一真はテレビを見ていた。出発の準備はできているため、あとはまだ寝ている光輝が起きてくるのを待つだけだ。
「おはよう一真」
光輝が起きてきた。
「おはよう光輝。」
一真はあいさつした。二人はそのまま朝食を摂る。
「そういえば光輝。」
「さっきテレビでやってたんだけど、ジェイル・スカリエッティって人、知ってる?」
「…知ってるもなにも、前にテメンニグル学園の先生をやってた人だよ。」
「そうなんだ?」
「で、スカリエッティ先生がどうかしたの?」
「脱走したんだって。」
ブーッ!!!
光輝は吹き出した。
「脱走した!?」
「うん。」
スカリエッティは違法な研究を行っていたため照井に逮捕されたのだが、一真の話では脱走したらしい。
「大丈夫かな?あの先生、違法である戦闘機人やクローンの製造以外にも、いろいろヤバイことしてたらしいし…」
「そうだったんだ…」
朝の食卓を不穏な空気が包んだ。
そこで一真は時計を見る。
「あ、時間だ。行かなきゃ!」
「えっ?あ、本当だ!急ごう!」
二人は急いで朝食を済ませ、学園に向かった。
「ねぇ照山。」
「何だ光輝?」
「照山ってさ、本当に不良キャラなの?」
僕は前々から気になっていたことを訊いてみた。だって不良キャラにしては、照山って気前がよすぎるし、まじめすぎるんだもん。
「当たり前だろ!俺は根っからの不良キャラだぜ!!」
「でも照山ってまじめすぎるじゃん。はっきり言って向いてないと思うよ?」
「あのな、俺は清く正しいんだ。そう!俺は清く正しい照山最次だ!清く!正しい!「と思っていた」照山…ってオイダンテ!!変な合いの手入れるんじゃねぇ!!」
「お前、またニコニコ動画を見たろう?」
バージルが呆れながら尋ねる。
「おう。あれは面白れぇからな、つい見ちまうんだ。」
楽しそうに話すダンテ。と、そこで僕は一真から聞いたことを話す。
「そういえば、スカリエッティ先生、脱走したらしいね。」
「…はあ?それホント?何かの間違いじゃないの?」
レディさんはいぶかしむ。そこにディスクさんが来た。
「その話は真実よ。彼は脱走したわ」
それを聞いてため息をつくダンテとバージル。
「マジかよ。あのマッドサイエンティスト、今度は何するつもりだ?」
「前に親父を解剖しようとしたことがあったからな、どうせろくなことをせん。」
僕の思考は一瞬停止した。
「ええええっ!?」
「あの人そんなことしようとしたの!?」
「…命知らずもここまでくると関心するわ。」
一真も驚き、トリッシュさんは呆れている。
バージルが答えた。
「事実だ。当然のことながら失敗して、逆に奴の方が解剖されかけたが。」
まあそうだよね。っていうかスカリエッティ先生、本当に加減ってものを知らないなぁ…
「「「「「「「…はぁ…」」」」」」」
僕達はため息をついた。
今日は授業が半日で終わった。俺一緒に帰ろうと光輝に声をかける。と、
「白宮先輩。」
二人の女子が現れ、髪をツインテール方が話しかけてきた。俺は知らないけど、光輝は知っていたみたいだ。
「スバル、ティアナ。照井さんに会いたいの?」
「は、はい…/////」
ティアナと呼ばれたツインテールの女子は、もじもじしながら答えた。
スバルと呼ばれたもう一人のボーイッシュな女子も笑顔で言う。
「お願いしまーす。」
「うん。あ、そうだ。一真、紹介するね。高等部一年生のスバル・ナカジマとティアナ・ランスターだよ。二人とも、あいさつして。」
「はい♪スバル・ナカジマでーす♪」
「ティアナ・ランスターです。よろしくお願いします」
「俺、剣崎一真。一真でいいよ」
こうして簡単な自己紹介をしたあと、俺達は学園を出た。
「それにしても、ウーノとトーレとクアットロとセッテ、どこ行っちゃったんだろ?」
スバルが呟いた。僕は尋ねる。
「えっ?その子達、どうかしたの?」
スカリエッティ先生が逮捕されたあと、スカリエッティ先生が生み出した、ナンバーズっていう戦闘機人の子達は、いろんなところに引き取られていった。
その大部分はスバルのナカジマ家に住んでるって聞いたけど…
「はい。一昨日から帰って来てないんです」
「…それは変だね。」
僕がそう言うと、一真が割り込んできた。
「そういえばその四人を含めたナンバーズって、元々スカリエッティ先生が造ったんだよね。もしかしたら、スカリエッティ先生が脱走したことと関係があるかもしれない。先生が脱走したのって、ちょうど一昨日らしいし…」
「それは…考えられるね…」
ディスクさんから聞いたけど、クアットロなんかはスカリエッティ先生を釈放しようと動いてたらしいし…
「私は!」
突然、スバルが声を荒げた。
「私は…信じます。」
……まあスバルの気持ちはよくわかるけど、ほぼ絶望的だな…
「行方をくらましたといえば…」
今度はティアナが言った。
「一週間くらい前からムスカ大佐が行方不明ですよね?」
その話は知ってる。突然何の前触れもなく姿を消してしまったらしい。
「もしかして、関係があったりして…」
スバルは冗談半分に言った。
「それはさすがに…」
一真も笑っている。
その時、僕は突然嫌な予感を感じた。
僕は走り出す。
「光輝!?」
「白宮先輩!?」
「待って下さいよぉ~!」
翔太郎、亜樹子、照井の三人は、島本凪という女性の元を訪れていた。
事の発端は鳴海探偵事務所への依頼。凪を励ましてほしいと彼女を慕う子供達が依頼したのだ。
実は今こうして会いに来る前にちょっとしたアクシデントがあり、その時凪には逃げられてしまったのだが、どうにかこうして再び会うことができた。
「やっと見つけたぞ。」
照井は凪に声をかける。
「…どうして私につきまとうの?」
「君のことを心配している子供達が、俺の事務所に来たんだ。」
翔太郎が理由を答え、亜樹子が尋ねる。
「ねぇ、どうして元気をなくしちゃったの?」
「関係ないでしょ?ほっといて…」
しかし凪は質問に答えず、顔も合わせようとしない。
だが、凪がなぜ答えてくれないのか、照井にはお見通しだった。
「何に怯えている?」
「…」
凪は答えない。そっぽを向いて黙ったままだ。
「君は子供達をわざと遠ざけている。なぜだ?」
「…だって、お父さんが…」
ようやく口を開いてくれた凪。
しかし次の瞬間、いきなり雨が降りだした。
「な、何!?何で急に雨!?」
驚く亜樹子。すると…
「怖い…あの夜もそうだった。」
凪が怯え出し、自分の身に起こったことについて話し出した。
それは少し前の夜。突然雨が降りだし、凪と彼女の父は怪物に襲われた。怪物は落雷を起こして彼女の父を殺害したあと、彼女の腕にコネクタ手術を施し、次の言葉を残して消えた。
『これはとても大切な印です。また会いましょう』
「あの男が来る。そう思うと、怖くて仕方なかった。でも誰にも相談できなかった…誰にも…」
「よく話してくれた。」
照井は自分が着けていたアクセサリーを外す。
「お守りだ。とても良く効くぞ」
それはかつて井坂に殺された彼の妹、春子がプレゼントしてくれたものだった。
照井がそのアクセサリーを凪に着けると、勇気が出たらしく、凪は少し笑った。
その時、
「お揃いですか?」
ウェザーに変身した井坂が現れた。
「あの時の…怪物…」
怯える凪。
「やはり貴様の仕業か…井坂深紅郎!」
照井は怒りの眼差しを向ける。
「怖い…怖い…怖いよ…!」
「大丈夫。君は俺が守る」
さらに怯える凪をかばうべく、照井が前に出る。
「フィリップ。」
翔太郎はダブルドライバーを装着。
「ああ。」
〈CYCLONE!〉
フィリップは探偵事務所からサイクロンメモリを起動。
〈JOKER!〉
翔太郎もジョーカーメモリを起動し、
〈ACCEL!〉
照井もアクセルドライバーを装着してアクセルメモリを起動。
「「変身!」」
「変・身!」
〈CYCLONE/JOKER!〉
〈ACCEL!〉
二人はWとアクセルに変身して、ウェザーに戦いを挑んだ。
ウェザーは持ち前の高い格闘能力で二人を圧倒。Wを殴り飛ばしたあと、アクセルのエンジンブレードを受け止めつつ、Wに向けて能力を発動する。
ウェザーが発動させた能力は、今まで降らせていた雨をWに集中させるというものだが、それだけでは終わらない。
「何だこりゃ!?身動きが…取れない…!!」
集中した豪雨はすり鉢状の水牢を作り出し、Wを閉じ込めてしまった。
「照井竜君。」
「!?」
「君は私を倒すために仮面ライダーになったらしいが!!」
ウェザーは拳と同時に火炎弾を叩き込み、アクセルを吹き飛ばす。
「なんと弱いリベンジャー…話にならない。せめてあの少年君くらい強くなければ…ふんっ!」
ウェザーはアクセルを囲むように雷雲を発生させ、全方位から雷で攻撃する。
こうして二人のライダーの動きを封じたウェザーは、凪に近付いていく。
「駄目だってば!来るな!」
亜樹子はウェザーの前に立ちはだかるが、ウェザーは全く意に介さない。
「約束通り見せてもらいますよ。その印を…」
亜樹子を払いのけたウェザーは、さらに凪に接近する。
「怖い…怖い!!」
凪は逃げ出した。しかしすぐ捕まってしまい、ウェザーは凪の服の袖をまくり上げる。
その下にあったのは生体コネクタ。だが普通のコネクタではない。コネクタから根のような刺青が発生している。
「実にいい具合だ。君が恐怖の感情に呑まれれば呑まれる程、コネクタはより早く成長するのだ。ああ…早くこのメモリを挿したいぃぃ!」
『何だ、あの奇妙な形のメモリは!?』
フィリップが見たもの、それは翼のような装飾が施された、金のメモリだった。
「その子から離れろ!!」
アクセルは怒るが、全方位から雷の一斉攻撃を受け、ついに変身が解除されてしまう。
「わかったでしょう?君は復讐どころか、誰一人まともに守れない、虫けら以下の存在です。」
ウェザーは冷酷に嘲笑う。
その時、
「リボルバァァ…」
「クロスファイア…」
「「シュゥゥゥゥゥトッ!!」」
駆け付けたスバルとティアナの魔力弾がウェザーに炸裂。
〈REQUIEM!CANTABILE〉
続いてクロスの光線が直撃。
〈LIGHTNING SLASH〉
最後にジャックフォームに強化変身したブレイドのライトニングスラッシュがウェザーを斬り裂く。
「ぐあああっ!!」
ウェザーは吹き飛ばされた。
「ほ、ほう、あなた達まで来ましたか…」
どうにか立ち上がって体勢を立て直すウェザー。
そこにエクストリームメモリが飛来。
〈XTREAM!〉
Wはサイクロンジョーカーエクストリームに強化変身し、水牢を破る。
ブレイドもキングフォームになるべくエボリューションコーカサスのカードを取り出すが、「おっと、今はまだ君達と事を構えるつもりはない。」
ウェザーは霧を発生させて逃げた。
一同は変身を解除し、スバルとティアナは照井に駆け寄る。
「照井さん!」
「大丈夫ですか!?」
「あ、ああ。それより…」
照井は自分のことより凪のことを心配していた。
「大丈夫か?」
しかし、
「嘘つき!」
凪は照井に向かって、そう言った。さらに続ける。
「守ってくれるって言ったけど、全然敵わなかったじゃない!」
凪はどこかに行ってしまった。
「…」
照井は無力さを感じながらうなだれる。
「翔太郎さん。」
光輝は翔太郎に話しかけた。
「光輝、一真、よく来てくれたな。助かったよ」
「俺達は何も。」
「それより、何があったんですか?」
「実は…」
翔太郎から事情を聞いた一同は、探偵事務所のフィリップの部屋に来ていた。
「さっき検索を終了した。井坂が持っていたあのメモリは、ケツァルコアトルスのメモリだ。」
「け、ケツ?」
長すぎる名前に噛む亜樹子。フィリップは説明する。
「アステカ文明で蛇の神を意味する、最大の飛行生物だ。」
そう言ってフィリップが描いたケツァルコアトルスの絵は、プテラノドンをイメージさせる翼竜だった。
「翔太郎。インビジブルメモリの事件を覚えてるかい?」
フィリップが言うインビジブルメモリの事件とは、見習いマジシャンであり、インビジブルメモリの過剰適合者であった女性、リリィ白銀に井坂が独自の細工を施したインビジブルメモリを渡し、彼女を殺しかけた事件である。
井坂は過剰適合者にメモリを使わせることでメモリのパワーを極限まで高め、その力を手に入れようとした。
「もしかして…」
ティアナがあることに気付く。
「そう、島本凪は、ケツァルコアトルスメモリの過剰適合者だ。」
ティアナの予想は当たっていた。
「だが、奴はまだメモリを挿さなかった。それは、まだコネクタが完璧じゃないから。」
翔太郎が呟く。フィリップはその理由を知っていた。
「恐怖の感情が、コネクタの成長を促進させる。だから彼女の目の前で父親を殺したんだ」
「じゃあ、あいつはコネクタを完成させるために、これからもあの子に恐怖を与え続ける、ってことか…」
一真がそこまで言った時、
ガァァァンッ!!!
照井が側にあった柱を殴った。そのまま出て行ってしまう。
「待ってよ竜くん!」
「照井さん!」
「あたしも行きます!」
亜樹子、ティアナ、スバルは照井を追っていく。
「とりあえず、あの子を守ることが最優先だ。光輝、一真、一緒に来てくれるか?」
「はい。」
「でも、どこにいるか…」
「それについては、あてがある。」
三人はフィリップから、凪がいそうな場所を聞き出した。
園咲家のとある一室。
井坂と冴子はそこにいた。
「以前私は、自分がなぜこの世に生を受けたのかわからず、ずっと理由を探していました。医者となって生命の研究に没頭したのも、そのためです。」
井坂は自分の過去について、淡々と語り続ける。それは、十年前に彼が園咲琉兵衛に対して行った、誓いの物語でもあった。
「けど何一つわからないまま…。そんな時だった。あの光景に遭遇したのは…」
井坂が見たもの。それは闇の波動、テラーフィールドを発生させて人々を殺害する、テラーの姿だった。
「声も出せずに立ち尽くした。恐ろしかった?違う。私はその圧倒的な恐怖の力に魅せられ、感動したのだ。私はさとった。その紳士が手にしていたものこそ、私が求めていたものだと…」
井坂は立ち去ろうとする琉兵衛に声をかける。
『なあ教えてくれ!それは何だ!?』
『…』
しかし琉兵衛は一度立ち止まっただけで、すぐにまた歩き出してしまう。
『ま、待ってくれ!私は…それがほしい!その力が…』
井坂は琉兵衛に追いすがり、無理にでも自分を意識させようとする。
琉兵衛はそこでようやく井坂を意識した。
『…君にその資格があるなら、いずれ出会うだろう。ガイアメモリに』
そう言って琉兵衛は、今度こそ立ち去っていった。
「その時に私は誓ったのです。私はあなたのお父さんが持つあの絶対的な闇の力…テラーのメモリを奪うとね。」
「それで私に近付いたの?」
冴子に訊かれ、井坂は黙った。
「答えて。」
返答を求めるべく井坂に詰め寄る冴子。
「…そうですよ。嫌いになりましたか?」
井坂はついに白状した。それに対する冴子の反応は…
「いいえ。むしろあなたの本心に触れて、やっと不安が消えた。」
だった。
二人のいる部屋には飼い猫のミックがいて、二人の話を聞いていた……。
一方照井、亜樹子、スバル、ティアナは、とある雑木林に来ていた。
「あ、あたし、実はオバケとか苦手だったり…」
雑木林の雰囲気があまりにも不気味だったので、スバルは苦笑しながら震える。亜樹子はそれを無視して照井に尋ねた。
「竜くん、ここどこ?」
「俺が初めてシュラウドにあった場所だ。聞こえてるかシュラウド!!」
照井は大声を出し、シュラウドに呼び掛ける。
「そんなに簡単に出て来てくれるんでしょうか?」
ティアナは疑問を持ちながらも、シュラウドの到来を待つ(ディスクからシュラウドのことを聞いていた。もっとも何者かまではディスクでもわからなかったようだが)。
その時、四人の前で信じられない現象が起こった。
目の前の草むらが何の前触れもなく、突然炎上したのだ。
そして、
「私に何の用だ?」
雑木林の奥から、シュラウドが現れた。
「ひぃーっ!!」
「で、出た!ミイラ女!!」
それぞれ悲鳴をあげるスバルと亜樹子。ティアナは黙ってシュラウドを見ている。
照井はシュラウドに頼む。
「俺は力がほしい。もっと強い力が!」
「断る。」
「何!?」
シュラウドは断った。
「お前は復讐のために戦ってきた。だが、今はもう、以前のような憎しみの炎はない。だから、あの男には勝てない。」
そう言ってシュラウドは、再び雑木林の奥へ消えようとする。
「待て!!」
〈ACCEL!〉
照井はアクセルに変身し、シュラウドの顔にエンジンブレードを突きつけた。
「俺の中の炎は…まだ消えちゃいない!!」
「…」
シュラウドはそんなアクセルを見て数秒思案し、
「…ついて来なさい。」
雑木林の奥へと入っていく。
アクセルは変身を解除してシュラウドを追う。
「竜くん!待ってよぉ~!」
亜樹子は照井を追って走る。
「ど、どうするティア?なんかヤバそうだけど…」
「…行くわ。ここまで来て、引き下がれないもの!」
スバルとティアナも、三人について行くことにした。
凪は野鳥園に来ていた。翔太郎、光輝、一真は凪の元を訪れる。
翔太郎は一羽の鳥を見ていた凪に尋ねた。
「あの鳥、何ていうの?」
「ショウジョウトキのヘンリーくん。普段はマングローブの林なんかで大きな群れを作る鳥」
「へぇ、やっぱり詳しいね。」
一真が笑顔で誉める。だが、凪の面持ちは沈痛だった。
「…あの刑事さん、何で私を守ろうとしたの?」
光輝が答える。
「照井さんも、家族を殺されているんです。あの怪物に…」
「えっ…」
「これは僕の推測ですけど、照井さんは自分と同じ境遇である凪さんを守りたいんだと思います。」
「そんな…勝手に比べられても困るよ…それでもし死んじゃったら…」
「あいつは死なない。」
断言したのは翔太郎だ。一真も続く。
「そうだよ。守るものがあれば、人はどこまでだって強くなれる。照井さんだってそうだ。必ず君を守ってくれるよ」
「…」
凪は少し気分が楽になった。
(守るものがあれば、か…)
光輝は一真の言葉を聞いて考えた。
(僕は弱い。でも守るものはある…)
確かに光輝にとって守るものはある。
(…強くならなきゃ…)
そう思った光輝の頭に浮かんだのは、フェイトだった。
(…何考えてるんだ…僕じゃフェイトさんに釣り合わないことくらい、わかってるはずなのに…)
自己嫌悪に陥りかける光輝。
その時、
「おはよう。昨日はよく眠れましたか?」
紳士姿の井坂が現れた。
「今日は君がどんな怪物になるかを見せに来ました。」
そう言ってケツァルコアトルスメモリを取り出した井坂は、
「複製した、お試し品ですがね。」
〈QETZALCOATLUS!〉
そのまま起動させ、近くにいたオウムに投げつけた。
ケツァルコアトルスメモリはオウムに挿さり、その姿を巨大な翼竜型ドーパント、ケツァルコアトルス・ドーパントへと変えた。
ケツァルコアトルスは凪を捕らえて、空へと舞い上がる。
「降ろして!イヤッ!!助けてぇぇ!!!」
「フィリップ!」
「ああ。」
〈CYCLONE!〉
〈JOKER!〉
「行くよ一真!」
〈CROSS!〉
「ああ!」
「「変身!」」
「変身」
「変身!」
〈CYCLONE/JOKER!〉
〈CROSS!〉
〈TURN UP〉
三人は変身し、クロスはレイブンクロークを展開。ブレイドはジャックフォームに変身し、空を飛んでケツァルコアトルスを追いかける。
Wもハードボイルダーに乗ってケツァルコアトルスを追尾。
しかし、ケツァルコアトルスはそんな三人に対して口や翼から光弾を発射し、三人を近寄らせない。
『敵は空だ。こっちもハードタービュラーで倒そう』
Wはハードタービュラーに換装を行うべくリボルギャリーを呼び出し、リボルギャリーの内部に乗り入れる。
しかし、中にはなぜかガンナーAがいた。
「これ照井のガンナーユニットじゃねぇか!」
『そういえば、前にも突然ガレージに…』
ガンナーAはカメラのふたをまぶたのように開閉したり、車体を揺すったりして、まるで自分をアピールしているかのようだ。
「…まあいい。こいつで撃ち落とすぜ!」
WはハードボイルダーをガンナーAに連結させ、長距離砲撃でケツァルコアトルスを撃ち落とす。
「きゃあああああああああ!!!」
落ちていく凪。だがクロスが受け止める。
「ここにいて下さい!」
クロスは凪を降ろしてから、再び飛び立つ。
〈XTREAM!〉
Wもサイクロンジョーカーエクストリームに強化変身し、プリズムビッカーのマキシマムスロットにメモリを挿し込んでいく。
〈CYCLONE/HEAT/LUNA/JOKER・MAXIMUM DRIVE!〉
「フィニッシュ!」
〈CROSS・MAXIMUM DRIVE!〉
クロスもクロスドライバーの中心の銀端子に触れて音声入力。
〈SLASH,THUNDER〉
〈LIGHTNING SLASH〉
ブレイドもブレイラウザーにスラッシュリザードとサンダーディアーのカードをラウズ。
「クロスインプレッション!!」
まずクロスが両足蹴り、クロスインプレッションを叩き込み、
「らあっ!!」
次にブレイドが電撃剣、ライトニングスラッシュで斬りつけ、
「はっ!」
Wはプリズムビッカーからプリズムソードを抜いてビッカーシールドをガンナーAに投げつけ、ビッカーシールドの上に飛び乗ると、ガンナーAの砲撃を利用して飛行。
「「ビッカーチャージブレイク!!」」
ケツァルコアトルスを斬り裂いてメモリブレイクした。
地上に降り立つ三人。
だが…
「離して!」
凪の悲鳴が聞こえた。
「嫌!離して!!」
見ると、凪が井坂に襲われていた。
「井坂!」
「貴様!」
「その手を離せ!」
三人は井坂に挑んだ。
そのころ照井達は、雑木林の奥にあった開けた場所へ案内されていた。
そこにあったものを見て、亜樹子は呟く。
「モト、クロス…あたし聞いてない…」
シュラウドは用意してあったバイクをなでながら言う。
「さあ、乗るのよ。照井竜」
井坂は凪の服の袖をまくり上げる。しかし、その下にあった生体コネクタは、昨日見た時と変わってなかった。
「おかしい…まだコネクタが完璧ではない。これだけの恐怖を与えれば確実に完成するはずなのに…なぜだ…一体何がお前の心を支えている!?」
「嫌!!」
井坂は凪を投げ飛ばした。
再び凪に迫る井坂。
次の瞬間、
ズガァァァンッ!!!
銃声が聞こえた。
W、クロス、ブレイドも思わず足を止める。
全員が銃声のした方を見ると、そこにいたのは、エボニーを抜いたダンテだった。
「ダンテ!来てくれたんだね!」
喜ぶクロス。実は前もって彼が連絡しておいたのだ。
「ほう、君が理事長の息子さんですか。」
「てめえが井坂だな?光輝から聞いてるぜ。なんでも、俺達悪魔よりやることが悪魔っぽいんだってな?」
「ふっ…
〈WEATHER!〉
井坂はウェザーに変身する。
「バージルはいねぇが、俺一人で充分だな。行くぜ!」
ダンテはリベリオンを手に持って走る。
「ふんっ!!」
ウェザーはリング状の雷雲を発生させて電撃を放つ。
ダンテはこれをリベリオンでさばいていく。そして斬りかかった。
だがウェザーは素早い動きでダンテの攻撃をかわす。
「「ビッカーファイナリュージョン!!」」
Wは再度マキシマムを発動させ、ウェザーを攻撃した。
しかし、ウェザーは霧を発生させ、逃げてしまった。
シュラウドはストップウォッチのような形状をしたメモリを照井に投げ渡す。
「トライアルメモリ。それを使えば、全てを振り切る速さを手に入れられる。」
「全てを振り切る…」
「なんだかすごそうですね!」
はしゃぐ亜樹子とスバル。
「試してごらんなさい。」
シュラウドに言われ、照井はまずアクセルに変身。
次にアクセルメモリを抜いて、トライアルメモリを変形させ、
〈TRIAL!〉
起動させる。
アクセルはそのままスロットにトライアルメモリを挿し込んだ。
〈TRIAL!〉
すると、信号機のような形状になったトライアルメモリの赤信号が点灯し、次に黄色の信号が点灯。
同時にアクセルのスーツが黄色に染まる。
「黄色くなった…」
呟くティアナ。
最後に青信号が点灯すると、アクセルのスーツが青く染まり、装甲が最低限の部分を除いて解除され、軽量化された。
「今度は青…」
再び呟くティアナ。
アクセルは自分の姿を確かめる。
「これが新しいアクセル…トライアル!」
アクセルトライアルが誕生した。
ダンテと別れた光輝達は、探偵事務所に戻っていた。
フィリップは凪に説明する。
「井坂はこのコネクタを完成させるために、君に恐怖を与えている。そして完成すれば、メモリを挿しに現れる…」
「怖い…!!」
凪は震え上がった。
「大丈夫だ。あいつは必ず君を守ってくれる」
「僕達も守ります。」
「だから安心して?」
翔太郎、光輝、一真に言われ、凪は少し笑顔を取り戻す。フィリップはその様子を見て気付いた。
「そうか、君の心が恐怖に染まりきらないのは、きっと、照井竜の存在が君支えているからに違いない。」
凪は照井のことを想いながら、アクセサリーへと手を伸ばす。
だが、凪は気付いた。気付いてしまった。
アクセサリーがない。
心当たりはあった。井坂に投げ飛ばされた時だ。
凪はアクセサリーを探しに行こうとする。
しかし、
「今外に出るのは危険だ!」
翔太郎に止められてしまった。
シュラウドはリモコンのボタンを押す。
すると、近くにあった崖が崩れ、岩がなだれ落ちてくる。
しかし次の瞬間、アクセルは驚異的なスピードで突撃し、岩の破壊を始めた。岩は次々と蹴り砕かれていく。
「速い!」
「照井さんすごい!」
「あれが、アクセルトライアル…」
感嘆を覚える亜樹子、スバル、ティアナ。
だが、アクセルが一際大きな岩を蹴り砕こうとした時、アクセルは弾き飛ばされてしまった。
「パワーが足りない!」
「違う。」
シュラウドはアクセルの思いを否定した。
「戦法を変えるのよ。トライアル最大の特徴は、その速さ。敵の懐に飛び込んで、キックを叩き込みなさい。一発で足りなければ十発、まだ足りなければ百発。相手を、完全に粉砕するまで…」
「…よし!」
アクセルはトライアルメモリを抜き、変形させてスイッチを押す。
するとカウントが始まり、アクセルのスピードがさらに上昇する。
だが、アクセルの動きは途中で止まってしまった。
「せ、制御できない…!」
次の瞬間、カウントが十秒を越えてしまい、アクセルの変身が強制解除された。
アクセルトライアルのマキシマムドライブ継続時間は、十秒。それをすぎるとマキシマムドライブが終了し、変身が解除されるうえにダメージまで受けてしまうのだ。
照井に容赦なく岩が降り注ぐ。だがシュラウドが再びリモコンのボタンを押すと、落下してきた岩が爆発し、照井は一命をとりとめた。
「今のが実戦なら、あなたは確実に死んでいた。」
シュラウドは冷たい言葉を投げ掛ける。
「…あのコースを十秒以内に走りきれば、トライアルのマキシマムドライブを使いこなせるようになる。やるの?やらないの?」
「俺に…質問をするな…!」
照井は立ち上がった。
シュラウドはバイクにトライアルメモリをセットする。
「これでこのマシンは、トライアルのマキシマムドライブ発動時と同じ状態になるわ。」
「十秒きればいいんだな?」
照井はバイクに乗り、スタートした。
「照井さん、頑張って!」
スバルは応援する。
やがて照井はコースを回り終えた。
結果は…
「失格よ。」
だった。
「ぐあああああ!!」
照井の全身に電流が流れる。
「照井さん!」
ティアナは叫んだ。
「憎しみが足りない!もっと復讐の炎を燃やすのよ!!」
シュラウドから叱咤を受けつつも、照井の挑戦は続く。
だが、なかなか十秒の壁を超えられず、照井は電流を受け続ける。
「憎め…憎め憎め…憎め!!」
シュラウドの呟きに恐怖を覚える三人。
そして、今までで一番速いと思われた挑戦。
「うわああああ!!」
照井はバイクの操作に失敗し、転倒してしまった。
「「照井さん!!」」
慌てて照井に駆け寄るスバルとティアナ。亜樹子は翔太郎に連絡を入れる。
「どうした亜樹子?照井がどうした?…何!?バイクで転倒!?」
その言葉を聞いた凪は、
(私がお守りをなくしちゃったからだ…)
と思ってしまい、光輝や一真の目を盗んで、事務所から抜け出した。
どうにかアクセサリーをなくした場所にたどり着いた凪は、アクセサリーを探す。
そして…
「あっ」
凪はようやくアクセサリーを発見し、手に取った。
その時、
「やっと謎が解けましたよ。」
またしても絶妙なタイミングで井坂が現れた。
「あの刑事が君の心の支えになっていたんですね。ならば、君の目の前で彼を血祭りに上げましょう。そうすればコネクタは完成し、私は究極の存在となる…」
照井は目を覚ました。
「よかったぁ…照井さん、もう起きないのかと…」
スバルは安堵する。
「心配をかけたな。大丈夫だ、もう一度やる。」
言いながらバイクに歩み寄る照井。
その時、照井のビートルフォンが飛んで来た。
照井が出てみると、相手は…
「島本凪を預かった。」
「井坂!?」
だった。
驚いて駆け寄る三人。
「わかった、四時に霧吹峠だな?」
照井は電話を切った。
「何!?どうしたの!?」
尋ねる亜樹子に向けて、照井は井坂から伝えられた事実を告げる。
「あの子が井坂にさらわれた。」
「そんな…照井さんはまだ…」
ティアナは焦った。今の照井では、まだ井坂に勝てない。
「聞いての通りだシュラウド。俺は行かなきゃならない。次こそ十秒切る」
「復讐ではなく、あの子を守るため?」
「…そうだ。」
「!!」
その言葉に、ティアナは衝撃を覚えた。
(何…この気持ち…)
再び挑戦する照井。最後まで走り切った結果は…
「合格よ。」
だった。
「やったぁぁ!!」
「十秒切ったぁぁ!!」
喜ぶ亜樹子とスバル。
照井は井坂と雌雄を決するべく、霧吹峠に向かった。
「あたし達も行きましょう!」
「うん!」
照井を追う亜樹子とスバル。ティアナも続くが、
カシャッ
という物音を聞いて振り返る。それはシュラウドがストップウォッチを落とした音だった。
「あの、これ…」
ストップウォッチを拾ってシュラウドに渡そうとするティアナ。だが、表示されていたタイムを見て、ティアナは驚愕に目を見開く。
「十秒…切ってない…これ、どういうことですか!?」
「彼は復讐心をなくした。もう興味はない」
「そんな…それじゃあ照井さんは…」
ティアナがストップウォッチを見て再び顔を上げた時、シュラウドの姿は消えていた。
霧吹峠。井坂と冴子はここにいた。
二人は琉兵衛に宣戦布告し、もはや家に戻れない身。今回の照井との戦いは、まさに背水の陣。
と、井坂が冴子に声をかけた。
「冴子君。私は今、戸惑っています。」
「戸惑う?」
「はっきり言って君は、園咲琉兵衛に近付くための道具でした。ですが、今はそれ以上のものを感じている。私にも、こんな感情があるとは…」
言いながら井坂は雨傘を広げ、これから行われる情事を隠そうとする。
しかしそれを邪魔するのは、照井のバイクの音。
「戻ったらドーパントとしての君ではなく、本当の君を見せて下さい。」
井坂は戦いの場へと赴いた。
モトクロスから少し離れた場所を歩くシュラウド。
そんな彼女の前に、ドナルドが現れる。
「やあ、こんにちは!」
「白々しいわよ。ずっと見ていたくせに」
「やっぱりわかってた?でもあんなこと言った割に、シュラウドさんはトライアルメモリを取り上げなかったね。」
「…」
シュラウドは黙った。
「照井さんへの罪滅ぼしかな?あの人の家族が亡くなったのは、シュラウドさんが原因なわけだし。」
「…」
シュラウドはまだ黙っている。
「復讐の決着を見届けに行くんだね?ドナルドも行くよ。」
「…好きにしなさい。」
シュラウドはそっけなく言った。
決闘場。照井と井坂は向かい合い、凪は拘束されてその光景を見せられていた。
「心配するな、必ず助ける。」
照井の言葉を聞き、凪は頷く。
「いいんですか?」
〈WEATHER!〉
「そんな約束して。」
井坂はウェザーに変身。
「わずか1%も、勝つ見込みがないのに…」
さらに照井を挑発する。
対する照井は、
〈ACCEL!〉
「変・身!」
〈ACCEL!〉
アクセルに変身してエンジンブレードを構え、ウェザーが発生させる落雷を弾きながら、ウェザーに斬りかかる。
だが、軽くあしらわれた。
アクセルはエンジンブレードを投げ捨てる。
「全て…振り切るぜ!」
〈TRIAL!〉
アクセルはトライアルメモリを起動させ、
〈TRIAL!〉
アクセルトライアルに強化変身した。
「ほう、新しいメモリを手に入れたか…ふんっ!」
ウェザーは電撃を放つ。しかし、アクセルはそれをかわして、ウェザーに拳を打ち込む。
「なるほど、確かに速い。だが!」
ウェザーはアクセルを蹴り飛ばし、アクセルを囲むように雷雲を発生させる。
「いくらメモリが素晴らしくても、使う奴が虫けらでは意味がない!!」
ウェザーは雷雲を使って全方位から電撃を放った。
だがアクセルは全てかわし、雷雲の包囲から脱出する。
「何!?」
これにはウェザーも驚いた。
「見せてやる…トライアルの力を!」
アクセルはトライアルメモリを抜いて変形させる。
その時、
「照井さん、駄目です!!」
亜樹子、スバル、ティアナ、翔太郎、フィリップ、光輝、一真が来た。
「本当はまだ十秒切ってなかったんです!!」
ティアナはアクセルに戦いをやめるよう言う。だが翔太郎は逆だった。
「いいや、奴はやるさ。」
「僕もそう思います。照井さんなら、きっと勝てる!」
光輝も同意する。
そして、アクセルはトライアルメモリのスイッチを押し、トライアルメモリを放り投げてから、ウェザーに接近する。
ウェザーは両手から熱光線を放ってアクセルを攻撃するが、当たらない。
凪はアクセサリーを握って祈った。
アクセルはウェザーの攻撃をかわして接近し、ウェザーの両手を弾いてガードを崩すと、がら空きになったウェザーのボディーに、Tの字を描くようにしてキックを叩き込んでいく。
そしてアクセルは落ちてきたトライアルメモリをキャッチして、タイマーを止める。
〈TRIAL・MAXIMUM DRIVE!〉
「9.8秒。それがお前の絶望までのタイムだ」
「ぐあああああああああああ!!!!!」
ウェザーは爆発し、メモリブレイクされて井坂に戻った。
「やったぁーっ!!」
「照井さんが勝ったぁーっ!!」
大はしゃぎする亜樹子とスバル。
「信じられん…私への憎しみが…ここまでお前を強くしたのか…」
「俺を強くしたのは、憎しみなんかじゃない。」
アクセルは落ちていたケツァルコアトルスメモリを拾い、握り潰した。これにより凪のコネクタも消滅する。
アクセルは変身を解き、凪を拘束から解放した。
「…ありがとう。」
凪はアクセサリーを照井に返した。
「君を守れてよかった。」
微笑む照井。
「…」
ティアナはそれを羨望の眼差しで見ていた。
その時、
「あっ!ぐあっ!!」
井坂の声が聞こえ、全員が見ると、井坂の全身にコネクタが出現していた。
「なに!?何が起こってんの!?」
「メモリを過剰使用したツケが回ったんだ!」
亜樹子の驚愕とフィリップの分析を無視し、井坂は言う。
「これで終わったと思うな…お前らの運命も仕組まれていたんだ!あのシュラウドという女に…!」
それを聞いて、翔太郎、フィリップ、照井、光輝、一真は驚く。
「先に地獄で待ってるぞ…!!」
井坂の全身をコネクタが包む。
「見ちゃダメだ!!」
一真がスバルとティアナの目を塞ぐ。そして、
ドガァァァァァン!!!
井坂は爆発した。
「…悪魔にはふさわしい最後か…」
翔太郎は呟く。
この光景を近くで見ていた冴子は崩れ落ちた。
すぐ側にはシュラウドとドナルドがいて、戦いの行く末を見ていた。
ドナルドは少し悲しそうな顔をしていた。
事件は終わった。凪さんは明るさを取り戻し、子供達と触れ合っているらしい。
それにしても、井坂が言ってた『あれ』、どういう意味なんだろう?
「光輝!」
「一真…」
「ついにやったんだな、照井さん…」
「…そうだね…」
照井さんは復讐を果たした。あんまり気持ちのいいものじゃなかったけど…
「…次は僕、か…」
僕は呟いた。
どこかの研究所。
井坂は目を覚ました。
「…ここは?私は死んだはず…」
「まだ死んでもらっては困るんですよ。」
井坂は声がした方向を見る。
「あなたは確か、スカリエッティ博士…」
「お目覚めですかな?」
「…まずお礼を言いましょう。感謝します」
「それは彼女達に…」
スカリエッティの側には、トーレとクアットロが立っている。
なぜ井坂が助かったのか、それはクアットロが爆発を起こして井坂の死を偽装し、その間にトーレが超高速移動能力、ライドインパルスで井坂を救出し、コネクタの侵食を抑制する薬を飲ませ、ここまで運び込んだのだ。
「そうだったのですか、お礼を言いますよ。」
「構いません。」
「ドクターを脱走させて下さったスポンサーの命令ですしぃ~。」
「スポンサー?」
そこに、一人の男が現れた。
「やあ、よく眠れたかね?」
「まさかあなたは…ムスカ大佐!?」
井坂は思わぬ大物の登場に驚く。
「彼が私を脱走させてくれたスポンサーだよ。」
「…単刀直入に伺いましょう。なぜ私を助けたのですか?」
ムスカは答える。
「なに、簡単なことだ。私の計画に協力してもらいたくてね…」
「計画?何をするつもりか知りませんが今の私にはメモリがない。お役には立てませんよ」
「ご心配なく。」
スカリエッティは井坂に一本のガイアメモリを渡す。それは、ウェザーメモリだった。
「これは…!」
「大量のメモリを使用していたのが幸いしましたね、うまく体内にウェザーのパワーが残留していました。我々はそれを抽出し、複製したのです。ご安心を。複製とはいえ、パワーはオリジナルを上回ります。」
「…」
井坂は黙り、スカリエッティはさらに続ける。
「これからあなたに改造手術を施します。そうすればあなたは、もう二度とコネクタに侵食されることなく、さらに多くのメモリのパワーを手に入れられるでしょう。」
「…どうかね?我々に協力するつもりは?」
ムスカも割り込んでくる。
「…わかりました。協力します」
井坂はムスカ達に協力することにした。
彼らの計画は進む。誰にも知られることなく……。
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次回、
仮面ライダークロス!!
シュラウド「あなたは無限の使徒…」
琉兵衛「別名ミュージアム四天王。」
翔太郎「おやっさぁぁぁぁぁん!!!」
?「これがペインメモリの力です。」
クロス「クロス、アンリミテッド…!」
第十三話
U覚醒/その力、無限
これが裁きだ!!
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驚きの展開!!