No.421365

ISアスラン戦記5

タナトスさん

アスランの学生生活も4ヶ月が過ぎた。

2012-05-11 12:45:24 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4910   閲覧ユーザー数:4712

 

 

 

 

俺ことアスラン・ザラがこの世界に来て早4ヶ月。

 

IS学園生徒としてこの学園に通っている。

 

今思えば、オーブ国防軍参謀本部の准将から一気に一学生である。

 

何と言うクラスチェンジだろうか。

 

その代わり、重い責任と義務から解放された代わりに学生の義務と責任になっただけだ。

 

早い話が、学業だ。

 

俺はその学業であるISの実習の講義を受けている。

 

織斑先生は一組の生徒の前でISの基本操作の説明を開始した。

 

「では、これより、ISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、ザラ、試しに飛んでみろ」

 

その言葉に俺とセシリアは素早く答えた。

 

「解りましたわ!」

「ハッ!」

「は、はい!!」

 

その瞬間、オルコットは瞳を閉じて念じる様にブルーティアーズを起動した。

 

「え、あれ?」

 

一夏は起動することが出来ず戸惑う。

 

「早くしろ、熟練したIS操縦者なら展開まで1秒と掛からないぞ」

 

織斑先生も容赦が無い。

 

そう思いながら一夏は何とかISを展開する事が出来た。

 

次は俺の番か。

 

俺は瞳を閉じる事無くノーアクションで起動した。

 

ジャスティスを形作る頭、胴体、手足、シールド、ビームライフルが0.1秒で形成された。

 

その瞬間、辺りがざわつく。

 

「アレが、ザラ君のIS」

 

「フルスキン? でもあんなIS見たこと無いよ」

 

「でも、動画で見たときの色と違うね」

 

OS起動はスキップした。

 

コイツが核エンジンで動いている事がばれたら大事だ。

 

周りの喧騒を他所にVPS装甲を展開した。

 

メタリックグレーからローズピンクに近い赤に装甲が染め上げられる。

 

「色が変わった!?」

 

「綺麗~~」

 

何故かセシリアが頬を赤らめながら俺を見つめる。

 

何でだ?

 

 

 

「よし、飛べ!!」

 

その瞬間、俺はこう言いながら飛んだ。

 

「アスラン・ザラ、ジャスティス、出る」

 

俺は脚を少し折り曲げ、脚力を利用して飛翔した。

 

地上での発進の基本技術だ。

 

一々スラスターを全開にして棒立ちで飛んでいてはスラスターが持たない。

 

俺は、上空500メートルの地点で静止した。

 

 

 

 

ソレを見ていたセシリアは唖然とした。

 

アスランは500メートル上昇した後に急速停止、全領域の索敵を僅か0.2秒でやってのけたのだ。

 

(す、凄すぎますわ……こんな事が出来るなんて……)

 

そう、アスランは実戦、しかも地上、宇宙問わず戦争をしてきた人間だ。

 

コレはC.E.世界のMSパイロットでは誰でも出来る事、ナチュラル、コーディネーター関係なくである。

 

基本中の基本だ。

 

そうじゃないと自分が“戦死”してしまう。

 

だからこそ、ナチュラルの多い地球連合のMSパイロットはコレをミッチリと叩き込まれる。

 

反応速度や身体能力で及ばないナチュラルが戦うには反復して体に覚えさせるしかない。

 

しかし、アスランの場合その基本動作が余りに速い。

 

そう、アスラン並の速度はキラやシンの様な化け物クラスでないと先ずお目にかかれない。

 

余談はさておき、一夏は単に驚いているだけだ。

 

セシリアみたいにその異常さを理解していない。

 

ある意味で無知が成せる技なのかもしれないが。

 

そして、セシリアと一夏も同じ様に飛び上がったが、アスランと比べるとどうしても見劣りしてしまう。

 

一夏にいたっては最初は迷走して何とか飛び上がった程だ。

 

(コレは、自分の実力を上げて、尚且つアスランさんに近付くチャンスですわ!!)

 

そう思った瞬間、セシリアは燃えた。

 

ソレこそ、彼女のバーソナルカラーの青色の炎がメラメラと。

 

 

 

 

何か知らないがセシリアが燃えている。

 

何でだろ?

 

(大方、俺にライバル心を抱いたのか?)

 

そんな事考えているとセシリアが意を決した表情で俺の所まで飛んできた。

 

「アスランさん、お願いがありますの」

 

その言葉に俺はお願いの内容を質問した。

 

「お願いって何だ? セシリア」

 

セシリアは大きく息を吸ってまた吐き出し、ソレを数回繰り返して俺に言った。

 

「私と一緒に放課後訓練していただきませんか? 勿論、アスランさんのご都合に合わせていただきますわ」

 

どうでしょう?

 

上目遣いで瞳を潤ませながら懇願するセシリア。

 

(その顔に俺は弱いんだよ……)

 

過去にカガリにも同じ顔をされて、アクセサリーを買ってしまったり。

 

メイリンが一緒に食事をしようと頼まれた時もこの仕草に押されて仕方なく外食をした。

 

更に言うなら秘書官の女性軍人と一緒に飲み会に参加してくれと頼まれた時もこんな仕草に押されて仕方なく参加した。

 

コレが引き金となってカガリと喧嘩した。

 

考えたら鬱になった。

 

カガリ曰く『お前は女性に頗る甘い!!』と怒鳴られたのを思い出す。

 

いや、俺は其処まで甘くない。

 

無理なお願いは聞かないし、実現可能なラインなら聞くが。

 

やめよう、鬱になる。

 

俺は仕方なくソレを了承した。

 

その瞬間、セシリアは花が咲いた様な綺麗な笑顔を見せてくれた。

 

今のでクラッときたのは俺だけの秘密だ。

 

え、ヤッパリ、女に甘い上に尻軽だと?

 

俺は誠実だ! ホントだぞ!!

 

誰に無く言い訳をしている自分が悲しい。

 

ソレを聞いた一夏も話に加わる。

 

「俺もその訓練に参加させてくれないか? 確かに箒と訓練はしているがアイツISについて何にも教えてくれなくって……頼む! アスラン、この通り」

 

一夏は白式の左右のマニュピレーターを合わせて合唱するようにお願いした。

 

俺は一夏を安心させる様に言う。

 

「安心しろ、お前はクラス代表だしな、お前が嫌でも俺からするつもりだった」

 

ソレを聞いた瞬間、一夏が嬉しそうにお礼を言ってきた。

 

「サンキュなアスラン!」

 

コイツ、女が見たら惚れそうな笑顔を向けるな!

 

何、今度は女だけでなく男もかだと!?

 

俺はきわめてノーマルだ!!

 

 

 

 

そんなこんなで俺とセシリアと一夏と箒が訓練用アリーナにいた。

 

俺が織斑先生に許可を取って貸してもらった。

 

「と言う訳で、今回の訓練はそれぞれ個別で行う物とする。先ずはセシリアの課題だ」

 

「ハイ!」

 

その言葉にセシリアは威勢良く答える。

 

「先ずはセシリアは射撃技術の向上だ」

 

その言葉にセシリアが不満の声を上げた。

 

「基礎ですの? 私といたしましては……」

 

その言葉に俺はセシリアを怒鳴り上げる。

 

「馬鹿野郎!! 基礎を疎かにするな!! そもそもブルーティアーズは射撃メインの兵装が多いだろうが!! セシリア今のお前は基礎を疎かにしている。キッチリ基礎を叩き込む!! 課題は10秒間30発、移動する標的に全弾10ホールに確実に当てるのが課題クリアーとする」

 

その課題にセシリアは非難する。

 

「そんな無茶な!?」

 

「悪いが簡単な課題だ!! レーザー兵器で反動も無いんだそ! 更に最終目標は10秒間に50当てろなんていわない。せめてソレが実戦で使える最低ラインだ!!」

 

その言葉に肩を落としながらセシリアは頷いた。

 

「解りましたわ……」

 

次に俺は一夏に向き直る。

 

「次に一夏、お前は白式を装備した状態で雪片弐型を展開し素振り千本だ」

 

ソレを聞いた瞬間セシリア同様いやな顔をする一夏

 

「何でだよ!?」

 

「あのな、お前はハッキリ言って体力が無さ過ぎる。セシリアや篠ノ之よりも無い。断言できる。更にお前はISの事について何にも知らない。雪片弐型の戦闘稼働時間は? イグニッションブーストの機体消費エネルギー量とその持続時間は? 零落白夜の稼働時間は? これ等の情報から白式のシールドエネルギーの戦闘での割り振りは?」

 

次々に上がる俺の質問に一夏は口を閉じた。

 

「解っただろ? お前はお前の持っている力すら把握できていないばかりか戦闘時猪突に突っ込む癖がある。先ずはお前がしなければならない事は体力作りと兵装の特性を理解する事、そして、エネルギー量をどうやって割り振っていくかが課題だ」

 

その言葉に一夏は質問した。

 

「何で、雪片弐型を展開してなんだ?」

 

その質問に俺は答えた。

 

「雪片が何の犠牲無く展開している訳無いだろ? シールドエネルギーを消費してるんだよ。だからこそ、雪片が電力を消費する前に千本素振りするしかない。だが、ISを動かすにもシールドエネルギーがいる。つまり、お前はマニュアルでシールドエネルギーを調整しつつ、雪片の刃を維持した状態で白式のエネルギー効率を考えて素振り千本をやってもらう。無駄な動きをしたらそれだけ、機体にもエネルギーにも負担が掛かる。その為にある程度は体力や筋力を使う必要がある」

 

俺の解説を聞きながら一夏は黙って素振りを開始した。

 

俺は箒に向き直り今度は箒の訓練内容を伝える。

 

「篠ノ之、お前には座禅を一時間した後、自分の学んだ剣の方を一通りやってもらう」

 

その言葉に今度は箒が大声を出す。

 

「何故だ!?」

 

俺は篠ノ之を見据えながらこう言った。

 

「悪いが篠ノ之、お前の剣からは焦りや苛立ちしか感じられない。そんな感情で武器を振るえばいつかお前は仲間や友達を傷つける。ならば、少し立ち止まって、自分を見つめなおせ。今のお前の剣技はハッキリ言って脆過ぎる上に力任せすぎる。お前は力を持って何がしたいんだ?」

 

その最後の問い掛けに箒は何も言えなくなった。

 

多分、唯力が欲しかったと言う単調な理由ではないのだろう。

俺の見立てでは多分、一夏がらみだと思う。

 

俺の予想では今の篠ノ之 箒を形成しているのは焦りや恐怖。そして、言わなかった何かに対する怯えだろうか。

 

そう思いながら俺は三人を見ながら思う。

 

前途は多難だと。

 

 

 

 

 


 
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