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超次元ゲイムネプテューヌ『女神と英雄のシンフォニー』チャプターⅠ第2話『思い立ったら世界を救おう』

月影さん

1話を投稿し、翌日には既にコメントが。ありがとうございます。拙い文章ですが、頑張ります

2012-05-12 00:20:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1837   閲覧ユーザー数:1787

「うぅ……ここ、は?」

 

 ゲームをプレイしようとして、変な場所で目を覚まし、何かが直撃してまた気絶。何か気絶してばっかな気がするな、と考えながら再び体を起こすとタオルケットが零れ落ちた。辺りを見渡すとハート柄の壁にぬいぐるみと言った如何にも女の子の部屋と思わしき部屋にいた。というかこれで部屋の主ががたいの良い大男なら俺は全力で逃げる。

 

「良かった。気がついたですね」

 

 なんて思っていると部屋のドアが開き、大男がっ!……という事はなく、薄いオレンジ色のロングヘアーにカチューシャ、袖が解れたニットの服を着た少女が立っていた。その手には救急箱が握られている。

 

「気分は如何ですか?」

 

 その少女は手に持っていた救急箱をテーブルの上に置くとこちらをおっとりとした雰囲気にピッタリなふんわりとした笑みを浮かべながら覗き込んで来る。俺は自分の体の状態を確認し、最後に手を開いたり閉じたりして特に異状がないのを確認すると再び彼女と目を合わせる

 

「ああ、問題は無いみたいだ。すまない、助かった」

 

「それは良かったですぅ。連れの方もまだ目を覚まさないみたいですし、ゆっくりしていってくださいです」

 

「連れ?」

 

「違うですか? 一緒に倒れていたのでてっきりお仲間さんかと思ったのですが」

 

 そう言って彼女はベッドに目を向けるので、同じようにベッドに視線を向けるとそこには一人の少女が眠っていた。ソファーから立ち上がり少女に近づく。薄紫の髪にゲームコントローラの十字キーの形をした髪飾りをした少女、間違いなくあの時落ちてきた少女だ。

 

「いや違うよ。彼女は――」

 

 そこで俺の言葉を遮る様に目覚まし時計がなり始めた。すると少女が少しだけ表情を歪め、ベッドの中でモゾモゾ動き始めた

 

「うー……うるさーいっ!」

 

「うぉっ!? あ、あっぶねー……」

 

 かと思ったら、いきなり目覚まし時計を俺に向かって全力投球。そしてそれを辛うじてキャッチ。というか我ながらこの至近距離で良くキャッチできたものだ。ずば抜けて反射神経良い訳でも無いんだが

 

「あれ? ここ何処? 私の部屋?」

 

 と、そこで少女の方も目を覚まし、寝起きでまだぼんやりとしているらしく目をこすりながらさっきの俺同様に部屋を見渡し、彼女と目が合った

 

「あ、目を覚ましたですね? おはようですぅ。と言っても、もうお昼をまわってるですよ?」

 

 確かにキャッチした時計を見ると既に正午を過ぎている。というかこの時間で鳴ったって事は俺らを見つけなかったら昼まで寝てるつもりだったのか彼女は?

 

「えーと。……私の部屋じゃないよね。アナタの部屋? 何で私はベッドに寝てたの?」

 

「そう、それは昨日の夜の事ですぅ……ベランダで夜空を見上げていたら、一筋の流れ星。……それがアナタだったです」

 

「わたしだったですか……なんか一気に展開はしょられた気がする。でも空から降って来たの?」

 

「多分です。最初はてっきり二人して降ってきたものだと思ってたですが」

 

「えっ、二人?」

 

「はい、彼と一緒に気を失っていたのでこうして部屋まで運んだです」

 

 そこで少女は漸く俺に気がついた。

 

「えっと……君も私と一緒に空から降ってきたの?」

 

「いや、降ってきたのはあんただけだ。俺の真上に降ってきたもんだから直撃喰らって気を失ったんだ」

 

 目覚まし時計を元の位置に戻しベッドの縁に腰を降ろす。すると、少女は少し気まずそうに苦笑を浮かべ軽く頭を掻く

 

「そうだったんだ……いやーごめんごめん。私も気を失ってたから落下地点の調整が出来なかったんだよねー」

 

「あの勢いじゃ意識があっても落下地点なんて変えれないだろ……」

 

 あんな隕石の様なスピードで好きな位置に落下できる奴なんていたら怖いもの見た見てみたい

 

「時にさっき部屋まで運んだって言ってたが一人でか?」

 

 特別体重が重いほうでは無いがやっぱり女の子が一人で男を担いでいくのは難しい筈だ

 

「わたし、看護学校に通ってるです! 研修でも患者さんに見立てた人形を運んだりするですから、慣れてるです。わたしは、コンパ、コンパ=イルハートっていうです。えーと……。」

 

「俺はケイト……ケイト・リンドブルムだ」

 

 少し悩んで、とりあえずエディットキャラの方の名前を名乗る事にした。名前の雰囲気からして恐らく漢字の名前は少ないかもしれないとも予想できたからだ

 

「あっ! わたしはネプテューヌ!! コンパとケイトね、じゃあコンちゃんとかケーくんとかかな……。いっか、コンパとケイトで」

 

「よろしくです! ねぷりゅーにゅさん! ねぷりゅー……ねぷてーにゅ……」

 

「あーちょっと言いにくいよね。自分でもそう思うもん。いいよ、ネプ公でもねぷねぷでもネプえもんでもー」

 

「じゃあ、ねぷねぷって呼ぶです。よろしくです! ねぷねぷ、ケイトさん」

 

「ああ、よろしくな。コンパ、ネプテューヌ」

 

 互いに自己紹介を終えるとコンパは救急箱を開く。

 

「そう言えばねぷねぷ。運んでる間に気付いたですけど、色々なところ怪我してたです。ちょっと診てあげるです」

 

 するとネプテューヌは自分の腕や顔を確認し始めた。確かに擦り傷が至る所にできている。

 

「あーホントだ所々擦りむいてる。ありがと! そう言えば看護学校生……だっけ。じゃ慣れてるよね」

 

「そうですけど、でもまだ入学したてで。……それにわたし、結構不器用なんです。包帯巻くのも苦手で、よく絡ませちゃうです。さて――」

 

 やがてコンパは包帯と消毒液を取り出すとこちらに目を向ける

 

「これからねぷねぷを診るです。服とかも脱いだりするですので――」

 

「判った。なら、俺は部屋から出るから終わったら呼んでくれ」

 

 コンパの意図を理解し俺は一端退室、部屋の入口付近の壁に寄りかかる。一人になった所で今後の事に頭をめぐらせる

 

「さて、これからどうするか……」

 

 勿論、親友を探すという目的はある。状況的にアイツも此処に居る可能性は高い。しかし、同時に此処は地球ですらない可能性が高い。でなければ俺自身の突然の変化について説明がつかない。仮に気絶後に誰かに着替えさせられ連行されたにしても、こちらのサイズに合わせ、しかもプレイヤーのエディットに合わせてすぐさま服を用意できるのか? ならば何らかの力が働いて自然と変化した。と言う風に考えるほうがファンタジー系ウェブ小説愛読者の俺としては納得できる。もしここが本当に異世界、厳密にはゲームの世界ならば一人で歩き回るには不安要素が多すぎる

 

(現地人の仲間が居れば問題ないが、そう言うのも居ない……)

 

 そう言うのが居ないのだから未開の地、なのだから……

 

「さて、どうするか……」

 

 額に手を当てて、ぼやいていたその時――

 

「ん? ん? んー??! そ、そんな一生懸命巻かなくったっていいよっ!? もっと丁寧に……ゆっくりでいいから」

 

「でも、動いている内にほどけちゃったら危ないです。踏んで転ぶかもしれないですぅ」

 

「ねぷっ!!?? あー! おーっ! うえーっ!! 折れるーっ! 締ーまーるーっ!! ……ガク」

 

「ね、ねぷねぷ? ……キツすぎたです!! 気をしっかり持つです、すぐにほどいて巻き直すですからっ!」

 

「だから締まるって! 余計に絡まってるーっ! 解こうとしなくていいから! ハサミ……はーさーみぃっ! 手に持たせてっ! 自分でやるっ!」

 

 なんて、騒ぎが部屋から聞こえてきたもんだから、俺は壁から離れドアの前に立ち、しばし呆然。

 

「不器用……?」

 

 今の会話からそんなレベルじゃ済まん気がする……

 

 

 

 

 

「そう言えばさー……縛られてる間、ずっと考えてたんだけどココって一体何処なの?」

 

 結局、あの後自分で治療したらしく、多少不恰好ながらも頭や腕に包帯を巻き、頬に絆創膏を貼ったネプテューヌが、ベッドに座ったまま、こちらも気になってた事を訊ねた

 

「し、縛ったんじゃないです、巻いたんですぅ! 此処はプラネテューヌの丁度真ん中。中央市街の端っこです」

 

「「プラネテューヌ……?」」

 

「はい、此処は守護女神様の居る神界から隔てられた下界の大陸の一つ、プラネテューヌですぅ!」

 

 守護女神、神界、プラネテューヌ…とりあえずこの段階で此処が地球という選択肢は木っ端微塵になった

 

「一つってことはだ、大陸は他にもあるのか?」

 

「はいです。4つの大陸が、空に浮かんでて互いに近づいたり、近づかなかったりしてるです。あの……もしかして、覚えてないですか?」

 

「うん、全然記憶になーいっ! プラネテューヌ? 大陸? もう、さーっぱり!」

 

 コンパが俺にも確認するように目を向けてきて、俺もネプテューヌに同意するように首を横に振る。騙しているようで、というか本気で騙しているので申し訳ないが異世界から来たと言って変な目で見られるのもキツイので、覚えてないふりをする事にした。

 

「さては……記憶喪失ですね? 初めて見たです。……打ち所が悪かったのかもしれないです」

 

「こういう時に効くお薬とかは無いの? 包帯はあったでしょ?」

 

「流石に記憶喪失に効くお薬はないです。でも多分一時的なものですぅ。放っておいてもその内思い出すはずです! 病は気からってお爺ちゃんが言ってたです。変に考え込むと余計に忘れちゃうですよ? 果報はノンビリ、寝て待つです」

 

「寝て待つ……そう言えば何か寝てる間に誰かに大切な事を頼まれたような……」

 

 コンパの一言にネプテューヌが、黙りこむ。かと思うとさっきまでのハイテンションから一変、真剣な表情で

 

「そう! 誰かに必死に助けを求められていた気がする! ……夢の中で!!」

 

「それこそ、ただの夢なんじゃないか?」

 

 夢の中なら何が起こっても不思議じゃない。誰かに助けを求められることも珍しくない

 

「分っかんないよー? あんな夢はじめてだもん! きっと遠い国の誰かがテレパシーで助けを求めたんだよ!」

 

 何とも想像力の逞しい奴だな、と思っていたがコンパは違うらしく、少し俯きながら胸に手を当ててその目を伏せている。

 

「助け……そうかもしれないです。実は今、プラネテューヌに限らず世界中がモンスターの出現によって脅かされているです。最初は軍隊が出動したりもしたですがモンスターの数は増える一方。結局どこも、守りに徹するしかなくなってるです」

 

(モンスター、ね。やっぱ居るのか……)

 

 当然、モンスターと戦ったことなどないし、そんな技術もない。つまりモンスターがなんとかなるまで一人旅は無理か……

 

「という事は!? 世界の何処かに、そのモンスターを生み出すボスが居るんだね? きっとそのボスを倒すのが、私に託された使命なんだ!」

 

 突然ベッドから立ち上がり、両手を強く握ってネプテューヌはハッキリと断言。幾ら記憶が無いとは言え、ホントにものすごい想像力だな

 

「まぁ、記憶喪失ならその可能性も否定出来ないが、幾らなんでも無茶過ぎるだろ。本職の軍隊ですら勝てない相手なんだろ?」

 

「だからこそだよ! 待ってったって誰もモンスターなんか倒してくれないよ。でも、誰かがやらなきゃいけない事なんだよ? なら、私がやらなきゃ! それに気付いた私が行動しなきゃだよ! えっと……思い立ったが吉日って言うでしょ?」

 

 迷いも、そしてなんの疑いも無いハッキリとした意思を宿らせてネプテューヌは強く自信の思いを訴える。そんな姿が少しだけカッコよく見えた。そしてコンパの方も相変わらず、俯きがちなままだが何かを悟ったかのように目を大きく見開いている

 

「お爺ちゃんも言ってたです……そうです! わたし、いろんな人を助けたくて看護師さんを目指したはずです。それなのに怪我で困ってる人は助けてもモンスターで困ってる人は助けないなんて……そんなの本末転倒です!!」

 

 そして顔を上げる。本末転倒の意味それは『物事の根本的なことと、そうでないこととを取り違えること』

 

「いや、怪我で困ってる人を助けることこそ、看護師の本分だろ……」

 

 なんてツッコミはハートに火のついたコンパには聞こえておらず、目を輝かせながらネプテューヌの手を取る

 

「判ったですねぷねぷ! 非力ながらも、お手伝いするです! 一人よりも二人の方が可能性も二倍です!!」

 

 剣が二本あれば強さも二倍理論。某響き合うRPGの主人公の迷言をここで聞く事になるとは……

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 部屋のソファーに腰をおろし、本日何度めかになる溜め息。あの後二人から、俺はどうするか訊かれ、結局二人に着いていく事にした。今はコンパが別室でモンスターの居そうなダンジョンを調べている。……ネットで

 

(最近のダンジョンはネットで調べられるもんなのか……)

 

 なんて、考えるも気分は晴れない。モンスターなんかと戦えるのか、その不安は大きくなる。なら何で同行するのか?と訊かれれば、その理由も不安。見ず知らずの場所、物語の主人公の様に、一人でもある程度直ぐに順応出来るはずもなく、とりあえず誰かと一緒に居たかった。

 

(はぁ、情けな……)

 

 親友を探しに来たと言うのに、自分の事で手一杯という現状。更に溜め息が出そうになったその時――

 

「どうしたのケイト? さっきから元気無いよ?」

 

「ネプテューヌか……」

 

 いつの間にかネプテューヌが隣に座っていた。下から覗き込むように俺の顔を見上げている

 

「モンスター退治がそんなに不安? 大丈夫だよっ! ほら、三人寄れば文珠の知恵っていうでしょ?」

 

 本気で大丈夫だと思っているのか、もしくは何も考えていないのか。どちらにしてもネプテューヌノ顔に不安は無い。そして今はそんな彼女が少しうらやましく思える。記憶喪失か異なる場所からやってきたかの違いこそあれど俺もネプテューヌもこの世界、ゲイムギョウ界の事は全然判らないのは一緒だ。その事でこっちは不安だらけだというのに……

 

「……なぁ」

 

「何?」

 

 だからこそ気になった。

 

「ネプテューヌは不安じゃないのか? モンスター退治じゃなくて……記憶がないこと、自分が何者なのかすらわからないんだぞ?」

 

 知り合いは居ないも同然、世界の事は全く判らず、ネプテューヌに至っては自分がどんな人間かも不明瞭。だというのになぜそんなにも気丈に振舞えるのか?ネプテューヌは僅な間、ケイトを見詰めると少し困った様な笑みを浮かべ視線を前に戻した

 

「そりゃあ、少しは不安だよ。でもさ、不安がってるだけじゃ何も解決しないもん。だったら、下手に考えるよりは今、自分のやりたい事を一生懸命頑張ってみようって。そうすれば、見えてくる事もあるかもだし、考えるのはそれからでもいいでしょ?」

 

「考えるより、まず動けってか」

 

 確かに、親友を探すならモンスターの問題は避けて通れない。ましてや親友を探さない、と言う選択肢も元から俺の中には存在してない。アイツを追ってここに来てしまった以上、後には退けないのだから、どの道腹を括るしかない。ダメなら、その時はその時考えればいい。つまりそういう事なのだろう。気がつくとあれこれ悩んでいた自分は居なくなり、完全に消えた訳ではないが不安もかなり小さくなり、まずはやってみようと思える様になっていた。

 

「そうだよ、人生行動あるのみ! 当たって砕けろ!! ってね」

 

 ソファから立ち上がり、ケイトの目の前に立つと、さっきまでとは違う、まぶしいくらいに明るい満面の笑みを俺の方に向ける

 

「いや、そこは砕けちゃダメだろ!?」

 

 とは言え、言ってる事に対しては思わずツッコミをいれてしまった。事と次第によっては本気でmそれこそ体が砕けかねない事になる可能性だってあるんだから。けれど――

 

(サンキュー、ネプテューヌ)

 

 心の中では彼女に礼を告げる。その時部屋のドアが開きコンパが入ってきた。きっとダンジョンが見つかったのだろう。俺はネプテューヌと互いに視線を交わし、ソファから立ち上がる

 

「さて、それじゃ行きますか!」

 

 俺は隣に置いてあった棒術具を肩に担ぐ。

 

「よーっし!! それじゃ張り切って行こう!」

 

 こうして、ネプテューヌの見た夢と思い付きから、モンスター退治の冒険にでる事になった俺達。そしてそれが、きしくも自分の目的に繋がっていたことに気づくのは暫く後の事だった


 
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