No.396897

IS語 2

謎人さん

感想、要望よろしくお願いします。

2012-03-23 22:05:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1613   閲覧ユーザー数:1555

side一夏

今日は高校の入学式。新しい世界の幕開け、その初日。それ自体はいい。むしろ喜ぶべきところだ。だがしかし、問題はとにかくクラスに男が俺を含め3人という点だ。自意識過剰ではなく、本当にクラスメートほぼ全員からの視線を感じる。だいたい、席も悪いなんで俺らが真ん中&最前列なんだ。刻枼に行っては長身だぞ。目立つことこの上ない。

 

「どうした?一夏。緊張のしすぎではないか」

 

小声で隣の焔が話しかけてきた。

 

「緊張もするさ。そんなことより、焔。あの窓際の子、箒だよな」

 

窓際の席から時折こちらに低温の視線を送ってくる女子。俺はその女子に見覚えがあった。幼馴染の篠ノ之箒。小学生のころ転校しちまったけど、昔と髪型が変わっていなかったのですぐ気がついた。話しかけて行っていいのか非常に疑問だ。機嫌が悪そうだ。あの低温の視線がそれを物語っている。

 

「確かに、箒だとは思うな。しかしよく気がついたな一夏。我も一見だけでは気かつかなかったぞ」

 

「・・・・・・・焔。緊張してるだろ、お前」

 

「!!何を根拠に」

 

「一人称が我になってるぞ。使うときは、真剣勝負の時か、緊張しているとだぞ」

 

「く、我としたことが」

 

「なんにせよ、自己紹介でわかるんじゃないか。先生来たぜ」

 

と刻枼。緊張してないように見えるが、さっきから髪をいじっている。ああ、お前もか。

 

 

 

 

 

                    ☆

 

まずい、非常にまずい。どのくらいまずいかっていうとマジまずい。そのくらい混乱するほどまずい状況だ。自己紹介の順番だ。てっきり、左から右だろうと思い真ん中の俺はゆっくり考えようと思ったのだが、よりによって出席番号順だ。焔と刻枼は、アイコンタクトで「goodjob」と合わせるだけで何の助けにもならない。僅かな希望を託して箒の方を向いたが、目をそらされた。俺、嫌われてる?

 

「・・君、織斑一夏君!!」

 

「は、はい!!」 

 

いきなり大声で呼ばれたので思わず声が裏返ってしまった。案の定、くすくすと笑い声が聞こえる。というか、お前らも後でこうなるだからな。

 

「あっ、あの、お、大声だしちゃってごめんなさい。お、怒ってる? 怒ってるかな? ごめんね、ごめんね! でもね、あのね、自己紹介、"あ"から始まって今"お"の織斑くんなんだよね。だからね、ご、ごめんね? 自己紹介してくれるかな? ダ、ダメかな?」

 

早口でそうまくし立てられ、必死に頭を下げる……えっと、そう、副担任の山田真耶先生。上から読んでも下から読んでも"ヤマダマヤ"だからすんなり覚えられた。

じゃなくて! サイズの合ってなさげな眼鏡がずり落ちそうなくらい頭を下げる山田先生をどうにかしないと。

 

「あの、先生。そんなに謝らなくても自己紹介をしますから……」

 

「ほ、本当ですか!? 絶対ですよ? 約束ですからね!?」

 

……本当にこの人は年上と言うか教師なのだろうか。

同年代の人が無理に先生をしてるって方が頷けるぞ。

 

「――よし」

 

と、そんなことを思ってる時間も視線がなくなるわけではないので、とっとと終わらせる為に振り返る。正直何も良くないし、言うことも決まってないから忘れることにした。

 

 

「お、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

儀礼的に頭を下げて上げる。よし、このまま

 

「以上です」

 

戦略的撤退に持ち込む。がたたっ。思わずずこっける女子が数名いた。どんだけ期待してんだよ。無茶言うな。そこ刻枼、ため息交じりに苦笑するな。焔は何びびってんだ?

 

パァンッ!

 

いきなり頭を叩かれた。痛い、という無脊椎反射より、あることが頭によぎった。この叩き方は

 

「げぇ、関羽!!」

 

「誰が、三国志の英雄か、馬鹿者」

 

振り返った俺に再び同じ衝撃が襲いかかってきた。なるほど、名簿で叩いてるのか、じゃなくて!

 

「ち、千冬姉!?」

 

「馬鹿者、ここでは織斑先生と呼べ。それとなんだ、お前は挨拶もロクにできないのか」

 

……職業不詳、月に一、二回しか帰って来ないうちの姉が立っていた。名簿を持っていかにも教師な感じで。

 

「織斑先生、職員会議はもう終わったのですか?」

 

「ああ。すまないな山田君、ホームルームを任せてしまって」

 

千冬姉はそう言うと教壇に立って俺達を見下ろした。

覇気でも纏ってるんじゃないか、ってくらいのオーラで。

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者にするのが私の仕事だ。私の言うことはよく聞き、理解しろ。できない者にはできるまで指導してやる。

私の仕事は弱冠十五歳を十六歳までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け、いいな」

 

言葉がまるで物質化でもしたんじゃないかって思うくらいに強い声が俺達に響き渡って行く。うん、この暴力宣言は間違いなく俺達の姉、千冬姉だ。

 

「キャーッ! 千冬様よ! 本物の千冬様よ!」

 

「わ、私ずっとファンでした!」

 

「お姉さまって呼んでもいいですか!?」

 

「私、お姉さまの為なら死ねます!」

 

俺が生きてきた中で一番の騒音が鼓膜を揺らした。

 

なんだこれは?おい、焔、いつの間に耳栓を?刻枼もか!!

 

「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か、私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

 

違うぞ、千冬姉。その理論だとおそらくこの学園の生徒の大半が馬鹿者になるぞ。

 

「キャー! 千冬様、もっと罵って!」

 

「付け上がらないように躾をしてぇっ!」

 

もはやカオスだ。

 

「そういえば、織斑くん、さっき千冬姉って……」

 

「名字も一緒だし、まさか姉弟!?」

 

「いいなぁ、変わって欲しいなぁ」

 

うわ、なんかこっちにまで飛び火してきやがった。千冬姉も、お前のせいだみたいな目をしないでくれよ。言わなかったそっちにも問題有りだからな!怖いからそんなこと言えないけど。

 

「……まぁいい、続けるぞ。そこで笑っている男子二人。さっさと紹介しろ」

 

 

 

 

side焔

 

まさか、千冬さんがここで働いているとは。驚いたものだが、違和感はまるでないな。さて、我の紹介か、なるようになれだ。

 

「真庭焔だ。趣味は甘味巡り。特技は忍法だ。諸事情あってISを動かせた。一年よろしく頼む。」

 

区切る。反応は、戸惑っているな。山田先生は、困惑気味だし、千冬さんはため息をついている。

 

「あ、あの真庭君、忍法ってなんなのかな?」

 

「実際、見せた方が早いでしょう。織斑先生」

 

「好きにしろ」

 

「では、忍法・演武・爪合わせ」

 

右手をかざす。みるみと、爪が伸びていく。クラス中が唖然としている。反応が薄いのは、一夏と刻枼に千冬さん、それに箒もか

 

「以上だ。すまん、刻枼、切ってくれ」

 

「あいよ」

 

手刀で爪を切っていく刻枼。さすがに、千冬さんと箒も驚いているな。

 

「次は、俺か。鑢刻枼だ。趣味は散歩と修行だ。特技つーか流派は虛刀流。俺も、一夏と焔と同じくIS動かせた。一年間よろしく」

 

と刻枼が紹介した。

 

「まあ、及第点だ。次」

 

あれで及第点か。そんなことを考えつつ、クラスメートの自己紹介を聞いていった。

 

 

 

 

               ☆

 

一時間目が終わり今は休み時間。この教室内の異様な雰囲気はいかんともしがたい。俺ら以外は全員女子。「ISを使える男」として一年生は当然在校生がみな知っているということだ。肩身が狭いな。しかも、俺の忍法のことも電光石火のごとく知られわたっていく。まあ、いずればれるからな。そんなには気にしてはいない。

 

「よかったのか、焔」

 

「別にかまわん。こればかりは、真庭の人間にしか使えんしな。刻枼、無事か?」

 

「なんとか」

 

一時間目の授業内容ですでにHPは黄色ケージか。二月で、電話帳の厚さを何とか覚えたばかりだしな。

 

「ちょっといいか」

 

「「「ん」」」

 

突然話しかけられた。

 

「箒」

 

目の前にいたのは、6年ぶりの再会になる幼馴染だった。

 

「廊下でいいか?」

 

「お,おう」

 

と一夏。

 

「いてらー」

 

「「いや、お前もだから」」

 

なんだ俺もか。しかたあるまい。

 

「そう言う訳だ」

 

「ああ、行って来い」

 

 

side刻枼

 

一夏と焔が出ていったことで自然に教室に残る男子は俺しかいない。とそこへ

 

「ねえ~、ねえ~、ようよう」

 

ようよう?見ると、女子3人が俺に話しかけてきた。

 

「俺のことか?ええと・・・」

 

「私、布仏本音だよ~~」

 

「で、その本音さんはなに用で?」

 

「うん。ようようがほむほむの爪を手で切ったのって忍法なの~?」

 

「いや、純粋に手刀でだ。虛刀流じゃ技にも入らない当たり前の技術だ」

 

「虛刀流~~?」

 

「虚しい刀の流れ。と書いて虛刀流。刀を使わない剣法だ」

 

「剣法?拳法じゃなくて~?」

 

「そういう流派だ。実習で見せる機会もあるから詳しくはそこで」

 

そう言ったところでチャイムが鳴る。やれやれ、また授業か・・・・・・

 

 

 

                     ☆

side焔

「-であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられー」

 

く、頭が痛いな。勉強は苦手というほどではなかったが、アドバンテージが違いすぎる。今の俺は、記録辿りの応用でやりくりしているが、あいつらはどうなんだろうか?一夏、頭に混乱のマークが付いているぞ。二か月まじめにやってこれか。刻枼~~~。戻ってこい。HPが残っていないぞ。頭から煙が出ているぞ。

 

「織斑君、真庭君、鑢君、何かわからないところがありますか?」

 

と山田先生。

 

「あ、いえ、大丈夫です」

 

と俺

 

「ここと、ここがわかりません」

 

と一夏

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

返事がない。ただの屍のようだ。って違う。

 

「鑢君!!」

 

「鑢、起きろ!!」

 

と、出席簿で鑢の頭を叩く千冬さん。様になってるな。

 

「うお、なんかさっきまで顔も知らない頬に入れ墨彫ったちょいわるそうなおっさんと話してた」

 

「「臨死体験!!」」

 

ダブルで突っ込む俺と一夏。

 

「馬鹿者。騒ぐな」

 

と頭をはたかれる俺ら。

 

「鑢、入学前の参考書は読んだのか?」

 

「一応読みました。内容の6割しか理解できませんでした」

 

「全部理解しろ」

 

「織斑先生、無茶言わないでください。これでも、刻枼は頑張った方ですよ」

 

「甘いぞ、真庭。ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そう言った『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起きる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解できるまで覚えるものだ」

 

確かに正論だな。

 

「とにかく頑張ります」

 

「うむ。精進するように」

 

「え、えッと、鑢君。わからないところは授業が終わってから放課後教えてあげますから、頑張って?ね?ねっ?」

 

「ありがとうございます」

 

「ほ、放課後・・・・・放課後見二人きりの先生と生徒・…。あっ、だ、駄目ですよ、鑢君。先生、強引にされると・・・・」

 

「チェンジで」

 

「「いや、気持ちはわかるが、そんなのねーから」」

 

刻枼のボケに同時に突っ込む俺と一夏。前途多難だ。

 

 

 

                 ☆

「ちょっと、よろしくて?」

 

「「「ん」」」

 

二時間目の休み時間、また三人でだべろうかとしていたところ声をかけられた。話しかけた相手は地毛の金髪が鮮やかな女子だった。

 

「どちらさん?」

 

これは一夏。

 

「・・・・・・・・・・」

 

あんた誰?という目線。これは刻枼。

 

「……あなた達、このわたくしを知らないと?」

 

顔が真っ赤になっている。ときどき、真希姉が蝶兄さんにでれるときによく真っ赤になっていたがな。やれやれ、気苦労も趣味なのかねえ。

 

「失敬。そして、なに用だ。セシリア・オルコット嬢?」

 

「あら、あなたはそちらのお二人より好感は持てますわね。このイギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしのような選ばれた人間とクラスを同じ……って聞いてます?」

 

「「「ん」」」

 

実際、「この・・・」の段階でまともに聞いてはいない。最後あたり、選ばれたの時点で鼻で笑ったがな。

 

「失敬。なにせ、俺らは四季崎の刀に選ばれているからな。国代表程度では動揺はせん」

 

「だな」

 

「つか、入試ってISを動かして戦うやつ?」

 

「そうですわ。わたくしが唯一教官を倒しましたわ」

 

「あれ、俺らも倒したぞ、教官」

 

「ああ、そうだな」

 

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

 

「女子ではってオチじゃね?」

 

と、刻枼。ピシッ。何か嫌な音だな。

 

「つかぬ事を聞くが、何分で倒した?」

 

「俺ら、一瞬だったよな」

 

と一夏。一瞬、という言葉に反応してかオルコット嬢が何か言おうとした時、チャイムが鳴った。

 

「っ・・・・・!またあとで来ますわ!逃げないことね!よくって!?」

 

よくないわ。俺達はシンクロした。

 

 

「それでは、この時間は実戦で使用する各種装備の特徴について説明する」

 

1、2時間目とは違い、山田先生ではなく千冬さんが教壇に立っている。よっぽど

重要なことであるのか山田先生までノートを手に持っている。

 

「ああ、その前に再来週に行われるクラス対抗戦にでる代表者と副代表者を決めないといけないな」

 

その言葉にざわめく教室。

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や委員会への出席・・・・まあ、クラス長だな。副代表はその補佐だ。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大した差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると変更はないからそのつもりで」

 

さて、クラスの状況を考えると自信家のセシリア嬢か?と考えていると

 

「はいっ。織斑君を推薦します」

 

「私もそれがいいと思います!」

 

「私は鑢君を推薦します」

 

「私は、真庭君を・・

 

「いや、我は副代表を自薦する」

 

しまった。条件反射で答えてしまった。

 

「では、代表候補者は織斑一夏か鑢刻枼、副代表は真庭焔か。他にはいないか自薦他薦は問わないぞ」

 

「お、俺!?」

 

「すいません。俺は、副代表の方を希望します。そして、一夏を代表に推薦するぜ」

 

立ち上がっている一夏と冷静に対処する刻枼。しかし、セシリア嬢は騒がないな。このままいけばいいのだが…

 

「納得がいきませんわ!?」

 

とはならなかったな。

 

「このような選出は認められません!

だいたい、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ。わたくしに、このセシリア・オルコットに一年間そのような屈辱を味わえるとおっしゃるのですか?」

 

とまくし立てるオルコット嬢。しかし、よく舌をかまないな。

 

「実力からいってクラス代表はわたくしがなるのが必然。それを、物珍しいからと言って極東の猿にされては困ります。わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをするつもりなど毛頭ございませんわ。いいですか、クラス代表は実力基準で決めるべきであり、つまりそれはわたくしですわ!」

 

ほう。女尊男卑が進む昨今の典型的な女子か。

 

「だいたい、文化としても後進的な国で暮らさないといけないこと自体、わたくしに取っては耐え難い苦痛で――」

 

「イギリスだって対してお国自慢ないだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ」

 

と一夏。やってしまったな。

 

「あ、あっ、あなたねえ!わたくしの祖国を侮辱しますの」

 

「それは、そちらもだろう。オルコット嬢」

 

こうなっては仕方がない。何とかおさめて見せますか。

 

「要は、我らの実力が知りたいのであろう?ならば、ここは模擬戦でもしてみた方が白黒はっきりつくのではないか?」

 

「おお、いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい」

 

「上等ですわ。完膚なきまでたたきつぶしますわ」

 

「だ、そうだ一夏」

 

「え」

 

「何を呆けている。代表候補はお前だぞ。それに我は、刻枼と戦いたいしな」

 

「一年前の再戦か?」

 

「そのようなものだ。織斑先生、いかかですか」

 

「わかった。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑、セシリア、真庭、鑢はそれぞれ準備を行うように。それでは授業を始める」

 

さて、セシリア嬢を一夏に押し付けたが、意外にも早く再戦の機会を得た。今度は我の勝利だぞ、刻枼。

 


 
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