No.396277

夜雀の鎮魂歌

つっきーさん

ヤンデレなみすちーのお話

2012-03-22 17:27:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1238   閲覧ユーザー数:1215

「はぁっ、はぁっ・・・」

青年は息を切りながら闇夜を走った。なにも急ぎの用はないのに走る必要はないのだから・・・だが、青年には走らなければならない理由があった。それは・・・

「♪~♪~♪~」

歌声だ。

青年は幼少の頃から里の年寄りたちに言われてきた。月の光も届かぬような夜に森に入ってはいけない。夜雀に喰われるぞ、と・・・

 

今この場にいるのは仕事が長引いたからである。彼は隣里まで物を売りに行っている。

そして仕事が終わり山にさしかかったところで目が見えなくなった。最初は闇のせいだ、そう思っていた。だが歌声が聞こえ闇が深くなり・・・

不安は現実となった。

青年は木の根に足を取られつつも走った。

しばらく走っていると光が見えた。

それは・・・

「いらっしゃーい」

鰻屋の屋台だった。こんな山奥に少女が一人?疑問に思ったものの鰻の匂いにつられて椅子に座った。金ならば今日の売り上げ金があった。お品書きを見ても高いどころか安かった。

「お待ちどうさまでーす」

手元に運ばれた鰻からは香ばしい匂いが立ちこめていてみているだけでもおいしいであろうことは分かった。

その後も熱燗も注文し歌声のことを忘れていた。

そう・・・忘れてしまっていた・・・

「・・・さん・・・さん!お客さん!」

いつの間にか寝てしまっていたらしい。少女に体を揺さぶられ目を覚ました。

「そうだ。お客さん。暇だからお話してもいいですか?」

「いいけど・・・なんの話?」

「あのですね、この付近には夜雀って呼ばれる妖怪がいるんですよ。」

「夜雀・・・」

「はい、山を通る人を歌で惑わす鳥の妖怪なんですよ~」

おかしい・・・目が霞む・・・少女は嗤う。そして嗤う少女の背中には羽根が・・・

幻覚だ・・・そう思いたかった。いくら目をこすっても目に写るものは変わらない・・・

「どうしました?お客さん?」

少女は変わらぬ笑顔で・・・いや口元を歪ませて嗤った。

刹那鋭い痛みを感じた。目をやると腕から大量の血液が流れ出ていた。

「あ・・・ぐっ・・・」

「あははっ♪痛いですか?でもね?私の心の傷はこんなもんじゃないですよ?」

「なんのことだ・・・?」

「最初にあなたを見たとき私は一目惚れしました」

「え・・・?」

唐突なカミングアウト。青年は目を丸くした。

「でも私は妖怪。人間であるあなたとは夫婦にはなれない・・・だから私はあなたと一つになろうって決めました。すこし痛いかも知れませんが・・・」

少女はそう言うと青年の首筋に噛み付いた。

「ぐぁっ・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「んふぅ・・・ふぃふふぁふぃ・・・(静かに)」

そう言いながら青年の右腕を切り裂いた。

「っっっっっっっっ!!!!!!」

言葉にならない悲鳴を上げながら青年は理解した。

自分はここでこの子に喰われるのか・・・と・・・

夜の森に響く血が滴る音・・・それはリズムを刻んでいるようだった。

青年の意識は暗闇に落ちていった・・・

◆◆◆

青年が動かなくなった後も少女、ミスティア・ローレライは咀嚼を続けていた。

やがて心臓を丸呑みにすると血のついた唇を舐めて嗤った。そしてまた歌い始めた。

 

 

狂ったかのように歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え歌え

 

 

 

その翌日、一人の青年が森を歩いていた。

木の上からその様子を見ていた少女は口元を歪めた。

 

 

 

「あの人かっこいいなぁ・・・」


 
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