No.400760

機動戦士ガンダムSEED白式 06

トモヒロさん

6話

2012-03-31 22:51:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3575   閲覧ユーザー数:3459

翼(エール)

 

 白式は3機のGを追い抜き、イージスに捕まったストライクを助けに、瞬時加速(イグニッションブースト)で瞬く間にその距離を詰めていく。

 

 「…ッ!!?、何だあの機動力は!?」

 「いくらなんでも速過ぎだろ…」

 「通常のMSの倍…いえ、3倍の速度です!」

 

 イザーク達がそれに気付いた時には、既にエール白式は機体の遥か上を飛んでいた。

 

 「グッ…ぅうッ!!、す、すごい加速だ…やっぱりエールストライカーのお陰かな?」

 

 白式のコックピットの中では、一夏が白式のパワーアップに驚きながら、自分にのしかかるGに耐える。実際、機動力強化のエールにより白式の瞬時加速(イグニッションブースト)の出力は1.3倍になっており、それに掛かるGも白式の対G処理を持ってしても、相当なものだった。

 

 「はぁああああああああああ!!!」

 「ッな!?」

 

 イージスに追い付いた白式は腰をひねり、雪片を振り上げ、それを一気にイージスへ叩きつける。

 

 ズガァンッ!!!

 

 「グアぁあ!!?」

 

 イージスは一瞬にして懐へ飛び込まれ、避ける暇もなく、白式の雪片が直撃する。

 フェイズシフトのお陰で、物理攻撃は防げたものの、その凄まじい衝撃は吸収出来ず、反動で緩んだイージスのアームから、ストライクが脱出する。

 

 「ごめん、一夏」

 「気にしなくていいですよ!俺のせいでキラさんが敵に捕まったんですから」

 

 「ッ…よくも!」

 

 イージスはアームを開き、再びストライクを捕獲するために、接近しようとするが、上から弾幕が降り注ぎ、イージスの行く手を阻む。やむなくMS形態に戻り、後ろに後退する事で、弾幕を回避し、上を向くと、そこのムウの乗るメビウスがいた。

 

 「チィッ…!?」

 

 『ストライク後退しろ!アークエンジェルが、ランチャーを射出する!』

 

 そこにストライクのスピーカーからムウの通信が入る。

 

 『後ろにも、まだデカイのがいるんだぞ!早く装備の換装を!』

 「分かりました!」

 「キラ!」

 

 キラはストライクをアークエンジェルへ向け、離脱する。イージスはストライクの後を追おうとするが、白式が目の前に立ち塞がる。

 

 「ッ、またお前か!」

 「今度は行かせない!」

 

 イージスのサーベルと白式の雪片がぶつかる。

 

 「ナチュラルが!いったいキラに何をした!?」

 「どう言う意味だ!」

 「あいつはコーディネーターなんだぞ!ナチュラルの味方をする筈がない!」

 「お前はそうやって人を見下して!」

 

 ビームが弾け、白式とイージスが退く。2機は武器をビームライフルに持ち替え、今度は銃撃戦に移る。

 

 「キラさんはアークエンジェルに乗っている友達や、民間人を護る為に戦っているんだ!」

 「民間人だと!?そんな出鱈目、信じられるか!だいたい何故、戦艦に民間人を乗せなければならない?!」

 「お前達がヘリオポリスに来なければ、みんな住む場所を失わずに済んだんだ!」

 「それは結果論だ!ナチュラルだって、中立のコロニーと言いながら、オーブとこんな物を作って!」

 「それだって、ヘリオポリスを出てからでも良かったじゃないか!」

 「実弾の効かないフェイズシフトを持った、完全な状態のGは脅威となる。ソレを見逃すワケにはいかない!」

 「何も知らない、民間人を巻き込んでもか?!」

 「先に巻き込んだのは、そちらだろう!」

 「その民間人にお前達言うコーディネーターもいるんだぞ!そもそも、この戦争は地球とプラントとの争いじゃないか!」

 「どちらも同じ事だろう!」

 「この分からずや!!」

 

 白式とイージスは2機の中心を軸にするように飛び回り、撃っては避け、アスランは極力バッテリーを抑えるため、なるべくギリギリで避け、一夏は勢いを付けたスピードを殺すことなく、横からくるビームを上下移動で避ける。

 

 ドカァァアアーーーーンッ!!!

 突然、アークエンジェルの方から凄まじい、閃光が走り、爆煙が絶対零度の宇宙を舞う。

 

 「確か、今キラさんがアークエンジェルに向かってたはずじゃ…」

 「キラ!?」

 

 

 「やったか?!」

 

 イザークはストライクへの直撃を見届けると、ストライクの撃破を確認するために、その爆煙へ近づく。しかし、それが彼の犯した重大なミスだった。

 

 ドシュウッ!!

 「何ぃ!?」

 

 爆煙の中から一条のビームがデュエルを襲う。イザークは急いで、スラスターを吹かすが、爆煙に近づいた分その距離が近すぎた。ビームはデュエルの右腕を焼き千切り、デュエルの右腕は跡形もなく溶解した。

 

 「退け、イザーク!これ以上の追撃は無理だ!」

 「ッ、何だと!!」

 「アスランも言うとおりです。今度はコッチのパワーが危ない!」

 「グぅッ!!」

 

 イザークは腹の虫が治まらず、ストライクが映るモニターを叩く。そして、右腕の失ったデュエルはバスターに回収され、撤退していく。

 

 *

 

 「キラさん?」

 

 バッテリーの切れたストライクは装甲の色をグレーへと戻し、ランチャーを持ったまま沈黙している。

 一夏はストライクに通信を繋げると、そこに、息が荒いのか肩が上下に大きくパイロットスーツ姿のキラが映る。

 

 「キラさん、戦闘は終わったんですよ。みんな生きてます」

 「…一夏?」

 「戻りますよ。みんなの所へ」

 「…うん」

 

 MSデッキで一夏とキラがそれぞれのコックピットから降りると、そこにムウが来た。

 

 「俺もお前達も死ななかった。上出来だったぜ」

 

 キラの手に震えはもうなかった。

 

 *

 

 キラと一夏が更衣室から、出てくると、そこにムウが仁王立ちで待っていた。そして、その両腕をキラと一夏の首にまわす。

 

 「二つ言い忘れていた。ストライクの起動プログラムをロックしておくんだ。君以外、誰も動かす事のできないよううにな」

 「え?」

 「白式の方は、絶対にその腕輪だって事をばらすなよ」

 「わ、分かりました」

 

 キラと一夏がムウの言葉の意味を知る事になるのは、そう遠くはなかった。


 
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