No.416803

【獣機特警察K-9】何かが違う・・・

haruba-ruさん

http://www.tinami.com/view/397916 】←こちらの話の続きになります。
逃走するトリッカーズを逮捕すべく、追跡を続けるクオンだったが・・・

お借りしていますどうもありがとうございます!!
K-9隊各員【http://www.tinami.com/view/390292

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2012-05-01 18:02:15 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:911   閲覧ユーザー数:862

ビルの屋上を軽快に跳躍する二つの影・・・そしてそれを追う一人のロボット。

影の二人は追うものの視界を妨げる逆光に向かって、フェイント混じりの蛇行を繰り返し逃げ回っていた。

追随するクオンの脚部に搭載されたスラスターがジャンプの度に火を吹く。

幅跳びの要領で空気を裂く勢いに身を任せ、着地の瞬間に途切れる頃無く走り出す。

・・・あのトリッカーズの二人組、ディアとバニーには散々煮え湯を飲まされてきた、今回ばかりは逃がすつもりはない。

しかしクオンがいくら距離を縮めようとしたところで、自分と相手の運動性能の差がそれを許さなかった。

「クソッ!!待て!!」

あと一歩と思った瞬間、白い鹿形ファンガーの体が重力を無視した動作でフワリと跳ね上がる。

犯人の体が手の中から霞のようにすり抜ける感覚と、自分に向けられた仮面の下の嘲笑・・・

なめられている…!! それを感じた瞬間、クオンの感情が沸騰した!!

「バカにするなっ!!」

クオンの腰部アーマーが勢い良く開き、流れるような動作でリボルバーガンを引き出す、

アイカメラが瞬時に叩き出した射角に従って、構えると同時の早撃ち!!

一直線の光条は怪盗ディアを外れ、彼女の足元の屋根の上で弾けた・・・

・・・クオンの狙い通りに。

「フィー姉ちゃん!!今だよ!!」

「クーちゃん、ナイスアシストです!!」

ディアの背後を強襲したのは白毛の犬型ロボット、フィーア!!

クオンの追跡でディアは計画されていた待ち伏せのポイントまで追いやられていたのだった。

後はその場で一瞬でも動きを止められれば良い、

K-9隊最速の飛行能力を誇るフィーアにここまで肉薄されれば、いかにトリッカーズであろうとも逃げ切れるものではない!!

フィーアの手に握られた銀の手錠がきらめき、今、ディアの両手に掛けられた・・・!!

「トリッカーズ、怪盗ディア確保!!」

ディアが手錠を引き剥がそうと暴れるが、無論その程度で壊れるようなやわな手錠ではない。

同時にフィーアから押さえ込まれ、彼女は完全に動きが取れなくなってしまった。

・・・これで残るはバニーのみ、ディアが捕らえられて逃げる事は出来なくなってしまったのか、逃げ切る事を諦めたのか、その脚をピタリと止めてクオンたちの出方を伺っていた。

抵抗する気が無いならと、クオンはゆっくりとリボルバーガンをしまった。

そのまま両の手のひらをバニーに見せて、非武装をアピールする。

「おとなしく捕まってくれれば、悪いようにはしないからさ」

出勤前にさんざん友達に対してトリッカーズについてグチっていたクオンではあったが、

なんだかんだ言ってトリッカーズのおかげで解決した事件もあった事だし、

窃盗行為を行なうその理由も少しは理解できないわけではない。

・・・やり方は間違っているけれど、根っからの悪人じゃないことは知っている。

クオン、フィーア、ディア・・・三人の視線が集まる中、バニーの取った行動は・・・

 

「・・・無意味」

「えっ?」

 

抑揚の無い、ただ音を発しただけのような無情な声でこう言った・・・怪盗バニーが。

まるで悪戯好きな子供のように、いつもK-9を笑って引っかき回している、あのバニーがである。

思ってもいなかった返答に対するクオンの力ない驚愕だけを残して・・・

その場が、動く・・・!!

「揺れた!?」

「地震ですか!?」

立っていたビルに強烈な揺れが襲い掛かり、クオンたちの足元を揺らす!!

しかし何かがおかしい、断続的な、ぶつかるような

・・・何者かががむしゃらになってなぐりつけているような・・・

違和感に気づいた途端、突如として立っていた屋根が崩れ落ちた!!

足場を失った喪失感と浮遊感、クオンとフィーアは空中に投げ出された。

下層の床に叩きつけられる前に、浮き上がったフィーアの手がクオンの腕を掴み、

済んでのところで九死に一生を得た・・・

対して一瞬早く反応したバニーはディアを抱えて跳躍、そのまま下へと墜ち、

この破壊劇の立役者と合流していた。

「・・・ラピヌ、ルプス」

ディアたちと同様のアイマスクを被ったウサギ型と狼犬型のファンガー、

トリッカーズの残る二人、ラピヌとルプスがそこには居た。

待ちわびたかのようにディアとバニーを迎える二人・・・

フィーアに捕まりながらその姿を見ていることしか出来なかったクオンだったが・・・

クオンのセンサーイヤーに何か違和感のある会話が飛び込んできた。

「遅かったわね、あまりコイツと二人っきりにしないで欲しいんだけど、苛々するわ」

「・・・それはコチラのセリフだ、俺は貴様と一緒に居るだけで反吐が出そうだ」

 

「・・・あの二人何かあったの?」

「どうしたんですか?」

フィーアには聞こえていなかったのだろうか、ラピヌとルプスのあの会話が。

互いの視線を合わせようともせず、必要以上に険悪な雰囲気・・・

普段の彼らのやり取りを知っているなら誰もが気づくであろうこの違和感。

クオンも首を傾げるしかなかった。

そしてその違和感がさらに決定的になったのは、ラピヌから手錠を外されて自由になったディア、その言動だった。

忌々しげに外れた手錠を放り捨てると、クオンたちに向かって口汚い罵声をはなってきたのである。

「この程度で私を捕まえようとか百年早いってぇーの!!バーカ!!」

・・・さすがにこれはフィーアも聞こえたのか、彼女も絶句していた。

ただの負け惜しみだったのか、それとも考えた上での言葉だったのか・・・

思わぬセリフに呆然となってしまったK-9の二人を置いて、

めいめいに好き勝手な事を言いながらトリッカーズたちは建物の中に消えていった。

「身体もホコリまみれでマジ最悪、帰ったらシャワールーム直行~」

「・・・少しは我慢すべき」

「シャワーだけなら同感ね、犬の毛とかついてたら最悪だもの」

「・・・好きにすれば良い、俺は関係ない」

 

後に残されたクオンたちは驚愕というか呆然というか・・・

目の前で起こっている光景が信じられずに固まってしまっていた。

しばしの後、やっとの想いでクオンはこう呟いていた。

 

「アレ、絶対にトリッカーズじゃないでしょ・・・」

 

 

さきほどまでの追走劇のあと、K-9隊メンバーはラミナ署のK-9ルームに戻ってきていた。

エルザ隊長、アレクセイ、フィーア、ウー、グーテ、リク、そしてクオン

ほぼ全員メンバーが揃っているが、誰もが一様に疲れた表情をしている。

「結局、今回も逃がしてしまったね。トリッカーズ」

アレクセイの軽いため息と共にK-9ルームに沈んだ雰囲気がただよう・・・

実はクオンとフィーアのバックアップのため、

アレクセイもいつでも狙撃ができるように体勢を整えて待機していたのだが、

建物の中に逃げられてはそれも無駄になってしまっていた。

肝心な時に役立てなかったから悔しさは人一倍感じていた。

「今回は上手く行くと思ったんだけどなぁ」

「確保したと思って、油断してしまいました・・・」

一度捕まえはしたものの犯人に逃げられてしまったクオンとフィーア、

覆水は盆に帰らず、ただし後悔はいくらしてしたりなかった。

「ごめんなさい、ラピヌたちはボクたちの担当だったのに」

「面目ねぇ」

リクが謝ったのを皮切りに、ウーの謝罪が続く。

ラピヌとルプスを捕まえる予定だったメンバーがリク、ウー、そしてグーテの三人だった。

だれも彼らを責めるつもりは無いが、今回は事前に綿密な作戦も立てた上での追跡戦だった。

それがうまくいかなかったのだからメンバーたちの落胆具合もそうとうなものだった。

「・・・謝る必要なんてないよ」

「グーテお兄ちゃん!?」

おもむろに立ち上がったグーテをリクが止める。

全員の視線が集まる中、怒りを滲ませたウーの言葉が続く。

「リクも、シスも謝らなきゃいけないような事は何もしてないよ!? 巻き込まれた市民にだって怪我人は一人だって出てないのね!!」

「報告は途中だったな?詳しく聞かせてくれ」

エルザ隊長がうながすと、その説明をウーが引き継いだ・・・

「・・・奴ら逃げ切れないと分かったら車を投げつけてきやがったんです。運転手が乗ったままの車を、近くを通りかかった市民に向かって・・・」

「「なんだって!?」」

「ウーさんとグーテお兄ちゃんと協力して運転手の人も無事に保護したんですけど・・・」

「アイツら何のためらいも無く市民を巻き添えにしたのね!!」

拳をギリと握りしめるグーテだって悔しくないはずが無い・・・

だがそれでも犯人を捕まえるより、市民の命を救う事を優先したのは、責められる事は無いはずだ・・・!!

「・・・大きな声出してゴメンなのね、グーテちょっと頭冷すよ・・・」

怒り心頭に来ていたグーテだったが、ハッと我に帰ると途端にしおらしくなって座り込んだ。

再び沈んだ空気の漂いだしたK-9ルームに沈黙が流れる・・・

 

次に言葉を発したのはクオンだった。

「おかしいよね」

静かな確信を持ってその言葉を発する、

その言葉が示す意味はこの場に居るメンバー全員が分かっていた。

そして全員の総意を引継ぐかのように、エルザ隊長の神妙な声が響く。

 

「今回の事件、トリッカーズの仕業ではないだろうな」

 

「思えば、いつもの予告状だって来ていないですしね」

アレクセイの声がそれを裏づける証拠を出して同調する。

「今回の犯人はいつものトリッカーズとは違う言葉づかいをしていました」

犯人たちの言動を直接聞いたフィーアはそう結論付けた。

「関係ない一般人に危害を加えるなんて、今までのアイツらにはなかったしな」

トリッカーズならばありえない、一番大きな違和感をウーが示す。

「でもトリッカーズそっくりの偽者なんて、なんでそんな事したんでしょう?」

リクのもっともな一言で全員が頭をひねる。

情報が足りない、現状では犯人の目的がまったく分からないのだった。

会議が行き詰っていたその時。

・・・ちょうど良いタイミングでK-9ルームの扉が開く、

残るK-9のメンバー、イシスとシスが入ってきたのだ。

「皆さん、お待たせしました」

「・・・待たせた」

二人はその手に持っていたものを机の上に広げた、

それは何かの解析結果と、K-9隊にはなじみのある手錠だった。

「フィーアの手錠についていた皮膚を科学捜査班に調べてもらいました、DNA鑑定すればディアの正体の手がかりになりますから」

「あ、ディアを捕まえかけた時の・・・」

手錠を外そうと暴れていたのから少し位は皮膚組織がついていてもおかしくないだろう。

偶然にも手に入った、怪我の功名だった

「それで鑑定の結果は?」

「結論から言うと、見つかったのは生き物の皮膚じゃありません。メタモルメタルといって、開発されてからほとんど使われていない特殊な金属だそうです」

イシスが科学捜査班から得た情報によると、メタモルタイトは極めて多様な加工が可能で、

柔らかくも硬くもできる不思議な金属らしい。

「特殊な金属?なんでそんなものが?」

人間の皮膚からそんな金属が出てくるわけが無い、クオンの疑問は当然だった。

しかし、イシスはその言葉に対して頭を振る。

「人ならそうですけど、体の表面が金属であればどうですか?・・・今回の犯人はロボットですよ。トリッカーズをそっくり真似したコピーロボットです、性格までは真似出来ないみたいですけどね」

「な、なるほど・・・」

ミンスター警部並の推理を披露するイシス。その疑問を瞬く間に氷解してしまった。

作戦立案もこなすK-9隊のブレインは伊達ではないのだ。

「・・・さらにミンスター警部にも調べてもらった。ある人物の他にメタモルメタルを扱える人間はほぼいない・・・」

シスが取り出したのはテラナーの男の写真とその調書。

経歴を見る限りその男は科学者のようだった。

サージュ・ヴォロンテ、メタモルメタルの精錬法の開発者となっている。

「・・・この男、事件を起こして学会を追放されてからドローア研究室と関わりをもったらしい・・・」

「絶対に何か関係ありそうだね」

怪しすぎて逆にないくらいのレベルだが、

この男が犯人なのか、もしくは犯人に関わっていることは想像に難くない。

成すべき事が分かった今、彼らの表情に一切の迷いは無い。

K-9隊全員の胸に、エルザ隊長の鶴の一声が力強く響いた。

「ならば決まりだ、目的は容疑者サージュ・ヴォロンテの確保、準備が整い次第、現場へ急行するぞ」

「了解!!!!」

 

 

「というわけで、これがボクの最高傑作“コピーミラーマン”の力だ」

「ふ~ん」

乱雑にコードの繋がった乗用車大の大きな機械を前にして、

ふん反り返っているテラナーの男、サージュ・ヴォロンテは無視・・・

ネコ型のロボット、タイニーは自分と同じ姿をしたロボットをじろじろと見つめていた。

「たしかに見た目はそっくりだがよぉ・・・」

「やぁ!!ボクの名前はタイニー!!愛と勇気だけが友達の、みんなの正義の味方さ!!」

「・・・キモっ!!」

自分と同じ姿で自分が絶対言わないような事を言うロボットはとてつもなく違和感が・・・

ガマンできなくなったタイニーは腹立ち紛れに爪を振り切った。

指先から発射された流体金属が爪跡を刻んで、ボトリとロボットの首を落とす。

「なんだよコレ!!めちゃくちゃ気持ち悪いんだけど!!」

「っふふふ、分かっていないな君は!!コレこそがボクの最高傑作が最高傑作たる理由なのに!!」

「最高のキモさって!?」

「さっきから君はキモいキモいと、本当に嫌な奴だな!!傷つくじゃないか!!・・・じゃなくて、それが“コピーミラーマン”の力だ。身体能力をそっくりコピーし、そしてその性格はまったく逆のロボットをつくり上げる事が出来るんだ!!どうだ凄い発明だろう!!」

確かに凄いのかもしれないけれど、いまいち凄さがわからない・・・

何の役に立つんだかと、タイニーはサージュに気づかれないようにボソリと呟く。

自分の作品を自慢し続けるサージュに興味がなくなったタイニーは、

部屋の片隅で待機しているトリッカーズのコピーロボットたちを見た。

サージュの言いようでは、作るだけで勝手に悪さをしてくれるから

善人且つ身体能力の高い人物を選んだと言っていたが・・・

スリープモードで動かなくなっている彼らを見ていると

タイニーは複雑な気分になった。

「コピーねぇ、オマエらも“誰かの代わり”で作られたって事になるのかな?ろくなもんじゃねぇぞソレ・・・自由が一番ってな」

今回のサージュの実験はここまでだ。

役割の無くなったコピーロボットたちも用済みということになる。

タイニーを通じてドローア教授にも報告が言っているし、

じっちゃんも結果には満足しているらしい。

あとはちょっとしたお使いを済ませてくるだけだ。

 

コイツらが壊されようが捨てられようが、タイニーには興味が沸かなかった。

 


 
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