No.416958

《インフィニット・ストラトス》~二人の転生者~

菊一さん

第十八話です。すこし間が空きましたが……読者の皆様、離れないでください。休止する場合はちゃんと告知しますので><。
ではどうぞ~

2012-05-02 00:05:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1547   閲覧ユーザー数:1415

第十八話 しばしの休息、そして復活

……ここは、どこだ?

「……!」

「…………。」

……話し声が聞こえる……

俺は薄っすらと眼を開け始める。まず見えたのは白い天井、白いカーテン、横たわった俺の体……鼻につく消毒液や薬品の匂い……そうか、ここは保健室か……

「だ、大丈夫だよな!?秋は死んだりしないよな!?」

「何度も言わせるな、まだ寝ている状態だが命に別条はない。それに秋が倒れたのはただの疲労が元だという。腕も足も損傷は酷かったが何故か再生している。兎に角面会謝絶だから後は明日だ」

夏と冬姉の声だ、俺はカーテンを少し開けて外を覗く。夏、春華、鈴、箒とセシリア、簪までいた……時間は夕暮れ時だろうか、保健室事態が少し赤みがかっている。

夏達は安堵半分、不安半分といった感じで帰ったが冬姉はそのままこちらに向かってきた。

「起きたか、調子はどうだ秋?」

「……とくに異常はありません、冬姉」

「そうか……」

冬姉は今俺のことを《秋》と呼んだ。これは俺の愛称のため、俺が《冬姉》とよんでも叱られないのは当たり前なのだ。

「さて、取り敢えず今後のことだが、まずは体をどうする?」

「……腕は元があるから修復すればいいんですが……脚は流石に一日やそこらじゃあどうにもなりませんね」

「ふむ、やはりか……しかし、よくそれだけで済んだものだな」

俺の体の左半身、特に腕と脚はひどい有様だった。まあ左腕は俺が吹き飛ばしたんだけどさ。

「取り敢えず腕と脚を《作り直す》ので材料集めてもらえますか?」

俺はメモ用紙に必要な物を書いてそのメモとキャッシュカードと通帳、暗証番号を冬姉に渡した。

「必要なお金はそこから引き出して使ってください。あ、通帳記帳ちゃんとしてから返してくださいね」

「わかっている。明日材料が全部揃ったとして何日ぐらいで出来る?」

「そうですね……まあ明後日までにはできますよ。まあ微調整とかが残ってますがそれは流石に《接続》した後じゃないと確認できないので」

俺は苦笑いしながら言う。冬姉もそれに釣られ「ふっ……」と短くだが微笑んだ。

「……さて、秋。お前にちょっと見てもらいたいものがあるんだが……一人で立って歩けるか?」

「……俺の状況見てそれを言いますか?」

「それもそうだな。少し待っていろ、車椅子を持ってくる」

冬音はそう言い車椅子を取りに行った。あれ?俺って面会謝絶なんじゃあ?

 

俺は今、夕暮れの学園の廊下を冬姉に車椅子を押してもらいながら移動している。服装はISスーツの上に病院に入院している人がしているあの服だ。ISスーツを見たが、所々破れており、新調する必要がありそうだ。

「……こうしていると、昔を思い出しますね」

「……そうだな。あの時はほんとうにもう駄目かと思ったぞ……」

「すみません……」

車椅子はゆっくり進み、無音の中に車輪が少し軋みながらも回る音が響く。

「あの時の約束を覚えているか?病院で……今みたいな夕暮れで……」

「……覚えてますよ。《お前も私の弟なのだから絶対に死なないでくれ》……大丈夫ですよ、俺はまだ死ぬ気はありませんから。それにあの時の俺の返答を覚えているはずです」

「……《俺は死にません。俺の信念は身近な人間を守り、悲しませないこと。自分を犠牲に誰かを助ける、という好意は一見格好良いように見えますが自己満足にしか過ぎません、なぜなら残ったものに悲しみを残すから。だから身近な人を助け、悲しませないため自分も死なない。だから俺は死にません》……だったな」

そう、そういう信念を俺は選んだ。《守りたい人物》と《自分》を守る、難しいが不可能じゃない。可能という可能性が、例え1%以下でも、0%でない限り、俺は絶対に信念を曲げない。そしてその信念のためなら、生きてさえいられるなら、俺の体なんかどうなってもいい……矛盾しているように見えるかもしれないが、これが俺の選んだ道だった。

そして冬姉が口を開く度に震えていくのが車椅子を伝わって感じ取れる。

「……信じられませんか?」

「!!……そうじゃない!そうじゃない……だが……」

車椅子が不意に止まる。押していた冬姉の歩みが止まったのだ。それでも俺は静かに答える。

「……わかってます、俺達の事が心配……なんですよね。事実俺は昔も今もこうして死んでもおかしくない重症の傷を負いましたからね、でも生きてます。違いますか?」

「だがそれは結果論でしかない!一歩間違えれば確実に死んでいた……頼むから……頼むから私を……一人にしないでくれ……」

一人にしないでくれ、か。こうなったら冬姉はもう止まらない。俺が折れる以外止める手立てはないのだ。

「……わかりました。出来る限り、無茶なこととかはしないようにします」

全く……俺達人間の一生の間にこういう嘘っていうのは一体幾つあるのかね?

 

時間は少し過ぎてある扉の前。《関係者以外立ち入り禁止》って書いてあるけどいいのか?

冬姉は何も言わずスロットにカードキーを差し込み、開いた扉の中へ、俺が乗った車椅子を押しながら入った。

「ここって……どこですか?」

「IS学園の地下にある隠された空間だ。ここにはレベル4の権限を持つ特定の人物しか入れない」

冬姉はすっかり元通りになっていた。しかしここで何か言おうものなら殺されるので黙っておく。

「いいんですか?一介の学園生徒をこんな所に連れてきて?」

「バカを言うな。お前の何処が一介の学園生徒だというのだ?」

そういえば冬姉は知ってるんだった……まあいいけど。厄介事じゃなければなんでもいい。

そう思いながら地下へと続くエレベーターに乗せられ、五十メートルぐらい下の階層で止まった。

そこには例の無人機の残骸と、それを調査している山田教諭がいた。

「あ、織斑先生……って!!な、何で一ノ瀬くんがここにいるんですか!?」

「落ち着け、山田先生。一ノ瀬は私が連れてきた」

「は、はあ。しかしですね、ここは秘匿されてる場所ですし、そもそも一ノ瀬くんは絶対安静で……」

「私が許可した」

冬姉が少し睨みを効かせると山田教諭は無言になってしまった。

「織斑教諭、あんまりやり過ぎるとシワ……増えますよ。それに説明したほうが早いでしょう?」

「……まあ一ノ瀬がそう言うなら構わんが……」

結果的に山田教諭に俺の秘密をばらし、包み隠さず話したのだが……

「しかし簡単に信じることは……」

「まあそうでしょうね……」

一応保留ということになってしまった。

「で、俺を呼んでどうするんですか?まさかこの無人機を修復しろとか言いませんよね?」

俺は右手で横たわっている無人機の残骸を指しながら言う。

「違う。IS開発者に携わった人物としてのお前の意見を聞きたい」

「そういうことですか……」

俺は冬姉の肩を借りて階段の降りて、無人機の残骸のそばまで駆け寄り、細かく調べていった。

「……結果から言って全箇所の重要部分や機能中核が焼き切れている。これは俺と夏が焼き切った箇所もあるけど元々倒されたら自壊や焼き切られる設定だったんでしょうね?証拠に無事残ってた腕部のビーム砲も砲身は壊れてるし、発射機構もグチャグチャのボロボロ……修復は不可能。それに有人機にしては機械部品が多すぎる、これは明らかに無人機。これは……転送システムの残骸かな?恐らくこの部分から映像や稼働データが送られたんでしょうね……まあ目的は俺たち専用機……特に俺と夏の稼働データと専用機のデータが欲しかったんでしょうね?」

「やはりか……」

俺の説明を聴いた後、冬姉は俺を車椅子に戻してから腕を組み、悩んだ。

「そういえばコアはどうでした?」

俺は思い出したように聞いた。まあ実際思い出したのだから仕方ない。

「ああ、コアは二つ共登録されてないコアだった」

「やっぱりですか……三機の内一機は俺がインパルス砲で消し飛ばしたからなあ……」

やはりイカンな、熱くなると頭に血が上って後先考えない正確は直さないと。

「でもま、これで犯人はほぼ確定ですね。これだけのビーム兵器を作れて、平気で無人機を送ってきて、更にはコアまで作れる人物……俺には余裕で思いつく人物が二人しか存在しないんですがね?」

「一ノ瀬もそう思うか……まあまだ物的証拠がない状態だ。暫くは様子見だな。山田先生、今日はもう戻って休むといい。明日も明日で大変だからな」

「あ、はい。それじゃあ一ノ瀬くんもしっかり休むんですよ」

「了解です」

まあ明後日ぐらいには復帰できると思うが……

その後、冬姉に送ってもらって、俺は保健室のベッドから月明かりを眺めていた。

「……そろそろ寝るか」

時計も見ると九時ぐらいだった。俺はベッドを倒して寝ようとした瞬間、携帯電話が鳴り出した。こんな時間にかけてくる非常識人……まあ構わんのだが。

「……はい、もしも『グッドモーニング!おはようシュウ!!』……ナタル、こっちは今夜なんですが……」

電話の無効の相手はナタル――ナターシャ・ファイルス。元アメリカ合衆国代表IS操縦者。第一回、第二回モンド・グロッソのアメリカ代表として出場したIS操縦者だ。

「で、何のようですか?まさか気分爽快の朝の挨拶をしたいだけ、じゃあないでしょう?」

『ううん、それだけだよ?』

……この人は……

「用事がないんなら切りますよ?」

『わー!!待って待って!わかったから!ちゃんと大事な用事があったから電話したの!!』

「……最初っからそれを話していれば切ったりしませんよ。でその大事な話って?」

『うん、実は私のお父さんなんだけど……』

ナタルのお父さん……確か大会社の社長だっけ?

『……シュウに話すことがあるらしくって、電話して欲しいんだって。暇な時でいいから電話してあげて?ね?』

「……目的とかは聞いてないんですか?」

『聞いてないけど、なにか重要なことらしいよ?』

重要……ねえ。なんだろうか?

「わかった、今こっちもゴタゴタしてるから落ち着いたら電話するよ。多分六月の半ばになるって伝えておいて」

『ん、わかった。じゃあまたね~。あ、アメリカ来たらちゃんと挨拶しに来てよ!?』

「アメリカがどれだけ広いと思ってるんですか、端っこ同士だったら横断しなきゃいけないじゃないですか」

『じゃあ出来ればで!』

「はいはい、それじゃあまた」

俺はそう言って手早く電話を切る。あの人と話すと束さん並につかれる……まあいざって時は凄いんだけど。

俺は今度こそ目を閉じ、深い眠りについた。

 

「起きてて大丈夫なのか!?秋」

「体の方は大丈夫そうだな。まあまだ安静にして方がよさそうだが」

「お兄ちゃんは無茶しすぎなんだよ~。あの時だって私達に任しても良かったのに~」

「秋を待とうって言ったのは春華でしょ!」

「まあ何はともあれ秋葉さんが元気そうでよかったですわ」

夏、箒、春華、鈴、セシリアの順に俺を気遣ってくれるのは嬉しいんだが……

「お前らそろそろ行かないと遅刻するぞ?しかも一組は冬姉だからな」

「うおっ!そうだった!じゃあ秋、また放課後に来るから!」

「こなくていいって、訓練に集中しろ!」

まったく……ゆっくり寝てもいられないな。

俺はベッドに体を預けて外を見る。窓は開け放ってあるのでカーテンが入ってくる風に揺られてゆらゆらと動く。

現在左腕と左脚は簡易的な義腕義足に包帯を巻いた状態で誤魔化してあり、今日は工房に行って材料を元に作る予定だった。そろそろ冬姉が来るころ……

「一ノ瀬、起きているか?……うむ、起きていたようだな」

「さっきまで夏達が来てたんでね。それより材料は揃いましたか?」

「一応揃ったが……随分異様なものまで入っていたが、本当に合っているのか?」

「ははっ、さすがの織斑先生もあれはちょっと苦手ですか」

俺は少し笑うと車椅子に乗る。いくら義足と言えども普通に歩けるわけではないので車椅子が結局必要なのだ。

「開発室でいいんだな?」

「ええ、お願いします」

さて、明日には復活できるかな?

 

時間は過ぎて夕方過ぎ、夏達は保健室に来たようだが検査という言い訳で退散してもらったらしい。実際俺がいなかったんだから仕方がない。そして俺はと言うと……

「毎回この肉付けが気持ち悪いんだが……仕方ないよなあ」

俺は固めのシリコンを筋肉の形になるようにぺたぺたと貼り付けていた。ワイヤーや金属部分を包み込むように且つ本物のように触っても本物のようにするためである。流石に体温までは無理だが限りなく本物になるようにしてある。またこのシリコン内には色々特殊な成分が入っており、ISには反応するし、ちゃんと脳からの電気信号をキャッチして動いてくれる。しかしそれがない場合やたらとうねうね動くので気味が悪い。さすがの冬姉でも気味悪がって少し青ざめていた。

「……よし、後はこの人工皮膚を被せてっと……織斑先生、終わりましたよ」

「よ、よし、神経接続を始めるか」

まだ青ざめてるし……大丈夫か?

「左腕はお願いします。左脚は自分がやりますんで……行きますよ。いち、にぃの……」

「「さんっ!!」」

…………痛いです。

この神経接続、神経自体に弱冠衝撃が行くのでかなりの激痛が通る。しかも慣れないとこの義手は上手く動いてくれない。しかし俺はこれを装着してかなりの年月が過ぎているので結構大丈夫だ。

「……うし、全回復!」

俺は各部署の腕や脚を動かしながらチェックする。ISも上手く起動してちゃんと動けたし。

「よかったな。それじゃあ後一晩は保健室で寝るといいだろう。あとでジャージと居合刀と道着を持って行ってやる。明日からは普通に授業に出るんだぞ」

「はい、ありがとうございます」

さて、戻りますかね。

俺は車椅子を畳み、後片付けをした後、保健室へと戻っていった。

 

次の日。

「はよ~っす」

「あっ!一ノ瀬くんだ!」

「本当だ!ねえねえ、この前の事件に関わってるって本当!?」

「アリーナの外の破壊行為って一ノ瀬くんがやったって本当?」

俺が教室に入るやいなやクラスの女子達が俺に先日の事件のことを聞いてくる。しかしこれには緘口令が発令されているため話せるはずもない。

「悪いな、俺は織斑教諭と一緒にいたからあんまり詳しいことはわからないし、見たこと聞いたことは口外するなって言われてるんだ。怪我は敵の攻撃に偶然に当たっちゃって、まあ見た目ほど大したことないから大丈夫だ」

俺はそう言って苦笑いしながら自分の席に付いた。隣では夏が「よっ」と手を振っていた。

「やっぱり秋も質問攻めだったか」

夏が耳打ちしてくる。その意図を汲み取った俺は同じく耳打ちで返す。

「まああの事件は詳しくは公表されてないからな。第一公表したら各国家間の関係が崩れて第三次世界大戦が始まっちまうぞ?」

「……それはやだな」

俺だってそうだ!戦争なんか誰が好き好んでやるか!!……まあそれでもIS発表されてからいろんな事件が起きてるからな、そのうちマジでなるかも……開発者としては気が重い……

「?どうかしたか、秋?」

「……いや、なんでもない。しっかし俺の腕や脚のことは話されてないらしいな?」

「ああ、しかしお前のISって凄いな!事故修復能力とか!」

「あ、ああ。まあISは俺や束さんでもわからないこと多いからな」

実際には義肢だけどな。

「しっかし、元気になってよかったぜ!」

夏は耳打ちをやめ、そう言った。俺も耳打ちをやめ、応対する。

「そうだな~……そういえばスイーツ半年無料パスってどうなったんだ?」

その瞬間、教室の空気が一瞬にして凍った。

「秋、それは地雷だ」

夏が俺の方を叩きながら言う。朴念神のお前に言われたくねぇよ!!

 

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はい、どうも作者の菊一です。

ぶっちゃけた話、この話のネタが途中で尽きちゃって^^;かと言って前の話に入れるにはちょっと長いかな~と思っちゃって。だから「短くない?」って感じた人は前回の長さからの後遺症もあるでしょうがあながち間違いじゃないはずです。

 

さて、次回のお話。やっと一巻が終わって二巻に突入……するんですがその前にキャラ説明とISの説明でも。方式はどうしましょうかね?一話を数ページに分けるか、秋葉と春華で分けるか、キャラとISで分けるか……希望や提案があったら是非とも言ってください。

 

ではまた~


 
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