No.413130

ゲイム業界へようこそ!その28

筋肉筋肉~!筋肉いぇいいぇーい!

2012-04-23 20:24:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2180   閲覧ユーザー数:2077

 

 

私は負けられない…。

 

 

 

 

ネプテューヌとの戦闘中、あちら側にパーティーの仲間が加わった。さっきまで1対1でいい勝負だったのに、これでは誰が見ても勝敗は分かってしまう…。

 

 

 

 

私は負けられない…。

 

 

 

 

私の片思いである彼の人は、ネプテューヌの後ろからこちらを見守っているようだ。

 

私に向けるその顔を何かに思い悩み、苦しんでいるようだった。そんな彼に今の私は何もしてあげることが出来ない。歯がゆさだけが募っていく…。

 

 

 

 

私は負けられない…。

 

 

 

 

そんな彼を背においてか仲間が加わってかは知らないが、ネプテューヌは余裕の表情を浮かべて、私に言葉を言い放った。

 

 

 

「卑怯だと言わないわよね?これでも彼女達は私のパーティーだから、一緒に戦ってもらうのも当然。別に一対一で戦う縛りもなかったでしょうから問題ないはずだけど?」

 

 

 

 

そんなこと言われなくたって分かっているわ…、卑怯だんて思うわけないじゃない……。

 

 

それでも…それでも……。どうしても私は思ってしまうのだ。心で感じてしまうのだ。別に相手の仲間が増えたから卑怯だとか思ったわけじゃない。

 

彼を…私の唯一人のパーティーであるレンを、私から容易く引き離してしまっている彼女が…、ネプテューヌが疎ましいのだ。堪らなく憎いのだ。

 

 

 

彼女のことをここまで心の底から嫌いだと思ったのは今回が初めてだった。

 

 

どんなことでも私の一つ上を常に行くネプテューヌ。負けっぱなしの私は、次こそ、今度こそと彼女に勝つ為、ずっと一人で頑張り続けてきた。負けることは本当に悔しいが、それでも今までの彼女との勝負は、私の負けた理由が必ず存在していて、私自身がそれを認めて、次に生かそうが努力してきた。

 

 

ネプテューヌはそんな私の一方的な勝負に、嫌々ながらも付き合ってくれていたのだ。だから彼女に対して、私は感謝はしても恨むことなど絶対になかった。そう、彼女のことは嫌いじゃなかったのだ。

 

 

 

そんな私に転機が訪れたのだ。それはもちろん、井上 煉という存在だった。

 

 

 

彼は初めて私のことをよく理解してくれた人で、私の唯一人のパーティーになってくれた。一緒にご飯も食べたし、街の店もたくさん見て回った。私の些細な手料理に涙まで流してくれた。まだ数日しか経っていなのに、私は彼の隣にいることに安らぎを得ていて、彼のことばかり想うようになっていたのだ。それは当に私の初恋だった…。

 

 

何故か知らないがそこに、本当か嘘か知らないが記憶を失ったネプテューヌがいきなり割り込んできたのだ。そして私の片思いのレンに執拗にくっ付いてくる。それはまるで、レンを巡って私と勝負しているかのように…。

 

 

 

しかし、今回初めてこの勝負は私が勝ったように思えた。彼と親しく話せているのは私だけのようだし、なにより彼が持っていた孤独の寂しさは私しか知らない。ネプテューヌに『恋』という名の勝負で初めて勝ったと思ったの。そう思ったはずだったのに…。

 

 

 

ネプテューヌは何の前触れもなく、私の大事な人を奪っていったのだ。しかも、その奪われた彼の表情からは、いつも私に見せてくれていた明るい笑顔が消え、切なげに悲しい表情を浮かべている。私は彼のあんな苦しそうな顔を見たくはなかったのだ。

 

 

 

そんな彼を他所に、仲間を加えこちらに微笑を向けたネプテューヌが、今まで生きてきた私に初めて『憎しみ』という感情を持たせたのだ。

 

 

 

今の状況から誰がどう見ても私に勝ち目は無いと思うだろう。それは私自身がそう思うんだ、戦うだけ無駄なのかもしれない。

 

 

 

それでも私は無駄と分かってても戦うのだろう。理由は簡単だ、勝ち目が無い戦いだからと言って、この勝負は絶対に負けれないからだ。そう、私は……。

 

 

 

 

 

 

「べ、別に構わないわ!3人になったからって私はあなた達なんかに絶対…絶対に負けないんだから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには一瞬だけ、強い風が吹き荒れた。

 

 

 

 

それは果たして自然の現象だったのだろうか?誰かが起こした力の影響だろうか?私には分からなかった。

 

 

 

ただ私はその一瞬の風が止む頃には、既に誰かに抱きしめられていたようだ。しかしそれは別に気持ち悪いわけではなく、とても居心地が良かった気さえする。

 

 

 

そして抱きしめてくれた人は私の耳元で呟いたのだ。その言葉に安心してしまった…。涙が途端に溢れてしまった…。

 

 

 

 

 

 

「無理しなくてもいい。もう、俺の唯一人の仲間を悲しませはしない。」

 

 

 

 

 

ああ、どうしてあれだけ約束していたのに忘れてしまっていたのだろう。馬鹿みたいだわ…、ホント私のばか……。


 
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