。鈴はすぐさまそこを龍砲で撃つが当たるようなヘマは俺はしない。

「くっ!一撃でシールドエネルギーをごっそり持っていかれたわ!恐らく威力はセシリア、アンタのライフルの数倍よ……」

「そんな!それじゃあ十発も当たればシールドエネルギーはゼロに……きゃあ!!」

今度はセシリアの側面からライフルを撃つ。

「そう、詰まり普通に戦っていても勝てる確率は凄く低かったということだ」

「秋……アンタ意外と悪趣味ね。幼気な十代女子を嬲り殺しみたいにするなんて」

「おいおい、コレでもまだ全力は出してないし恐らくもっと上のランクのIS操縦者なら簡単に見破ると思うぜ?それにこのISは例えどんな事があってもお前らを守るためだ、なにも嬲り殺しみたくするわけじゃない?俺がこうやって説明してるのだってお前らに勝機を生み出している証拠だ?ちょっとは考えてみたらどうだ?」

まあ恐らく無理だろう。レーダーは疎かハイパーセンサーにだって俺は映らない。それに攻撃手段がなさすぎる。闇雲に攻撃すればこっちにダメージは多少はあるだろうがあっちのエネルギーが切れるのが恐らく先だ、そんなことがわからない二人ではない。しかしそれでも方法がないわけではないのだが……思いつくかどうか……

「そうね、アタシたちに勝ち目はないわ……でも磁力でそのガスを引っ付けてるんだったらVPS装甲は使えてないはず、オマケに磁力の発生のため電力は流し続けてるはず。なら後は攻撃を避けまくってエネルギー切れを待てばいい!そして攻撃の避け方はロックオンの警告と勘!」

「ふむ、よくわかってるじゃないか。しかし残念。このISのエネルギーが尽きることはまずない。そして二つ目は――」

俺は真上から鈴を狙い打つ。

「があっ!!」

「俺はISの補助を受けずに攻撃している、故にロックオン警告はならない。それどころか反動制御すら自分で相殺しているんだ!」

「そ、そんな……」

「じゃあそろそろ終わらせるか?ギブアップと俺の攻撃……第三の選択、どれがいいかは選べ」

「……前者の二択、それ以外方法はないじゃない。私は最期まで戦っていたと思いたい……アンタの攻撃で」

「わたくしも同じのを……」

「わかった……じゃあいくぞ!」

俺は二人にビームライフルを放っていく。

 

「秋が反動制御を切っている!?そんな……それじゃあ射った瞬間肩が吹き飛ぶんじゃあ!?」

「それはないよ一夏、ISの装甲はあるんだし、それを相殺する行動を取ればそう難しいことじゃないよ?ただ……それをやるには相当な技術がいるけどね……」

私は後ろの一夏とデュノアの話を聞きながら思う。反動制御だけならまだいい、しかしそれ以外のことも秋はやっているのだろう。私には秋が――あのISがどういう物かだいたい想像がついた。

やがて模擬戦の勝敗が着いて、鈴とセシリアを抱えた秋が地面に着地する。その瞬間ISを直ぐ様解除し、戦っていた二人に近寄る。

「おい!大丈夫か!?」

「大丈夫に決まってるでしょ!?第一アンタが攻撃でボコボコにしたんじゃない!!」

「いや、まあそうだけどさあ……」

「大体ですね、あのような方法を取らなくてんも良かったのではありませんか!?自分の姿を隠すなど……卑怯にもほどがあります!」

「いや、俺は卑怯なんかしてないぞ?」

「「どの口が言う!(言いますの!)」」

「凰、オルコット、そのぐらいにしろ。事実私は模擬戦の停止をしなかった、つまりそれは不正は無かったということだ……しかし一ノ瀬、説明はしてもらうぞ。そのISの事を」

私がそう言うと秋は「はぁ~……」とため息をついた後、こういった。

「詰まる所、俺の秘密も喋らなければ納得は行きませんよね?」

「当然だ。こんなISを作れる人物、日本は疎か世界中探しても二人しかおらんだろうが」

「……わかりました。しかし授業はいいんですか?結構時間掛かるとは思いますが?」

「今日一日はISの実習だ。時間はたっぷりある。気にする必要はないさ」

私がそう言うと秋は決心したように話し始めた。

 

やれやれ、まさかこんなことになるとは……思いもよら無かったワケじゃないが、まあ仕方ないか。

「それじゃあ話すけど……その前に座ろうか?皆疲れるだろうし……ん、じゃあまず俺の正体から明かそうか」

「はいは~い、正体ってなんですか?」

座ってる生徒……恐らく二組の子が手を上げて聞いてきた。あの、今からそれを話すんだけど?

「……あのね、質問は説明が終わってから聞くから……取り敢えず喋らせてもらえるかな?」

俺がそう言うとその子は元のように戻った。よしコレで落ち着いて話せる。

「ん~と、まあぶっちゃけて簡単に言うと一番初めにIS作ったのは俺です」

俺は苦笑いして、頭を掻きながら言う。

恐らく一組の女子達は今日で何回驚くことになるだろうか。

 

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どうも、作者の菊一です。気づけば二十話、最初に投稿した作品の閲覧数はいつのまにか二百超……嬉し限りですね^^ただこれで自分の更新速度がもっと上がればいいんですがね、駄目駄目な作者ですみません。

さて、やっとシャル編に入って来ましたwラウラは出来ればシャルの後にやりたいな~……だって同時進行などという難しいことは自分はできないですからwそれはそれで問題なんですがねw

しかしこの話、読み返してみると小説じゃなくて文章の羅列状態……読んでて凹みます。ああ、たぶん閲覧数伸びないんだろうな~、などとあとがきを書きながら思っておりますw

 

さて、次回の作品の二十一話……正直言って期待しないでください。こんな状態ですから何時上げるかわかりません(まあ今月中には上げると思います)

次回の話は過去話をちょろっと入れるお話になります。前回みたいに外伝でもいいかな~って思ったんですが短い気がするので二十一話にはいると思います。

 

あと設定のほうで書き忘れた部分があるのでちょろっと改変してあります。尚今後思いついた設定はどんどん突っ込んでいくのでこういうことが増えたり、初期の設定が役に立たなかったりするかもです。現時点ではそんなことはないとは思いますが^^;

尚、今回手直ししたのは、秋葉の外見容姿のところです。

ではまた


 
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