No.401128

真・恋姫無双「新たなる地と血」反董卓連合編・外話

十常侍・張譲のお話し

なぜこのような事態になってしまったのか…

彼が語る事実とは?

2012-04-01 16:01:21 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:4205   閲覧ユーザー数:3441

この作品は恋姫無双の2次創作です。

 

作者の勝手な解釈もある為、若干キャラの性格等のズレが生じる場合が御座いますが

そこらへんはご容赦のほどを。

 

 

~洛陽・宮廷内牢獄~

 

男が牢番に近付き声を掛ける。

 

「やあ。詰所に差し入れしておいたよ、良かったら食べておいで。」

 

「いつもありがとう御座います!では少しの間、よろしくお願いします。」

 

そう言うと牢番は男に敬礼をし、詰所へと向かって行った。それを見送った男は牢番より預かった鍵で一つの牢の扉を開け、入って行った。

 

「今晩は。」

 

男は一言、牢にいる男に声を掛けた。

 

「今日も来たのか、北郷。お主物好きだな。」

 

牢屋に入り男に声を掛けたのは一刀、そして牢屋内で声を掛けられた男の方は張譲。

 

「今日も飲もうと思いましてね。」

 

一刀はそう言うと徳利と杯を取り出し、杯を張譲の前に置くと酒を注ぎ、自分の分にも注いだ。

 

「最後の酒だ、頂こう。……うまい」

 

「…明日の事、聞きましたか?」

 

張譲は一刀の質問には答えず杯に口をつけ、酒を飲んでいく。

 

「…ふう」

 

「やはりあの事を、劉弁陛下に話してみてはどうですか?」

 

「構わんよ。儂は既に覚悟を決めておる。どの道、成功しようが失敗しようがこうなる事を望んだのは儂じゃ。今更命乞いをする気は毛頭ない。」

 

「…」

 

捕まえた者と捕まえられた者。この二人がなぜ一緒にいるのか。それは北郷親子が劉弁、劉協姉妹を保護した所から遡る。

 

 

~数ヶ月前~

 

劉弁、劉協姉妹を保護した北郷親子。そしてちょうどそこに現れた貂蝉と卑弥呼。そして彼?(彼女?)らが連れて来た医者・華佗。

劉弁の治療を華佗に任し、その間一刀は劉協より経緯を聞き驚いていた。自分の保護した子供達が皇帝陛下とその妹である事と、それを攫った人物が十常侍の張譲である事に。張譲は今、少し離れた所で寝かさている。劉協が張譲の事を怖がり、近付こうとしなかったので理由を聞くと納得した。てっきり親子かと思っていたが全く違っていたのだ。

 

元々洛陽に行くつもりであった一刀は、彼女らを連れて行く事に決めた。

 

そして話しも終わった頃、丁度治療も一段落し劉弁は暫くは様子見となった。

 

夕餉を準備し、皆食べるが劉協だけは手を付けず少し途方に暮れていた。

どうしたんだろうと考えていると、貂蝉が宮廷内での作法とかの違いに戸惑っているのではないかと言ってきた。

一刀も言われて初めて気が付いた。一刀も嘗て前の外史で、そう言う事に戸惑った事があった。

どうしたものかと思案していると、一樹が近付き、声を掛けた。

 

「食べないの?美味しいよ?」

 

「…」

 

そう言って焼いた魚を差し出すが、劉協はそれを受け取ろうとせず魚と一樹を交互に見る。

 

「ほら(パクッ)もぐもぐ…(ゴックン)ね?」

 

グー

 

(カァーッ)

 

一樹が美味しそうに食べるのを見て劉協のお腹が鳴り、その音で顔を真っ赤にさせた。

 

「はい!」

 

新しい物を差し出すと、今度は受け取りそれを口に運び食べた。

 

「…美味しい。」

 

「ね!?」

 

「うん!うん!」

 

そう言ってあっという間に食べ終えた。そして、お腹が膨れると睡魔が襲って来たらしく直ぐに眠りに着いた。

今までの緊張感が解けた所為なのだろう。

 

 

そして翌日。

 

張譲が目を覚まし、目にしたのは治療の為に寝かされている劉弁と、劉協とその横に同じくらいの歳の子が心配そうにしている姿であった。。

 

「あ、起きましたか?」

 

声のした方を向くと子供に似た男が立っていた。恐らく父親であろうと張譲は考えた。

 

「あれはお前の子か?」

 

「ええ。名前は一樹。そして俺の名は北郷一刀。ただの旅人ですよ、張譲さん。」

 

「…劉協様から聞いたようだな。」

 

「ええ。大体の事は。」

 

「そうか…」

 

「で、これからどうします?」

 

「どうもこうもない。儂は捕まってどうする事も出来ん。好きにするが良い。」

 

張譲は諦めたのか特に抵抗をしようともせず処遇を一刀達に任せた。

 

「あの子達を送っていくのは勿論ですが、あなたも洛陽に行く事になります?」

 

「言ったであろう。最早儂にはどうすることも出来ん。儂は今痛みでろくに身体を動かす事は出来ん、逃げ様が無いのじゃからな。」

 

張譲は痛みに顔を顰めながら言い、再び横になる。一刀は随分あっさりとしていると疑問に感じた。

 

 

それから数日後、劉弁の様態は落ち着いたが洛陽までの移動は困難と判断され、一刀・一樹・劉協・貂蝉・張譲は洛陽へ、そして華佗・卑弥呼・劉弁はとある所へ(これに付いては教えてはくれなかった)と向かう事となった。

 

そして道中、一樹、劉協と一緒に遊んでいると視線を感じ、視線の元を辿ると釣りをしている張譲が顔をこちらに向けを見ていた。

 

「お主は変わっておるな…」

 

「は?」

 

突如、張譲より発せられた言葉に何を言われたのか訳が分からず首を捻った。

 

「お主になら話しても良かろう…また夜にでもな。」

 

そう言い張譲は視線を釣り糸へと戻した。

 

そして夜も更け、子供達が寝静まったのを確認すると張譲が近付いて来、少し離れた場所へと連れて行かれた。

 

そこで一刀は張譲より驚くべき事を聞かされた。

 

張譲と何進。二人は立場的に敵対していたが、その実、裏では共にある計画を立てていたと言う。

 

その内容を聞いて一刀は唖然とする。だが張譲はそれに構わず話を続けた。

 

 

元々張譲自身も普通に仕事をこなしていたが、次第に闇の部分を見る事が多くなっていた。最初の頃は抵抗していた為、次第にうとまられしまい、仕事が回って来なくなっていった。そして同じ様に抵抗していた同僚がある日突然死んでしまった。表向きは自殺という事で片付けられたが誰が見ても明らかな他殺。誰もそれに何も言わず普段通りに振舞った。

それを見た張譲は此処ではそう言う事は日常的に起こっていると気付いた。そしてこのままではやがては自分の番が来てしまうとのではないかと考え始めた。そして悩んだ末、ある事を思い付いた。それを実行するにはどうしても上に上がらなければならない。散々迷った挙句、計画を実行する為の力を得る為、闇へと踏み込んで行く事を決意した。

 

それから暫くして、何太后と共に何進が宮中入りをした。入ってきた当初は世間話をする程度の関係であったが何太后に弁、董太后には協が生まれると、その関係を保つ事を出来なくなった。それは後継者争いが起こってしまったからだ。弁を推す何進派、協を推す十常侍派に別れて対立していった。

 

これを張譲は既に見越しており、そして兼ねてより計画していた事を実行に移そうと考え始めた。

 

そして何進が一人になるのを見計らって接触し、自身の計画を打ち明けた。それを聞いた何進は驚き暫く声が出なかった。

 

「なんだと!?貴様、正気か?と言うよりそんな話を私に信じろというのか!?」

 

「やはり信じぬか…」

 

「当たり前だ!今の貴様は十常侍の筆頭なんだぞ!?誰が貴様なんぞを信じられるか!」

 

「大声を出すな。誰かに見つかったらどうする。」

 

元々、早々に信じてもらえない事ぐらい、張譲も承知であった。だから別段焦る事無く、粘り強く何進に説得をした。

 

「それでどうする?」

 

「十常侍の連中を一掃するのは構わん。だがなぜこの計画の立案者でもある貴様もその中に入る?!」

 

「…なぜだと?簡単だ。儂も十常侍だからだ。立案者云々など関係ない!」

 

何進は張譲の余りにも馬鹿馬鹿しい計画に声を荒げるが、張譲自身元々馬鹿馬鹿しいのは重々承知である。そして自分も十常侍であると何進に再認識させる。

 

「…」

 

「お主、宮廷内を変えたいのであろう?だったら詰まらぬ感情に流されるな。」

 

張譲に諌められ何進が椅子に座ったのを見ると話を続ける。

 

確かにその計画は魅力的であった。が、持ち掛けた張譲という男が十常侍で無ければ一も二も無く飛び付いたであろう。

 

張譲が齎して来た計画といのは、張譲自身を含めた十常侍派の粛清。

 

幾度となく何進の元でその策を講じてきたが、どれも今一つ決定力が無く正当化する材料が無かったからだ。

それを張譲から証拠となるものを渡され、粛清に使えと言ってきたのだ。

よもやこんな計画が反対勢力から持ち掛けられ、自分も殺せと言って来た時には耳を疑った。

 

「貴様、何を考えている?」

 

「お主、この洛陽を見てどう思った?」

 

「…」

 

「民達には活気は無く、その上にいる宦官どもは劉宏陛下が病に臥せっているのを良い事に好き放題しておる。辛うじてお主達と董卓が居るが故にこの程度で済んでいる。

だがこのまま、劉宏陛下が亡くなり、その後の後継者争いで劉弁様、劉協様のどちらかが決まったとしても、漢を復興させるだけの余力があると思うか?」

 

「…」

 

「はっきり言って出来んじゃろう。そうなる前に手を打とうというのじゃ。」

 

「お前達が負けた場合は良い。だがもし我らが負ければ…」

 

「そうならん様にするのじゃ。お主達に負けは許されん。もし負ければ己の死は勿論の事じゃが、漢王朝自体が死ぬ。と言っても過言では無い。尤もそうならない為の手も打っておる。」

 

「……分かった。貴様の計画に乗ってやろう。だが少しでも変な真似をすれば…」

 

「構わん。遠慮無く殺せ。」

 

そうして何進と手を結ぶことによって、この計画が動き出そうとした。だがその矢先。想定外の事態がと起きてしまい、張譲はやむなく姉妹を連れ、洛陽から脱出したのであった。

そして更に想定外な事にもう一人の十常侍が、この暴走から逃げ延び、袁紹を(そそのか)して反董卓連合を組んだ事である。

董卓達は何進によって洛陽に呼ばれた事になってはいるが、実際は張譲の案で呼ばれたのだ。これは失敗した時の為の保険で、十常侍派鎮圧の為と何進派が何らかのアクシデントにより動けない時のものだったのだが、よもやこれに矛先が向くとは思いも因らなかった。

 

だが何進は張譲によって聞かされた計画とは違い、イレギュラーが発生していたことに気がつかず、

 

「おのれ張譲!謀ったな!!」

 

多くの十常侍派に組する者に囲まれ、最後に言い放った言葉は張譲に対する恨み言であった…

 

 

「…」

 

話を聞き終えた一刀は張譲がこのような計画をしていた事にただただ驚くしかなかった。張譲はそんな一刀を尻目に話を続けていく。

 

「後を任そうと思っていた何進も死んでしまった。お二人を連れたまま逃げ続けられる訳がない。あの方達は外の世界を知らなさ過ぎるし、何より儂にはお二人を守る武が全く無い、故に何時までも守りきれん…そして丁度いい事に劉協様はお主達親子に懐いておるようだし、十分任せられる。」

 

一刀は張譲に情勢を見て連れ帰ってくれと頼まれたが、一刀はそれを断った。それに対して張譲はこ奴らも俗物か、一瞬諦めたが次に出た言葉に今度は張譲が驚いた。

 

「残念だが情勢を見て、なんて悠長な事を言ってられない。俺は直ぐに洛陽へ行く。」

 

「なぜじゃ!?恐らく今、宮廷内は混乱しておる。それにお二人が居ないと分かったら諸侯の連中はここぞとばかりに動き出すぞ!」

 

「ああ、恐らく動き出す。」

 

「なっ!?それが分かっていて、態々行くのか?!」

 

「あそこには俺の知りあいが居る。放っては置けないよ。」

 

一刀の言葉に迷いは無く、強い意思が籠もっているのを感じ取ると張譲はそれ以上何も言わず従った。

 

そして一刀達は無事洛陽に辿り着き、劉協の身柄を引き渡し月達に協力する事となったのだ。

 

 

~現在~

 

一刀はこの裏にあった事を話してはどうかと何度も言ったが、張譲は頑として首を縦に振らずこう言った。

 

「儂を生きかして置いてはいずれまた同じ事が起きるであろう…

北郷、悪癖を絶つ為じゃ、儂という害悪に情けを掛けるな。元々何進に討たれるつもりであった、それが何の因果か儂だけ生き延びてしまった…」

 

彼が言うように元々彼がこの騒動の首謀者として責任を取るつもりでいるのだ。この決意を崩す事は出来ないと以前より分かっていたのだ中々踏ん切りが着かず、それを誰に相談することも出来ず頭を痛めていた。そんな一刀の苦悩に気付き貂蝉は言った。

 

「ご主人様。彼を助けようとするその想いは素敵よ。ですがそれはご主人様の主観。でも彼からすれば言えば言うほど彼の想いを踏みにじって行く残酷な行為。どうか本当に彼の事を思うなら彼の願いを聞いて

あげて。そして彼の意思を継いであげて、それが彼に対する最大の敬意よ。」

 

「貂蝉…分かったよ。」

 

「う~ん。ご主人様素敵~!惚れ惚れしちゃう!!!!」

 

漸く決意を固めた一刀を見て、貂蝉は身をくねらせ悶える。それを見た一刀はげんなりしながらその場を立ち去った。

 

そして各諸侯が立ち去った次の日、今回の騒動の首謀者の張譲は斬首となり、一連の騒動は幕を閉じた。

 

 

あとがき

 

間に合ったのかな?この話、本当は本編に入れるつもりだったのですが中々纏まらず、本編の方が先にどんどん出来上がり置いてけぼり状態のものでした。

 

が、やっと纏まり外話としてあげる事が出来ました。下手すりゃお蔵入りするトコロでした(汗)

 

ともあれ、これで本当に反董卓連合編は終わり。次回からは第三部に移ります。

 

後個人的な事ですが四月から異動になりまして、そこがどういうものか分かって居ないので次が何時あげれるか分かりません。

 

早くペース掴めたら良いな~

 

ではまた次回ぃ~ノシ


 
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