No.403033

魔法少女リリカルなのは TFG 第9話「燻る、火種」

juneさん

前回の続きです。
今回とあともう一回シリアスっぽくなります

後、今回のサブタイがしっくりきていないので、何かいい案があればぜひ教えてください

2012-04-05 06:55:58 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1588   閲覧ユーザー数:1477

 

「じゃあいくぞ。」

そのセリフが引き金になったのか、それまで熱狂していた敵が一斉に口をつぐむ

代わりに彼らから発せられるのは身を刺すような殺気

周囲の空気が張り詰めていく

そして

「ふっ。」

軽い呼気とともにホルスターに収めていたデバイスを抜き撃つ

「!?だが、この程度で!!」

予備動作なしという魔導士にとっては虚をつく攻撃だったがさすがに相手も素人ではないらしい、すぐに体勢を整え迎撃しようとしている

「ま、それは悪手なんだがな。」

(ヴィータ、来るぞ。目をつぶってろ。)

そうして俺が放った魔力弾が敵の魔力弾で相殺された瞬間

あたり一面が真っ白になった

 

 

さて、ヴィータはもう大分いいとこまで逃げただろう

「んじゃあ、こっちもそろそろ仕掛けるかね。」

と、手にした狙撃銃を構える

(ナイア、弾道補正よろしく。)

(―――了解・・・OKいつでもいけるよ。)

「スタンバレット、セット。」

(―――スタンバイ、OK。)

「ファイア。」

掛け声とともに狙撃銃から弾丸が放たれる

そして、途中で10個に分裂したそれは寸分違わず敵の急所に当たる・・・はずだった

「くっ・・・舐めるなぁ!!」

キンッ

甲高い音とともに攻撃の一部が弾かれる

しかし、それでも全てを防ぎきることはできなかったらしく残った三発ほどが後衛であろう三人に当たった

(まさか一人で半分以上を落とすとはな。視力が回復したようには見えなかったから勘で、といったところか。)

それでも後衛を落とせたのはありがたい、ただでさえ人数的に不利なのだ

戦いは所詮、頭数を揃えた者勝ちだからな

(ナイア、ナックルシフト。)

(了解。)

いつまでも呆けている場合ではない狙撃銃の状態だったデバイスを素早くナックル形態に変形させる

(ナイア、糸の準備は?)

(いつでもいいよ。思考制御も完璧だ。)

さすがギル、いい仕事をしている

っと、敵の視力もどうやら回復したらしい

敵は俺の姿を見つけると矢のようなスピードでこちらに接近してきた

俺もあのくらい速く飛べたらなぁ

「とはいえ、その速度が仇になるんだな、これが。」

射程にあと少しで入るというところで敵の動きが一斉に止まった

「な!?体が・・・。」

「動かないか?そりゃ大変だな。」

突然身動きが取れなくなった敵に対し、俺は心配そうな風を装って声をかける

「グッ・・・キ、キサマァ!!」

案の定敵は逆上し何とかこの拘束から逃れようとするが動こうと身をよじる度に拘束はきつくなる

 

弦舞・禍蜘蛛

 

敵を拘束し、行動の自由を奪う鋼糸術

もがけばもがくほど体に絡みついてくるというまさに蜘蛛の巣のような代物だ

オヤジが間が生きてた頃に、同じ傭兵団の仲間から教わった技術だ

あのおっさん、いつも仏頂面で怖かったなぁ

などと感慨にふけっていると

ミシッ、ミシッ

何かが軋む音がした、見るとさっきのリーダーらしき男が力づくで拘束から逃れようとしていた

「おいおい、無茶すんなって。骨が砕けるぞ?」

そんな俺の制止が聞こえないのか、なおも力を入れ続ける男

「グッ・・・俺はクリスのためにも、こんな、ところ、で・・・。」

ミシミシッ

さっきよりも軋む音が大きくなっている

「おいおい、いい加減にしないと、体がバラバラになるぞ?」

さすがにこれ以上無理をされると、本気でスプラッタな光景を目にすることになる

それにいい加減こっちの話を聞いてほしいんだが・・・

「ク・・・リ・・・ス・・・。」

ヒュン

さすがにこれ以上抵抗されると危険なので、俺は新たに出した糸を男の首に巻きつけそのまま男を絞め落とした

「・・・・・・。」

どうやら大人しくなったようだ

しかし、あれだけ抵抗したのだから、体の方はもう戦闘なんてできる状態でないか

「ふぅ、ギリギリセーフ、か?」

そういってまだ意識のあるメンバーに視線を向ける俺

そして

「お前らに一ついいことを教えてやろう。」

唐突にそう言った

「?」

無論何のことかわからない連中は、敵意を示しつつも首を傾げていた

と、そこから一呼吸おいて

「お前らの仇討ちは無意味だ。」

俺は、簡潔に事実を告げた

「!?」

すると、連中の視線が、一層厳しくなった

「まぁお前たちの言いたいこともわかる。が、まずは俺の話を聞け。」

と前置きをして、俺は、つい最近自分が聞いたばかりの話を連中に聞かせた

 

 

「・・・というわけで、闇の書の闇は完全に消滅、元の夜天の書に戻ったわけだ。」

説明を終えた俺は視線を再び拘束している連中に向けた

「・・・・・・。」

と、全員がさっきまでとはうって変わって敵意むき出しの視線を向けていた

・・・全員信じてませんって感じだな

すると不意に

「ふっ・・・貴様の、話を信じる者なんてここにはいないさ。」

という声が聞こえた

見ると、さっき静かにさせたはずのリーダーが、もう意識を取り戻していた

しかし、ダメージが深刻なのか喋る声に全く力がない

「途中から話を聞かせてもらったが、貴様の言うことは何の証拠もないただの妄言といっても過言じゃない。そんな与太話を信じて鵜呑みにするバカがいると思うか?」

・・・確かに

「そうだな。なら、どうする?」

俺の問いかけに男は

「決まっているだろう・・・貴様ら全員を地獄に送ってやるまでだ。」

静かに、しかし感情のこもった声でそう告げた

「・・・そうか、ならこちらがとる手段は一つだ。」

そう言って、俺はナイアに一つのオーダーを告げる

(ナイア、拘束を維持したまま刀剣形態に。)

(―――いいのかい?)

(構わんさ、覚悟なんてもう何年も前にできている。)

(―――そうかい。)

ナイアはデバイスを刀に変形させた

すると男は、

「俺を、殺すのか?」

と問うてきた

「あぁ。」

俺も短く、答えを返す

自分の声が、ひどく冷たく聞こえた

「そうか、今更死ぬことに恐れなどしないが、一つ頼みがある。」

男はそう継いで

「俺は元々、ベルカの騎士だった。だから最後は騎士らしく一騎打ちでケリをつけたい。」

と言ってきた

「・・・そうか、なら剣を取れ。」

そういって、俺は鋼糸での拘束を切ってやる

男はボロボロになった体で震えながらも剣を構えた

「最後に一つ、アンタの名前は?」

「ジャック・・・ジャック・ブランバルトだ。」

「そうか、じゃあジャック、何か言い残すことは?」

「仇である、貴様に頼むのも妙な話だが、聖王教会の、墓地に、クリス・ブランバルトという名の墓がある。そこに、頼む。」

「承知した。」

「それと、残りの連中には、できる限りの、温情をかけてやってくれ。」

「・・・約束しよう。」

「ならば、ジャック・ブランバルト参る!!」

剣をトンボに構えたままこちらに迫るジャック

そして、

「はぁぁ!!」

一気に頭上まで振りかぶり、勢いよく振り下ろす

キンッ

一瞬の交錯の後

ガッ

ジャックが膝をつく

その腹部には横一文字の傷があり、そこから勢いよく出血していた

「・・・思えば、俺は・・・死に場所を、探して・・・たのかもな。」

まるでそこにはいない誰かに話しかけるようにひとり呟く

「あぁ・・・クリス。今、俺もそっちに・・・。」

ドサッ

その言葉を最後に、ジャック・ブランバルトは倒れ伏し、そのまま動かなくなった

俺はしばらくその場に立ち尽くしていたが、墓前に供えるために剣を取りに行こうと考えた

そして、ジャックの剣を手にとったその時

「シオン!!てめぇ、何やってんだ!!」

顔を上げると、そこにはヴィータがいた

 

Side ヴィータ

(ヴィータ、来るぞ。目をつぶってろ。)

シオンからの念話が届いた、アタシは言われた通りに固く目を閉じる

するとその直後目をつぶっててもまだ眩しいほどの光が起こった

(ヴィータ、いつまでそうしている。次のフェイズに移行するぞ。)

(・・・おう。)

しばらく目をつぶっているとシオンにそう言われた

えっと、確か次は・・・

(敵の目をつぶしたら最大速度でそこから退避。)

言われた通りにアタシはその場から離れる

1キロくらい飛んだところで近くの岩場に身を隠す

(あとはこっちの判断でヤバいと思ったら出て来いって言ってたけど、大丈夫なのか、あいつ?)

そうこうしているうちに敵もようやく視力が回復したらしい

ま、あそこまで大口叩いたんだ、どうやって切り抜けるか、見せてもらおうじゃねぇか

すると、そう間をおかずにシオンは10発ほどの魔力弾を放った

そしてそれはリーダーっぽいオッサンに半分以上弾かれたが、一部は敵に命中していて、見事に戦闘能力を奪っていた

「すげぇな、急所にピンポイントかよ。」

けどそこで敵に発見されたのか、残っていた連中が一斉にシオンめがけて飛んで行った

「おいおい大丈夫かよ?」

そう思ったが次の瞬間それは杞憂だったことに気付く

敵があるところまできた途端、動きを止めたのだ

まるで、何かに絡め捕られたように

そうこうしているうちにさっき撃墜した奴も含めた全員が紫苑一人の手で捕獲されていた

(これで終わりか・・・。)

そう思ってシオンのとこに飛んで行こうとしたとき

何を思ったか、シオンの奴がリーダーのオッサンにしていた拘束を解きやがった

(何するつもりだ?)

次の瞬間アタシは自分の目を疑った

シオンが敵のリーダーを切ったのだ

(・・・嘘だろ!?)

確かにシオンは傭兵だって言ってたし、実際今までに誰一人殺さなかったなんてことはなかっただろう

しかし、だ

(なんて目をしてやがんだ!!)

問題なのはその目だった

まるで殺すことに何の疑いも、ましてや躊躇すら持たない

そんな暗い目をしていた

アタシは突然のことに動揺しながらもシオンのところに向かった

そして

「シオン!!てめぇ、何やってんだ!!」

そう叫んでいた

 

Side out

 

目の前にヴィータがいる、確かにそのはずなのにまるで夢のようにその実感がない

(見せたくなかったな・・・。)

自分から誘っておいて何を言っているんだとも思ったが、それがその時抱いた率直な思いだった

「何って、敵を倒しただけだが?」

「だからって、なんで殺した!?」

なおも激しく責め立てるヴィータ

「何を甘いことを言ってるんだ?敵はこっちを殺す気で来ていた、それに対して殺さずに収めようなんて土台無理な話だ。」

「けどよ・・・。」

「ならヴィータ。お前誰かがはやての命を奪ったとしたら、そいつをどうする?」

「決まってんだろ!そいつを探し出してぶっ殺す!!」

「殺さずに収めようとは考えないのか?」

「んなことできるわけ・・・あっ。」

どうやら気づいたらしい

「やっと気づいたか、そういうことだ。」

「だからって・・・。」

まだ納得しきっていないのかそれでもなお食い下がってこようとするヴィータ

しかし俺はそれを

「そこまでだ、これ以上ここで議論しても意味がない。さっさとこいつらの護送とみつけたブツの輸送を済ませるぞ。」

と言って遮った

「・・・わかったよ。」

ヴィータは渋々といった様子でそれに従った

こうして、俺の初めての任務は終了した

 

小さな火種を残して

 

 

 

 

 

 

 
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