No.408740

とある断片話 前編

アインさん

これはある青年の断片話

2012-04-15 06:06:49 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2031   閲覧ユーザー数:1942

「ねーねー」

少女は少年に尋ねた。

「これ、あげるから僕も仲間に入れて」

手に持っているのはマシュマロ。

「………」

少年は最初は断ろうと思っていた。

だが、よく見ると少女の身体には傷や震えがあった。

「………おまえ、ただ見ているだけかもしれないぞ?」

なぜだかわからない。

でも、なんとなく彼女の姿を見ていたら入れてあげてやろうかと思えた。

「っ!? うん、いいよ!」

だだ……それだけ。

それだけだったのに少女は満面の笑みで笑う。

「……変な奴?」

少年はその満面の笑みの意味がわからなかった。

やがて少年の仲間の一人が、見知らぬ少女に気付いて話かけてくる。

「あら? あなただーれ?」

「………僕……は」

「アタシは、岡本一子!」

「僕……は……」

少女は震えた声で名前を言い、叫んだ。

「僕は……ユキ。小雪っ!」

「小雪? ユキでいいの?」

「うんっ!」

一子は小雪の右手を握る。

「それじゃ、一緒に遊びましょ」

「…………っ!! うんっ!」

二人は走った。

それだけ。

 

それだけだったのに、少女はさっきよりも満面の笑みで笑っているように少年は思えた。


 
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