「ねーねー」
少女は少年に尋ねた。
「これ、あげるから僕も仲間に入れて」
手に持っているのはマシュマロ。
「………」
少年は最初は断ろうと思っていた。
だが、よく見ると少女の身体には傷や震えがあった。
「………おまえ、ただ見ているだけかもしれないぞ?」
なぜだかわからない。
でも、なんとなく彼女の姿を見ていたら入れてあげてやろうかと思えた。
「っ!? うん、いいよ!」
だだ……それだけ。
それだけだったのに少女は満面の笑みで笑う。
「……変な奴?」
少年はその満面の笑みの意味がわからなかった。
やがて少年の仲間の一人が、見知らぬ少女に気付いて話かけてくる。
「あら? あなただーれ?」
「………僕……は」
「アタシは、岡本一子!」
「僕……は……」
少女は震えた声で名前を言い、叫んだ。
「僕は……ユキ。小雪っ!」
「小雪? ユキでいいの?」
「うんっ!」
一子は小雪の右手を握る。
「それじゃ、一緒に遊びましょ」
「…………っ!! うんっ!」
二人は走った。
それだけ。
それだけだったのに、少女はさっきよりも満面の笑みで笑っているように少年は思えた。
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これはある青年の断片話