No.417402

ゲイム業界へようこそ!その53

TINAMIに移ってからの初最新話です。次話でやっとまともにリーンボックスの女神様がご降臨なされます。

2012-05-03 00:42:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2405   閲覧ユーザー数:2274

やぁ皆、井上 煉だよ……。

 

 

 

俺は今リーンボックスのダンジョン、「封印の遺跡」という場所の中層部を探索している最中である。推奨レベルは15であり、対して俺のレベルは現在23であるから一人で探索する分には当に打って付けと言ったところか。

 

 

因みに今日は「一人」なのでもちろん他には誰もいない。正しくぼっち(一人ぼっちの略)なのである。いやね、ずっと一人だと寂しいのだけれど逆に毎日誰かと一緒にいると、偶にはぼっちになりたいなぁ~とか思うわけですよ?もちろんこれが贅沢なのは判っているのですけどね……(この時の俺の顔はニヤニヤしていて非常に気持ち悪かっただろう。これを誰かに見られてたら軽く引かれてたネ、絶対!)

 

 

 

そんな孤独を楽しむ俺なわけだが、そんな空気を察してか否かモンスターとの遭遇率もやたら低い現状なのである。朝早くからダンジョンに入って1時間程度経過したところなのだが、モンスターとの戦闘回数はたったの1回きりだ。確かに街の住民の情報からモンスター達は基本夜に近づくほど活発的なるとは聞いていたが、だからと言って朝はこれ程までに遭遇しないものなのか?

 

 

 

「わざわざ早起きして宿から抜け出して来たのに……。」

 

 

 

誰に聞かせるわけでも無い小さな愚痴が俺の口から自然と零れる。思わず零れ落ちた愚痴に反応し、途端に俺は周りをおそるおそる見回した。何を緊張しているのだろう……、ひや汗が頬を伝い首筋へと流れていく。別に今の愚痴が誰かに聞かれてしまっても困るものでは無いはずだ……、「ネプテューヌ」や「コンパ」にさえ聞かレナケレバ……!

 

 

 

「お、おおおお俺は、べ、別にねぷ子やコンパがぁ怖くて逃げ出して来たんじゃなひぃよ!そ、そうさ、ただ、ひっ久しぶりに一人を満喫したかっただけなのさ、ふ、ふふ……、フゥーーーーーハッハッハ!!!」

 

 

 

なんか俺のキャラがぶれているような気がするが、今は…どうかそっとして置いて欲しい。今俺のハートはヘルアンドヘブン状態、満身創痍、カットビングなんだよ……。

 

 

別に昨日のことを忘れたかったわけじゃないよ!?ねぷ子もコンパも本当可愛いくて良い子だよ!彼女達の俺に対する行動が最近怖いほどアグレッシブな気がしなくもないけど全然平気だよ!!ほ、ほんとあんなパワフルな女の子達に囲まれて俺は幸せ者だなぁ~~!!

 

 

 

「コトッ……。」

 

 

 

「ヒィッ!?」

 

 

 

恐怖で心臓が飛び上がり思わず奇声をあげてしまった俺だったが、今現在そんなことを気にしている余裕は無い。背後へと振り返り、音の発信元である左奥に開いた道を俺はまじまじと凝視した。薄暗い洞窟の中、奥の通路からは微かに光が灯っているように見え、徐々にその光が明るくなっていることから、その光源帯がどうやらこちら側に接近しているというのを俺は嫌でも理解してしまう。

 

一歩一歩こちらへ近づいてくる正体不明の存在に俺は僅かな時間を利用して脳内会議を開催することで現状を打破する為の対策を練ることにした。俺自身の意識を全て脳へと集約させ、脳内の不思議空間に「井上A、井上B、井上C、井上D」という俺の分身を数体作成、そしてこいつ等に議題について討論させるという身の毛もよだつ程の高度なテクニックなのである…………とまぁ結局のところ脳内会議とか妄想の域なのだが、余計な意見は今はとりあえず無しの方向で頼む!

 

 

 

井上A「はーい!皆聞いてくれ~。ちょっと本体の窮地を脱するための会議を開くぞー!」

 

 

井上B「断る。」

 

 

井上C「^q^」

 

 

井上D「お腹痛い。」

 

 

井上A「よーしお前らの要望は全部スルーだ。時間もないしさっさと始めるぞ、今回の議題は『正体不明の存在に対して本体の煉がとる行動』だ。討論スタート。」

 

 

井上C「⊂二二二( ^ω^)二⊃」

 

 

井上B「空飛んで逃げれるならいいけど、煉にはそんな能力無いからな。敵と眼があった瞬間、瞬獄殺か天破活殺が安定だろ。」

 

 

井上A「待て、Bよ。まるで本体が瞬獄殺のコマンド技を会得し、北斗○拳も伝授しているように話してるけど、別に持ってないからな。加えて説明しとくけど、素早さの能力と攻撃力以外は特に技能とか所持してないからな。」

 

 

井上B「そ、そんな馬鹿な!?」

 

 

井上C「(´・ω・`)」

 

 

井上A「二人してそんなあからさまに落ち込まれても困るぞ。」

 

 

井上D「」

 

 

井上A「とりあえず向こうから出てくる存在がモンスターだった場合とメイン組だった場合の二通りの案を考えてみようか。」

 

 

井上B「モンスターの場合なら迷わず戦闘だな。元々モンスターを退治するためにこのエリアに来たのだし。」

 

 

井上A「最もな意見だな。時間も無いしモンスターの場合の案はこれが採用で構わないか?」

 

 

井上C「(`・ω・´)b」

 

 

井上D「」

 

 

井上A「なんかDが見当たらないのだが。どこかに行ったのかな?」

 

 

井上B「そのうち戻って来るだろ。話を先に進めようぜ。」

 

 

井上A「そうだな。では次に正体不明の存在がメイン組だった場合の案はどうする?」

 

 

井上C「\(^o^)/」

 

 

井上B「まぁ……その……ジャンピング土下座でもしようかな……。オマケして地面に鉄板敷いてからジャンピング土下座とか……。」

 

 

井上A「BもCも相手がねぷねぷ達の場合だと最初から悲観的になってるな……。気持ちは痛い程分かるけど。」

 

 

井上D「戻った。」

 

 

井上B「Dはどこ行ってたんだよ?話を勝手に進めてたぞ。」

 

 

井上D「お腹痛かったからトイレに篭もってた。」

 

 

井上A「Dは最初にそんなこと口走ってたな……。」

 

 

井上D「で、今はなんの話してたの?」

 

 

井上A「前方から現れるであろう存在がメイン組だった場合の対処方法についてだよ。」

 

 

井上D「なるほどね……。うむ、俺に良い考えある。」

 

 

井上C「ktkr!」

 

 

井上A、B「その話詳しく。」

 

 

井上D「メイン組が現れた場合の対処方法だよな。彼女達の耳元でこう囁くといい……「好きだ、愛してる。結婚しよう。」とね。」

 

 

井上B「……Dは自殺願望でもあるのか?」

 

 

井上C「m9(^Д^)プギャー」

 

 

井上D「待て待て、最後まで話は聞くものだ。この言葉が本体の口から彼女達の耳元で紡がれることにより、彼女達にそれぞれ何かしらの動揺を与えることが出来るだろう。そこで本体が巧みに話の内容を擦り返れれば言い逃れが可能となるって寸法だ。」

 

 

井上B「なんて大胆の行動だ……。」

 

 

井上A「だが悪くない案だとも思う。この際だ、Dに意見に乗ってみるのも一興か?」

 

 

井上B「そうだな。確かにDの案ならこの場を凌げる可能性が高い。……後が怖いが。」

 

 

井上A「よし!では議題『正体不明の存在に対して本体の煉がとる行動』では、『相手がモンスターの場合は戦闘』、『相手がメイン組の場合、耳元で愛を囁く』で決まりだ!異議がある者はいるか?」

 

 

井上B「異議なし!」

 

 

井上C「b」

 

 

井上D「異議なし」

 

 

井上A「ではこれにて脳内会議、閉幕!!」

 

 

 

 

……実際のところ、脳内会議はリアル時間で僅か10秒というリーズナブルなものとなっております。すっごくお手頃ですね♪

 

 

さて、俺の今回の作戦が決まったあたりで、遂にお相手さんがご登場なさるらしい。奥の通路からは光が幾重にも漏れ出していて、実物が出現するのももはや時間の問題だろう。果たして、鬼(ネプテューヌ)が出るのか、それとも蛇(コンパ)が出るのか……。

 

 

 

(変身……。)

 

 

 

念の為に女性への変身も済ませておく。モンスターだった場合、俺を怖がらせた罰としてそいつに全力の双剣乱舞をお見舞いしてやろう。ぼっこぼこにしてやんよ!!

 

 

 

「ピッ、ピッ。」

 

 

 

モンスターの鳴き声らしき音声が耳に入る。どうやらメイン組ではないようだ、良かった……、助かった……。俺は相手がモンスターだと理解すると気を引き締め、武器を前方へ構えた。ほぼ同タイミングで通路からモンスターの姿が現れ、俺の眼球にモンスターのフォルムが映し出された。

 

 

 

「ピッ?」

 

 

 

それは見事なまでのウォーターブルー、どこまでも透き通った水色が身体を覆い込み、まるでその姿は小妖精を彷彿させるようであった。その存在は宙に浮かんでいるのだが、不気味でも奇妙でもなく、どこか神秘的な物体で相対する俺の目視を根こそぎ奪ってしまっていた。そう、そのモンスターの名前は……。

 

 

「ク……、クリオネさん?」

 

 

 

「ピッ!」

 

 

 

「か……、か……。」

 

 

 

「ピッ?」

 

 

 

「可愛いいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 

 

俺は構えていた武器を放り投げ、光の速さでクリオネの元へと駆け出した。一瞬にしてクリオネの眼前に立ちはだかり、左右の手を大きく広げて……そして抱きつく!!俺の取った行動は、戦闘でも逃走でもなく、クリオネさんへの熱烈な抱擁だった。


 
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