第陸話 始まる胎動
→<八雲視点>→
あの話し合いから暫く経った。
最近は少しずつではあるが、黄巾党の動きが一点に集中し始めている。そのことにいったい何人が気づいているかは知らないがな。
月を隠す件については上手くいった。まだ断言は出来ないが……。
さて、未来の英雄達はこの情勢、どう観る……?
→<孫呉陣営>→
「めーいーりーんー。この縄ほどいてよー」
ここは、孫呉。建業。
その城の一室にて、縄で椅子にグルグル巻きに縛り付けられている人物の姿があった。……孫策伯符である。
王であるはずのその姿は縛り付けられていて、威厳もへったくれもない。
「ダメだ。おまえは縛り付けでもしなければすぐ逃げ出すからな。腕だけは自由にしてあるんだ。この竹簡を全て処理し終わったら考えてやらんこともない」
孫策に答えるのは周瑜公謹。
後に美周朗、否、美周嬢と呼ばれる人物である。
「……それってほどく気ないわよね?」
「さて、どうかな?」
「うぅー。冥琳がイジメるー」
そこで、キッ、と孫策の表情が引き締まった。
「それにしても、とんでもないはなしよね」
「?なにがだ?」
「あの二人のはなしよ」
「ああ、飛将軍と黒鴉将軍の噂か……」
「そ、一人で3万ちょっと、二人で7万てどんな化け物よって感じよねー」
「ふむ、にわかに信じがたいがな……。しかし、事実だとすれば、今後、厄介な敵になりかねん」
そう返す周瑜に対し、孫策は思案顔で。
「んー。なーんかちがうのよねー」
「……どういうことだ?」
「厄介な敵にはならない気がするのよ」
「……その根拠は?」
すると、孫策は
「勘よ」
そう言ってのけた。
「はぁ、またか」
「ふふふ。またよ」
「ふぅ、まあ、それはもういい。
それより、手を止めてていいのか?」
言った瞬間、周瑜はあくどい表情を浮かべる。
「えっ、ちょっ、まさか……」
「そのまさかだ。仕事が終わるまで寝かせん」
ギラリと眼鏡を光らせ、周瑜は死刑宣告を下す。
「ふふふふ。今日は寝れると思わないことだ」
「あ、あはははは……祭!たすけてー!!」
孫策の悲鳴は城中に響き渡ったという。
→<曹巍陣営>→
「以上が現在の黄巾党の情報です」
「そう、ご苦労様。秋蘭」
「は!」
こちらは曹巍、今は軍議中である。
報告をしたのは夏候淵妙才。
受けたのは曹操孟徳である。
「……10万…ですか……」
「ふん!なんだ?怖じ気づいたか?」
「そ、そんなわけないでしょ!ただ予想より数が多かっただけよ!」
臆したような声にふっかけたのは夏候惇元譲。
それに反発したのは荀彧文若。
「ふ、ふん!そんなこと言ってるあんたこそ怖じ気づいてるんじゃないの?」
「貴様言わせておけば……。」
「二人共、止めなさい」
「「す、すみません!華琳様!」」
この二名は普段から犬猿の仲のようだが、息はぴったりだ。
「ふぅ、それにしても、10万…ね。
やってくれるじゃない」
「……黒鴉将軍ですか……。」
「ええ、そうよ。みごとなまでに黄巾党をここに集めてくれたわ。
それも、厄介なかたちでね」
曹操の言った通り、八雲は黄巾党を曹操の領地に集めるようにして追い詰めた。……それも、一カ所でなく複数箇所に……。
「これでは、やりづらくて仕方ありません。なんとかして一カ所に集めるようにしなければ」
「そうね。本当にやってくれるわね」
そういって、曹操は唇を弧に歪めると、
「……嘗められたものね」
その声音は言葉とは反対に愉しげであったという。
→<蜀漢陣営>→
「うぅー。全然わかんないよー」
「全く、このぐらいで音を上げていてどうするのですか」
こちらは蜀漢、平原の相となった劉備玄徳は仕事に追われていた。
……関羽雲長の監視の下で……。
劉備の場合は孫策とは違い、逃げ出すからではない。単純に出来ないからである。
「うぅー」
そのため、こうして唸りっ放しなのである。
「ま、まあまあ、桃香も頑張っているんだしさ、そう怒らずに」
「ご主人様は桃香様に甘すぎます!」
「うおっ!」
関羽に怒鳴られたのは、北郷一刀。天の御遣いなどと呼ばれては居るが、ごくごく普通の一般人である。現代であれば、だが。
「えーと、こっちが歳入で、こっちが……あれ?なんだっけ?これは、えーと、あれ?あれれ??」
……この後、全てを劉備が理解するのに1日を要したという。
→<八雲視点>→
ひとまずのところの情報はこんなものか。
……上々だな。
なかなか精度もいい。
……余計なものが多いのが欠点だが……。
これからは、諜報部隊はコイツに任せるか。
手はいくつあってもいいしな。
→<???>→
とある場所にて一人の男が影の中に向かって、否、影に潜んだ者に向かって話しかけていた。
「それで?奴はどうなんだ?
………………そうか、使えるのか。クククッ、ならば計画通りに事を運べ。失敗は許さん。
……………ああ、そうだ、なに、用が済んだら殺すだけだ。
その頃には手出しできなくなっているさ」
そんな言葉がある場所で響いた。
あとがき
ふっか~つ!
はい、時間かかりました。
楽しみにしていてくれたならすみません。
今回は原作側の陣営に関してです。できるだけ、笑いを求めたのですが、どうも上手くいきません。
ああ、神よ。文才をください!
……まあ、自分は無神論者なんですが。
少し、黒幕っぽい人が出てきましたね。いえ、かませ犬ですがなにか?
すぐに消えます。
さて、次回予告。
黄巾の乱は収束し、束の間の休息が訪れる。
しかし、八雲に休む間もなく?
華雄、霞に闘えと追いかけまわされ、恋に御飯を食べさせ(たべさせざるおえず)、ねねに攻撃され、凪に稽古をつけ、真桜と沙和に仕事をまわし、月の様子見に行き、詠と今後の打ち合わせをする。
八雲に休息は訪れるのか?!
次回 間幕 休息のひととき
Bloody walk the earth
(血塗れた大地を歩む)
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これは、ひとりの男の転生から始まる物語。
男は力を得て、何を為し、どう生きるのか。 それはまだ、誰も知らない。
どうも、ナナシノゴンベです。
処女作です。学生なので、鈍亀更新です。ついでに、駄文です。
そんなのでよろしければ、どうぞ。