No.416390

(改訂版)真・恋姫無双 ~2人の飛将軍~ 第3話

cavalさん

新たな地に降り立った3人はそれぞれの気持ちを持ちながら足を進める・・・そして・・・・

第1話の変更はありません。
第1話⇒http://www.tinami.com/view/226737

2012-04-30 18:43:07 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:9520   閲覧ユーザー数:7723

第3話

 

Side Kazuto

 

「う、う・・・ん・・・」

 

なにかデジャブを感じながら一刀はゆっくりと目を開け、周りを見渡す。

 

以前この世界に来たときとは違い、今回は鬱蒼と木々が生い茂る森林のなかにいた。

遠くからは鳥の声やおそらく熊と思われる唸り声も小さくきこえてくる。

 

「そうだ・・・刀は・・・?」

 

周りを探してみると自分が倒れていたところからすこし離れたところに転がっていた。一刀はゆっくり立ち上がり、刀を手にする。

 

「軽い・・・」

 

この世界にきて兵士が使う剣はもったことのある一刀にとって、その刀の軽さは驚愕するのに十分だった。一刀は左手で鞘を持ち、右手で刀をひきだした。その刀の刃にはよごれも欠けているところもない、美しい乱れ刃を持つ刀。

 

「これで人を斬る・・・のか・・・」

 

前の世界、一刀は赤壁を除けば、桃香や朱里たちとともに本陣にて皆の帰りを待っていた人間。現代にて剣道はやってはいたものの、真剣による戦闘など、一高校生にあるはずがない。つまり、一刀は、人を斬ったことはない。しかし「導くもの」から、自分の力で切り開かなければならないことが起きると・・・。

 

「どのようなものになるかは、わからないけど・・・みんなにまた会うために動くしかないか・・・まずは、この森を抜けてどこかの都市に向かわないと」

 

そうつぶやいた一刀は先の暗い森の中に足を踏み入れていった。

 

Side Nenene

 

「ここはどこなのですか・・・恋殿~バカ君主~・・・!」

 

謎の女性に言われるままに、一刀の手を取った音々音が次に目を覚ますと、恋、一刀の姿はなく、森の中で1人だった。それからしばらくの間音々音は2人の姿を求めて周りを探し回ったが、見つけることができない。元々体力がない音々音は大きな木にもたれかかって、木々の隙間から見える空を見上げた。そして寂しさからか、音々音は昔の自分を思い出していた。

 

―――音々があのバカ君主に出会ったのは、反董卓連合のあとだったのです・・・。最初はいままでのように卑しい気持ちで恋殿に近づいてくる男に違いないと思って、何度も「ちんきゅーキック」を食らわせたのに・・・いつも最初だけ怒って、すぐに音々にほかのみんなにも見せる笑顔を見せてくれたのです。いままでの男は、ちんきゅーキックを食らわせたら、気味悪がって離れていったのに・・・そしてあのバカ君主は恋殿だけでなく音々にも近づいてきたのです。それから恋殿と共にバカ君主と過ごしているうちに、音々の中にいつもと違う気持ちが生まれてきたのです。そして音々は恋殿と共に・・・あ、愛された・・・

 

「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!音々はなにをおもいだしてるのですか!!!ああ、もう!!こんな気持ちになるのも全部バカ君主が悪いのです!!見つけ出して『ちんきゅーキック』を食らわせてやるから覚悟してるのですー!」

 

そう空に叫ぶと顔を真っ赤した音々音は暗い森の中に駆け出し消えていった。

 

Side Ren

 

「ふみゅ・・・すぅ・・・すぅ・・・」

 

幸せそうに寝ていました。一刀と音々音は動き始めてますよ~。

 

「・・・もうちょっとだけ・・・すぅ・・・すぅ・・・」

 

のんびりマイペースな恋さんでした。

 

それから1時間後、ようやく目を覚ました恋は触覚のように伸びた髪をピコピコ動かしながら見回すと、

 

「・・・ご主人様こっち・・・ねねもいそう・・・」

 

そうつぶやくと方天画戟を持ち、ゆっくりと森の中に入っていった。

 

邪魔な木を戟で払いながら進んでいく、恋。その顔は赤壁のときとは違い、とても穏やかであった。

 

 

 

 

森に足を踏み入れてから3時間ほどが経過し、さすがに歩き疲れた一刀は偶然見つけた小川で休憩を取っていた。靴を脱いで、熱をもった足を冷たい川につける。

 

「あー、冷たくて気持ちいいな・・・」

 

熱をもっていた足が急速に冷やされていくのが実感できた。

季節は肌で感じる感じ春なのだろう、日差しは暑いというよりも暖かい。風も適度に吹いている。こんな状況で眠気が来ないというのは逆におかしいだろう。それは一刀も例外ではなく・・・

 

「なんか眠たくなってきたな・・・休憩かねて横になろうかな・・・」

 

熊などの猛獣に襲われるかもしれないという考えが一切浮かばなかった一刀は川からすこし離れて、木に寄りかかり寝息を立て始めた。

 

そこに・・・

 

「あ!いやがったのです!ち~んきゅ~キッィィィィィィィィィィィク!!」

 

「たわらばっ!」

 

一刀は突然飛来した物体によって吹っ飛ばされた。眠気がちょうどよかったのと、寝ている人になにすんじゃぁ!という怒りがわきあがってきた。

 

「だれ・・・だ・・・」

 

しかし、その怒りは目の前にいる少女を見ると、一瞬で消え去った。その少女は小さい体を大きく見せようとしているのか服の袖をパタパタとせわしく動かしている。

 

「このバカ君主!恋殿を悲しませるとは覚悟はできているのですか!」

 

一刀はその言葉に唖然とした・・・自分はまだこの世界に来てから恋に会ってはいない。考えられるのは自分そっくりなのがいること。しかし一刀はその考えはないとなぜか思っていた。だからこそ・・・答え合わせをする・・・

 

「ちょっといいか・・・?おれは赤壁で死んだよな?」

 

「自分が殺されたことすら忘れたのですか!このバカ君主は!お前のせいで恋殿は・・・っ!な、なにするのですか!急に抱き着いてくるなんて!離すのです~!」

 

自分が知っている音々音。自分を知っている音々音。それらが思いついた時、一刀は無意識に音々音の小さな体を抱きしめ、涙を流した。

 

「ごめん、ごめんな、音々」

 

音々音は泣き出した一刀に驚き、暴れるのをやめて一刀の背中に手を回した。

 

「まったく、このバカ君主は・・・いま音々は見てないし聞いてないから泣いてしまえばいいのです・・・」

 

いつもの音々音とは違うやさしい声色に一刀は制御が外れたのか、しばらく音々音を抱きしめたまま泣き続けた。30分ほどして、ようやく一刀は泣きやみ、音々音の体を解放した。

 

「ごめんな、音々。かっこわるいとこ見せちゃって」

 

「音々は何も見てないし、聞いてないのです。だから気にしなくていいのです」

 

顔はそっぽを向いているが、声は相変わらず優しい。落ち着いてきた一刀は最大の疑問を音々に投げかけた。

 

「音々はどうしてここに・・・?」

 

「それは・・・っ!」

 

音々音が問いに答えようとすると、急に森の奥から大きな物音が聞こえてきた。

一刀はあわてて立ち上がり、刀を抜き構える。

 

「音々!おれの後ろにいろ!」

 

「熊やトラだったらバカ君主の力だと敵いっこないのです!」

 

そうこう言いやっている間にその物音は近づいてくる。一刀はその方角をじっと見つめ、呼吸を整えていく。

 

―――せめて音々だけでも・・・

 

「熊なのです!逃げるのですよ!」

 

音々が叫んだ先から2メートルほどの熊があらわれた・・・が・・・?

 

「・・・ご主人様・・・ねね見つけた」

 

「「へ?」」

 

なぜか・・・熊の背中に自分たちがよく知る天然癒し系が乗っていた。

 

「「恋(殿)!」」

 

「ありがと・・・」

 

恋は乗っていた熊から降りて話しかけると、熊はすこし嘶いたあと森の中に消えていった。

 

「ご主人様・・・ねね・・・無事でよかった」

 

その言葉に音々が最初に動き、恋に抱き着いた。

 

「恋殿~!どこにいらっしゃたのですかぁ・・・音々は心配しましたぞぉ~」

 

「ごめん、音々」

 

抱き着いてきている音々音を恋は笑みを浮かべながら音々音の髪を梳いてあげる。そして、顔を一刀に向けると・・・

 

「よかった・・・ご主人様とまた会えた・・・」

 

「恋・・・本当に恋なのか・・・?」

 

音々音がいるだけでも驚きだったのに、恋までいる・・・。一刀の頭はオーバーヒート寸前になっていた。一刀からの問に恋は笑顔で頭に縦に振り、肯定を示した。一刀はいるかも分からない神様にこの奇跡を与えてくれたことに感謝をした。

 

 

 

また泣き始めた一刀を恋と音々音が慰め、一刀たちがようやく落ち着いたのは、1時間ほどたった頃。南の空にあった太陽は西に傾き始めていたために、3人は河原で簡単な野宿の準備に取り掛かっていた。恋曰く、この森を抜けるのには1日仕事になるとのことだったからだ。

一番非力な音々音は葉っぱなど寝床になる部分を担当し、元々こういうのになれている恋が食料を、3人のなかで一番マシな料理が作れる一刀が火を起こしてごはんの準備を進めていく。

そうこうしているうちに、恋が両手にいっぱいの川魚を取ってもどってきたので、音々音がひろってきた木の枝を川であらって木櫛としてつかい、魚を火の回りに置いた。

徐々にあたりに広がる香ばしい香り。

 

「恋、音々・・・魚が焼けるまでにこれからの話をしようか」

急に語り始めた一刀の反対側。向かい合うように恋と音々音は座り、一刀の言葉を待つ。

 

「2人とも、おれと同じ女性に会っているみたいだね・・・『導く者』とおれは呼んでいるけど・・・彼女によれば、この世界でおれは何かを成さないといけないらしい」

 

「何かとは、ずいぶん抽象的なのです・・・それでバカ君主はどうするつもりなのです?」

 

「そうだね・・・おれは1度死んでしまった身だ。でも・・・この世界がまた、あの乱世で、そして『天の御遣い』という希望があるのであれば・・・やることは・・・1つだ」

 

そういうと一刀は立ち上がり、自分をしっかりと見つめくれる、愛する女性たちに手を差し出す。

 

「飛将軍、呂奉先、そして飛将軍を支え続けてきた参謀、陳公台。おれは・・・もう1度この乱世を駆ける。今度はただの飾りではない・・・本当の救世主として・・・だが、今のおれにはそんな力も知もない」

 

そこまでいうと一刀は一度言葉切った。

 

「2人とも・・・おれに力を貸してくれ」

 

「・・・ん。我が名は呂布、字は奉先、真名は恋・・・我が深紅の呂旗は常に貴方のそばにある」

 

「まったく、このバカ君主は何をいってるのやら・・・名は陳宮、字は公台、真名は音々音。しっかり支えてやるから感謝するのです」

 

2人はそう答えながら一刀の手を取った。その様子を見ていると以前の世界で桃香たちと同じような誓いをしたのを一刀は思い出された。しかし・・・

 

―――恋や音々の話が正しいのならば・・・ほかにあの世界からこの世界に来ることのできた子はいないのだろう。それを悲しんでいる場合ではない・・・なぜなら死んでしまったのにもかかわらず、自分がいた世界を捨ててまでおれを助けに来てくれた2人がいる。だからこそ2人のためにもおれは死ねない・・・そして2人を守れるぐらい強くなってみせる・・・

 

一刀は心の中で覚悟を決めると、夜空に輝く満月を見上げた。こうして、一刀は、恋、音々を仲間に新たな外史を歩み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ご主人様・・・・魚が・・・まっくろ・・・」

 

「あっ!」

 

「まっくろこげなのです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにこの後まっくろに焦げた魚は、恋がおいしくいただきました。

 

「・・・焦げてたけど・・・おいしかった・・・」

 

 

あとがき!

 

気が付いたら以前の3話の感じが一切なかったでござるの巻。

まぁ、端折ったところを書いている感じなので、いいのかなとおもってます。

 

音々音を登場させたのはいいのだが、なんかヒロイン交代してねぇか?って思いましたけど、以前の作品ではあまりに空気な役だったので、作者の音々音に対する罪滅ぼしとおもってください。

 

はい、この3話は一刀の心境~音々音~恋とつないで、最後は合流。といたってベタな感じになっております。

実はもう1つの流れがあって、この場所では恋のみに出会って、修行中に音々が来るみたいな感じも考えていたのですが、一緒に来たはずなのに、その差はひどいよなとおもいやめました。

文字数は今回で約4500文字ぐらいです。一郎太さんたちみたいに1万超えはなかなか難しいですね・・・・

4話からは修行編。師匠と呼ばれる人を登場させる予定でし。

 

ではではノシ

 


 
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