No.412759

孤高の御遣い Brave Fencer北郷伝51

Seigouさん






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2012-04-22 22:36:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:11490   閲覧ユーザー数:8009

一刀「(ああ・・・・・・無様だな・・・・・)」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

一刀「(でも・・・・・これも因果応報・・・・・か・・・・・)」

 

 

 

・・・・・ぁ・・・・・・・・ぁ・・・・・・・・

 

 

 

一刀「(まぁ・・・・・これも償いかな・・・・・)」

 

 

 

・・・・・ぉ・・・・・ぁ・・・・・ぉ・・・・・

 

 

 

一刀「(今まで俺のやってきたことと比べれば・・・・・なんてことはないか・・・・・)」

 

 

 

か・・・・ま・・・・・・ご・・・・・・ま・・・・・

 

 

 

一刀「(俺の安っぽい命ですむなら・・・・・いくらでもくれてやるさ・・・・・)」

 

 

 

かず・・・・・様!・・・・・・ご主人・・・・あ!・・・・・

 

 

 

一刀「(なんだよ・・・・・さっきからうるさいな・・・・・)」

 

 

 

起きて!・・・・・・様!!

 

 

 

一刀「(もう疲れたよ・・・・・いい加減眠らせてくれ・・・・・)」

 

 

 

お願いです!!!死なないでください!!!ご主人様!!!

 

 

 

一刀「(え?・・・・・この声は・・・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・ぅぅ・・・・・・ぐぅぅぅ・・・・・」

 

雫「あ!!?一刀様!!一刀様!!」

 

恋「ご主人様!!」

 

愛紗「ああ・・・・・よかった・・・・・よかった・・・・・ご主人様・・・・・」

 

桃香「うわぁ~~~~~~~ん・・・・・ご主人様ぁ~~~~」

 

時雨「うううううう・・・・・旦那様ぁ・・・・・」

 

目を覚まし真っ先に飛び込んできたのは、涙を流しながら自分の顔を覗き込んでいる一同だった

 

一刀「・・・・・みんな・・・・・何で泣いてるんだ?」

 

雪蓮「何言ってるのよ!!?一刀!!」

 

一刀「天下一品武踏会は?」

 

思春「は!?あんなことがあっては中止に決まっているだろう!!」

 

一刀「・・・・・あんなこと?」

 

雪蓮「あの鏡の中から出てきたもう一人の一刀よ!!・・・・・覚えてないの!?」

 

零「そうです!!ご主人様は、両腕と右足を切断されたんですよ!!」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

一刀は、ぼやけた頭で記憶を手繰り寄せていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇一刀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀が振り下ろした黒い太刀筋は、途中で止められていた

 

雫「~~~~~~~っ!!」

 

零「~~~~~~~っ!!」

 

時雨「~~~~~~~っ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

雫と零と時雨が仰向けに倒れた一刀に抱きつくように庇い、他の将達は闇一刀の前に立ち塞がっていた

 

闇一刀「・・・・・ふんっ」

 

「!!!??」

 

その様を見た闇一刀は、剣を引き背を向けた

 

そして

 

闇一刀「おい、聞こえているか?俺?」

 

一刀「ぐうううう・・・・・うううううう!」

 

雫「一刀様!!動かないで下さい!!」

 

一刀「うう・・・・・あぐうううううう!」

 

華陀「止めろ一刀!!このままじゃ出血多量で死ぬぞ!!」

 

雨の中、一同が必死で一刀の傷口を押さえ出血を抑える

 

そんな凄惨な光景が繰り広げられる中でも、かまわず闇一刀は続けた

 

闇一刀「いま少し時間をやろう、次に会う時までにお前の描く理想とやらを俺に提示してみろ・・・・・さもなくば・・・・・」

 

少し間を置き、再び語りだす

 

闇一刀「・・・・・俺はお前を、跡形も無く消し去ってやろう」

 

チンッ

 

そして、左手に持った忠久を右腰に納め雨の中を許昌の城へ向けて去っていった

 

一刀「・・・・・・・・・・っ」

 

一刀は首を横にしそのまま気絶した

 

雫「一刀様!!!一刀様!!!」

 

零「目を開けてください!!!ご主人様!!!」

 

華陀「拙い!!!徐栄!!!張済!!!一刀をあの店に運ぶぞ!!!」

 

徐栄「はい!!!」

 

張済「兄上!!!しっかり!!!」

 

雪蓮「一刀!!!しっかりして!!!」

 

桃香「ご主人様!!!ご主人様!!!」

 

華琳「柊!!!雛罌粟!!!」

 

雛罌粟「分かっています!!!華琳さん!!!」

 

柊「一様!!!すぐに治してあげますからね!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、自分は両腕と右足を両断され無残な姿にされたのだ

 

悠「それにしたって、あの後は大変だったぜ」

 

秋蘭「うむ、民達を宥めるのに手間取った」

 

凪「みんな、隊長のことを凄く心配していました」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

ぼやけた頭の中に記憶が蘇ってきた一刀は自分の五体を確認する

 

一刀「・・・・・?・・・・・無くなって・・・・・ない?・・・・・」

 

そう、なぜだか一刀の両手と右足は無くなっておらず、傍から見れば完全に五体満足の状態だった

 

しかし

 

一刀「っ・・・・・っ!!」

 

動かそうとすると途端に激痛が走った

 

華陀「止めろ一刀!!確かにくっつけはしたが、じっくり治療していかないとどうなるか分からないぞ!!」

 

一刀「・・・・・ああ、分かった・・・・・だけど華陀・・・・・いったい何をやったんだ?」

 

華陀「ああ、柊や雛罌粟にも手伝ってもらってな、二人共頑張ってくれたぞ」

 

柊「一様、よかった・・・・・です・・・・・」

 

雛罌粟「うわあぁ~~~~~ん・・・・・」

 

一刀「ありがとう・・・・・柊、雛・・・・・でも、華陀・・・・・いくら五斗米道でも・・・・・」

 

華陀「ああ・・・・・本来であれば、切れた腱を元に戻すことは五斗米道でも至難の業なんだが、何故だかすんなりくっつけることが出来た・・・・・はっきり言って俺もこればっかりはわけが分からん・・・・・一刀、どういうことだか分かるか?」

 

一刀「・・・・・おそらく・・・・・戻し切りの一種だろう・・・・・」

 

雪蓮「戻し切り?」

 

一刀「俺もやったことは無いんだけど・・・・・傷口の組織を潰すことなく綺麗に切ることによって、その後くっつければぴったりと元に戻る・・・・・名刀と達人の技が合わさってようやくできる技だ」

 

華陀「なんだと!!そんな神業が出来るのか!!?」

 

一刀「ああ・・・・・実際に斬るのは大根とかの野菜なんだけど・・・・・人間の体で出来るなんて・・・・・聞いたことも無い・・・・・」

 

雪蓮「つまり・・・・・それほどの早業だったってことね・・・・・」

 

愛紗「・・・・・しかし、よかったです」

 

一刀「・・・・・それにしても・・・・・ここは・・・・・どこなんだ?」

 

華琳「ここは天角よ、一刀」

 

一刀「天・・・・・角?・・・・・許昌じゃ、ないのか?・・・・・」

 

蓮華「何を言っているの!!?あいつから一刀を遠ざけるためじゃない!!」

 

雫「はい・・・・・なんとかあの裏の一刀様に気付かれずに一刀様を無事天角に移すことが出来ましたから」

 

一刀「・・・・・無駄なことだ」

 

雫「え?」

 

一刀「あいつにそんなことは通じない、ここに俺が移ったことなんてお見通しだ」

 

桃香「ええ!!?」

 

零「そんなはずありません!!だってあいつには常に監視をつけていたんです!!ご主人様がここに移っていることなんて知らないはずです!!」

 

一刀「・・・・・そう思うなら、中庭を見てきてみなよ」

 

華琳「・・・・・天和、地和、人和、一刀を見ていなさい」

 

天和「う、うん・・・・・」

 

地和「わ、わかったわ・・・・・」

 

人和「はい・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「・・・・・・・・・・」

 

一刀の言っていたことは本当だった

 

天角の中庭の一角の岩の上に、あの闇一刀が背を向けて座っていた

 

そして、闇一刀はゆっくりとこちらを向く

 

闇一刀「・・・・・曹操か」

 

華琳「っ!!?・・・・・いったい、あなたは何なのよ?」

 

雪蓮「そうよ!!いきなり鏡から出てきたと思ったら一刀を襲うなんて!!」

 

桃香「そうです!!誰なんですか!!?」

 

闇一刀「俺はあの阿呆の闇であり、裏の人格・・・・・あの阿呆の罪の意識そのものとでもいうのかな・・・・・故に、俺はあの阿呆の死への願望を叶え、犯した罪を断罪する為にここにいる」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一同は、もう一度目の前の一刀をよーく観察する

 

華琳「(なによこれ・・・・・)」

 

雪蓮「(そっくりなんてものじゃないわ・・・・・)」

 

桃香「(ご主人様・・・・・あれはご主人様だ・・・・・)」

 

どこからどう見ても一刀に瓜二つ

 

山賊狩りをしていた当時の一刀のように髪を膝まで伸ばし左頬に十字傷があり、忠久と金剛刀を左右逆に装備し外套を羽織り声が低い、それ以外は一刀そのもの

 

まさに、一昔前の一刀をそのまま鏡で見ているようである

 

紫苑「いったい、どうして気付いたんですか?」

 

蓮華「そうよ!あなたには常に監視を付けていたし、一刀は城に戻さないでそのままここに移動させたんだから気付けるはずがないわ!」

 

闇一刀「簡単なことだ、俺の本体は悲しきかなあの阿呆だからな、あの阿呆がどこに居ようとも常に居場所が分かる・・・・・ただそれだけのことだ」

 

華琳「どうしても、一刀を殺すの?」

 

闇一刀「ああ」

 

雪蓮「やってみなさい!!そんなことしたら、次はあんたの番よ!!!」

 

桔梗「そうじゃ!!お館様の仇、どんな手を使おうとも討つ!!」

 

闇一刀「それは無理だな」

 

思春「何を言うか!!?いくら貴様でもここに居る将全員を相手にして勝つことなど出来んぞ!!」

 

闇一刀「そういう単純なことを言っているんじゃない」

 

小蓮「それじゃあどういうことなの?」

 

闇一刀「俺の本体は、あくまであの阿呆だからな・・・・・あいつが死ねば自然に俺も消滅する」

 

「!!!!??」

 

菖蒲「なら・・・・・どうしてこんな自分を殺すようなことをするんですか!!?」

 

闇一刀「・・・・・徐庶、劉備、呂蒙」

 

雫「え!!?」

 

桃香「は、はい!!!」

 

亜莎「はははははいいいいい!!!?なんでしょう!!!?」

 

いきなり呼びかけられた三人は背筋を強張らせる

 

闇一刀「お前達は聞きたそうにしていたな、なぜあの阿呆が何処の勢力にも属さずに旅を続けているのかと」

 

雫「・・・・・・・・・・」

 

亜莎「・・・・・・・・・・」

 

桃香「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「簡単なことだ・・・・・自分の名を歴史に残さないようにするためさ」

 

雫「え?」

 

闇一刀「知っているだろう?あの阿呆はこの世界の未来から来たと・・・・・この時代の記録に北郷一刀という人間の記録は何処にも存在しない」

 

亜莎「そんな・・・・・」

 

闇一刀「あの阿呆は歴史の改変を恐れ、深く歴史と関わることを恐れたがゆえに山賊狩りなんていう遠回りなことをしていたのさ」

 

桃香「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「あの阿呆が董卓の陣営に入った時、常に客将という立場に拘り、自分の旗を作らせなかったのもその為・・・・・自分がこの歴史に居たという記録を残さないようにする為だ」

 

月「・・・・・・・・・・」

 

詠「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「だが、結局それも無駄に終わった、三国の仲介役となり、果ては英雄王なんて大それた称号を得たあの阿呆の名は確実に歴史に残る」

 

百合「・・・・・あの~~~、わたくしいまいち実感が湧かないんですけど~~」

 

純夏「ちょっと!?百合!?」

 

闇一刀「なんだ?諸葛瑾?」

 

純夏「・・・・・・・・・・」

 

割と紳士な闇一刀の態度に純夏は唖然としていた

 

百合「はい~・・・・・一刀君が未来から来た事は以前から伺っていましたが~、歴史を変えるということはそんなにいけないことなんですか~?」

 

闇一刀「・・・・・例えばだ、仮にお前達が楚漢戦争時代に遡り、項羽や劉邦に会ったとする・・・・・この戦争の勝者は劉邦のはずなのに、意図的に項羽が勝つ方に仕向ける、そうするとその後果たして漢王朝が存在するかな?」

 

冥琳「・・・・・するはずが無いな」

 

闇一刀「その通り・・・・・最悪、お前達が生まれてきたという事実そのものがなかったことになってしまうのさ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「あの阿呆のやったことは、それとなんら変わらない」

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「もちろん、あの阿呆は意図的にそれを実行したわけじゃない・・・・・聞いているだろうが、あの阿呆が唐突にこの世界に来たと言うのは嘘ではない、あの阿呆も自分がこんなことに成るとは夢にも思っていなかった、もちろん俺もな」

 

桂花「だったら「だからといってな!!」・・・・・」

 

闇一刀「だからといって、そんなことは言い訳にはならん、どんな理由があろうとも過ぎた歴史に介入することは許されない行為なんだよ・・・・・それは、俺達の世界では最大の禁忌である殺人や、邪道とされる戦争、これよりも遥かにやってはならないことなのさ・・・・・お前達はどうだ?見ず知らずの他人に自分達の国の歴史を勝手に弄くられて気分がいいのか?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「俺があいつを殺しても、自分で自分を殺すだけ・・・・・自殺なら是非も無い」

 

杏奈「そんなこと、あなたが決めていいことじゃありませんよぉ」

 

闇一刀「そんな理屈は通用しないんだよ」

 

雪蓮「なら、あなたはもはや一刀じゃない、別人よ!!!」

 

愛紗「そうだ!!!ご主人様に刃を向ける不届き者だ!!!」

 

闇一刀「言ってくれるねぇ、俺が生まれた原因はお前達にだってあるというのにな」

 

愛紗「なんだと!!?」

 

闇一刀「もうとっくにご存知なんだろう・・・・・お前達の起こした戦争によって賊が発生し、それをあの阿呆が討ち、あの阿呆の罪の意識が増大したという事実をな」

 

雪蓮「~~~~~~っ!!・・・・・分かってるわ・・・・・あたし達のせいで、一刀はあんな風になってしまった・・・・・ならば、あたし達はあなたを殺しその責任を取るわ」

 

闇一刀「ほう、やろうというのか?」

 

雪蓮「最初からそのつもりよ!!!」

 

愛紗「覚悟しろ!!!」

 

雪蓮が南海覇王を、愛紗が青龍堰月刀を構え闇一刀に突貫しようと足に力を込める

 

しかし

 

ポンッ

 

雪蓮「・・・・・え?」

 

愛紗「・・・・・な?」

 

「!!!!????」

 

悠「(なんだと!!?一瞬で後ろに移動しやがった!!おまけに気配を一切感じさせず!!)」

 

明命「(はうあ!!?いつ動いたんですか!!?)」

 

凪「(まただ・・・・・回歩と闇歩だ・・・・・)」

 

雪蓮「・・・・・・・・・・」

 

愛紗「・・・・・・・・・・」

 

いきなり目の前の闇一刀が消え、自分の肩に誰かの手が置かれたことを理解したが、愛紗と雪蓮は振り向くことが出来なかった

 

闇一刀「止めておけ、お前達じゃまだまだ役者不足だ」

 

耳元で囁くような声

 

しかし、それは一刀のような甘く優しい声音とは違う

 

その中に優しさは無く、ただただ人を恐怖に陥れる憎悪しか伝わってこない

 

愛紗と雪蓮はその声音に安心感とは程遠い恐怖心を抱く

 

愛紗「かぁ・・・・・ぁぁ・・・・・ぅぅ・・・・・く・・・・・」

 

雪蓮「うぁ・・・・・っ・・・・・ぐぅ・・・・・ぁぅ・・・・・」

 

二人は、その場からピクリとも動くことが出来なかった

 

こうして、肩に手を乗せられている、たったこれだけでも分かってしまう

 

この人が少し力を込めただけで、あっという間に自分達は殺されてしまう

 

それほど圧倒的な各の違いだったのだ

 

愛紗「ぁぁ・・・・・あぁ・・・ぁぁぁぁ・・・・・」

 

雪蓮「くぅぅ・・・・・ぅぅ・・・・・ぅぅぅ・・・・ぅ・・・・・」

 

体の芯から震え上がる二人

 

翠「愛紗!!なにをやっているんだ!!?」

 

鈴々「そうなのだ!!そんなやつぶっ飛ばすのだ!!」

 

蓮華「お姉様!!どうなさったんですか!!?」

 

純夏「雪蓮!!」

 

仲間達が声を掛けるも、上手く息をすることも出来ない

 

闇一刀「せっかく拾った命だ・・・・・無駄にすることも無いだろう」

 

思春「おのれ雪蓮様に何をした!!!」

 

翠「その手を離しやがれ!!!」

 

思春と翠が闇一刀に自分達の武器を振るう

 

シュン!! シュバッ!!

 

思春「っ!!!??」

 

翠「何!!!??」

 

しかし、その攻撃は空を切る

 

いつのまにか闇一刀は二人から手を退けてもとの岩に座り込んでいた

 

愛紗「・・・・・はぁ・・ぁぁ・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・・っ」

 

雪蓮「・・・・・ふぅ・・・・・ふぅ・・・ぅぅ・・・・・はぁ・・・・・ぐぅぅ・・・・・っ」

 

その手が離れた途端、二人はその場にへたり込んでしまう

 

冥琳「雪蓮!!」

 

桃香「愛紗ちゃん!!」

 

愛紗「・・・・・~~~~~~~~っ!!」

 

雪蓮「・・・・・く・・・・・うう・・・・・ぐううう!」

 

自分の親友、儀姉妹が傍に駆け寄るも二人は表情を険しくしたままだった

 

思ってしまったのだ

 

『生きたい』、と

 

愛紗「(情けない、なんて情けない!!)」

 

雪蓮「(あたしともあろうものが・・・・・恐怖に負けてしまうなんて・・・・・)」

 

闇一刀「別に恥じる事はない、この中で俺と対等に戦えるのは、呂布に馬騰はもちろん・・・・・楽進に華雄はいい線行っているが、あと二年はいるな」

 

凪「・・・・・・・・・・」

 

嵐「・・・・・・・・・・」

 

凪も嵐も分かっていた

 

悔しいが、今の自分達ではこの目の前の一刀に勝つことは出来ないと

 

闇一刀「しかしいいのか?俺達が本気でやりあえば、この天角は数刻で壊滅するだろうがな」

 

恋「・・・・・・・・・・」

 

葵「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「俺は別に構わないぞ、もともとこの国の歴史に天角なんて都は存在しないからな・・・・・ここで消滅すればこれもある意味歴史の修正だ」

 

雫「~~~~~~~~~っ!」

 

雫は、一刀をこの天角へ連れ帰ったのは完全な失策だったとこの時気付いた

 

闇一刀「だが安心しろ、そちらから攻めてこない限り俺は手を出さん」

 

斗詩「え?なぜ?」

 

猪々子「なんだよ、割といい奴じゃん」

 

闇一刀「俺の目的はあくまであの阿呆だけだ、お前達は黙ってことの顛末を見届けるんだな」

 

斗詩「・・・・・やっぱり、仲良くなんて出来ませんね」

 

猪々子「ああ、こいつは敵だ」

 

麗羽「そうですわね」

 

闇一刀「それにな・・・・・俺が直接手を下さずとも、あの阿呆はいずれ死ぬ」

 

「!!!!!??」

 

華陀「っ!!!」

 

葵「っ!!!」

 

闇一刀「このままいけば、あの阿呆は・・・・・悩み、苦しみ、罪の意識に耐え切れず・・・・・狂い死にする」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

葵「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「そうなる前に、今のうちに引導でもくれてやるのが、せめてもの慈悲だと思わないか?」

 

桃香「そんなことないよ!!」

 

雫「そうです!!そうなる前にわたし達が一刀様を救って見せます!!ですから「無理だな」・・・・・え?」

 

闇一刀「どんな女でも、あの阿呆を救うことは出来ない、そう・・・・・どれほど出来た女であろうともだ」

 

雫「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「あの阿呆の見の内に巣食う闇は、そんな甘いものじゃない・・・・・想像できるか?たった一人で100万もの人間をなで斬りにしたあの阿呆の心の闇を、そのために俺のような存在が生まれたんだからな・・・・・まぁ、俺もどうして自分がこっちに出てこれたかは分からんがな、あの鏡のおかげであることは確かだが、これもある意味では歴史の修正だな」

 

「・・・・・・・・・」

 

闇一刀「あの阿呆は、本来であれば存在していいはずのない道化だ・・・・・あんな阿呆のことはすぐにでも忘れることだな」

 

春蘭「おのれ黙って聞いていれば勝手なことばかりぬかしおって!!!」

 

秋蘭「そうだ!!喋る度にいちいち阿呆阿呆と連呼しおって!!!」

 

季衣「そうだよ!!いくら兄ちゃんに瓜二つだからって許さないよ!!」

 

流琉「その言葉を撤回してください!!」

 

闇一刀「その通りなんだからしょうがないだろう・・・・・お前達はあの阿呆に好意を抱いているようだが・・・・・止めておけ、お前達の恋は、間違った恋だったんだよ」

 

雫「っ!!?そんなことありません!!」

 

闇一刀「それがあるんだよ・・・・・趙雲、お前はあの阿呆から聞いているだろう?」

 

柊「星さん!!?」

 

雛罌粟「ご主人様から何を聞いていたんですか!!?星さん!!」

 

星「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「あの阿呆は言っていたよな?自分はこの世界にとっては・・・・・イレギュラー、存在するはずの無い幻だとな」

 

星「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「あの阿呆はただの詐欺師・・・・・ただの頭のいかれた大量殺人犯だ」

 

星「・・・・・まれ」

 

闇一刀「そこにいる関羽だって、あの樊城の戦いで「黙れ!!!その汚い口を閉じろ!!!」・・・・・」

 

桃香「・・・・・せ・・・・・星ちゃん・・・・・」

 

愛紗「・・・・・星・・・・・」

 

桃香も愛紗もいつも飄々としているが基本的には冷静沈着な星がここまで怒りを露にするところは始めて見た

 

星「主が詐欺師?イレギュラー?・・・・・そんな事、我々には預かり知らぬことだ!!!」

 

闇一刀「・・・・・・・・・・」

 

星「未来の人間?歴史?・・・・・自惚れるな!!!自分が森羅万象全ての理を司る全知全能の神にでもなったつもりか!!!?烏滸がましいにも程があるわ!!!」

 

闇一刀「・・・・・・・・・・」

 

星「それとも何だ!!!?我々が今まで成してきたこと、この国を平和に導きたいという崇高な志も、貴様にとっては最初から決まりきっていた筋書きだったとでも言うのか!!!?」

 

闇一刀「その通りだよ、趙雲」

 

星「なっ!!!??」

 

闇一刀「俺達の世界からしたらこの世界で起きたことは、1800年も前の過去の出来事なんだよ、すでに過ぎ去った歴史、教科書や本の中にしか存在しないものだ・・・・・ただしその中に北郷一刀なんて人物は影も形も存在しないがな」

 

星「お主達の世界がどんな世界であったかなど我々には関係ない!!!お主らの世界の理屈を我々に押し付けるのは止めろ!!!」

 

闇一刀「趙雲の言うことも御尤もだ・・・・・だからこそ、俺はあの阿呆を殺す」

 

星「な!!!??」

 

闇一刀「未来の価値観を過去の人間に押し付けることはできないし、してもならない・・・・・ゆえに、あの阿呆はこの世界にとって邪魔者でしかないのさ」

 

星「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「あの阿呆はこの世界の未来からやってきた存在・・・・・すでに過ぎ去った過去に未来の人間が関わることがどれほど異常なことか分かるか?」

 

星「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「つまりはそういうことだ・・・・・孫策や周瑜もあんな阿呆のことは忘れて大喬や小喬とでもくっついているんだな」

 

雪蓮「っ!!!??・・・・・どうしてあなたが大喬と小喬のことを知っているの!!?」

 

冥琳「誰か話したのか!!?」

 

明命「いいえ!話してません!」

 

思春「わたしも」

 

純夏「あたしも話してないわよ!」

 

祭「わしもじゃ」

 

蓮華「わたしも話していないわ!」

 

小蓮「大ちゃんと小ちゃんを知ってるの!?」

 

桃香「え?え?なになに?どういうこと?」

 

音々音「自分達だけで納得してないで説明しろなのです!」

 

桂花「そうよ!大喬や小喬って誰なの!?」

 

雪蓮「・・・・・大喬と小喬というのは、あたしと冥琳が将来を供にすると誓い合った子達よ」

 

冥琳「ああ、二人共よく出来た子達だった・・・・・」

 

闇一刀「そうだ・・・・・お前達には未来を誓い合った伴侶が居るんだろう、そいつらを無視してあんな阿呆なんかとくっついてるんじゃないぞ」

 

雪蓮「何を言っているの?大喬と小喬は死んだわ」

 

闇一刀「なに!?」

 

冥琳「当時は我々も劉表と戦っていたからな、葬儀は執り行えなかったが・・・・・」

 

闇一刀「・・・・・ちなみにそれはいつのことだ?」

 

雪蓮「母様が戦死する前だから・・・・・」

 

冥琳「6年前の話だ・・・・・二人共流行病だった・・・・・」

 

彩「ということは、一刀殿がこの大陸に来る前の話だな」

 

闇一刀「・・・・・さらに聞くが、大喬と小喬は男か?女か?」

 

雪蓮「両方とも女の子よ」

 

冥琳「我々が恋心を抱いたのは一刀だけだ、大喬と小喬とは確かに将来を共にすると誓い合ったが、それは侍女としての話だ」

 

雪蓮「だいたい女同士で断金の契りならともかく、結婚なんて出来るはず無いじゃない」

 

闇一刀「・・・・・それは本当なのか?」

 

冥琳「本当のことだ、我々が愛した娘達だ、忘れるわけが無かろう」

 

闇一刀「(・・・・・どういうことだ?・・・・・大喬と小喬がこの世界に来る以前に死んでいる?おまけに女だと?ならば孫策の息子の孫紹、周瑜の息子の周循、周胤はどうやって生まれてくる?)」

 

ここでも大いなる矛盾が発生していることに闇一刀も頭を捻るが、答えを導き出すことが出来ない

 

風「・・・・・その御様子だと、どうやらお兄さん達の知っている歴史と風達の暮らすこの世界の歴史はかなり違っているようですね~」

 

闇一刀「・・・・・・・・・・」

 

稟「風、何か知っているの?」

 

風「はい~、お兄さんは言ってましたよ~、この世界は細かい点を見ていけば全く別の歴史だと~・・・・・この際一切合切教えてくれませんか~?裏のお兄さん~、この世界はお兄さん達の知っている歴史とどこが違うのかを~」

 

闇一刀「・・・・・・・・・・」

 

一瞬躊躇った闇一刀だが、ゆっくり口を開き、語りだした

 

闇一刀「・・・・・まずは根本的な話からしよう、この世界の歴史は三国志演義を元に作られている」

 

雪蓮「三国志演義?」

 

闇一刀「俺達の世界で有名な小説だ・・・・・魏の曹操、呉の孫権、蜀の劉備が攻防を繰り広げる一大古典だ」

 

春蘭「ちょっと待て!!ならばこの世界は貴様の言う小説、絵に描いたような世界でしかないというのか!!?」

 

闇一刀「そうであってそうではない・・・・・実際三国志演義という物語も史実で実際に覇権争いをした魏呉蜀の歴史を元にした小説だからな・・・・・ただし、史実7割、作り話3割と言われているがな」

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「そして、その三国志の世界に出てくる武将、軍師達は全員・・・・・男だ」

 

「!!!!???」

 

闇一刀「そうだ、この世界は三国志の歴史で活躍した主な武将達の性別が入れ替わっているんだよ」

 

焔耶「なんだ、完全に別の歴史ではないか」

 

桔梗「ああ、ワシらの住むこの大陸は常に男女平等・・・・・いや、どちらかというと女尊男卑に近いかも知れんしな」

 

華琳「ええ、ここ数百年の歴史でも男の身で結果を示し、名を残した者は殆ど居ないわ」

 

聖「この国の皇帝は、常に男子がなっているが、男子がならなければならないという決まり事があるわけではない」

 

杏奈「ご主人様くらいですよぉ、殿方でこれほどの結果を残したのはぁ」

 

稟「だいたい、重要な人物の性別が入れ替わっているという時点で、すでに致命的です!」

 

闇一刀「それについては俺も同感だ」

 

翠「ならご主人様を殺す理由は無いだろう!!」

 

闇一刀「確かにこの世界の歴史は、俺達の知っているそれとはかけ離れたものだ・・・・・だがな、それとこれとは話が別なんだよ」

 

白蓮「なんでだよ!!?」

 

闇一刀「あの阿呆が本来あるべき歴史を捻じ曲げたことは紛れも無い事実、あの阿呆が消えるべき存在であることに変わりは無い」

 

風「そこまで教えてくれるとはなかなか律儀な人ですね~・・・・・でもいいんですか~?お兄さんのことをあ~だこ~だいってる割にあなたがこうして未来の情報を風達に与えてしまっても~」

 

闇一刀「単純なことだ・・・・・あの阿呆がここまで介入してしまった以上、この世界の歴史は本来の歴史に戻ることはもはや無いからだ」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「曹操、お前はあの阿呆から聞いているだろう?この乱世の行く末を」

 

華琳「っ!!??」

 

桃香「華琳さん!!?ご主人様から何を聞いたの!!?」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

愛紗「華琳殿!!どうして黙っているのですか!!?」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「晋の国が大陸を統一するのは、今から約100年後だと」

 

朱里「ええ!!??」

 

雛里「100・・・・・年?・・・・・」

 

稟「100年ですって!!?」

 

桂花「ちょっと!!?冗談でしょ!!?」

 

風「これは思いもよらない数字が飛び出てきましたね~・・・・・」

 

冥琳「乱世が100年続くだと!!?」

 

穏「100年・・・・・これは、戦国時代には及びませんがそれでも長いですね・・・・・」

 

亜莎「そんな・・・・・そんな・・・・・」

 

闇一刀「さらには、その晋の国はそこに居る司馬懿によって作られるはずだったこともだ」

 

沙和「ええ!!??零さん!!?なんで零さんなの!!?」

 

真桜「ほんまなんか!!?ほんまに零の姐さんが!!?」

 

零「・・・・・ええ・・・・・わたしもご主人様から聞いているわ」

 

朱里「・・・・・・・・・・」

 

雛里「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「そして、ようやく統一したその直後、晋の国は異民族の侵略を受ける」

 

零「な!!!?どうしてそんなことに!!!?」

 

闇一刀「・・・・・曹操に聞いてみろ」

 

零「っ!!・・・・・華琳様!!お答え下さい!!なぜ晋はそうも容易く蛮族の攻撃を許したんですか!!?」

 

華琳「・・・・・乱世が長く続きすぎて、国を統一するのが遅かったからよ・・・・・」

 

零「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「原因はそれだけではないが、概ねその通りだ・・・・・だがな曹操、その先は知らないだろう」

 

華琳「!?・・・・・その先ですって?」

 

闇一刀「晋の国が大陸を統一し、その後異民族の侵略で国が真っ二つになった後だ」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「異民族の侵略は何とか防いだ・・・・・だがその後、すぐにこの国は・・・・・東晋と西晋に別れ再び争いの真っ只中に放り出される」

 

華琳「な!!!??」

 

零「なんで!!?どうしてそんなことになるのよ!!?いったいなにがあったって言うのよ!!!?」

 

闇一刀「なんてことはない、三国がお互いに覇権争いをしていた三国志と同じ、ただのくだらない身内での権力争いさ」

 

零「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「そして、黄巾党の乱から始まったこの乱世が終り、本当の意味での太平の世が来るのは・・・・・ざっと、400年後だ」

 

華琳「なぁっ!!!??」

 

雪蓮「なん、ですって・・・・・」

 

桃香「そんな・・・・・そんなことって・・・・・」

 

蓮華「・・・・・・・・・・」

 

この場にいる一同は、闇一刀の言葉に絶句を通り越して頭の中が真っ白になる

 

闇一刀「分かるか?お前達はただ単に無駄で粗暴な意地の張り合いをしただけに過ぎないのさ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「俺達の世界では、この時代のことは・・・・・『三国志』・・・・・ただこの一言で片付けられてはいるが、その中身は・・・・・血で血を洗う凄惨な殺し合い、果ての見えない憎しみ合いでしかないんだからな・・・・・結果、この乱世で一番得をしたのは異民族だったということさ・・・・・それはそうだろうな、異国からすれば、この三国志というのは他国の内乱でしかないんだからな」

 

葵「・・・・・なるほど、お前の言っていることが本当なら確かにこれは最悪の未来だな、だがな・・・・・それで一刀を殺していい理由にはならん!!」

 

蒲公英「そうだよ!!蒲公英達のご主人様をとらないで!!」

 

闇一刀「・・・・・この際はっきり言ってやろうか・・・・・お前達にそんなことを言う資格は無い」

 

翠「なんだと!!?」

 

闇一刀「あの世に天国やら地獄やらがあるとは思わん・・・・・100万歩譲って仮にあったとしても、お前達は天国にだけは決して行けないな」

 

焔耶「桃香様が地獄に落ちるだと!!?そんなことあってたまるか!!!」

 

春蘭「華琳様は、この国の為を思って覇道を歩んだんだぞ!!!」

 

思春「我らが王は自らの役目を果たしただけだ!!それが地獄に落ちるだと!!?ふざけるな!!!」

 

闇一刀「当たり前だろうが!!!赤壁のようなこの世の地獄を生み出し、数え切れないほどの多くの人々の人生を奪い、壊し、狂わせたくせに、自分達はのうのうと極楽に行けるとか都合のいいことを考えていたんじゃないだろうな!!!?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「俺が閻魔大王なら、お前達を天国に招待することだけは決してしないな、血の池地獄にでも突き落としてやるさ」

 

秋蘭「おのれさっきから聞いていれば、華琳様の志を有象無象のように言いよって!!!」

 

霞「せや!!ウチらは武人や!!武人の誇りを掛けて戦かって何が悪いんや!!!?」

 

祭「確かに我らは数多の人を殺めてきた!!しかし、それは自らの道を貫く信念を持ってやっていたことじゃ!!!」

 

桔梗「桃香様の夢は、この大陸の平和だったのじゃ!!!燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや!!!貴様のようなちっぽけな鳥に鳳の大きな志がわかるはずがない!!!」

 

闇一刀「そう思っているのはお前達だけだ!!!お前達のくだらん意地の張り合いに巻き込まれた人々からすれば、お前達の言い分なんぞただの紙切れだ!!!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「お前達は今まで何をしてきた?他人の迷惑を顧みず、ただただ殺し合いをしてきたんだろう!!?ならば今更一人の男が目の前から消えるくらいでグダグダ文句を言うな!!!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「それともなんだ!!?見知らぬ他人が死ぬのはかまわないが、自分達の身近な人間が八つ裂きにされるのは耐えられないとか言い出すってか!!?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「それほど人が死ぬのが恐ろしいなら、最初から戦争なんてするな!!!・・・・・志?誇り?信念?夢?・・・・・そういったものを貫くなら、人様の迷惑の掛からないところでやるんだな!!!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「おっと・・・・・これ以上こちらの理屈を押し付けたところでしょうがない話だな・・・・・今の言葉は取り消そう・・・・・すまなかったな・・・・・」

 

そう謝りながら闇一刀は後ろを向いた

 

そして

 

闇一刀「どちらにしてもおまえ達は北郷一刀が死ぬところを必ず見る・・・・・あの阿呆が死のうが、俺が死のうがな・・・・・まぁ、後者はほぼありえないがな・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「俺達は、この訳の分からない三国志の歴史から退場させてもらう・・・・・お前達はまた新たな敵でも見つけて、殺し合いなりなんなりしているがいいさ・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

雪蓮「・・・・・・・・・・」

 

桃香「・・・・・・・・・・」

 

玉座の間に集まった一同は、思考が定まらないでいた

 

闇一刀が告げたこの乱世の結末があまりにも凄惨過ぎるものだったためである

 

文字通りの阿鼻叫喚、地獄のような乱世

 

なにより、その引き金を自分達が引いていた事実

 

蓮華「・・・・・お姉様・・・・・」

 

雪蓮「・・・・・蓮華」

 

蓮華「わたしは、自分が不甲斐無くて仕方ありません・・・・・」

 

雪蓮「・・・・・・・・・・」

 

蓮華「国の為、民の為を思ってやっていたつもりが、わたし達が一番民達を苦しめることをしていたなんて・・・・・」

 

思春「蓮華様!!あのような輩の言うことを真に受けてはなりません!!」

 

桂花「そうよ!!乱世が400年も続くなんて、そんな馬鹿なこと「真実よ」・・・・・華琳様?」

 

華琳「桂花・・・・・あなたは気付かなかったの?あの裏の一刀の真っ直ぐな目、そして・・・・・あの言葉の重みを」

 

桂花「・・・・・・・・・・」

 

葵「そうだな・・・・・あいつの言っていたことは真実だろう・・・・・」

 

翠「・・・・・・・・・・」

 

蒲公英「・・・・・・・・・・」

 

美羽「・・・・・のぅ、七乃」

 

七乃「・・・・・なんですか?美羽様」

 

美羽「わらわはさっきのもう一人の一刀の話がいまいち分からん・・・・・なぜに一刀が死ななければならないのじゃ?」

 

七乃「・・・・・美羽様・・・・・一刀さんは何も悪くありません・・・・・むしろわたし達は、今まで以上に一刀さんに感謝しないといけないんですから」

 

美羽「・・・・・むぅ・・・・・」

 

彩「その通りです・・・・・・一刀殿がいなければ、我々は400年先までの禍根を残す戦いを繰り広げることになってしまっていたのですから」

 

美羽「・・・・・・・・・・」

 

桃香「・・・・・ねぇ・・・・・愛紗ちゃん、鈴々ちゃん・・・・・わたしのやっていたことって何だったのかな・・・・・」

 

愛紗「・・・・・・・・・・」

 

鈴々「・・・・・・・・・・」

 

桃香「わたしも、みんなが幸せになってくれることを願ってやっていたのに・・・・・結局・・・・・わたしのやったことも・・・・・」

 

愛紗「・・・・・・・・・・」

 

鈴々「・・・・・・・・・・」

 

桃香「わたしは、何もしない方が良かったのかな?・・・・・わたしのやったことって、ただのおせっかいだったのかな?・・・・・」

 

焔耶「桃香様・・・・・」

 

朱里「・・・・・桃香様、項垂れるのはまだ早いですよ」

 

桃香「朱里ちゃん?」

 

雛里「その通りです、あの裏のご主人様の言っていたことを確かめなくてはなりません」

 

桃香「?・・・・・確かめるって・・・・・」

 

詠「本人から聞いた事は、本人に聞けということよ」

 

桃香「・・・・・・・・・・あ!そうか!」

 

華琳「そうね・・・・・戻りましょう、一刀のところに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一同は一刀の部屋へ戻ってきた

 

天和「あ!華琳様!」

 

地和「どう!?あいつ居た!?」

 

華琳「・・・・・居たわ」

 

人和「・・・・・・・・・・」

 

一刀「・・・・・やっぱりな・・・・・あいつが鏡から飛び出してきた時からなんとなく分かっていた・・・・・あいつは・・・・・俺だって・・・・・」

 

華琳「・・・・・一刀・・・・・一つだけ聞きたいことがあるんだけど・・・・・」

 

一刀「なんだい?」

 

華琳「この乱世が収まるのは・・・・・400年後というのは本当なの?」

 

一刀「っ!!!??・・・・・・・・・・あいつから聞いたのか?」

 

華琳「・・・・・ええ」

 

一刀「ということは・・・・・三国志のことも聞いたんだな・・・・・」

 

零「・・・・・はい・・・・・」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

桃香「(お願い!嘘だと言って!ご主人様!)」

 

蓮華「(どうか!どうか!)」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

少し躊躇った一刀だったが、ここまで来たら隠してもしょうがないと思い、搾り出すように答えた

 

一刀「・・・・・本当の事だ」

 

桃香「っ!!!??・・・・・そんなぁぁぁ・・・・・」

 

蓮華「なんて・・・・・なんてこと・・・・・」

 

桃香と蓮華は恐ろしさのあまり、ガタガタと震えながらその場に縮こまってしまった

 

一刀「俺達の知っている三国志は、劉備、曹操、孫策の代だけに留まらず、世代を何代も超えての血で血を洗う乱世が続き、その後せっかく統一した晋の国も、一枚岩ではない不安定な国になってしまうんだ・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一刀「だから・・・・・俺達の知っている三国志に勝者は居ないんだ・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一刀「本当なら、この乱世は400年先まで続くはずだった・・・・・俺はあるべき歴史を捻じ曲げてしまったんだ」

 

雪蓮「でも!あたし達は一刀に感謝しかしていないわ!」

 

一刀「雪蓮達がそう思っていても、歴史全体からしてみれば俺のやったことは完全に間違いなんだ」

 

雪蓮「何であいつと同じような事言うのよ!?」

 

一刀「・・・・・これも因果応報だな・・・・・俺もとうとう罪を償う時が来たんだ」

 

雫「っ!!!一刀様!!!逃げましょう!!!」

 

一刀「!!?・・・・・雫?」

 

雫「あの裏の一刀様の手の届かない遠くへ逃げ延びましょう!!!」

 

霞「せや!!何で一刀が全部悪いような話になるんや!!?こんなんないやろ!!」

 

嵐「その通りだ!!お前は何も悪くない!!償うべき罪などありはしないんだ!!」

 

一刀「・・・・・それは不可能だ」

 

雫「っ!!!??」

 

一刀「どこに逃げようとも、あいつから逃れる術は無い・・・・・次に俺がここを移動することがあれば、その時は容赦なく襲って来るだろう・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一刀「だから・・・・・あいつの相手は俺がする・・・・・」

 

葵「・・・・・戦うって言うのか?」

 

一刀「はい・・・・・俺もただでやられてやるつもりはありませんから・・・・・」

 

葵「あいつに勝てる算段があるのか?」

 

一刀「・・・・・はっきり言って・・・・・何一つありませんね・・・・・」

 

葵「・・・・・・・・・・」

 

一刀「あいつと俺の力量は、はっきり言えば互角です・・・・・でも、細かい点・・・・・氣の扱い、北郷流の熟練度・・・・・総合力で言えばあいつの方が遥かに上です・・・・・」

 

葵「・・・・・なら、お前とあいつを戦わせるわけにはいかないな」

 

一刀「?・・・・・葵さん?」

 

葵「俺があいつと戦う」

 

一刀「な!!?何を言っているんですか!!?葵さ・・・・・ぐぅぅぅぅ!!」

 

華陀「おい一刀!!無茶をするな!!」

 

月「そうです!!横に成っていて下さい!!ご主人様!!」

 

葵「俺が刺し違えてでも、あいつを倒す」

 

一刀「だ、駄目です!!葵さんとあいつが戦えばこの天角は崩壊してしまいます!!」

 

葵「だからなんだ!!?お前を失うくらいなら、都の一つや二つ安いもんだ!!」

 

一刀「いきなり何を言い出すんですか!!?たった一人の人間と都を天秤に掛けるなんて、それでもあなたは涼州筆頭なんですか!!?」

 

葵「お前はこれからこの国に無くてはならない存在だ!!時に一人の人間の命が万の民草より重要になる時だってあるんだ!!」

 

一刀「俺はそんなご大層な人間じゃありません!!俺が消えたところで、この国は十分やっていけます!!」

 

葵「お前こそ自分の価値というものを甘く見過ぎだ!!お前が死ねばここに居る娘達の幸せはどうなると思う!!?」

 

一刀「それが人の上に立つ者の判断だって言うんですか!!?」

 

葵「俺達にはお前が必要なんだ!!死なれちゃあならないんだよ!!」

 

一刀「葵さん・・・・・今の葵さんは個人的な感情を優先しているだけです、そんな判断をして今後この国が正しい方向に行くと思っているんですか?」

 

葵「・・・・・・・・・・」

 

一刀「あいつの相手は俺がします、大丈夫です、どっちが敗れようとも後の世に禍根なんて残りませんから」

 

冥琳「しかし一刀が勝つ場合、あの裏の一刀との実力の差を考えると、決して無傷で勝つというわけにはいかん」

 

亜莎「あの裏の一刀様が勝つ場合は、どちらも死んでしまいます」

 

穏「全然大丈夫じゃありませんよ~!!」

 

柊「そうです!!どちらにせよ一様が傷付いて犠牲になるんじゃ意味がありません!!」

 

雛罌粟「それ以前に、ご主人様同士が戦うところなんて見たくありません!!」

 

一刀「仕方ないさ・・・・・こればっかりは・・・・・みんな、あいつとはあくまで俺が戦う、みんなは絶対にあいつに手を出さないでくれ・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、一同は解散し今後の方針を話し合う者と、途方に暮れる者、今後自分がどうするべきか、自分に出来ることは無いかと思案する者など、様々な者に別れた

 

恋「・・・・・・・・・・」

 

葵「・・・・・・・・・・」

 

凪「・・・・・・・・・・」

 

そんな中、恋と葵と凪は一緒に廊下を歩いていた

 

恋「・・・・・ねぇ・・・・・葵・・・・・凪・・・・・」

 

葵「なんだ?恋」

 

凪「なんでしょう?恋様」

 

恋「一緒に来て・・・・・」

 

葵「ん?どこに行くんだ?」

 

恋「・・・・・ご主人様の所に」

 

凪「え!?隊長は華陀さんの集中治療を受けています!華陀さんも言っていましたよ!暫らく立ち入り禁止だって!」

 

恋「(フルフル)・・・・・もう一人のご主人様のところ」

 

凪「なっ!!?まさか恋様!!?」

 

恋「(フルフル)・・・・・戦いに行くんじゃない・・・・・」

 

葵「・・・・・分かった、一緒に行ってやろう」

 

凪「・・・・・はい」

 

恋「(コク)・・・・・ありがとう・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、恋と葵と凪は闇一刀の居る中庭に向かった

 

 

 

 

 

恋「・・・・・・・・・・」

 

葵「・・・・・・・・・・」

 

凪「・・・・・・・・・・」

 

三人は、廊下の柱の影から中庭を覗き込む

 

闇一刀「・・・・・・・・・・」

 

そこには相変わらず、あの闇一刀が岩の上に背を向け座禅を組んでいた

 

葵「(で、どうするんだ?このまま見ているんじゃ、埒が明かないぞ)」

 

恋「・・・・・・・・・・」

 

恋も具体的にどうしたいという思惑があってここに来たわけではなかった

 

とにかく何とかしたいと思いここに来たのだが、自分がどんな行動をするべきなのか皆目見当がつかなかった

 

凪「・・・・・・・・・・っ」

 

葵「(お、おい!凪!)」

 

恋「っ!!?」

 

凪は、恋の態度に苛立ったのか、一人でつかつかと闇一刀の所へと向かった

 

凪「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「・・・・・・・・・・」

 

そして、闇一刀の真後ろに立ち、右足を一歩引いた

 

ズバシィッッッッ!!!!!

 

葵「っ!!!」

 

恋「っ!!!」

 

凪の痛烈右回し蹴りが唸る

 

空気の切り裂く音だけで分かる、この蹴りをまともに食らえば自分達でもただではすまない、それくらいの威力と速さを誇る渾身の蹴りだった

 

しかし、空気を切り裂いたということは当然かわされたということ

 

闇一刀は、凪の真上を跳び越し、凪の後ろに着地した

 

闇一刀「・・・・・人が瞑想に浸っている時にいきなり蹴りを入れてくるとは、ずいぶんと無粋だな」

 

凪「・・・・・やっぱりあなたは、あの人なんですね・・・・・・」

 

闇一刀「・・・・・楽進か・・・・・馬騰と呂布もそこにいるんだろ?」

 

葵「っ!!?・・・・・やっぱり気付くか」

 

恋「・・・・・・・・・・」

 

完全に気配を絶ち近付いたつもりだったが、やはりこの一刀には通用しないようだ

 

葵も恋も観念し、正面から闇一刀の前に立った

 

闇一刀「で、何をしに来た?」

 

葵「・・・・・戦いに来た・・・・・って言ったらどうする?」

 

闇一刀「別に構わないぞ・・・・・ただしこちらもお前達が相手では手加減なんぞ一切しないがな」

 

恋「(フルフル)・・・・・戦いに来たんじゃない・・・・・」

 

闇一刀「なら何の用だ?」

 

恋「ご主人様!ご主人様と戦うの止めて!」

 

闇一刀「・・・・・呂布・・・・・お前に主人なんぞ居ない」

 

恋「え?」

 

闇一刀「暇つぶしに話してやろう、俺達の知っている呂布奉先の話を・・・・・俺達の歴史の三国志に出てくる呂奉先はな・・・・・裏切りの象徴だ」

 

葵「なんだと!!?」

 

闇一刀「丁原を裏切り、長安にて董卓を暗殺し、劉備を裏切る・・・・・そんなことを延々と続け、最終的には曹操によって縛り首となった」

 

恋「丁原おじさん・・・・・知ってるの?・・・・・」

 

闇一刀「?・・・・・おじさん?」

 

恋「(コク)・・・・・恋にご飯沢山くれた・・・・・恋もおじさん・・・・・いっぱい手伝った・・・・・でも・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「?・・・・・なんだ?」

 

恋「・・・・・ずっと前に・・・・・死んじゃった」

 

闇一刀「っ!!??・・・・・・・・・・やはりお前は、俺達の知っている呂奉先とは別人なんだな」

 

凪「当たり前です!!恋様が裏切りの象徴ですって!!?そんな馬鹿なことがあるはずありません!!」

 

闇一刀「その通りだ、あの阿呆も最初にお前が呂布と名乗った時は、かなり焦っていたがな」

 

恋「ご主人様!恋の真名預けるから!ご主人様と戦うの止めて!」

 

闇一刀「いらない」

 

恋「え?」

 

闇一刀「これから消える相手に預けるものなんぞ無い」

 

葵「お・ま・え~~~~!真名の意味合いを知ってて言ってるのか~~~~!」

 

闇一刀「そちらこそ、真名というのは無理やり預けるものじゃないはずだろう」

 

葵「・・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「呂布・・・・・あの阿呆も、そして俺も・・・・・お前とは会うはずの無いやつだったんだよ・・・・・だから忘れろ、北郷一刀なんて人間のことはな」

 

恋「(フルフルフルフル!!)・・・・・できない・・・・・」

 

闇一刀「そうか・・・・・まぁいい、どうせすぐに俺達はお前達の前から消える・・・・・この戦いであの阿呆が死のうが、生き残ろうがな」

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、夜

 

 

闇一刀「・・・・・・・・・・」

 

相変わらず闇一刀は岩の上に居座っていた

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「・・・・・華陀か」

 

華陀「っ!!??・・・・・やっぱり気付くんだな」

 

闇一刀は振り返り、華陀を見据える

 

闇一刀「そりゃあな・・・・・俺もお前のことは見てきたからな」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「華陀・・・・・そんなものはしまえ」

 

華陀「っ!!」

 

闇一刀「その手に持っている短刀をしまうんだ・・・・・お前は、医術以外でそんなものを使うべきじゃない、お前に人殺しは似合わない」

 

華陀「・・・・・・・・・・っ」

 

華陀は手の甲に隠していた短刀を腕の手甲に納めた

 

闇一刀「お前は、俺を殺せばあの阿呆から罪の意識が消えると思ったみたいだが、それは誤りだ」

 

華陀「なんだと!?」

 

闇一刀「確かに、俺はあの阿呆の闇の、裏の人格、負の部分に相違無い・・・・・だからといって、俺が消えればあの阿呆が悪夢から開放されるというわけじゃない」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「仮にあの阿呆が俺に打ち勝とうとも、これからもあの阿呆は悪夢を見続けるだろうな」

 

華陀「・・・・・本当に・・・・・一刀を殺すのか?」

 

闇一刀「ああ」

 

華陀「即答かよ・・・・・」

 

闇一刀「あの阿呆がこの三国志という負の連鎖から逃れる術は、もはや死しかないからな」

 

華陀「・・・・・なぁ、お前は一刀の裏の人格といったな」

 

闇一刀「ああ」

 

華陀「なら知っているんだな・・・・・一刀の寿命が残り五年だということも」

 

闇一刀「もちろんだ、実際にはもっと短いだろうがな・・・・・お前も気付いているだろう?あの阿呆の氣は、微弱ながら、日に日に弱くなってきている事に」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「あの阿呆は生き急ぎすぎた・・・・・想像してみろ、血生臭い殺し合いとは無縁の一般人が戦乱の世に落とされて、いきなり100人単位の賊を相手に殺し合いを演じるんだぞ・・・・・実際あの阿呆は、最初にこの世界に来た当初は何度も死に掛けるような無茶な戦いばかりを繰り返しているからな・・・・・それもかなり響いている・・・・・」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「あの阿呆はあれ以上強くなることは無い、あとはただひたすらに衰えていくだけだ・・・・・それにおかしいと思わないか?・・・・・三国同盟が成ってから、あの阿呆は数多くの女を抱いている・・・・・にも関わらず、だれも懐妊の兆候が見られないことに」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「あの阿呆の子種は、ほぼ九割は死滅している」

 

華陀「っ!!!??」

 

闇一刀「あの阿呆の体はそこまでガタが来ているということさ・・・・・いくら性欲があろうとも生殖機能そのものがガタ落ちでは誰も孕みはしない」

 

華陀「そんな・・・・・だが、天角の女達は一刀に数え切れないほど抱かれているんだぞ!それで孕まないというのはおかしいだろう!」

 

闇一刀「回数を重ねれば孕むというものじゃない・・・・・よほど呼吸が合わなければ妊娠することは無い」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「今の内さ・・・・・誰も孕んでない今の内にあの阿呆を殺しておけば、歴史の大いなる矛盾は防がれ、悲しむ者も少なくすむ」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「華陀・・・・・お前にだけは謝っておこう」

 

華陀「っ!!?・・・・・なんだ、いきなり」

 

闇一刀「俺もあの阿呆がこの世界に来てから多くの者達を見て来たが、お前だけはまともなやつだった・・・・・だから、お前から親友を奪うことを先に謝っておく・・・・・すまない・・・・・」

 

そう言って闇一刀は、華陀に向かって深々と頭を下げた

 

華陀「・・・・・なぁ・・・・・お前は本当に一刀の闇の人格なのか?それにしてはやけに律儀だし、一刀を襲った時も他人を巻き込むことは一切しなかった・・・・・それにあの時のお前は、俺達ごと一刀を斬ることだって出来たはずだ・・・・・なぜあの時剣を止めたんだ?」

 

闇一刀「それも簡単なことだ・・・・・三国志の武将や軍師達が北郷一刀によって殺されたなんて記録は一切無いからな、歴史の矛盾を回避するためにもあそこで剣を振りぬくわけには行かなかったんだよ」

 

華陀「また歴史の話か・・・・・」

 

闇一刀「他人を巻き込まずに襲ったのは、これ以上北郷一刀によってもたらされる被害をこの世界に残したくなかったからさ・・・・・華陀は知っているか知らないが・・・・・かつてあの阿呆が闇に囚われた時、一度蜀の武将達を襲ったことがある・・・・・その時のあの阿呆を止めたのは・・・・・俺だ」

 

華陀「なんだと!!?」

 

闇一刀「あの阿呆が本気でこの世界の武将を殺しそうだったからな・・・・・歴史の矛盾を回避するために、少々強引に武将達から遠ざけたよ」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「それに、俺もあの阿呆の答えには少なからず興味がある・・・・・まぁ、悲しいかな、俺もあの阿呆と同類の人種ということだろう」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「確かに、俺はあの阿呆の闇の人格だ・・・・・だがな、だからといって情が無いわけじゃない・・・・・しかしな、あの阿呆のやってきたことに対して、落とし前を付けないというわけにも行かないのさ」

 

華陀「確かに、お前の言っていることも分かる・・・・・一刀は、それほどの罪を犯してきた・・・・・決して許されることじゃない・・・・・それは、あいつ自身も重く受け止めている・・・・・だが!あいつの寿命は残り僅かなんだ!待ってやることは出来ないのか!?」

 

闇一刀「・・・・・出来ないな」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「華陀・・・・・必要無いだろうが、あの阿呆に伝えてくれるか?俺は泰山で待つと・・・・・それと、重ねて謝っておく・・・・・お前には、貧乏くじを二重に引かせることになってしまった・・・・・本当にすまない・・・・・」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

そして、闇一刀は再び華陀に深く頭を下げ天角を去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、三日後

 

 

 

一刀「ふっ!!しっ!!」

 

ブンッ!!  シュバッ!!

 

一刀は忠久と金剛刀を問題なく振るえるようになっていた

 

一刀「ふ~~~~・・・・・ありがとうな、華陀、柊、雛」

 

柊「いいえ、一様・・・・・」

 

雛罌粟「・・・・・・・・・・」

 

華陀「・・・・・一刀・・・・・あいつは今・・・・・」

 

一刀「分かっている・・・・・泰山に居るんだろ」

 

華陀「っ!!!??・・・・・何で分かるんだ?」

 

一刀「あいつは俺だからな・・・・・あいつが俺の居場所が分かるならその逆だってあるさ」

 

華陀「・・・・・・・・・・」

 

華琳「そう・・・・・だからあいつを見かけなかったのね」

 

一刀「・・・・・さて、行くか」

 

雫「一刀様!!どうしても行かれるんですか!!?」

 

一刀「ああ」

 

零「何か・・・・・何か他に方法は無いんですか!!?」

 

一刀「・・・・・無いな」

 

零「・・・・・・・・・・」

 

時雨「旦那様!!行かないで下さい!!」

 

村長「そうですじゃ!!殺されに行くようなものですぞ!!」

 

天和「一刀!!行っちゃ駄目~~~~!!」

 

地和「ちぃを置いて行くなんて、それでもちぃ達のマネージャーなの!!?」

 

人和「お願いです!!行かないで下さい!!一刀さん!!」

 

明命「一刀様!!行っちゃ嫌です!!」

 

菖蒲「何か他に方法があるはずです!!一刀様!!」

 

張済「そうです!!兄上!!」

 

徐栄「隊長!!自殺行為です!!」

 

一刀「分かっている・・・・・でも、こればかりはもう避けられない」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一刀「俺も自分自身から逃げるのは嫌だからな・・・・・どうせ避けられないことなら先送りにはしたくない」

 

「・・・・・・・・・・」

 

一刀「さぁ、俺を連れて行ってくれ・・・・・狛煉」

 

狛煉「・・・・・ブルン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、泰山の麓

 

 

闇一刀「・・・・・来たか」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

一刀の後ろには、当然の如く三国の将達の姿もあった

 

一刀「・・・・・一人で来るつもりだったんだけどな」

 

闇一刀「彼女達の性格を考えれば当然だろう」

 

泰山の麓の岩の上、そこに一刀の闇の人格が背を向け仁王立ちで立っていた

 

そして、一刀は目の前の泰山を見渡す

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

泰山の麓には見るも無残な光景が広がっていた

 

岩山は切り崩され、大地は超小型の流星群でも降ってきたかのように荒れ果てていた

 

正直言って環境破壊この上ない

 

一刀「・・・・・これは・・・・・俺と恋が戦った跡か・・・・・」

 

闇一刀「そうだ・・・・・これもお前がこの世界に残した爪痕の一つだ・・・・・で?答えは出たのか?」

 

一刀「・・・・・・・・・・いや」

 

一刀は、小さく、あまりに細い声でそう答えるしかなかった

 

闇一刀「・・・・・はぁ~~~~~~」

 

期待したのが馬鹿だったと言わんばかりの溜息を吐き、闇一刀は一刀に向き直った

 

闇一刀「やはりお前は、この世界には来るべきではなかったな・・・・・己の感情を優先し、本来あるべき歴史を捻じ曲げることなどあってはならないことだ」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「人助けと称し、無意味に死体の山を積み上げ、無駄な犠牲を増やし、ただの醜悪な殺し屋に成り果てただけだ」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「そんな愚劣極まりない行いをしてきて、お前が得たものは何だ?・・・・・後悔と、苦悩と、絶望しか残らなかっただろう、その為に俺みたいな存在が生まれてしまったんだからな」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「にも拘らず、これから先もお前は自分の周りの僅かな人間を救うために、他の数え切れないほどの多くの人間を殺す・・・・・そんなクソとろくて幼稚なことをこれからも続けていくんだろ?ならばお前はこの世界にとって邪魔な存在でしかない」

 

雪蓮「な!!!?クソとろくて・・・・・」

 

華琳「幼稚ですって!!!?」

 

秋蘭「貴様!!!それ以上一刀を侮辱することは許さないぞ!!!」

 

悠「そうだ!!!お前達の世界がどんな世界だったか知らないが、あたし達の世界にはあたし達の世界の決まり事というものがあるんだよ!!!」

 

明命「そうです!!!あなたはこの大陸の現実を知らないんですか!!!?」

 

蒲公英「蒲公英達は、五胡っていう外敵とも戦っていかないといけないんだよ!!!」

 

闇一刀「お前達にとってはそうであろうが、この世界にとってそうであるかどうかは別問題だ!!!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

闇一刀「お前達もそこで見ておけ・・・・・北郷一刀は、ここで死ぬ!!!!!」

 

「!!!!????」

 

そうして、一同は己の武器を構え闇一刀の前に立ちはだかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうもseigouです

 

凄い疲れますね、今回の話は割りと気合を入れて書きました

 

投稿した後すぐに寝てしまいそうです

 

なんとか日曜日中に書けましたよ

 

ここ最近休日でも休まる時間が無くて四苦八苦しています

 

と、そんなことはさておき・・・・・・次回、一刀VS闇一刀

 

一刀は、答えを導き出すことが出来るのか


 
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