人はそれを妖怪と呼ぶ
ああ、怖い。
そんな妖怪と戦うものが居る。
それを退治屋と呼んだ。
一話
そこは洞窟、島と島を繋ぐ連絡路だ。
茶色い岩肌にコケが生え緑がかっている。
この細い道の横は、水が流れている
ひとたび雨が降れば、ここは水の中だという、
そんな通り道しかない、小さな村を目指しているのだ。
村には数件小屋のような家が田んぼに囲まれ狭苦しく立っている。
そんな一軒に長老が住む家がある。
それが依頼主であった。
その家には、狭苦しくも男達が囲むように老婆に集まっている
おそらく一番偉いのであろう老婆に紹介状を手渡す。
それに目を通す事もなく、ただ黙って見つめるだけであった。
そんな空気にしびれを切らしたのか、
男達は女子供には無理だと帰れという始末。
「私達は無責任な事はできません」
そう言い放ち、外へと出た。
連れの弟は遅れて出てきた。
頼りなく何処となく弱々しさが見える。
いや、本当に弱く足手まといでしかない。
「調べといて、先に行って待っているわ」
姉のいい加減さは今に始まったことではない。
まともに調査なんてした事がないのだろう。
そう弟には映っていた。
姉の風貌はあまり美人とは言えない。
まだ幼さが残り何を考えているの変わらない所だらけだ。
そんな事を弟は口が裂けても言う事はないだろう。
ただ、戦う姿にあこがれを持っていた。
姉に従う事で強くなりたいとも。
のんびりと木陰で弟の姿を見ている。
何を話しているんだか、下らない世間話をしている
そんなのがまる聞こえだ。
ようやく、息を切らしながらやってきた。
「何か分かった?」
首を横に振り、まったく何も聞き出せなかったようだ。
「来る時に通った洞窟よ、そこに妖怪が潜んでいるわ」
なんか言いたそうな顔をする弟を尻目にさっさと歩きだした。
「これが終わったら苺大福を買ってあげる」
「うん、で、どんな味?」
「それはね、粒々の餡に甘酸っぱい苺が何とも言えない……」
「いつ食べたの?」
こう時の弟は鋭い、さっき食べていたのに気づいたようだ。
はぐらかそうと適当な事を言っても見破るに違いない。
食べ物の恨みは怖い。
そうこうしている内に洞窟には霧が立ち込め視界が悪くなっていた。
どうやら妖怪のお出ましのようだ。
角の生えた小さい奴らがわんさか歩いて来た。
杖で叩くと簡単に消え去る。
「案外、楽な依頼ね」
モグラ叩きをするかのようにぼこぼこ叩きまくる。
何んとも楽しい、弟の分はない。
「ねえ、なんか様子が変だよ」
弟の感なんて当てにならない。
どんどん奥に進み、最後の一匹を浄化した。
「楽勝ね、さあ苺大福を買いに行きましょう」
今思えば、弟の言葉を聞いていれば良かった。
そう思う時がやって来た。
突然、辺りに紫の霧が立ち込める。
少し吸うと吐き気としびれが襲ってきた。
そして、低い薄気味の悪い声が笑っていた。
どうやら罠にかかったようだ。
「魅夜(みよ)、ここは私がなんとかするわ」
「ねえ、動けない」
このままだと二人とも、餌食にされてしまう。
杖に力を込め一撃を食らわせれば勝てるかもしれない。
それが一瞬で砕かれた。
渾身の一撃があっさりとかわされたのだ。
本調子であっても当てられたか分からない。
予想外の身のこなしだった。
そのカバのような図体から、よくこんなに身軽に動ける。
「自分の身はちゃんと守りなさい」
妖怪の狙いは弱々しい弟だ。
それを聞いて杖をかざし、術を放つ……、事が出来れば一人前だ。
弟の前に木製の盾が現れた。
本人曰くまな板らしい。
妖怪の一撃はそれで止まったかのように見えた。
しかし、盾は真っ二つに割れ壁を砕いた。
何とか避けたみたいだ。
突然、大地が迫った。
地べたに手を付いている。
足に力が入らない、どうやらここまでのようだ。
「魅夜、ごめんなさい」
気がつけば、布団の上に横たわっていた。
「しばらく、休むと良い」
あの老婆だ。
「どうしてここに」
「村の衆がやっと勇気を出して駆け付けたんじゃ」
「素人に助けてもらったのね」
「何を言う、杖職人のゲンは退治屋をやっていたこともある」
「どうして、私がここに」
「そう焦るな、とある件で失敗し、ふ抜けてしまったんじゃ」
弟の姿が見えないと思っていたら、さっそく帰って来たようだ。
「ねえの好きな林檎を持って来たよ」
結局のところは、
村人に勇気を与えることが今回の依頼だったみたい。
まだまだ修行が足らない。
さて、次はどこに行こうか
村に別れを告げ、帰路につく。
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自作ゲームのシナリオを再編集して小説にしてみたいと思ったのでそうして見る事にした。ただそれだけのこと。