No.407837

《インフィニット・ストラトス》~二人の転生者~

菊一さん

第十話です。
投稿前に投稿済みの作品管理で閲覧数を見てみたんですが第九話より第八話のほうが閲覧数が少なかったんですね……第八話は自分でもわかるぐらい文章の羅列でしたからね、いつか改稿します、お目目汚しすみませんでした。
ではどうぞ

2012-04-13 22:42:43 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1484   閲覧ユーザー数:1396

 

第十話 クラス代表決定戦

「……だから要はこの永久機関の動力源を量子化しても稼動し続けるようにして、計算上は大丈夫だけどこれだけじゃまだ稼働効率が悪いかもしれないから一応従来のを改良した大容量バッテリーを追加で付けて相互補完でいけるようにして、待機状態時に永久機関からの発電でバッテリーのエネルギーを補充するようにして……普通のスポーツとしての戦いの時は大容量バッテリーを使用、永久機関はかなり危険な代物だし試合で使用したら殆ど反則だしな……」

「確かに……しかしこれだけ凄いISじゃ従来の動力源とバッテリーじゃあシールドエネルギーを殆ど回さないと動けない……特にこのフェイズシフト装甲がバッテリーを使いすぎ……もっと効率を良くするべき」

「あ?ああ、これね。これはまだ一次移行(ファースト・シフト)前の状態だから、この状態でフェイズシフト装甲――通称PS装甲を展開するとこうなるっていうこと。俺の予測通りに行くと一次移行後はヴァリアブルフェイズシフト装甲――通称VPS装甲っていうのになる予定なんだ。ほら、こうなると電流の量が制御できるようになってバッテリーが十分持つだろう?で、二次移行(セカンド・シフト)の時には予備電力バッテリーが増設される予定。そして装甲が分割されて、限りなく人体に近い行動を可能にすると同時に、関節部や内部部品にも予備電力での電流を流してVPS装甲を使用、関節部などに掛かる負荷を軽減、なくすことを可能にする。こうすることでISとより一体化して、ほぼ人間と同じ動きが出来るようになる。が、しかしこのISは平均以上の肉体や反射神経と判断力、演算能力、空間認識能力を持ってる人物しか操縦できない」

「なんで……?」

簪が聞いてくる、それはそうだ。そんな著しく操縦者を限定するISなんて過去から現在まで一機たりとてなかったのだから。そして多分今の《なんで》には《なんでそんなものを作ったのか》っていう意味も込められているのだろう。

「まあ聞かれたからといってペラペラと喋ることはしないんだが……このISはIS自身の能力やサポートを操縦者の生命に関わる所……まあ生命維持装置とか絶対防御とかだな、そういうところにしか干渉できないようにしてある。それは何故か?簡単だ、そうしないと永久機関が使えないから」

「……?」

「永久機関を量子化しても起動させるにはISのサポートが必要不可欠なんだ。それに拡張領域(バス・スロット)も大量に必要になる。その為ISの基本的なシステムのカットやハイパーセンサーのある程度の範囲の限定。そしてその為に空間認識能力が必要になる。それに銃器の攻撃に必要な反動制御、弾道予測に距離の取り方と一瞬で測る方法、一零停止、特殊無反動旋回(アブソリュート・ターン)、これらのサポートも全て切ってある。つまり自分で考えて計算し、反動に耐えれる肉体と姿勢を保ち、一瞬で判断と行動できる反射神経、ISのサポートでやることを全て自分の頭でやり、行動しなければならない。しかもこんなのはほんの一部……常人にしてみれば《ISじゃないIS》と言われるだろう。なんせ普通に乗ったら戦車の砲撃すら避けれないんだからな」

「……でも秋と春華は、それが出来る……」

簪は静かに言うが、俺は否定する。

「いや、無理だな。言った通り俺も一人の人間だ、やはり限界がある。その為の制御プログラム……というかAIに近いものを組み込まないと。それに春華はそこまで身体能力が高い訳じゃないからな、だから結果的に春華のISは武装数が少ない。それに比べて俺はギリギリまで武装を積める領域を広げて、システムをカットしたんだけどな」

俺と簪はあの後すぐに来た春華とも話を終え、その日から今までの開いた時間は全てISの開発に取り掛かっていた。気がつけばクラス代表決定戦の前日だ。

……しかしさすがは春華だった。簪ともすぐに仲良くなって次の日からは普通に対応していた。

「で、これがその結果出来たIS関連のデータ」

「……凄い……」

簪は空中投影された俺の開発したISのデータを見ながら感嘆の声を漏らしていた。束さんから注意されていた展開装甲の事も話し(勿論口外すればどういう方法で報復が来るかも話した)、束さんにも話していない永久機関のことも話した。

「……これが実用化されたら第四……ううん、第五世代位になりそう……」

「そうだな……第四世代のコンセプトが《装備の換装無しでの全領域・全局面展開運用能力の獲得を目指した世代》だからな。第五世代のコンセプトは《永久機関を搭載し、あらゆる状況下でも即時対応出来る強襲モジュール複合体》……かなあ?まあまだ試作機としての段階だがな。しかし完全に兵器としての運用を前提としている。やれやれ、我ながらなんというものを作っているんだか…今開発中の二機だけで地球を破壊できるなんてな」

「永久機関――核エンジン搭載のIS。束博士がまだ第四世代を開発中の今、それを超えるISとその設計、開発者……恐らく世界各国が最も欲しがると思う」

「……俺を売るかい?」

簪に「ニッ」と笑って皮肉っぽく言う。しかし簪は真剣な眼差しのまま首を横に振る。

「あなたは私を守ってくれると言った……裏切らないって……それなのに私が裏切ったら、意味がなくなるから……絶対にそんなコトはしない」

「そうか……アリガトな。さて……春華!動力源のチェックは大丈夫か!?」

俺は通信機器に接続したヘッドセットを装着し、別の部屋にいる春華に呼びかける。

空中ディスプレイに移された春華は防護服を着ており、声もくぐもっていた。

「うん、大丈夫だよ、お兄ちゃん!でも本当にこのシステム組み込むの?下手したら《アラスカ条約》違反だよ?」

「別にいいんだよ、どの国もやってることだ、バレたら他の国の事もバラせばいいのさ……とは言え、これを設計したのは俺だ。だから春華、簪、お前ら二人は例えバレても知らなかった、で突き通せ。いいな!?」

「「……………」」

二人からの返事がない。とう言う時は大概決まってるのだ――

「お兄ちゃんだけが罪をかぶることはないよ!」

「バレたときは……嘘を重ねるよりも、正直に言ったほうが楽……」

言うと思ったよ。そしてこういう時は絶対意見曲げないんだよな……

「はあ……わかったよ。でも絶対にお前ら二人には攻撃させねえよ。その時になったら俺の仲間は絶対に守ってみせるさ。そこで春華!今お前が持っているシステムが必要となるのだ!現状で実物はそれしか無い、つまりそれさえ破壊すれば後は俺を捕まえるしか無い。まあ高確率で無理だろうがな。じゃあ行くぞ!準備は?」

「何時でもOK!」

春華はカメラのレンズを横に向けた。そこにはいろいろなコードにつながれた二つの動力機関――核エンジンが稼動していた。

「……よしっ、広域ニュートロンジャマー――通称広域Nジャマー作動!」

「Nジャマー作動、核分裂の抑制を開始しました」

それから数秒後、二機の核エンジンは機能を停止していた。

「まず第一段階は成功……そのまま広域Nジャマーを作動させたままNジャマーキャンセラーを作動!」

春華がコンソールをいじり、低い作動音が発せられた。

「Nジャマーキャンセラー作動!作動開始確認………核エンジン再稼働確認!成功です!」

春華の言葉に俺は「ふぅ……」とため息を漏らす。

「おつかれだ、春華。広域Nジャマーを作動させたままNジャマーキャンセラーを切ってすべてにシステムロックを掛けて戻ってきてくれ。その部屋の出入り口にもだぞ」

「わかった~!じゃあすぐ戻るからね~!」

そういって通信は終わる。俺はヘッドセットを外し、適当な場所においた。

「これで後はコアをはめ込んで馴染ませて、細かい動作チェックとデータの変更や確認、各武装の火器管制など諸々の調整……あ~まだやることがたくさんある~」

俺はまるでドロドロドロ、と溶けていくかのようにその場にへたり込む。簪がそんな俺に飲み物を渡してきてくれた。

「……でも、それはISを起動させた後でしかできない……一段落はしたんだから休まないと……お疲れ様」

「そうだな~……でもまだ《打鉄弐式》が残ってるけどな。しかしそれも今日中に何とか形にはなるだろう。システム関連は簪に任せて大丈夫か?」

俺の質問に簪は無表情だがコクン、と頷く。

「システム調整は……私だけでも……できる。でも……火器のデータは秋がやってくれたから……教えて欲しい。でも、組立が先……」

「OK、じゃあさっさとやっちまおう、連日徹夜で疲れてるんだ。あ、でもその前にこっちの二機のISの残りやっちまうから待っててくれ」

「わかった……その二機……名前なんだっけ?」

「ん?言ってなかったっけ?一号機……まあ俺の専用機だな。《ストライク》の形態を基本にして各ストライカーパック、機動力重視のパック《エールストライカー》、遠距離砲撃型の《ランチャーストライカー》、近接格闘の《ソードストライカー》、そしてそれらを複合したのがこの《ノワールストライカー》。更にISの形態そのものを変えれることが可能。そこで次の形態がこの《ブルデュエル》、コイツは近接白兵戦闘を主眼において設計。次は《ヴェルデバスター》、コイツは主に砲戦型で後方からの遠距離攻撃や後方支援が主になっている。そして最後に《ネロブリッツ》、コイツは電撃作戦を主眼において設計した。ただ武装が右腕に集中しすぎたから左腕にサポートの武装を設置。全形態にVPS装甲を採用、《ストライク》にいたってはパックによって流れる電流の量が変わるがカラーリングは基本白、青、赤のトリコロール。唯一《ノワールストライカー》だけが黒色に変わってしまう。まあ一次移行ではこうなる予定……で、このISの名前は《ゲイル・ウィング》、《疾風の翼》っていう意味だ」

空中ディスプレイにそれぞれの武装や形態の画像と一緒に見せながら説明し、その合間に自分の機体の調整を行なっていく。今度は別のウインドウ、もう片方のISの方の画像を出した。

「こっちは二号機……春華の機体だ。外部の装甲はVPS装甲じゃないが、ナノスケールのビーム回折格子層と超微細プラズマ臨界制御層から成る鏡面装甲――通称《ヤタノカガミ》を使用している。これによりビーム兵器を無効化、相手に跳ね返すことが可能だ。ただ実体弾に対しては少し脆い、普通にシールドエネルギーが削られていく。しかしビームやエネルギー関連の攻撃なら完全に防いで反射させる。剣とかサーベル系だったらちょっと厳しいけどな。そしてコイツは《ゲイル・ウィング》の《ストライカーパック》を全て装着可能……まあ拡張領域足りなくて搭載してないがな、その代わりに専用の装備がある、亜音速まで加速できて、このISのサポート機として使用できる装備《大鷲(オオワシ)》、七機のビットでエネルギーシールドと砲撃が出来る装備《不知火(シラヌイ)》を装備できる。このISに関しては一次移行でほぼ完成、あとは《無段階移行(シームレス・シフト)》でパーツ単位や装備品、性能向上になるだけだ。そしてこいつの名前は《ダウニング・スカイ》、《暁の空》っていう意味……長々と話しちゃったけど理解できたかな?」

俺は調整が終わり、ウインドウを閉じていった。簪は少しだまって考え込んでいたが「……大丈夫、わかった」と言い、俺は「なら、よかった」と返した。

話が終わった時、丁度春華が入ってきた。

「よっしゃ、早速やるか!じゃあ簪はシステム調整に入ってくれ。火器のところは俺が所々教えるから自分なりにやってくれ。春華はケーブル関連、間違えて伝達系に動力系差しこむなよ?あ、ついでにこっちに来るときにそこにある特大レンチと高周波カッター持ってきてくれ、武装の製造と外部装甲に使うから」

「はいは~い」

「……わかった」

こうして俺達三人は《打鉄弐式》の制作に取り掛かった。時刻は午後八時を回っていた。寮長である冬姉には許可を貰っているので門限を超えても大丈夫。しかし明日は代表決定戦なので早く休みたかった。

 

「え~っと……これと、これを繋いで……この緑がこっちだから、こうっと……最後にこれを挿し込めば……出来た!どう、簪ちゃん!」

「……うん、ちゃんとできてる……システムチェック完了、オールグリーン。コアネットワーク接続、オンライン……火器管制システム、異常なし……」

「どれどれ……おう、やれば出来るじゃん。あとは俺が作った装甲を取り付けて形だけは完成……あとは実際稼動してみないとわからないな」

「……うん」

そんなこんなで装甲を取り付け、簪のISの完成を迎えた時刻は十二時少し前だった。

「さ~て、帰るぞ~……ああ、今から帰って寝ても三時間しか寝れねえ。かといって朝練抜かすのは嫌だしな~、まあしょうがねえか」

「あ、あの……ご、ごめん」

開発から出て、寮に向かって歩いていると、俺の愚痴に簪が謝る。しかし俺にはあやまる理由がわからなかった。

「な~に謝ってんだよ。俺は俺の意志で簪のIS制作を手伝ったんだし、こっちのIS制作も捗った。何よりも楽しかったしな。あ、そうだ、明日の代表決定戦見に来いよ?放課後暇だろ?」

「う、うん……見に行く、でもISは?……あれはまだ完成じゃないから……どうするの?」

簪が心配そうに訪ねてくる。俺は歩きながら制服の中に手を入れ、リヴァイヴの待機状態のネックレスを見せた。

「俺の現在のISはこれ。学園から譲り受けた。春華は打鉄を貰ってるから大丈夫。まああの専用機は今のISじゃあ太刀打ちできなくなったり、死んじゃった時に使うさ」

「え?死んじゃった時?」

俺の言葉に簪は聞いてくる。

「死んじゃった時、それはこいつが《ラファール・リヴァイヴ》として使命を終えた時。コアを初期化するかそのまま使って再び俺の専用機《ゲイル・ウィング》として使命を果たしてもらうさ。ISだって生きてるんだからな。自分の相棒をものとして扱いたくないしな」

俺は笑いながら仕舞う。

「……ISは生きている……わかる気がする」

「まあまだ全然わからなくてもそのうち分かるさ。簪がしりたいと願って努力し、踏み出せればな」

「うん……じゃあ私はこれで……」

いつの間にか寮に着いており、一階で別れた。春華も一階なので別れて俺は重い足取りで階段を登る。

「はあ……こういう時に階段は疲れるぜ……」

 

次の日、放課後、第三アリーナ

「――なあ、箒」

「なんだ、一夏」

「気のせいかもしれないんだが」

「そうか。気のせいだろう」

「ISのことを教えてくれる話はどうなったんだ?」

「……………」

「目 を そ ら す な」

箒と夏がピットの中でぎゃあぎゃあ騒いでいる。俺はモニター室で冬姉たちと一緒に戦闘を見る予定だ。勿論夏の後は春華、その次俺だから制服の下にISスーツは着込み済みだ。じつはこのISスーツ、汗の吸収率が抜群にいい。だから普通に制服の下に着ていても違和感はそんなにない。ほら、水泳の授業が一時間目にある日に海パンをそのまま着てくるのと似た感覚だ。とりあえず箒と夏の話に交わるか。

「何だ夏、ISのこと教えてもらってないのか?」

「そうなんだよ秋、なんか言ってくれよ?」

「あ、秋葉、私は夏の剣道の腕前があそこまで鈍っているとは思っていなかったんだ!……事実、昔は私より強かったんだしな」

「ふむ……夏、ISを教えてもらえなかったのはお前のせいだ。そもそもあんな挑発に乗る前にISのことを勉強しておくべきだ。それに剣道も部活はやってなかったにせよ素振りぐらいはやっておけ、鈍ったりすると取り戻すまでがまた大変なんだからな」

夏は「うっ……わ、わかった」といい、箒は「まったくだ!秋葉はよくわかってる」と言う。しかし――

「箒、お前もお前だ。いくら鈍っていたとはいえずっと剣道ばかり教えてどうする。俺はISの事を前提に剣道の方も頼むと言ったはずだが?まったく、これじゃあ勝てると思っていた戦いも勝てないぞ……」

今度は立場が逆転して箒は「す、すまない……」と言い、夏が「ホントだぜ、まあ俺も悪かったけどさ」と謙虚ながらも言う。

「まあ第一夏のISが来てないのが一番の要因だな。倉持の所は何をやってんだか……いくら何でも遅すぎるだろ?」

俺の方でさえ昨日の内にIS完成させたんだからな。

「お、織斑くん織斑くん織斑くんっ!」

そう思っていると副担任の山田教諭が駆けてきた。いつもより輪をかけて慌てている。転びそうでこっちがハラハラする。

「山田先生、落ち着いてください。はい、深呼吸」

「は、はいっ。す~~は~~、す~~は~~」

「はい、そこで止めて」

「うっ」

恐らくノリで夏は言ったのだろうが山田教諭は本気にしてしまったらしい。酸欠で顔が赤くなっていく、しょうがねえな。

「山田教諭、もういいですよ」

「ぷはあっ!結構苦しかったです」

「でも多少は落ち着いたでしょう?」

「え、ええ、まあ……そ、それでですねっ!来ました!織斑くんの専用IS!」

やっときたか、俺が乗るわけじゃないが待ちくたびれたぜ。

「織斑、すぐに準備しろ。アリーナを使用できる時間は限られているからな。ぶっつけ本番でものにしろ」

山田教諭と一緒に来たであろう冬姉がそう言う。確かに、あとがつっかえてるんだからそれしか無いよな。ん?なんで俺達が先しないのかって?地獄は後から見せてやったほうがいいだろう?

「この程度の障害、男子たるもの軽く乗り越えてみせろ。一夏」

箒が応援の言葉をかける。そうだな、男子ならこれくらいは楽勝だよな。

しかし当の夏はすこし混乱している。

「え?え?なん……」

「「「早く!」」」

見事にハモったなあ。

そんなことを思った瞬間、ごごんっ、と鈍い音がしたと思うとピット搬入口が開く。斜めに噛み合うそれが完全に開くとそこにはISがあった。これが夏のISなのだろう。

夏をみると驚いた表情でISを見ていた。

「これが……」

「はい!織斑くんの専用IS《白式》です!」

《白式》か……たしかに全身白、真っ白だ。しかしどっちかって言うと鈍いねずみ色に見えなくもない、暗いからだろうか?手や足は青色だ。飾りっけも何もなく、工業系の凸凹がまだ目立つ、まるで《削り出しただけっす!これからヤスリがけっす!》みたいな?そしてそのISは操縦者の搭乗を待つように、装甲を開いて待っていた。

「体を動かせ。すぐに装着しろ。時間がないからフォーマットとフィッティングは実戦でやれ。できなければ負けるだけだ。わかったな」

冬姉からせかしの言葉が発せられる。俺も同感だ、早く代わってほしい。春華はいいとしても夏はかなり掛かりそうだからな。

「あれ……?」

夏が白式に触った瞬間、そんな声を出したがそれ以外は何もなく、乗り込んでいく。まあ多少の違和感があっただけで問題ないんだろう。

「背中を預けるように、ああそうだ。座る感じでいい。後はシステムが最適化をする」

夏がISに乗り込んだ瞬間、かしゅっ、かしゅっ、と空気を抜く音が聞こえたか。これで今の夏はISと一体になったことだろう。

「ISのハイパーセンサーは問題なく動いているな。一夏、気分は悪くないか?」

「大丈夫、千冬姉。いける」

「そうか」

短いやりとりだったが冬姉が名前で夏を呼んだ辺り、結構心配していたのだろう。やはり教師と生徒という関係でも姉と弟という存在には変わりないのだろうな。

「箒」

「な、なんだ?」

「行ってくる」

「あ……ああ。勝ってこい」

夏は箒のその言葉に首肯で答え、ピット・ゲートに進もうとしたが俺が声をかけた。

「おいおい、俺には声もかけないのかよ?」

「ああ、悪い悪い……勝ってくるから。バトン繋ぐからな」

「ふっ……まあ期待しないで待ってるよ。それより夏、少しアドバイスをしてやる、心して聞け」

「あ、ああ、わかった」

俺の声に夏は緊張した声で応える。

「まずお前が専用機に乗ってISを乗っている――今の状態な、この状態でもお前に万が一でも勝ち目はないだろう。しかし相手は人間だ。恐らく相当油断しているだろう。そこで相手は全力を出してこないから兎に角攻撃を避けまくれ。いきなり仕掛けようとするな。フォーマットとフィッティングが終わるまでは避けて避けて避けまくって兎に角シールドエネルギーを温存しろ。そしてフォーマットとフィッティングが終わった瞬間勝負をしかけろ。あとは……まあ運だな」

「結局最後はそれかよ」

夏は俺の最後の言葉を聞いて項垂れる。

「兎に角最初は避けまくってシールドエネルギー温存、その後一気に攻撃に転じろ。そうすれば勝機はある。いいか、絶対に手を抜くな。絶対にだぞ?」

「ああ、わかったよ。じゃあいってくる」

「おう」

夏は今度こそピット・ゲートに移動して解放された瞬間、飛び上がっていった。

「……さて、モニターで見物しますか?」

 

俺達はモニター室に移動し、山田教諭がコンソールを弄ると画面にアリーナの状況が映し出された。観客席は一年一組は元から、他のクラス、学年の生徒も集まっていた。お、簪発見!ちゃんと来てくれたんだな。でも俺はもうちょっと後なんだよな~待ってろよ。

空中では夏とセシリアが何かを喋っている。どうせ「チャンスをあげますわ」とか言ってるんだろ。俺にも同じ事吐いてみろ、そのISをお前ごとジャンク品にしてやるからな……

俺は握りこぶしをに力強く握った。

次の瞬間セシリアが持っていたビームライフルを発砲、夏のISの左肩の装甲が吹き飛ばされ、粉々に砕けた。それに気づいて夏は超低空飛行で地面すれすれを移動し、避け続ける。セシリアは容赦なく夏にライフルのビームを当てていく。

「しっかし油断しまくりだなあ……」

俺は声に出して呟く。

「一ノ瀬、やはり分かるのか?」

「織斑教諭、俺を誰だと思ってるんですか?」

「……ふっ、そうだったな」

「えっ?えっ?な、なんですか?」

俺のつぶやきに冬姉はそう言い、山田教諭は不思議がってしきりに聞いてくる。箒はモニターを心配そうに見つめている。春華は現在更衣室で精神統一している。春華は春華なりに緊張していて、それをほぐしているのだ。春華らしい。前世でも戦場に出る前はよくやっていた。

「山田教諭、落ち着いてください、説明しますから。セシリアのIS《ブルー・ティアーズ》は第三世代のISで最も目立つのがビーム攻撃のビット四機とミサイル型ビット二機からなる計六つのビット形の兵装の、このISの名前にもなってる兵装《ブルー・ティアーズ》。しかしそれは使わないどころかレーザーライフル《スターライトmkⅢ》を直線上にしか撃っていない」

「は、はあ……ですがね一ノ瀬くん、普通銃の弾というのは直線にしか――」

「それは銃の弾丸がただの鉛の塊で特殊な機構が組まれていなかったらの話。セシリアの乗っているISの兵装のビームは……曲がる」

俺は静かにそういう。冬姉は静かに目を閉じながら聞いている。山田教諭は驚いているが馬鹿にもしているようだった。俺はポケットからUSBメモリーを取り出すと、差し込み、コンソールをいじる。すると別の画面にセシリアのISの情報が表示された。

「これを見ても疑いますか?」

「え~っと……ほ、本当です!!っていうか一ノ瀬くん!この情報どこから!?」

「まあ機会があったら話します。それよりもこの情報によるとビットは勿論、レーザーライフルもビームが曲げれる仕様というのがわかります。ですがセシリアは直線でしか撃っていない……まあどんな事情があってもあいつは手を抜いてるってことですよ」

俺はUSBを抜きながら言った。

その後もセシリアと夏のワンサイドゲームは続いた、セシリアはビットも使用してきたが、まだビームを曲げない。全力は出さない主義なのか?

それから暫くして俺はセシリアがビームを曲げない理由を推測し、それを裏付ける行動もちらほら見えてきた。なるほど、もしこれが事実ならイギリスが人材不足なのは事実だし、奴に高確率で勝つ方法も見えた。しかし問題は夏か……そろそろ戦闘開始から二十七分ってとこか……フォーマットとフィッティングはまだ済んでないが、さすがに行動を起こさないとキツイかな……

その瞬間、夏の装甲が無くなった左足を狙ったセシリアのライフルに向かって夏が突っ込み、ライフルの銃身をずらしたがセシリアは左手を振る。すると待機していたビットが動き出し夏を攻撃し始めた。しかし夏はそれを避け、一機を撃破。そしてその後更にセシリアは右手を振り、攻撃させるが夏はもう一機のビットの後部推進器(スラスター)を破壊し、そのビットは爆ぜる。

「そうだ…それでいい」

「え?」

俺のつぶやきに山田教諭はまた疑問を浮かべる。本当にこの人は教師なんだろうか?

「セシリアのビット攻撃には現状では弱点が多々ある。夏はそこをついて反撃に転じている。まず一つはビットの攻撃時の映像を……これを見るとセシリアは必ず攻撃前に手を振るか停止してからビットが攻撃をしている。ISの第三世代の兵器は《イメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器の搭載を目標とした世代》、つまりあのビット攻撃は何も自律行動で動いてるわけじゃない、セシリアが一々命令を下さないと動かないし動けないんだ。オマケに燃料を補給するために本体に戻る必要もある。そしてその命令を出す際は集中しなきゃいけないためにセシリアはそれ以外の行動を取れない。だから夏はビットにさえ気をつければいい」

「ああ、なるほど!」

俺の出した映像を見て山田教諭は理解する。

「更にセシリアの攻撃方法は必ず夏の反応速度が一番遅い場所を狙っていく。逆に言えばそこ以外は狙わない。つまり夏が意図的にそういう状況を作れば簡単にビットを潰すことが可能というわけです」

「なるほど……一ノ瀬くん、何でそんなに詳しいんですか?」

「い、いえ、じ、実は少し前に織斑教諭にレクチャーを受けまして……」

冬姉を見ながら言うと冬姉は「はぁ……」とため息を。ごめんなさい冬姉、許して。

「しかし……すごいですねぇ、織斑くん」

山田教諭の意識がモニターに向かったのを見て、俺は安堵の息をつく。そして俺もモニターを見るがその瞬間忌々しげな表情を作る。そしてそれは冬姉も同じだった。

「あの馬鹿者。浮かれているな」

「えっ?どうしてわかるんですか?」

「さっきから左手を閉じたり開いたりしているだろう。あれは、あいつの昔からのクセだ。あれが出るときは、大概簡単なミスをする」

その通りだ。昔から夏のそのクセはあった。剣道の試合中にそのクセをやって突っ込んだ瞬間逆に一本取られたりなどはザラだった。主に俺相手だったが。

「へぇぇぇ……。さすがはご姉弟ですねー。そんな細かいことまでわかるなんて」

そういった山田教諭に冬姉はハッとして理由をつけるが山田教諭はからかいはじめる。そして冬姉のヘッドロックが炸裂した。

そんなのを横目にモニターを見ると試合が大きく動いた。夏が残りのビットを斬撃と蹴りで破壊し突っ込んでいく。セシリアのライフルは間に合わない。しかし俺はその時セシリアの口元が笑うのを捉えた。

「避けろ!夏!!」

その瞬間、ミサイル型のビットが腰部の後ろから展開され、発射された。それに夏は避けれるはずもなく、直撃した。赤を超えて白い、その爆発に夏は飲み込まれていった。

「一夏っ……!」

箒はその光景を見て声を上げた、が俺は逆に安堵の息をついた。

「ったく……なんとか間に合ったようだな。運のいいやつだ」

「機体に救われたな、馬鹿者め」

冬姉もそう言い漂っていた煙が弾けるように吹き飛ばされる。

そしてその中心には、あの純白の機体があった。

そう、真の姿で――

それから決着がつくまでは早かった。

夏はセシリアに向かって何かを話したかと思うとセシリアは再びミサイルを発射、それを夏は横一線で切り払い、突っ込みながら近接ブレード――《雪片弐型》を構え、発光する刀身を出現させた。それは紛れも無く、第四世代の《展開装甲》だった……ということはあれは束さんの手が入ってることになる。

そして懐に入った夏は下段から上段に逆袈裟払いを放つが、その斬撃が当たる前にブザーが鳴り、勝負が決まった。

《試合終了。勝者――セシリア・オルコット》

「やれやれ……期待しなくてよかったよ」

俺はそう呟く。そして隣の冬姉も「やれやれ」という顔をしていた。

「さ~て、敗者を迎えに行って反省会でも開きますか」

俺はそう言ってモニター室を出る。それに続いて冬姉、山田教諭、箒も出てくる。

 

「よくもまあ、持ち上げてくれたものだ。それでこの結果か、大馬鹿者」

夏の階級が《馬鹿者》から《大馬鹿者》にランクアップか……ふつうはダウンだけどな。

「武器の特性を考えずに使うからああなるのだ。身を持ってわかっただろう。明日からは訓練に励め。暇があればISを起動しろ。いいな」

「……はい」

冬姉の言葉に大人しく頷く夏。頷くしかない状況だから当たり前といえば当たり前だが……哀れなり、夏。

「えっと、ISは今待機状態になってますけど、織斑くんが呼び出せばすぐに展開できます。ただし、規則があるのでちゃんと読んでおいてくださいね。はい、これ。一ノ瀬くんも」

どさっ。うん、すごい音だ。電話帳が落ちた時の音みたいな。IS起動におけるルールブック……これで夏はまたグロッキーだな。俺はパラパラパラと捲って、もう一回捲って眼を通すと「OK、覚えました」と発言して制服を脱いで畳み、その上に本をおいて夏に渡す。

「この後まだ試合あるけど汚れたら嫌だからな、持っててくれ。そして俺の戦闘をゆっくりと観戦よろしく」

「あ、ああ……あれ?でも今は春華の勝負じゃあ?」

「ん?ああ、もう決着は着いた」

「え?」

その瞬間、ブザーが鳴り春華が勝者だとコールが掛かった。

夏が帰ってきたのと入れ替わりで出撃したので一分足らずで勝敗が決したのだ。観客席からは驚愕と黄色い声がざわざわキャーキャーと聞こえる。まあ当たり前だろう。

そして春華が戻ってきた。

「お兄ちゃん!やったよ!勝ったよ!」

「バーカ、当たり前だろ?勝負に絶対はないが俺の妹で冬姉の義理の妹なんだ。まず負けない」

「ぶ~、もうちょっと褒めてくれても良いじゃん!」

春華は打金を仕舞うと制服をいそいそと着込み始めた。そして山田教諭から本を受け取ると「うう~……」と声を漏らした。それぐらい一瞬で覚えられるだろ?

「さ~て、それじゃあ行きますかね」

そういって俺はリヴァイヴを展開してアリーナに飛び出した。

 

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記念すべき第十話!でもまだやっと代表決定戦始まったばっかりですけどねw

次回は主人公秋葉VSセシリア……戦闘描写が上手くかけてればいいんですが、というかそもそも自分の小説ってよんでて違和感とか無いですか?全然表現できてないとか、想像ができないとか……そういうのあったらどんどん言ってきてください、出来る限り直しますので。

さてと……実は秋葉VSセシリア戦……二話か三話ぐらいあります。長いですねwですのでもう一話あげようかまた迷ってます。それともここで一旦区切って明日に上げたほうがいいのか……結構悩みますねw

そういえば昨日、深夜にもかかわらず読んで下さった方が「次の話は何時上がりますか?」という(じっさいにはもっと砕けた言い方でしたがw)めっせーじをいただきまして、時間はかかりましたが上げた、という出来事がありました。こんな風に「次の話が早く読みたい!」といってくれれば投稿ペースと相談して可能だったら連続で上げていきます。ですので遠慮などはしないで言ってきてください!

あとまだ絵師様募集してます!……自分は絵を書く能力ゼロですからね……困ったものですw

ではまた~


 
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